客車の窓から覗く夜空には、幾千の星が浮かんでいる。
きっと喜んで見上げていただろうなまえは、リヴァイの肩に頭を乗せてすっかり夢の中だ。
わざわざ起こしてまで見せる必要もないか、と気持ちよさそうな寝息の彼女の頭を優しく撫でた。
彼女の胸元で輝く小さな宝石、それが誕生石だということには気づいていないようだった。
それとも、パラレルワールドとこの世界では、誕生石も違うのだろうかー。
少なくとも、この世界でネックレスを贈ることがどういう意味を持つのかを彼女は知らない。

『あなたの無事と永遠の幸せを願う』

残酷で明日の命も約束されないこの世界で、ただひたすらに愛する人の幸せな未来を願う贈り物だ。
戦う術を持たず、この世界で生きていくだけの力を持たない彼女。
どんなことがあっても、どんなことからも守り抜くと心に誓って、そばにいてほしいと伝えた。
それでも、自分の手の届かないところでも、彼女が守られてくれるようにー。

「リ、ヴァ…ィ…。」

規則正しい寝息の途中で、彼女が小さな寝言を零す。
それが自分の名前だと気づいて、リヴァイの頬は嬉しさで無意識に緩む。
一体、どんな夢を見ているのだろう。
そんなに幸せそうな寝顔で、どんな夢をー。

「愛してる。」

眠る彼女の額にそっと唇を乗せた。
今日、パラレルワールドの話を聞いて、彼女が生きて来た世界がどれほど満たされていたのかを思い知った。
それに比べて、この世界は不自由で、危険だ。
いいところなんて、正直、思いつかなかった。
それでも、彼女はこの世界を選んでくれたのだ。
何としても、守り抜かなければー。
彼女がいつまでも、こんな風に安心しきった可愛らしい寝顔を見せてくれるようにー。