◇66話◇一緒にいたいと思ってる?
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強引に腕を掴まれて兵舎を出たのに、帰りは、リヴァイに手を繋がれて並んで歩いた。
ハンジとモブリットには、帰らないと決めたことは明日伝えることになった。
私はすぐにでも報告したかったのだけれど、リヴァイが頑なだった。
その理由は教えてはくれなかったけれど、これからもリヴァイのそばにいることを許されたのなら、どちらでもよかった。
「リヴァイ兵長!なまえさん!おかえりなさい!!」
兵門までやってくると、見張りの調査兵が声をかけて来た。
とても嬉しそうな彼に、戸惑いながら「ただいま。」と答える。
リヴァイも、訝し気にしつつも、見張りをしている調査兵達にねぎらいの言葉をかけていた。
それにとても感激した様子の若い調査兵達に見送られて、リヴァイと私は宿舎へと向かう。
このまま、私はリヴァイの部屋に行くのだと思っていた。
今夜は、一緒に過ごせると思っていたのだ。
でも、私の手を握って隣を歩く彼は、自分の部屋の扉の前を通り過ぎる。
向かっているのは、私が1人きりで過ごさなければならない部屋だというのが嫌でも分かる。
愛してるー、そう言ってくれたのにー。
あれはやっぱり、なまえを失いたくなかった彼の嘘だったのだろうか。
それとも、そもそもなまえに向けた愛の言葉だったのかもしれない。
だから、自分の部屋に偽物は連れて行きたくないー、そういうことなのだろうか。
部屋が近づくほどに足取りは重たくなって、隣にいたはずのリヴァイを、いつの間にか斜め後ろから見ていた。
長い廊下が短く感じるくらいにすぐに、1人きりの部屋に辿り着けば、迷うこともなくリヴァイの足が止まる。
あぁ、やっぱりー。
私は今夜もひとりぼっちで夜を過ごすのか。
会ったばかりの頃は、リヴァイと一緒に過ごす時間が苦痛で仕方がなかったはずなのにー。
今は、私のことを好きになってほしいと思ってる。
愛してるという言葉に浮かれて、何も見えなくなってしまったくらいに、私は彼を愛してるからー。
この世界に残ることを許してもらえただけで、私は嬉しいのにー。
「付き合わせて悪かったな。」
リヴァイと繋がっていた手があっけなく離れていく。
気にしなくていいと、私は力なく首を振る。
ふわふわと浮かんでいるような、そんな感覚は消え去って、今は床にめり込んでしまいそうなくらいの重力を背中に乗せていた。
そんな私の頬に、リヴァイの手が触れた。
「それじゃ…、また明日な。」
リヴァイの手が、とても愛おしそうに私の頬を撫でた。
切れ長の瞳は、ひどく切な気に私を見つめている。
ゆっくりと、名残惜しそうにリヴァイの手が離れていく。
もしかしてー。
待ってー。
「待って…っ。」
勇気を出して、背を向けようとしたリヴァイの腕を掴んだ。
私の行動に驚いたのか、彼はビクリと肩を上下に動かした後に振り向いた。
「どうかしたか。」
リヴァイがあまりにも優しく訊ねるから、恥ずかしくなった。
呼び止めたくせに、私は逃げるように目を反らして、腕を掴んでしまった手を焦ったように放す。
「えっと…、お仕事が、忙しいのかなって思って…っ。」
「…まぁ、そうだな。出張先から持ち帰った仕事が溜まってはいるが。
明日には持ち越さねぇから、心配しなくていい。」
「…あっ、そうじゃなくて…っ。明日の心配をしてるんじゃなくてっ。」
「…なんだ。クソ我慢してるみてぇな顔して、どうした。」
「…リヴァイが1人で部屋に戻っちゃうのは、仕事が忙しいからだって、
思ってもいいのかな…?」
「…は?」
「だから…っ、私と一緒にいたくないわけじゃないって、思ってもいいのか…、
聞きたかったの…っ。」
言いながら、恥ずかしさに堪えられなくなる。
リヴァイの目を見れなくて、伏せた顔が熱い。
名残惜しそうにしていたリヴァイの瞳も、手も、本当は一緒にいたいと言ってくれている気がしたからー。
期待したくなったのだ。
私の望む答えを、リヴァイがくれる気がしてー。
でもー。
「…勘違いする。」
「え?」
リヴァイから返ってきた答えは、想像していたどれとも違っていた。
思わず伏せていた顔を上げて首を傾げれば、リヴァイがひどく困った顔をしていた。
そしてー。
「それじゃまるで、お前が俺と一緒にいてぇみたいに聞こえる。」
リヴァイは眉を顰めて、私を責めるように言う。
でもー。
「…間違えてないよ。勘違いじゃ、ないよ。」
「は?」
「リヴァイも同じ気持ちだと思ってたから…、この部屋に送られて寂しかったの。
…ごめん、私が調子に乗って期待してー。」
「待て。同じ気持ちってなんだ。」
言葉を遮ったリヴァイは、焦ったように私の腕を掴んだ。
見開いた目で、何かを射抜こうとしているみたいにまっすぐ私を見つめる。
力加減を忘れた手の力が痛い。
「…何でもない。いいの。変なこと言って、ごめん。」
「謝らなくていい。だが、そのまま流すのは、よくねぇ。
訊くが、お前…、俺に惚れてるのか。」
リヴァイの目が、私をまっすぐに見つめる。
何かを期待しているようなそれに、私はまた調子に乗ってしまいそうになる。
この部屋に連れて来られたときは、やっぱり、なまえじゃなければダメなのだと思い知ったのにー。
その方が勘違いだったんじゃないかって、期待しそうになるー。
「…リヴァイが、好きな方で受け取っていいよ。」
私のズルい答えに、リヴァイはひどく眉を顰めた。
それで納得してもらえるわけはないと分かっている。
でも、何度も何度もなまえのための愛や優しさだと知りながら、胸を高鳴らせては苦しんだ私は、これ以上、新しい傷は作りたくなかった。
掠り傷だって、もうー。
リヴァイに愛されているかもしれないと最高の幸せを感じたから余計に、傷つくのが怖くなっていた。
「俺に、帰るなと言われたから、断れねぇで、
仕方なくこの世界に残ると決めたんじゃないのか。」
「…リヴァイ、馬鹿なんだね。」
「あ゛?!」
思わず零れてしまった本音に、リヴァイがひどく恐い顔をした。
眉間を寄せて睨まれる。
でも、あまり怖くはなかった。
だって、本当に馬鹿だと思ってー。
「巨人がいるような恐ろしい世界なんて、土下座して頼まれたって残りたくなんかないよ。」
「だが、お前は残るんだろ。
…帰るのか?さっきは、帰らねぇって言ったじゃねぇか…!」
まるで、駄々をこねる子供みたいに、リヴァイは口を尖らせる。
私の腕を掴む手の力は強くなるばかりで、そろそろ骨が折れてしまいそうだ。
「帰らないよ。リヴァイが、この世界に残ってほしいって言ってくれるなら、
私はどこにも行かない。」
「…なぜだ。」
「…分からないの?それとも、分かりたくないの…?」
「…チッ。」
リヴァイはひどく不機嫌に舌打ちをすると、私の腕を掴んだまま、もう片方の手で部屋の扉を開いた。
ハンジとモブリットには、帰らないと決めたことは明日伝えることになった。
私はすぐにでも報告したかったのだけれど、リヴァイが頑なだった。
その理由は教えてはくれなかったけれど、これからもリヴァイのそばにいることを許されたのなら、どちらでもよかった。
「リヴァイ兵長!なまえさん!おかえりなさい!!」
兵門までやってくると、見張りの調査兵が声をかけて来た。
とても嬉しそうな彼に、戸惑いながら「ただいま。」と答える。
リヴァイも、訝し気にしつつも、見張りをしている調査兵達にねぎらいの言葉をかけていた。
それにとても感激した様子の若い調査兵達に見送られて、リヴァイと私は宿舎へと向かう。
このまま、私はリヴァイの部屋に行くのだと思っていた。
今夜は、一緒に過ごせると思っていたのだ。
でも、私の手を握って隣を歩く彼は、自分の部屋の扉の前を通り過ぎる。
向かっているのは、私が1人きりで過ごさなければならない部屋だというのが嫌でも分かる。
愛してるー、そう言ってくれたのにー。
あれはやっぱり、なまえを失いたくなかった彼の嘘だったのだろうか。
それとも、そもそもなまえに向けた愛の言葉だったのかもしれない。
だから、自分の部屋に偽物は連れて行きたくないー、そういうことなのだろうか。
部屋が近づくほどに足取りは重たくなって、隣にいたはずのリヴァイを、いつの間にか斜め後ろから見ていた。
長い廊下が短く感じるくらいにすぐに、1人きりの部屋に辿り着けば、迷うこともなくリヴァイの足が止まる。
あぁ、やっぱりー。
私は今夜もひとりぼっちで夜を過ごすのか。
会ったばかりの頃は、リヴァイと一緒に過ごす時間が苦痛で仕方がなかったはずなのにー。
今は、私のことを好きになってほしいと思ってる。
愛してるという言葉に浮かれて、何も見えなくなってしまったくらいに、私は彼を愛してるからー。
この世界に残ることを許してもらえただけで、私は嬉しいのにー。
「付き合わせて悪かったな。」
リヴァイと繋がっていた手があっけなく離れていく。
気にしなくていいと、私は力なく首を振る。
ふわふわと浮かんでいるような、そんな感覚は消え去って、今は床にめり込んでしまいそうなくらいの重力を背中に乗せていた。
そんな私の頬に、リヴァイの手が触れた。
「それじゃ…、また明日な。」
リヴァイの手が、とても愛おしそうに私の頬を撫でた。
切れ長の瞳は、ひどく切な気に私を見つめている。
ゆっくりと、名残惜しそうにリヴァイの手が離れていく。
もしかしてー。
待ってー。
「待って…っ。」
勇気を出して、背を向けようとしたリヴァイの腕を掴んだ。
私の行動に驚いたのか、彼はビクリと肩を上下に動かした後に振り向いた。
「どうかしたか。」
リヴァイがあまりにも優しく訊ねるから、恥ずかしくなった。
呼び止めたくせに、私は逃げるように目を反らして、腕を掴んでしまった手を焦ったように放す。
「えっと…、お仕事が、忙しいのかなって思って…っ。」
「…まぁ、そうだな。出張先から持ち帰った仕事が溜まってはいるが。
明日には持ち越さねぇから、心配しなくていい。」
「…あっ、そうじゃなくて…っ。明日の心配をしてるんじゃなくてっ。」
「…なんだ。クソ我慢してるみてぇな顔して、どうした。」
「…リヴァイが1人で部屋に戻っちゃうのは、仕事が忙しいからだって、
思ってもいいのかな…?」
「…は?」
「だから…っ、私と一緒にいたくないわけじゃないって、思ってもいいのか…、
聞きたかったの…っ。」
言いながら、恥ずかしさに堪えられなくなる。
リヴァイの目を見れなくて、伏せた顔が熱い。
名残惜しそうにしていたリヴァイの瞳も、手も、本当は一緒にいたいと言ってくれている気がしたからー。
期待したくなったのだ。
私の望む答えを、リヴァイがくれる気がしてー。
でもー。
「…勘違いする。」
「え?」
リヴァイから返ってきた答えは、想像していたどれとも違っていた。
思わず伏せていた顔を上げて首を傾げれば、リヴァイがひどく困った顔をしていた。
そしてー。
「それじゃまるで、お前が俺と一緒にいてぇみたいに聞こえる。」
リヴァイは眉を顰めて、私を責めるように言う。
でもー。
「…間違えてないよ。勘違いじゃ、ないよ。」
「は?」
「リヴァイも同じ気持ちだと思ってたから…、この部屋に送られて寂しかったの。
…ごめん、私が調子に乗って期待してー。」
「待て。同じ気持ちってなんだ。」
言葉を遮ったリヴァイは、焦ったように私の腕を掴んだ。
見開いた目で、何かを射抜こうとしているみたいにまっすぐ私を見つめる。
力加減を忘れた手の力が痛い。
「…何でもない。いいの。変なこと言って、ごめん。」
「謝らなくていい。だが、そのまま流すのは、よくねぇ。
訊くが、お前…、俺に惚れてるのか。」
リヴァイの目が、私をまっすぐに見つめる。
何かを期待しているようなそれに、私はまた調子に乗ってしまいそうになる。
この部屋に連れて来られたときは、やっぱり、なまえじゃなければダメなのだと思い知ったのにー。
その方が勘違いだったんじゃないかって、期待しそうになるー。
「…リヴァイが、好きな方で受け取っていいよ。」
私のズルい答えに、リヴァイはひどく眉を顰めた。
それで納得してもらえるわけはないと分かっている。
でも、何度も何度もなまえのための愛や優しさだと知りながら、胸を高鳴らせては苦しんだ私は、これ以上、新しい傷は作りたくなかった。
掠り傷だって、もうー。
リヴァイに愛されているかもしれないと最高の幸せを感じたから余計に、傷つくのが怖くなっていた。
「俺に、帰るなと言われたから、断れねぇで、
仕方なくこの世界に残ると決めたんじゃないのか。」
「…リヴァイ、馬鹿なんだね。」
「あ゛?!」
思わず零れてしまった本音に、リヴァイがひどく恐い顔をした。
眉間を寄せて睨まれる。
でも、あまり怖くはなかった。
だって、本当に馬鹿だと思ってー。
「巨人がいるような恐ろしい世界なんて、土下座して頼まれたって残りたくなんかないよ。」
「だが、お前は残るんだろ。
…帰るのか?さっきは、帰らねぇって言ったじゃねぇか…!」
まるで、駄々をこねる子供みたいに、リヴァイは口を尖らせる。
私の腕を掴む手の力は強くなるばかりで、そろそろ骨が折れてしまいそうだ。
「帰らないよ。リヴァイが、この世界に残ってほしいって言ってくれるなら、
私はどこにも行かない。」
「…なぜだ。」
「…分からないの?それとも、分かりたくないの…?」
「…チッ。」
リヴァイはひどく不機嫌に舌打ちをすると、私の腕を掴んだまま、もう片方の手で部屋の扉を開いた。