◇65話◇我儘に愛せたなら
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兵舎内の調査兵達になまえの行方を聞いてみたモブリットだが、少し前に宿舎の中で姿を見たという話があったきり、有力な情報は得られずにいた。
やっぱり、兵舎の外へ出てしまったのかー。
それが確実になったら、調査兵達を集めて彼女を捜索させよう。
そう決めて、モブリットは兵門で見張りをしている調査兵達の元へ向かった。
「なまえを見てないか?」
「なまえさんですか?少し前にリヴァイ兵長と出て行かれましたよ。」
「リヴァイ兵長と?」
訝し気に彼の名前を零したモブリットに、見張りの調査兵は、少し様子がおかしかったと教えてくれた。
リヴァイは怖い顔をしていて、なまえの腕を無理やり引っ張っている様子だったそうだ。
「そうか。分かった。」
「…あの、何かあったんですか?」
見張りの調査兵は心配そうに訊ねる。
なまえがリヴァイの部屋を出たことは、他の調査兵達もすぐに気づいていた。
最近、彼らがうまくいっていないだとか、別れたというような噂も出ているようだった。
そもそも、本当の恋人同士ではないのだけれどー。
「大丈夫だよ。最近、リヴァイ兵長は忙しかったから2人で出かけただけじゃないかな。
まぁ、一応、俺も様子を見てくるよ。」
「そうですか。それなら、よかったです。
せっかく、奇跡が起きてなまえさんが戻って来たんですから
2人には幸せになってほしいので。」
ホッと息を吐いた調査兵は、照れ臭そうに髪を掻いた。
ズキリと胸が痛む音が聞こえそうな気がして、モブリットは曖昧に返事をして兵門を出た。
忙しなく瞳を動かして、リヴァイと彼女の姿を探す。
リヴァイは何を思って彼女を兵舎から連れ出したのだろうか。
彼女がなまえではないと気づいていながら、騙されているフリをしていたと知ったとき、とても驚いたけれど、気持ちは分からなくもないと思ったのだ。
だって、騙されている間は、彼女を独り占めできる。恋人でいられるー。
きっと、リヴァイはそう思ったのだろう。
でも、彼女の正体を知ってしまった今、きっと彼だって彼女に『そばにいろ。』なんて勝手なことは言えないはずだ。
さっきの調査兵の言葉が、頭を過る。
あぁ、本当に、彼女がなまえだったのなら、自分だってそう願うことが出来た。
でも、彼女はなまえではないのだ。
だから、いくら2人が、本当は想い合っていたのだとしても、結ばれてはいけない。
それは彼女のためにはならない。
それなのにー。
「リヴァイ兵長なら、そこの花屋で花束を買ってたよ。
恋人へのプレゼントだったんだろうな。久しぶりに恋人と歩いてるのを見たよ。」
トロスト区の住人からの目撃情報を元に、モブリットは大岩のある外門へ向かった。
もしかしてー。
そう思ったのは確かだが、まさか本当にそこにいるとは思えなかった。
だって、そこは、なまえが命を落とした場所だ。
手向けの花を持って行こう、会いに行ってやろうと何度、ハンジとリコが誘っても頑なに首を縦に振らなかったのだ。
そんなところに、花を持ってリヴァイが行くなんて考えられなくてー。
(…!!)
モブリットが見たのは、大岩のそばで彼女を抱きしめるリヴァイだった。
帰ってしまう前の最後の抱擁なら、許すことが出来た。
でもー。
「愛してる…!
お前を苦しめると分かってても、離してやれねぇくらい、愛してるんだ…!
俺から離れるな…!」
リヴァイが我儘な愛を叫ぶ。
それに応えるように、彼女は彼の名前を切羽詰まったような声で零して、背中に縋るように抱きしめ返した。
(どうして…。)
モブリットには、信じられなかった。
どうして、そんな我儘なことを言ってしまうのか。
この世界はクソだと、リヴァイがいつも言っているのだ。
彼女は、もっと平和な世界で幸せになれると分かっていながら、どうしてそんなクソみたいな世界に閉じ込めることが出来てしまうのか。理解が出来ない。
リヴァイは、最低だー。
彼女のことを、ちっとも考えていないー。
そう思っているのに、モブリットは彼らを引き剥がすことが出来なかった。
ただ無言で、気づかれないように音を立てずに踵を返し、抱き合う彼らに背中を向ける。
どうしてー。
彼女を愛しているのなら、身を引くべきではないのか。
リヴァイの行動が理解出来ず、モブリットは拳を握る。
想いのままに彼女を抱きしめたリヴァイの姿が、脳裏に浮かんで消えてくれない。
もし、自分が人類最強の兵士だったのなら、彼女を抱きしめて『そばにいてくれ。』と彼のように言えたのだろうか。
彼女を守る自信が、彼のようにあったのならー。
(ダメだ。それは出来ない。どっちにしろ、彼女の住む世界はここじゃない。)
真っ暗な通りを歩きながら、モブリットは小さく首を横に振る。
彼女の幸せを想うのなら、身を引くべきなのだ。
愛しているのなら、気持ちを閉じ込めるべきでー。
(あぁ…そうか…。)
漸く、モブリットは気が付く。
本当は、リヴァイが羨ましいのだ。
我儘になってしまうほど、理性を越えるほどに、彼女のことを愛せた彼が羨ましいのだ。
自分もそんな風に彼女を愛せていたのなら、リヴァイから彼女を奪うチャンスなんて幾らでもあったのにー。
それが出来なかったのは、彼女の幸せにはならないと理性の言いなりになって言い訳ばかりを繰り返した自分のせいなのだ。
結局は、リヴァイほどは彼女を愛せていなかったということー。
あぁ、もしもー。
我儘に彼女を愛せていたのならー。
隣に彼女がいる未来があったかもしれないのだろうかー。
キスをした後、頬を染めて自分を見上げた彼女の姿が脳裏に蘇った。
自分のすることすべてに反応してくれる彼女を、もっと見たかった。
そうやって、からかって意地悪をして、優しく抱きしめて、彼女の願う幸せを壊しても、本当はそばにいたかった。
そうして、自分の手で彼女を幸せにしたかったー。
幾千の星の下で、抱き合う2人はとてもお似合いだった。
そう、認めるしか出来ない自分を、今はまだ好きになれそうにない。
やっぱり、兵舎の外へ出てしまったのかー。
それが確実になったら、調査兵達を集めて彼女を捜索させよう。
そう決めて、モブリットは兵門で見張りをしている調査兵達の元へ向かった。
「なまえを見てないか?」
「なまえさんですか?少し前にリヴァイ兵長と出て行かれましたよ。」
「リヴァイ兵長と?」
訝し気に彼の名前を零したモブリットに、見張りの調査兵は、少し様子がおかしかったと教えてくれた。
リヴァイは怖い顔をしていて、なまえの腕を無理やり引っ張っている様子だったそうだ。
「そうか。分かった。」
「…あの、何かあったんですか?」
見張りの調査兵は心配そうに訊ねる。
なまえがリヴァイの部屋を出たことは、他の調査兵達もすぐに気づいていた。
最近、彼らがうまくいっていないだとか、別れたというような噂も出ているようだった。
そもそも、本当の恋人同士ではないのだけれどー。
「大丈夫だよ。最近、リヴァイ兵長は忙しかったから2人で出かけただけじゃないかな。
まぁ、一応、俺も様子を見てくるよ。」
「そうですか。それなら、よかったです。
せっかく、奇跡が起きてなまえさんが戻って来たんですから
2人には幸せになってほしいので。」
ホッと息を吐いた調査兵は、照れ臭そうに髪を掻いた。
ズキリと胸が痛む音が聞こえそうな気がして、モブリットは曖昧に返事をして兵門を出た。
忙しなく瞳を動かして、リヴァイと彼女の姿を探す。
リヴァイは何を思って彼女を兵舎から連れ出したのだろうか。
彼女がなまえではないと気づいていながら、騙されているフリをしていたと知ったとき、とても驚いたけれど、気持ちは分からなくもないと思ったのだ。
だって、騙されている間は、彼女を独り占めできる。恋人でいられるー。
きっと、リヴァイはそう思ったのだろう。
でも、彼女の正体を知ってしまった今、きっと彼だって彼女に『そばにいろ。』なんて勝手なことは言えないはずだ。
さっきの調査兵の言葉が、頭を過る。
あぁ、本当に、彼女がなまえだったのなら、自分だってそう願うことが出来た。
でも、彼女はなまえではないのだ。
だから、いくら2人が、本当は想い合っていたのだとしても、結ばれてはいけない。
それは彼女のためにはならない。
それなのにー。
「リヴァイ兵長なら、そこの花屋で花束を買ってたよ。
恋人へのプレゼントだったんだろうな。久しぶりに恋人と歩いてるのを見たよ。」
トロスト区の住人からの目撃情報を元に、モブリットは大岩のある外門へ向かった。
もしかしてー。
そう思ったのは確かだが、まさか本当にそこにいるとは思えなかった。
だって、そこは、なまえが命を落とした場所だ。
手向けの花を持って行こう、会いに行ってやろうと何度、ハンジとリコが誘っても頑なに首を縦に振らなかったのだ。
そんなところに、花を持ってリヴァイが行くなんて考えられなくてー。
(…!!)
モブリットが見たのは、大岩のそばで彼女を抱きしめるリヴァイだった。
帰ってしまう前の最後の抱擁なら、許すことが出来た。
でもー。
「愛してる…!
お前を苦しめると分かってても、離してやれねぇくらい、愛してるんだ…!
俺から離れるな…!」
リヴァイが我儘な愛を叫ぶ。
それに応えるように、彼女は彼の名前を切羽詰まったような声で零して、背中に縋るように抱きしめ返した。
(どうして…。)
モブリットには、信じられなかった。
どうして、そんな我儘なことを言ってしまうのか。
この世界はクソだと、リヴァイがいつも言っているのだ。
彼女は、もっと平和な世界で幸せになれると分かっていながら、どうしてそんなクソみたいな世界に閉じ込めることが出来てしまうのか。理解が出来ない。
リヴァイは、最低だー。
彼女のことを、ちっとも考えていないー。
そう思っているのに、モブリットは彼らを引き剥がすことが出来なかった。
ただ無言で、気づかれないように音を立てずに踵を返し、抱き合う彼らに背中を向ける。
どうしてー。
彼女を愛しているのなら、身を引くべきではないのか。
リヴァイの行動が理解出来ず、モブリットは拳を握る。
想いのままに彼女を抱きしめたリヴァイの姿が、脳裏に浮かんで消えてくれない。
もし、自分が人類最強の兵士だったのなら、彼女を抱きしめて『そばにいてくれ。』と彼のように言えたのだろうか。
彼女を守る自信が、彼のようにあったのならー。
(ダメだ。それは出来ない。どっちにしろ、彼女の住む世界はここじゃない。)
真っ暗な通りを歩きながら、モブリットは小さく首を横に振る。
彼女の幸せを想うのなら、身を引くべきなのだ。
愛しているのなら、気持ちを閉じ込めるべきでー。
(あぁ…そうか…。)
漸く、モブリットは気が付く。
本当は、リヴァイが羨ましいのだ。
我儘になってしまうほど、理性を越えるほどに、彼女のことを愛せた彼が羨ましいのだ。
自分もそんな風に彼女を愛せていたのなら、リヴァイから彼女を奪うチャンスなんて幾らでもあったのにー。
それが出来なかったのは、彼女の幸せにはならないと理性の言いなりになって言い訳ばかりを繰り返した自分のせいなのだ。
結局は、リヴァイほどは彼女を愛せていなかったということー。
あぁ、もしもー。
我儘に彼女を愛せていたのならー。
隣に彼女がいる未来があったかもしれないのだろうかー。
キスをした後、頬を染めて自分を見上げた彼女の姿が脳裏に蘇った。
自分のすることすべてに反応してくれる彼女を、もっと見たかった。
そうやって、からかって意地悪をして、優しく抱きしめて、彼女の願う幸せを壊しても、本当はそばにいたかった。
そうして、自分の手で彼女を幸せにしたかったー。
幾千の星の下で、抱き合う2人はとてもお似合いだった。
そう、認めるしか出来ない自分を、今はまだ好きになれそうにない。