◇66話◇一緒にいたいと思ってる?
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気づいたら、私は部屋の中にいた。
背中を壁に押しつけられた私は、扉が閉まった音を耳のすぐ近くで聞く。
廊下の明かりが消えて、途端に真っ暗になった部屋は、開けっ放しにしていたカーテンから漏れた月明かりが、申し訳ない程度の照明になっていた。
不機嫌なリヴァイの表情が一瞬だけ、見えた気がしてすぐに、唇を塞がれた。
驚く私に、彼は自分の唇を強く押しつける。
強引なそれに、以前の私なら抵抗したはずだ。
私がなまえではないことを、リヴァイはもう知っている。
もうなまえでいるために、リヴァイのキスを受け入れなくてもいい。
だから、リヴァイの好きなようにキスをさせているのは、私の意思だ。
私が、そうして欲しいからー。
それが伝わったのか、名残惜し気にゆっくりと唇を離したリヴァイは、ひどく優しく私の頬に自分の手を添えた。
「お前をこの部屋に送ったのは、お前のためのつもりだった。」
「…私のため?」
私の顔を見つめながら、リヴァイが頷く。
「今日は一晩、お前に考える時間をやりたかったんだ。
明日、俺の我儘に付き合ってクソみてぇな世界に残るのは嫌だと
お前が言うのなら、仕方がねぇと思ってた。死ぬほど嫌だが…。」
「…だから、今日のうちにハンジとモブリットに報告するのはダメだって言ったの?」
「アイツ等に言っちまったら、お前はもう逃げ場がなくなるだろ。」
「…逃げないよ。」
「あぁ、そうみてぇだ。」
そう言ったリヴァイの口元は、クールを装いきれずに笑みを作った。
これでもかというほどに目尻が下がって、子供みたいな無邪気な笑みが可愛い。
すごく嬉しそうなそれが、愛おしい。
そんなことを思いながらリヴァイの顔を見ていたら、何かに気づいたように片眉がピクリと上がった。
そして、折角の可愛い笑顔はすぐに姿を消して、不機嫌そうに私を見る。
「俺はお前に気持ちを伝えたが、お前からは聞いてねぇ。
それで、分かるわけねぇだろおが。俺を馬鹿呼ばわりするな。」
「…言わなくたって分かるよ。普通、好きでもない男の人の為に
自分の人生捨てたり、平和な世界を捨てて、巨人のいる世界を選んだりしない。」
「…確かに、そうだな。」
「でしょう?」
「だが、お前は分からねぇ。なぜなら、馬鹿だからだ。」
「…!?馬鹿じゃない!!私はー。」
「巨人の隣に座って1日無謀に過ごす女は、馬鹿野郎以外の何者でもねぇ。」
責める口調だったけれど、私を見る目は悪戯っぽくて、からかわれているのだとすぐにわかった。
そもそも、どうしてリヴァイがそれを知っているのか。
ハンジあたりが、勝手に喋ったのだろう、きっと。
不貞腐れて頬を膨らませながら、私はリヴァイに言い返す。
「誰のせいだと思ってるの。私は必死だったの。」
「あぁ、俺のせいだな。
どうしても、俺のそばにいたかったんだもんな。」
リヴァイが満足気に片方の口の端を上げる。
自信家なその笑みが、すごく悔しい。
さっきまで、私の気持ちにも気づかなかったくせにー。
「ねぇ、リヴァイ…。」
「なんだ。」
「本当なの…?」
「何のことかは分からねぇが、俺はもう嘘は吐いてねぇぞ。」
「私は、この世界にいたなまえじゃないよ。」
「そんなことは、知ってる。」
「でも、リヴァイがなまえでいて欲しいなら、そう思ってくれてもいいと思ってる。」
私の言葉に、リヴァイは眉を顰めた。
さっきまでの優しい雰囲気はなくなってしまった。
怒ってはいないようだけれど、とても真剣な表情になって、彼はなまえへの想いを話しだすー。
「お前をなまえだとは思えねぇ。アイツとお前は違う。」
「…ごめん。」
「謝るな。怒ってるわけでも、責めてるわけでもねぇ。
ただ…、そうだな…、俺の中でアイツはいつまでも大切な女だ。
忘れることはねぇし、今でも愛してる。」
「うん。分かってる。」
リヴァイから、なまえへの愛を、私として聞いたのは初めてだった。
真正面から振られた気分だ。
分かっていたことなのに、胸が痛くて、苦しい。
「おい、なんて面してやがる。」
リヴァイが私の頬を両手で包んで、強引に自分と向き合わせる。
泣きそうなのを知られたくなかったのに、わざわざ傷ついた私の顔を見たリヴァイは、困ったように眉尻を下げていた。
「俺が今、心底愛してんのはお前だ。
言っただろう?俺は、お前と生きることを選んだんだ。」
リヴァイは私をまっすぐに見てそう言うと、両手で頬を包んだままで私に口づける。
とても優しいキスに、私はやっぱり泣きそうになる。
でもそれは、悲しいからじゃない。
嬉しくても泣けるというのは嘘じゃなかったらしい。
そっと唇が離れると、リヴァイは私の顔を見て僅かに目を見開いた。
でも、瞳に溢れる涙の理由は、すぐにわかったようだった。
だから、とても嬉しそうに涙を拭う。
「俺はお前を本気で愛してる。
だが、もし、お前が不安なら、ちゃんと言う。」
「…ちゃんとって?もう、ちゃんと伝えてくれてるよ。」
「なまえのことが気になるんだろ。」
「…それは、そうだけど。」
「なら、ちゃんと言う。」
リヴァイは決意したように言って、一度、ゆっくりと息を吸った。
そして、私の目をまっすぐに見て、口を開くー。
「愛してる。誰よりも、お前を愛してる。
たとえば、ここにお前となまえがいても、俺はお前を選ー。」
最後まで言わせないで、私はリヴァイの唇を塞いだ。
言葉を遮るためだけのキスはすぐに離れる。
驚いて目を見開いてかたまるリヴァイに、私は伝える。
「言わなくて、いいよ。」
「…どうして。」
「彼女がリヴァイにとって永遠に大切な人だってことは分かってるし
私もそうであってほしいと思ってる。彼女のお陰で、私はリヴァイに出逢えたの。
それだけでいいのに、愛してもらえた。だから私はもう、充分過ぎるくらい幸せなの。」
リヴァイは何かを言いかけたけれど、結局、何も言わないままで私の腰に手を添えて抱き寄せた。
私の耳元に顔を埋めて、彼は私を抱きしめる腕に力を込める。
「ありがとう。」
少しだけ、リヴァイの声は震えていた。
彼女への嫉妬と羨望で、心の奥に黒いものが蠢きだす。
それが不快で、胸が苦しい。
本当は、彼女よりも私を愛してるという彼の言葉を聞いてみたかった。
彼女がいても、私を選ぶよって言ってほしかった。
あぁ、言って欲しいー。私だけだって、言って欲しいー。
でも、これでいい。
後悔はない。
せっかく、出逢えるはずのなかった違う世界の住人のリヴァイと出逢えたのだ。
そして、奇跡みたいにリヴァイが私を愛してくれた。
それなら、その気持ちを私は慈しんで大切に大切にしたい。
彼を苦しめるような愛され方はされたくない。
「これだけは、分かっててくれ。」
リヴァイはそう言うと、私をそっと離した。
彼女のものだと思っていた愛に溢れた優しい瞳が、私を見つめる。
「お前と出逢わせてくれたなまえに、俺は感謝してる。
住む世界の違ぇ俺達は、一緒にいるべきじゃねぇんだとしても関係ねぇ。
世界を敵にまわしても、俺はお前を放さねぇ。運命なんてクソ食らえだ。」
「…ふふ、熱烈だね。」
嬉しくて、思わず笑みをこぼす。
リヴァイが驚いたように目を見開いたあと、泣きそうな顔をして私を抱きしめた。
何が、彼を泣かせようとしたのかは分からない。
きっと、私はずっと分からないのだと思う。
今のどこかに、なまえとの想い出があったのだろう。
私はこれからも、無意識になまえを思い出させてしまうに違いない。
だって、私と彼女は、違う世界で生きる同一人物だからー。
「私も、家族も友人も、今まで生きてきた世界の全てを失ってもいいくらいに
リヴァイを愛してるよ。」
「あぁ、熱烈だな。」
悪戯っぽく言ったリヴァイだったけれど、やっぱりその声は僅かに震えていた。
だから、彼を守るみたいに、私は背中に手をまわすと強く抱きしめ返した。
大丈夫。私はずっとそばにいるよー、そんな願いを込めてー。
「お前には、絶対に傷ひとつつけねぇ…!
どんなことからも、俺が守ってやる…!」
リヴァイが、自分に誓うように力強く宣言する。
そこには、なまえを守り切れなかった悲しみと悔しさが滲み出ていて、私はやっぱり、彼を守るように強く、強く、抱きしめた。
背中を壁に押しつけられた私は、扉が閉まった音を耳のすぐ近くで聞く。
廊下の明かりが消えて、途端に真っ暗になった部屋は、開けっ放しにしていたカーテンから漏れた月明かりが、申し訳ない程度の照明になっていた。
不機嫌なリヴァイの表情が一瞬だけ、見えた気がしてすぐに、唇を塞がれた。
驚く私に、彼は自分の唇を強く押しつける。
強引なそれに、以前の私なら抵抗したはずだ。
私がなまえではないことを、リヴァイはもう知っている。
もうなまえでいるために、リヴァイのキスを受け入れなくてもいい。
だから、リヴァイの好きなようにキスをさせているのは、私の意思だ。
私が、そうして欲しいからー。
それが伝わったのか、名残惜し気にゆっくりと唇を離したリヴァイは、ひどく優しく私の頬に自分の手を添えた。
「お前をこの部屋に送ったのは、お前のためのつもりだった。」
「…私のため?」
私の顔を見つめながら、リヴァイが頷く。
「今日は一晩、お前に考える時間をやりたかったんだ。
明日、俺の我儘に付き合ってクソみてぇな世界に残るのは嫌だと
お前が言うのなら、仕方がねぇと思ってた。死ぬほど嫌だが…。」
「…だから、今日のうちにハンジとモブリットに報告するのはダメだって言ったの?」
「アイツ等に言っちまったら、お前はもう逃げ場がなくなるだろ。」
「…逃げないよ。」
「あぁ、そうみてぇだ。」
そう言ったリヴァイの口元は、クールを装いきれずに笑みを作った。
これでもかというほどに目尻が下がって、子供みたいな無邪気な笑みが可愛い。
すごく嬉しそうなそれが、愛おしい。
そんなことを思いながらリヴァイの顔を見ていたら、何かに気づいたように片眉がピクリと上がった。
そして、折角の可愛い笑顔はすぐに姿を消して、不機嫌そうに私を見る。
「俺はお前に気持ちを伝えたが、お前からは聞いてねぇ。
それで、分かるわけねぇだろおが。俺を馬鹿呼ばわりするな。」
「…言わなくたって分かるよ。普通、好きでもない男の人の為に
自分の人生捨てたり、平和な世界を捨てて、巨人のいる世界を選んだりしない。」
「…確かに、そうだな。」
「でしょう?」
「だが、お前は分からねぇ。なぜなら、馬鹿だからだ。」
「…!?馬鹿じゃない!!私はー。」
「巨人の隣に座って1日無謀に過ごす女は、馬鹿野郎以外の何者でもねぇ。」
責める口調だったけれど、私を見る目は悪戯っぽくて、からかわれているのだとすぐにわかった。
そもそも、どうしてリヴァイがそれを知っているのか。
ハンジあたりが、勝手に喋ったのだろう、きっと。
不貞腐れて頬を膨らませながら、私はリヴァイに言い返す。
「誰のせいだと思ってるの。私は必死だったの。」
「あぁ、俺のせいだな。
どうしても、俺のそばにいたかったんだもんな。」
リヴァイが満足気に片方の口の端を上げる。
自信家なその笑みが、すごく悔しい。
さっきまで、私の気持ちにも気づかなかったくせにー。
「ねぇ、リヴァイ…。」
「なんだ。」
「本当なの…?」
「何のことかは分からねぇが、俺はもう嘘は吐いてねぇぞ。」
「私は、この世界にいたなまえじゃないよ。」
「そんなことは、知ってる。」
「でも、リヴァイがなまえでいて欲しいなら、そう思ってくれてもいいと思ってる。」
私の言葉に、リヴァイは眉を顰めた。
さっきまでの優しい雰囲気はなくなってしまった。
怒ってはいないようだけれど、とても真剣な表情になって、彼はなまえへの想いを話しだすー。
「お前をなまえだとは思えねぇ。アイツとお前は違う。」
「…ごめん。」
「謝るな。怒ってるわけでも、責めてるわけでもねぇ。
ただ…、そうだな…、俺の中でアイツはいつまでも大切な女だ。
忘れることはねぇし、今でも愛してる。」
「うん。分かってる。」
リヴァイから、なまえへの愛を、私として聞いたのは初めてだった。
真正面から振られた気分だ。
分かっていたことなのに、胸が痛くて、苦しい。
「おい、なんて面してやがる。」
リヴァイが私の頬を両手で包んで、強引に自分と向き合わせる。
泣きそうなのを知られたくなかったのに、わざわざ傷ついた私の顔を見たリヴァイは、困ったように眉尻を下げていた。
「俺が今、心底愛してんのはお前だ。
言っただろう?俺は、お前と生きることを選んだんだ。」
リヴァイは私をまっすぐに見てそう言うと、両手で頬を包んだままで私に口づける。
とても優しいキスに、私はやっぱり泣きそうになる。
でもそれは、悲しいからじゃない。
嬉しくても泣けるというのは嘘じゃなかったらしい。
そっと唇が離れると、リヴァイは私の顔を見て僅かに目を見開いた。
でも、瞳に溢れる涙の理由は、すぐにわかったようだった。
だから、とても嬉しそうに涙を拭う。
「俺はお前を本気で愛してる。
だが、もし、お前が不安なら、ちゃんと言う。」
「…ちゃんとって?もう、ちゃんと伝えてくれてるよ。」
「なまえのことが気になるんだろ。」
「…それは、そうだけど。」
「なら、ちゃんと言う。」
リヴァイは決意したように言って、一度、ゆっくりと息を吸った。
そして、私の目をまっすぐに見て、口を開くー。
「愛してる。誰よりも、お前を愛してる。
たとえば、ここにお前となまえがいても、俺はお前を選ー。」
最後まで言わせないで、私はリヴァイの唇を塞いだ。
言葉を遮るためだけのキスはすぐに離れる。
驚いて目を見開いてかたまるリヴァイに、私は伝える。
「言わなくて、いいよ。」
「…どうして。」
「彼女がリヴァイにとって永遠に大切な人だってことは分かってるし
私もそうであってほしいと思ってる。彼女のお陰で、私はリヴァイに出逢えたの。
それだけでいいのに、愛してもらえた。だから私はもう、充分過ぎるくらい幸せなの。」
リヴァイは何かを言いかけたけれど、結局、何も言わないままで私の腰に手を添えて抱き寄せた。
私の耳元に顔を埋めて、彼は私を抱きしめる腕に力を込める。
「ありがとう。」
少しだけ、リヴァイの声は震えていた。
彼女への嫉妬と羨望で、心の奥に黒いものが蠢きだす。
それが不快で、胸が苦しい。
本当は、彼女よりも私を愛してるという彼の言葉を聞いてみたかった。
彼女がいても、私を選ぶよって言ってほしかった。
あぁ、言って欲しいー。私だけだって、言って欲しいー。
でも、これでいい。
後悔はない。
せっかく、出逢えるはずのなかった違う世界の住人のリヴァイと出逢えたのだ。
そして、奇跡みたいにリヴァイが私を愛してくれた。
それなら、その気持ちを私は慈しんで大切に大切にしたい。
彼を苦しめるような愛され方はされたくない。
「これだけは、分かっててくれ。」
リヴァイはそう言うと、私をそっと離した。
彼女のものだと思っていた愛に溢れた優しい瞳が、私を見つめる。
「お前と出逢わせてくれたなまえに、俺は感謝してる。
住む世界の違ぇ俺達は、一緒にいるべきじゃねぇんだとしても関係ねぇ。
世界を敵にまわしても、俺はお前を放さねぇ。運命なんてクソ食らえだ。」
「…ふふ、熱烈だね。」
嬉しくて、思わず笑みをこぼす。
リヴァイが驚いたように目を見開いたあと、泣きそうな顔をして私を抱きしめた。
何が、彼を泣かせようとしたのかは分からない。
きっと、私はずっと分からないのだと思う。
今のどこかに、なまえとの想い出があったのだろう。
私はこれからも、無意識になまえを思い出させてしまうに違いない。
だって、私と彼女は、違う世界で生きる同一人物だからー。
「私も、家族も友人も、今まで生きてきた世界の全てを失ってもいいくらいに
リヴァイを愛してるよ。」
「あぁ、熱烈だな。」
悪戯っぽく言ったリヴァイだったけれど、やっぱりその声は僅かに震えていた。
だから、彼を守るみたいに、私は背中に手をまわすと強く抱きしめ返した。
大丈夫。私はずっとそばにいるよー、そんな願いを込めてー。
「お前には、絶対に傷ひとつつけねぇ…!
どんなことからも、俺が守ってやる…!」
リヴァイが、自分に誓うように力強く宣言する。
そこには、なまえを守り切れなかった悲しみと悔しさが滲み出ていて、私はやっぱり、彼を守るように強く、強く、抱きしめた。