◇85話◇お迎え
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近くのパーキングに愛車を停めて、運転席から降りる。
冬の冷たい風に、車の中で温まっていた身体はあっという間に冷やされていく。
リコの言っていたBaratieというバーは、すぐそこの雑居ビルの3階だ。
早足で雑居ビルに入れば、風から遮断されて少しは寒さもマシになった。
ちょうど1階に降りてきていたエレベーターに乗り込む。
連絡を貰った時点でギリギリだった営業時間は、リヴァイが会社に車を取りに戻っている間にとっくに過ぎてしまっていた。
だが、リコはオーナーに伝えておくと言っていたし、ここのバーテンダーなら寝ているなまえを喜んで待たせてやるだろうと分かっていた。
Baratieに行くのは初めてだが、そこでバーテンダーをしている男とは顔見知りだ。
探偵時代の情報屋だったソイツは、金髪で長身のモヤシのような線の細い優男だが、意外と腕っぷしも強くて、危ないところを助けてもらったこともある。
だが、自他共に認める女好きで、男にはクソみたいに態度が悪いのに、女になると見境がないのが大きな欠点なのだ。
寝ているなまえに手を出さないとは限らないから、エレベーターから降りた足は無意識に速くなる。
扉を開くと、営業時間外の店内は、BGMも消えて、シンと静まり返っていた。
カウンター奥でグラスを拭いていたバーテンダーが顔を上げる。
やっぱり、彼女を待たせていたのは顔見知りのソイツだった。
その手前のカウンターで突っ伏して寝ている間抜けな後ろ姿は、なまえに違いない。
「ごめんね、お客さん。もう営業時間とっくに過ぎてんだよ。
だから今すぐ出てってくれねぇかい?」
「うるせぇ。ソイツを拾いに来たんだよ。」
分かっていて追い払おうとするソイツを軽くあしらい、リヴァイはカウンターへと向かう。
右頬をカウンターに乗せて突っ伏しているなまえの寝顔は、呆れるほどに間抜けでため息も出ない。
「おい、起きやがれ。クソが。」
「ん~…。」
左腕を掴んで起き上がらせようとするが、なまえは小さく唸り声を上げただけで起きる気配はない。
これでは、リコもお手上げだったはずだ。
起こすのは諦めるしかなさそうだ。
「まさかとは思ってたんだが、
やっぱり、リヴァイってお前のことだったんだな。」
拭いていたグラスを置いて、顔見知りの情報屋、サンジが心底嫌そうに言う。
「あぁ?」
「さっきから、なまえちゃんがずっと寝言でお前の名前を呼んでたんだよ。
会いたい、会いたいってさ。ちゃんとデートもしてやってねぇのか?可哀想に。」
「…俺じゃねぇよ。」
「何だって?」
小さく呟いたそれは、サンジには聞こえなかったようだった。
聞かせるつもりもなかったし、なまえの寝言の話題なんて面白くもなんともない。
だから、バーを見渡しながら訊ねる。
「リコは?」
「さっき、クソ羨ましすぎる婚約者が迎えに来やがった。
-なまえちゃんのバッグとコート持ってくるから待ってろ。」
拭いていたグラスを置いたサンジはそう言うと、奥へと引っ込む。
そして、すぐに奥から小さなバッグと白いロングコートを持って戻って来た。
カウンターから出て来たサンジから、バッグだけを受け取ったリヴァイは、それを肩にかけるとなまえの身体を抱きかかえて、横抱きにする。
「こんなにイイ身体してんのになぁ…。」
リヴァイの腕の中で眠るなまえの身体に白いロングコートをかけてやりながら、サンジが言う。
「気色悪ぃ目で見るんじゃねぇよ。」
「普通の男は見るんだよ。
ったく、なまえちゃん、男子中学生並みに欲求不満らしいぞ。」
「は?」
「どうせ、潔癖のお前のことだからそういうのシたくねぇとか言ってんだろ。最低だな。
男子中学生ってのはな、じゃがいもにも興奮しちまう生き物なんだ。
そんな風になっちまうまで放っておくくらいなら、俺が代わりにー。」
「代わりでいいなら、」
リヴァイは、サンジを見る。
訝し気に眉を顰めた女好きに、欲しい言葉を言ってやる。
「代わりでいいなら、抱いてやれよ。」
「あぁ!?てめぇ、言っていいことと悪いことってのがー。」
「ん~…、リヴァ、イ、すきぃ…。」
怒り心頭で殴りかかろうとしたサンジの動きが止まる。
間抜けな甘え声を出したなまえは、幸せそうにリヴァイの胸元に頬を擦りよせる。
空気の読めない女だー。
「…大事にしろよ。急に闇社会専門の探偵やめてまっとうな仕事始めたのも
なまえちゃんのためなんじゃねぇのかよ。」
サンジは振り上げた拳を悔し気におろす。
「コイツは関係ねぇ。偶々、俺達が入った会社にいただけだ。」
「もし、そうでも、恋人なんだろ。大事にしねぇと他の野郎にとられちまうぞ。
なまえちゃん狙いでうちのバーに来てる男を何人も知ってる俺からの忠告だ。」
「…一応、頭に入れといてやる。」
社内にもなまえ狙いの男がいることは知っている。
本人は全く気付いていないどころか、年がら年中恋人募集中の枯女だと思っている節があるが、そんなことはない。
目も当てられないほどに鈍感なだけだ。
だから、行方不明になっているときも、彼女を狙っていた男が連れ去ったんじゃないかと考えていたのだ。
まさか、リコやファーランの言っていた通り、本当に鏡の向こうの世界にいるなんて思いもせずにー。
リヴァイはなまえを抱え直して、バーを出た。
何人もの男がなまえを狙っていたって、関係ない。
問題もない。
自分には関係ないし、それにー。
どうせ誰も、彼女の心を手に入れることは出来ないことを、リヴァイは誰よりも、知っているからー。
冬の冷たい風に、車の中で温まっていた身体はあっという間に冷やされていく。
リコの言っていたBaratieというバーは、すぐそこの雑居ビルの3階だ。
早足で雑居ビルに入れば、風から遮断されて少しは寒さもマシになった。
ちょうど1階に降りてきていたエレベーターに乗り込む。
連絡を貰った時点でギリギリだった営業時間は、リヴァイが会社に車を取りに戻っている間にとっくに過ぎてしまっていた。
だが、リコはオーナーに伝えておくと言っていたし、ここのバーテンダーなら寝ているなまえを喜んで待たせてやるだろうと分かっていた。
Baratieに行くのは初めてだが、そこでバーテンダーをしている男とは顔見知りだ。
探偵時代の情報屋だったソイツは、金髪で長身のモヤシのような線の細い優男だが、意外と腕っぷしも強くて、危ないところを助けてもらったこともある。
だが、自他共に認める女好きで、男にはクソみたいに態度が悪いのに、女になると見境がないのが大きな欠点なのだ。
寝ているなまえに手を出さないとは限らないから、エレベーターから降りた足は無意識に速くなる。
扉を開くと、営業時間外の店内は、BGMも消えて、シンと静まり返っていた。
カウンター奥でグラスを拭いていたバーテンダーが顔を上げる。
やっぱり、彼女を待たせていたのは顔見知りのソイツだった。
その手前のカウンターで突っ伏して寝ている間抜けな後ろ姿は、なまえに違いない。
「ごめんね、お客さん。もう営業時間とっくに過ぎてんだよ。
だから今すぐ出てってくれねぇかい?」
「うるせぇ。ソイツを拾いに来たんだよ。」
分かっていて追い払おうとするソイツを軽くあしらい、リヴァイはカウンターへと向かう。
右頬をカウンターに乗せて突っ伏しているなまえの寝顔は、呆れるほどに間抜けでため息も出ない。
「おい、起きやがれ。クソが。」
「ん~…。」
左腕を掴んで起き上がらせようとするが、なまえは小さく唸り声を上げただけで起きる気配はない。
これでは、リコもお手上げだったはずだ。
起こすのは諦めるしかなさそうだ。
「まさかとは思ってたんだが、
やっぱり、リヴァイってお前のことだったんだな。」
拭いていたグラスを置いて、顔見知りの情報屋、サンジが心底嫌そうに言う。
「あぁ?」
「さっきから、なまえちゃんがずっと寝言でお前の名前を呼んでたんだよ。
会いたい、会いたいってさ。ちゃんとデートもしてやってねぇのか?可哀想に。」
「…俺じゃねぇよ。」
「何だって?」
小さく呟いたそれは、サンジには聞こえなかったようだった。
聞かせるつもりもなかったし、なまえの寝言の話題なんて面白くもなんともない。
だから、バーを見渡しながら訊ねる。
「リコは?」
「さっき、クソ羨ましすぎる婚約者が迎えに来やがった。
-なまえちゃんのバッグとコート持ってくるから待ってろ。」
拭いていたグラスを置いたサンジはそう言うと、奥へと引っ込む。
そして、すぐに奥から小さなバッグと白いロングコートを持って戻って来た。
カウンターから出て来たサンジから、バッグだけを受け取ったリヴァイは、それを肩にかけるとなまえの身体を抱きかかえて、横抱きにする。
「こんなにイイ身体してんのになぁ…。」
リヴァイの腕の中で眠るなまえの身体に白いロングコートをかけてやりながら、サンジが言う。
「気色悪ぃ目で見るんじゃねぇよ。」
「普通の男は見るんだよ。
ったく、なまえちゃん、男子中学生並みに欲求不満らしいぞ。」
「は?」
「どうせ、潔癖のお前のことだからそういうのシたくねぇとか言ってんだろ。最低だな。
男子中学生ってのはな、じゃがいもにも興奮しちまう生き物なんだ。
そんな風になっちまうまで放っておくくらいなら、俺が代わりにー。」
「代わりでいいなら、」
リヴァイは、サンジを見る。
訝し気に眉を顰めた女好きに、欲しい言葉を言ってやる。
「代わりでいいなら、抱いてやれよ。」
「あぁ!?てめぇ、言っていいことと悪いことってのがー。」
「ん~…、リヴァ、イ、すきぃ…。」
怒り心頭で殴りかかろうとしたサンジの動きが止まる。
間抜けな甘え声を出したなまえは、幸せそうにリヴァイの胸元に頬を擦りよせる。
空気の読めない女だー。
「…大事にしろよ。急に闇社会専門の探偵やめてまっとうな仕事始めたのも
なまえちゃんのためなんじゃねぇのかよ。」
サンジは振り上げた拳を悔し気におろす。
「コイツは関係ねぇ。偶々、俺達が入った会社にいただけだ。」
「もし、そうでも、恋人なんだろ。大事にしねぇと他の野郎にとられちまうぞ。
なまえちゃん狙いでうちのバーに来てる男を何人も知ってる俺からの忠告だ。」
「…一応、頭に入れといてやる。」
社内にもなまえ狙いの男がいることは知っている。
本人は全く気付いていないどころか、年がら年中恋人募集中の枯女だと思っている節があるが、そんなことはない。
目も当てられないほどに鈍感なだけだ。
だから、行方不明になっているときも、彼女を狙っていた男が連れ去ったんじゃないかと考えていたのだ。
まさか、リコやファーランの言っていた通り、本当に鏡の向こうの世界にいるなんて思いもせずにー。
リヴァイはなまえを抱え直して、バーを出た。
何人もの男がなまえを狙っていたって、関係ない。
問題もない。
自分には関係ないし、それにー。
どうせ誰も、彼女の心を手に入れることは出来ないことを、リヴァイは誰よりも、知っているからー。