◇76話◇彼女を守れ
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最上階の部屋は、位の高い人の部屋だったのだろうと思わせるような豪華な作りだった。
但し、家具や装飾品はほとんど置いていないので、造りだけは立派なただの大きな部屋だ。
ソファに座って本を読む私の周りを、私に傷ひとつでもつけたらリヴァイに八つ裂きにされるらしいエレン達が囲んでいる。
彼らの目が、私から離れることはない。
リヴァイも本気で言ったのではないと思うのだけれどー。
「いいえ、なまえさん。アレは本気の目でした。」
「…ごめんね、なんか。」
サシャに、それこそ本気の目で言われて、思わず謝ってしまう。
なまえの身に起きたことが、リヴァイを余計に私に対して過保護にさせているのだと思う。
駐屯兵団では精鋭と呼ばれて強かった彼女とは違って、私は戦う術を何も持っていないからー。
しばらくして、エレンは実験をするからとハンジ班のケイジに呼ばれて巨人研究所へと向かった。
それからどれくらいが経ったのか、少しずつ新リヴァイ班の新兵達と談笑が出来るようになってきた頃、誰かがやって来た。
扉が叩く音にすぐに返事をしたのはジャンだった。
この中では、ジャンがリーダーのような立場なのかもしれない。
ジャンが扉を開くと、憲兵が1人立っていた。
丸い銀縁の眼鏡をかけ、口元を覆い隠す髭を生やした独特な風貌のその憲兵は、扉が開いてすぐに部屋の中を覗き込んだ。
誰かを探しているようなその仕草の後、丸い銀縁の眼鏡の奥にある彼の目が捕らえたのは、私だった。
「リヴァイ兵長がなまえさんを呼んでる。」
「リヴァイが?」
「憲兵との話し合いが終わったんだ。リヴァイ兵長もすぐに戻る。」
「そっか。分かりました。」
ソファから立ち上がり、ジャン達に一緒にいてくれた礼を伝える。
私を迎えに来てくれた憲兵は、新リヴァイ班のみんなに対する指示も言付かっていたようだった。
今日はこの部屋でゆっくり休んでいいとリヴァイから許可が出たと聞いて、ジャンとコニーがガッツポーズをして喜んでいた。
最上階の部屋を出た私は、憲兵と一緒にリヴァイの部屋へ向かった。
でもー。
「俺はリヴァイ兵長の部屋を知らないんで、教えてもらっていいかな?」
「それはいいですけど…。私、1人で帰れますから大丈夫ですよ。」
「いいえ、それは出来ません。部屋まで無事に送り届けて、
自分が戻るまで一緒にいるようにと指示されてるので。」
憲兵の彼は、背筋をピンと伸ばし首を横に振った。
自分の所属する兵団の部下だけではなく、リヴァイは、別の兵団の兵士にまで自分の恋人の子守をお願いしているようだ。
自分の立場を利用して、そんな私用を命令してもいいのだろうかー。
「それなら、せめて自分の班のジャン達にお願いすればよかったのに…。
憲兵さんって忙しいんでしょう?ごめんなさい。」
「いいえ。俺はただの付き添いで来ただけなので暇なんだよね。
むしろ、綺麗な女性の話し相手になれてラッキー。」
彼は、風貌の割には、声も若く、女性に対する言葉遣いも慣れていそうだ。
この古城に来たのは初めてだという彼に、簡単にこの建物の間取りを教えていれば、すぐにリヴァイの部屋に辿り着いた。
「1人で待てますから、大丈夫ですよ。」
「任務だから、気にしないで。」
私が部屋に入っても、憲兵の彼は出て行こうとはしなかった。
部屋の扉の前に立って、上官であるリヴァイが戻るのを待つつもりらしい。
そこに知らない男性がいると気になるのだけれどー。
でも、リヴァイが彼にそれを命じたのなら追い出すわけにもいかない。
仕方なく、少しでも憲兵の彼から離れるために窓辺に立った私は、白い布に雁字搦めに覆われた自分の背丈ほどの置物を見つけた。
デスクの後ろに無造作に置かれたそれは、全身鏡のサイズとちょうど同じだ。
(これ…、リヴァイの全身鏡…?でも、割ったって言ってたのに?)
キツく結んでいる白い布を解こうとしていると、憲兵の彼が声をかけて来た。
立っているだけでは暇になったのかもしれない。
「何処に行っても、リヴァイ兵長はあなたをとても大切にしているって噂になってたよ。
彼は恋人を亡くしたことがあるらしいね。」
「…そうですね。」
布に触れていた手を離して、私は憲兵の彼に振り返った。
憲兵の彼と目が合うと、なんとなく不気味な感覚を覚える。
でも、それはほんの一瞬過ぎて、私の中には違和感としてしか残らなかった。
「だからなのかな。常にあなたをそばに置いて、傷ひとつつけないように守ってる。
みんな言ってるよ。あなたが死んでしまったら、今度こそ、リヴァイ兵長は壊れてしまうって。」
「…そんなこと、させません。」
「きっと、あなたを人質にとれば、あの男は何でも捨ててくれるはずだ。
たとえば、巨人になれる小僧達とかね。」
憲兵の彼は表情も変えずに、ほんの雑談でもするように言った。
今度こそ私の頭は、それを違和感でもなんでもなく、悪い予感に変換した。
でも、この部屋に2人きりにされた時点で、もう遅かったー。
但し、家具や装飾品はほとんど置いていないので、造りだけは立派なただの大きな部屋だ。
ソファに座って本を読む私の周りを、私に傷ひとつでもつけたらリヴァイに八つ裂きにされるらしいエレン達が囲んでいる。
彼らの目が、私から離れることはない。
リヴァイも本気で言ったのではないと思うのだけれどー。
「いいえ、なまえさん。アレは本気の目でした。」
「…ごめんね、なんか。」
サシャに、それこそ本気の目で言われて、思わず謝ってしまう。
なまえの身に起きたことが、リヴァイを余計に私に対して過保護にさせているのだと思う。
駐屯兵団では精鋭と呼ばれて強かった彼女とは違って、私は戦う術を何も持っていないからー。
しばらくして、エレンは実験をするからとハンジ班のケイジに呼ばれて巨人研究所へと向かった。
それからどれくらいが経ったのか、少しずつ新リヴァイ班の新兵達と談笑が出来るようになってきた頃、誰かがやって来た。
扉が叩く音にすぐに返事をしたのはジャンだった。
この中では、ジャンがリーダーのような立場なのかもしれない。
ジャンが扉を開くと、憲兵が1人立っていた。
丸い銀縁の眼鏡をかけ、口元を覆い隠す髭を生やした独特な風貌のその憲兵は、扉が開いてすぐに部屋の中を覗き込んだ。
誰かを探しているようなその仕草の後、丸い銀縁の眼鏡の奥にある彼の目が捕らえたのは、私だった。
「リヴァイ兵長がなまえさんを呼んでる。」
「リヴァイが?」
「憲兵との話し合いが終わったんだ。リヴァイ兵長もすぐに戻る。」
「そっか。分かりました。」
ソファから立ち上がり、ジャン達に一緒にいてくれた礼を伝える。
私を迎えに来てくれた憲兵は、新リヴァイ班のみんなに対する指示も言付かっていたようだった。
今日はこの部屋でゆっくり休んでいいとリヴァイから許可が出たと聞いて、ジャンとコニーがガッツポーズをして喜んでいた。
最上階の部屋を出た私は、憲兵と一緒にリヴァイの部屋へ向かった。
でもー。
「俺はリヴァイ兵長の部屋を知らないんで、教えてもらっていいかな?」
「それはいいですけど…。私、1人で帰れますから大丈夫ですよ。」
「いいえ、それは出来ません。部屋まで無事に送り届けて、
自分が戻るまで一緒にいるようにと指示されてるので。」
憲兵の彼は、背筋をピンと伸ばし首を横に振った。
自分の所属する兵団の部下だけではなく、リヴァイは、別の兵団の兵士にまで自分の恋人の子守をお願いしているようだ。
自分の立場を利用して、そんな私用を命令してもいいのだろうかー。
「それなら、せめて自分の班のジャン達にお願いすればよかったのに…。
憲兵さんって忙しいんでしょう?ごめんなさい。」
「いいえ。俺はただの付き添いで来ただけなので暇なんだよね。
むしろ、綺麗な女性の話し相手になれてラッキー。」
彼は、風貌の割には、声も若く、女性に対する言葉遣いも慣れていそうだ。
この古城に来たのは初めてだという彼に、簡単にこの建物の間取りを教えていれば、すぐにリヴァイの部屋に辿り着いた。
「1人で待てますから、大丈夫ですよ。」
「任務だから、気にしないで。」
私が部屋に入っても、憲兵の彼は出て行こうとはしなかった。
部屋の扉の前に立って、上官であるリヴァイが戻るのを待つつもりらしい。
そこに知らない男性がいると気になるのだけれどー。
でも、リヴァイが彼にそれを命じたのなら追い出すわけにもいかない。
仕方なく、少しでも憲兵の彼から離れるために窓辺に立った私は、白い布に雁字搦めに覆われた自分の背丈ほどの置物を見つけた。
デスクの後ろに無造作に置かれたそれは、全身鏡のサイズとちょうど同じだ。
(これ…、リヴァイの全身鏡…?でも、割ったって言ってたのに?)
キツく結んでいる白い布を解こうとしていると、憲兵の彼が声をかけて来た。
立っているだけでは暇になったのかもしれない。
「何処に行っても、リヴァイ兵長はあなたをとても大切にしているって噂になってたよ。
彼は恋人を亡くしたことがあるらしいね。」
「…そうですね。」
布に触れていた手を離して、私は憲兵の彼に振り返った。
憲兵の彼と目が合うと、なんとなく不気味な感覚を覚える。
でも、それはほんの一瞬過ぎて、私の中には違和感としてしか残らなかった。
「だからなのかな。常にあなたをそばに置いて、傷ひとつつけないように守ってる。
みんな言ってるよ。あなたが死んでしまったら、今度こそ、リヴァイ兵長は壊れてしまうって。」
「…そんなこと、させません。」
「きっと、あなたを人質にとれば、あの男は何でも捨ててくれるはずだ。
たとえば、巨人になれる小僧達とかね。」
憲兵の彼は表情も変えずに、ほんの雑談でもするように言った。
今度こそ私の頭は、それを違和感でもなんでもなく、悪い予感に変換した。
でも、この部屋に2人きりにされた時点で、もう遅かったー。