◇78話◇向こうの世界の彼
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自分のことをジークと名乗った銀縁眼鏡の男は、ハンジが持ってきた縄で拘束した。
巨人化出来る人間だと思われるため、自傷行為が出来そうなものを持っていないのも確認済みだ。
今、この古城の中には、巨人化出来る人間が、硬い石に包まれている女の子を含めて4人いることになる。
ウォール・ローゼに襲来した巨人の討伐も必要だが、リヴァイとハンジと数名の精鋭兵達は、この古城を拠点として残り、知性のある巨人を見張るということになったようだった。
私達と向かい合うように座った彼は、ハンジの説明を聞きながら、眉間の皴を濃くしていった。
簡単に信じられるようなものではないのは、同じ状況に陥った私が一番理解している。
私の隣に座るリヴァイが、痛いくらいに手を握りしめている。
その手が、放さないと言ってくれているようで、目の前に向こうの世界の彼がいても、不安ではなかった。
拘束したままの格好でソファの横に転がっていたジークは、面白そうにハンジの説明を聞いていた。
「壁の中の世界って面白いことが起こるんだね。」
「てめぇは黙ってろ、髭野郎。」
リヴァイに睨まれて、ジークはつまらなそうに肩をすくめる。
拘束されているという危機感をジークからは全く感じない。
私なら、不安と恐怖で震えていそうなのにー。
「…ファーランは寝ぼけてたわけじゃなかったってことか。」
彼は、自分に言い聞かせるように呟いた。
そこから聞こえてきた名前に、私の手を繋ぐリヴァイの手がピクリと動いたのが分かった。
「そっか…、友人からも聞いてたんだね。
リコからは説明はなかった?」
チラリとリヴァイの方を向いたあと、ハンジが訊ねる。
「あぁ、確かに、次に鏡の向こうと繋がったら連れて帰ると言ってた。
親友が行方不明で頭がイカれちまったのかと思ってたがな。」
彼はそう言いながらソファから立ち上がった。
そして、鏡の方へ歩きながら、私に向かって言う。
「おい、なまえ。いつまでもソイツとおてて繋いでねぇで帰るぞ。
…ったく、面倒に巻き込みやがって。まだ、この鏡は繋がるんだろうな。」
「私、帰らないよ…!」
リヴァイと手を繋いだままで立ち上がった私は、彼の背中に向かって、大きめの声で意思を伝えた。
鏡に触れようとしていた彼が振り向く。
「あ?」
怖い顔で睨まれて、怯みそうになる。
この世界に飛ばされたその時からなまえだと思われていた私は、リヴァイからずっと愛を注がれてきた。
いつも守ってくれる優しいリヴァイしか知らない。
だから初めて、リヴァイの顔を怖いと思った。
リヴァイのことを怖がっている人達がいる理由が少しだけ、分かった気がする。
「あなたは帰っていいよ。私はここに残るって決めたの。」
「…ソイツか。」
彼がリヴァイの方を向く。
睨むような彼の視線に、リヴァイも怖い顔で睨み返す。
そのときだった。
「応援に来ました!!」
憲兵が部屋にやって来た。
女の憲兵で、さっきハンジが縄を取りに行ったときに状況を聞いた兵士の1人のようだった。
「あぁ、助かるよ。地下に幽閉しておいてくれる?」
「はい、わかりました!」
憲兵はそう言うと、ソファ横で転がっているジークを雑に立たせた。
ジークのことは憲兵に任せて、私は帰らないのだということをハンジとリヴァイも一緒に説明する。
「私はこの世界で生きていたいの。
あなたは向こうの世界に戻っていいから。」
「平和な世界でのうのうと生きてた割には役に立ったが、
お前になまえをやる気はねぇ。」
彼は、私の腰を強く抱き寄せているリヴァイをひと睨みした後、私の方を向いた。
そしてー。
「リコは結婚式を延期してまで、お前が帰ってくるのを待ってる。」
「…!?」
「それでも、帰らねぇんだな?次はねぇかもしれねぇのは分かって言ってるんだよな。
お前の選択に口を出すつもりは微塵もねぇが、俺ならお前を連れて帰ってやれるそうだ。
まぁ、せいぜい…悔いが残らない方を自分で選べ。」
私はリヴァイのジャケットの裾を握った。
リコが、私のために結婚式を延期にしているなんて知らなかった。
どんな思いで私の帰りを待ってくれているのかー。
家族も、友人も、行方不明になった私のことを心配してくれているんだろう。
でもー。
でも、私はー。
「それでも…帰らない。」
「…そうか。」
「リコには、申し訳なく思ってる。幸せになってって伝えておいてほしい。」
「一応、覚えといてやるよ。」
彼が私に背を向けようとした、その時だった。
「なまえ!!」
いきなり、リヴァイが叫んで私を腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
それとほぼ同時に、彼は鏡を抱えて何かから逃げるように壁の方へ飛んだ。
2人が同時に焦ったように動いた数秒後、パァーーン!という高い銃声音が部屋に響いた。
それからすぐ、痛みに唸るようなリヴァイの声がしたー。
それは、彼かリヴァイかー。
腕の中で守られていた私には、分からなかった。
巨人化出来る人間だと思われるため、自傷行為が出来そうなものを持っていないのも確認済みだ。
今、この古城の中には、巨人化出来る人間が、硬い石に包まれている女の子を含めて4人いることになる。
ウォール・ローゼに襲来した巨人の討伐も必要だが、リヴァイとハンジと数名の精鋭兵達は、この古城を拠点として残り、知性のある巨人を見張るということになったようだった。
私達と向かい合うように座った彼は、ハンジの説明を聞きながら、眉間の皴を濃くしていった。
簡単に信じられるようなものではないのは、同じ状況に陥った私が一番理解している。
私の隣に座るリヴァイが、痛いくらいに手を握りしめている。
その手が、放さないと言ってくれているようで、目の前に向こうの世界の彼がいても、不安ではなかった。
拘束したままの格好でソファの横に転がっていたジークは、面白そうにハンジの説明を聞いていた。
「壁の中の世界って面白いことが起こるんだね。」
「てめぇは黙ってろ、髭野郎。」
リヴァイに睨まれて、ジークはつまらなそうに肩をすくめる。
拘束されているという危機感をジークからは全く感じない。
私なら、不安と恐怖で震えていそうなのにー。
「…ファーランは寝ぼけてたわけじゃなかったってことか。」
彼は、自分に言い聞かせるように呟いた。
そこから聞こえてきた名前に、私の手を繋ぐリヴァイの手がピクリと動いたのが分かった。
「そっか…、友人からも聞いてたんだね。
リコからは説明はなかった?」
チラリとリヴァイの方を向いたあと、ハンジが訊ねる。
「あぁ、確かに、次に鏡の向こうと繋がったら連れて帰ると言ってた。
親友が行方不明で頭がイカれちまったのかと思ってたがな。」
彼はそう言いながらソファから立ち上がった。
そして、鏡の方へ歩きながら、私に向かって言う。
「おい、なまえ。いつまでもソイツとおてて繋いでねぇで帰るぞ。
…ったく、面倒に巻き込みやがって。まだ、この鏡は繋がるんだろうな。」
「私、帰らないよ…!」
リヴァイと手を繋いだままで立ち上がった私は、彼の背中に向かって、大きめの声で意思を伝えた。
鏡に触れようとしていた彼が振り向く。
「あ?」
怖い顔で睨まれて、怯みそうになる。
この世界に飛ばされたその時からなまえだと思われていた私は、リヴァイからずっと愛を注がれてきた。
いつも守ってくれる優しいリヴァイしか知らない。
だから初めて、リヴァイの顔を怖いと思った。
リヴァイのことを怖がっている人達がいる理由が少しだけ、分かった気がする。
「あなたは帰っていいよ。私はここに残るって決めたの。」
「…ソイツか。」
彼がリヴァイの方を向く。
睨むような彼の視線に、リヴァイも怖い顔で睨み返す。
そのときだった。
「応援に来ました!!」
憲兵が部屋にやって来た。
女の憲兵で、さっきハンジが縄を取りに行ったときに状況を聞いた兵士の1人のようだった。
「あぁ、助かるよ。地下に幽閉しておいてくれる?」
「はい、わかりました!」
憲兵はそう言うと、ソファ横で転がっているジークを雑に立たせた。
ジークのことは憲兵に任せて、私は帰らないのだということをハンジとリヴァイも一緒に説明する。
「私はこの世界で生きていたいの。
あなたは向こうの世界に戻っていいから。」
「平和な世界でのうのうと生きてた割には役に立ったが、
お前になまえをやる気はねぇ。」
彼は、私の腰を強く抱き寄せているリヴァイをひと睨みした後、私の方を向いた。
そしてー。
「リコは結婚式を延期してまで、お前が帰ってくるのを待ってる。」
「…!?」
「それでも、帰らねぇんだな?次はねぇかもしれねぇのは分かって言ってるんだよな。
お前の選択に口を出すつもりは微塵もねぇが、俺ならお前を連れて帰ってやれるそうだ。
まぁ、せいぜい…悔いが残らない方を自分で選べ。」
私はリヴァイのジャケットの裾を握った。
リコが、私のために結婚式を延期にしているなんて知らなかった。
どんな思いで私の帰りを待ってくれているのかー。
家族も、友人も、行方不明になった私のことを心配してくれているんだろう。
でもー。
でも、私はー。
「それでも…帰らない。」
「…そうか。」
「リコには、申し訳なく思ってる。幸せになってって伝えておいてほしい。」
「一応、覚えといてやるよ。」
彼が私に背を向けようとした、その時だった。
「なまえ!!」
いきなり、リヴァイが叫んで私を腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
それとほぼ同時に、彼は鏡を抱えて何かから逃げるように壁の方へ飛んだ。
2人が同時に焦ったように動いた数秒後、パァーーン!という高い銃声音が部屋に響いた。
それからすぐ、痛みに唸るようなリヴァイの声がしたー。
それは、彼かリヴァイかー。
腕の中で守られていた私には、分からなかった。