◇82話◇新しい生活と変わらない気持ち~残酷な世界side~
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兵舎に帰り着いた頃にはもう夕方になっていた。
先に帰って来ていたミケ達に、今日はこのまま飲みに行こうと誘われている。
兵舎全体の雰囲気が、ひと仕事終えたような安心感に包まれているようだった。
そこには、恋人の死を漸く乗り越えてくれた兵士長への安堵の空気も含まれているのもひしひしと感じている。
誰も、彼女のことは話さない。
当然だ、記憶にないのだからー。
彼女の記憶がない方がよかった、とハンジは言うけれど、リヴァイはそうは思わない。
彼女がくれた日々の記憶と愛は、決して失いたくない大切なものだ。
でも、時々、リヴァイも分からなくなることがある。
彼女は本当に、存在していたのだろうか。
夢でも、見ていたのではないかーと。
自室に戻ったリヴァイは、クローゼットを開けた。
この世界に彼女が天使のように舞い降りてきた夜、彼女が着ていた白いロングワンピースは、まだここにある。
リヴァイはいつも、この肌触りの良い柔らかい生地に触れて、彼女が存在していたことを確かめる。
あぁ、でもー。
彼女の方が柔らかくて、肌触りがよかったー。
お気に入りだと言っていたから、向こうの世界に帰ってからも気にしているかもしれない。
あぁー。
取りに帰ってくればいいのにー。
粉々に割れた全身鏡は、ハンジとモブリットが鏡の破片をすべて拾い集めて繋ぎ合わせてくれた。
そして今、それは寝室に戻ってきている。
もう以前のように、この世界すら正しくは映してくれないそれが、彼女のいる世界を映してくれることは二度とないのだろう。
分かっては、いるのだけれどー。
この世界でともに生きようと決めて、彼女のために用意した服や靴、生活用品のあれこれは、少し前に全て捨てた。
そう、分かっているのだ。
ハンジが言っていた通りだ。
この世界は彼女の生きる場所ではなく、彼女が結ばれるべきは向こうの世界のあの男。
平和な世界でのうのうと暮らしていると思っていたけれど、彼女を守ってやることは出来そうだった。
だから、彼女が必死に掴もうとしてくれたこの手を、放したー。
リヴァイの手に力が入って、白いロングワンピースに細かい皴を幾つも作る。
この世界は、クソだ。
柔らかく微笑むか弱い彼女には似合わない。
リヴァイは、ワンピースに触れていた手を放し、兵団コートを脱ぐ。
ハンガーにコートをかけて、私服に着替えるためにシャツを脱ぐ。
左脇腹には、銃に撃たれたときの傷跡がまだ残っている。
見慣れたその傷跡に触れる。
これは彼女を守ったお前の勲章だとでも言うように、虚しく残っているそれだけが、今のリヴァイを慰めてくれる。
よかった、これでよかったのだ、とー。
あぁ、だから、どうかー。
リヴァイは、手近な服を手に取ってサッと着替えると部屋を出た。
宿舎を出れば、もうミケとゲルガー、ナナバが待っていた。
その隣では、ハンジの巨人談議にうんざりした表情のエルヴィンもいる。彼らも飲みに誘われたようだ。
「遅かったな。」
エルヴィンがリヴァイに気づいて、ホッとしたように顔を上げた。
「モブリットが先に店に行って席を取っててくれてるんだ。行こう!」
ハンジが明るく言って、リヴァイの腕を引っ張る。
とことん飲もうと盛り上がっている気の置けない仲間達と肩を並べて、馴染みの酒屋へと向かった。
こんななんでもない時間を過ごせるようになったのは、心から愛し、愛してくれた彼女達のおかげだ。
とても、感謝している。
だから、どうかー。
もう二度と会えない遠い世界で生きている世界で一番愛している彼女が、どうか、幸せでありますようにー。
笑ってくれていますようにー。
ー今でも、そばにいたいと必死に懇願していた彼女の泣き顔が、頭から離れないんだ。
先に帰って来ていたミケ達に、今日はこのまま飲みに行こうと誘われている。
兵舎全体の雰囲気が、ひと仕事終えたような安心感に包まれているようだった。
そこには、恋人の死を漸く乗り越えてくれた兵士長への安堵の空気も含まれているのもひしひしと感じている。
誰も、彼女のことは話さない。
当然だ、記憶にないのだからー。
彼女の記憶がない方がよかった、とハンジは言うけれど、リヴァイはそうは思わない。
彼女がくれた日々の記憶と愛は、決して失いたくない大切なものだ。
でも、時々、リヴァイも分からなくなることがある。
彼女は本当に、存在していたのだろうか。
夢でも、見ていたのではないかーと。
自室に戻ったリヴァイは、クローゼットを開けた。
この世界に彼女が天使のように舞い降りてきた夜、彼女が着ていた白いロングワンピースは、まだここにある。
リヴァイはいつも、この肌触りの良い柔らかい生地に触れて、彼女が存在していたことを確かめる。
あぁ、でもー。
彼女の方が柔らかくて、肌触りがよかったー。
お気に入りだと言っていたから、向こうの世界に帰ってからも気にしているかもしれない。
あぁー。
取りに帰ってくればいいのにー。
粉々に割れた全身鏡は、ハンジとモブリットが鏡の破片をすべて拾い集めて繋ぎ合わせてくれた。
そして今、それは寝室に戻ってきている。
もう以前のように、この世界すら正しくは映してくれないそれが、彼女のいる世界を映してくれることは二度とないのだろう。
分かっては、いるのだけれどー。
この世界でともに生きようと決めて、彼女のために用意した服や靴、生活用品のあれこれは、少し前に全て捨てた。
そう、分かっているのだ。
ハンジが言っていた通りだ。
この世界は彼女の生きる場所ではなく、彼女が結ばれるべきは向こうの世界のあの男。
平和な世界でのうのうと暮らしていると思っていたけれど、彼女を守ってやることは出来そうだった。
だから、彼女が必死に掴もうとしてくれたこの手を、放したー。
リヴァイの手に力が入って、白いロングワンピースに細かい皴を幾つも作る。
この世界は、クソだ。
柔らかく微笑むか弱い彼女には似合わない。
リヴァイは、ワンピースに触れていた手を放し、兵団コートを脱ぐ。
ハンガーにコートをかけて、私服に着替えるためにシャツを脱ぐ。
左脇腹には、銃に撃たれたときの傷跡がまだ残っている。
見慣れたその傷跡に触れる。
これは彼女を守ったお前の勲章だとでも言うように、虚しく残っているそれだけが、今のリヴァイを慰めてくれる。
よかった、これでよかったのだ、とー。
あぁ、だから、どうかー。
リヴァイは、手近な服を手に取ってサッと着替えると部屋を出た。
宿舎を出れば、もうミケとゲルガー、ナナバが待っていた。
その隣では、ハンジの巨人談議にうんざりした表情のエルヴィンもいる。彼らも飲みに誘われたようだ。
「遅かったな。」
エルヴィンがリヴァイに気づいて、ホッとしたように顔を上げた。
「モブリットが先に店に行って席を取っててくれてるんだ。行こう!」
ハンジが明るく言って、リヴァイの腕を引っ張る。
とことん飲もうと盛り上がっている気の置けない仲間達と肩を並べて、馴染みの酒屋へと向かった。
こんななんでもない時間を過ごせるようになったのは、心から愛し、愛してくれた彼女達のおかげだ。
とても、感謝している。
だから、どうかー。
もう二度と会えない遠い世界で生きている世界で一番愛している彼女が、どうか、幸せでありますようにー。
笑ってくれていますようにー。
ー今でも、そばにいたいと必死に懇願していた彼女の泣き顔が、頭から離れないんだ。