◇65話◇我儘に愛せたなら
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自分の執務室で書類仕事をしていたモブリットは、手元が暗くなってきたことに気づいて、顔を上げた。
時計を見れば、調査兵達が訓練を終える時間はすっかり過ぎていた。
ランプの明かりをつけながら、彼女のことを考える。
いや、正しくは、漸く自分に彼女のことを考えることを許してやった。
この夜が過ぎて明日になれば、もしかしたら彼女とはもう二度と会えなくなるのかもしれない。
そう思うと訓練に身が入らなくて、書類仕事で気を紛らわそうとしていた。
リヴァイのそばにいるために、恐ろしい巨人に慣れようとしていた健気な彼女。
頑なに巨人から離れようとしない彼女を無理やり抱きかかえれば、強張らせた身体を震わせていた。
本当は、隣に座るどころか、その目に映すことすらツラいくせにー。
明日、扉を開くことが出来たのなら、彼女はもうそんな無謀なことをしなくて良くなる。
それがいい。
それが、いいー。
(今頃、何をしてるのかな。)
明日、元の世界に帰れるか試そうと提案したのがリヴァイだと聞いた彼女は、とうとう諦めたようだとハンジが言っていた。
ハンジもモブリットも、なぜリヴァイが彼女を突き放したのかを教えていない。
教えるつもりもない。
知ってしまったら彼女は、この世界に残ると決断してしまうに違いない。
それはあってはいけない。
彼女が平和な世界で生きていけるように、正しい選択をさせなければー。
モブリットは広げていた書類を片付けてから、執務室を出た。
人もまばらな廊下を歩いて彼女の部屋に向かう。
我儘に『そばにいてほしい。』とは言えない。
彼女のためを思うなら、身を引くべきだ。
でも、今、そばにいられる時間が限られているのなら、今だけでもー。
彼女の部屋の前まで来て、扉を叩く。
返事を待ってみたけれど、物音すら聞こえない。
(まさか…。)
過去に何度も彼女が逃亡したのを思い出す。
寝ているかとも思ったけれど、まさかー。
元の世界に帰りたくなくて、逃げてしまったのだとしたらー。
「開けるよ。」
一応、声をかけてから、モブリットは扉を開いた。
灯りのついていない薄暗い部屋は、シンと静まり返っていて人の気配はない。
「なまえ…!!」
モブリットは部屋を飛び出した。
この世界はいつ巨人の脅威に晒されるか分からないのだ。
彼女が1人でいるときに、巨人が来てしまったらー。
死なせなくない。
傷ひとつだってつけたくないのだ。
たとえ、この手で守ることが出来なくても、触れることすら許されない世界に引き裂かれてしまってもー。
彼女には幸せでいて欲しいのだー。
時計を見れば、調査兵達が訓練を終える時間はすっかり過ぎていた。
ランプの明かりをつけながら、彼女のことを考える。
いや、正しくは、漸く自分に彼女のことを考えることを許してやった。
この夜が過ぎて明日になれば、もしかしたら彼女とはもう二度と会えなくなるのかもしれない。
そう思うと訓練に身が入らなくて、書類仕事で気を紛らわそうとしていた。
リヴァイのそばにいるために、恐ろしい巨人に慣れようとしていた健気な彼女。
頑なに巨人から離れようとしない彼女を無理やり抱きかかえれば、強張らせた身体を震わせていた。
本当は、隣に座るどころか、その目に映すことすらツラいくせにー。
明日、扉を開くことが出来たのなら、彼女はもうそんな無謀なことをしなくて良くなる。
それがいい。
それが、いいー。
(今頃、何をしてるのかな。)
明日、元の世界に帰れるか試そうと提案したのがリヴァイだと聞いた彼女は、とうとう諦めたようだとハンジが言っていた。
ハンジもモブリットも、なぜリヴァイが彼女を突き放したのかを教えていない。
教えるつもりもない。
知ってしまったら彼女は、この世界に残ると決断してしまうに違いない。
それはあってはいけない。
彼女が平和な世界で生きていけるように、正しい選択をさせなければー。
モブリットは広げていた書類を片付けてから、執務室を出た。
人もまばらな廊下を歩いて彼女の部屋に向かう。
我儘に『そばにいてほしい。』とは言えない。
彼女のためを思うなら、身を引くべきだ。
でも、今、そばにいられる時間が限られているのなら、今だけでもー。
彼女の部屋の前まで来て、扉を叩く。
返事を待ってみたけれど、物音すら聞こえない。
(まさか…。)
過去に何度も彼女が逃亡したのを思い出す。
寝ているかとも思ったけれど、まさかー。
元の世界に帰りたくなくて、逃げてしまったのだとしたらー。
「開けるよ。」
一応、声をかけてから、モブリットは扉を開いた。
灯りのついていない薄暗い部屋は、シンと静まり返っていて人の気配はない。
「なまえ…!!」
モブリットは部屋を飛び出した。
この世界はいつ巨人の脅威に晒されるか分からないのだ。
彼女が1人でいるときに、巨人が来てしまったらー。
死なせなくない。
傷ひとつだってつけたくないのだ。
たとえ、この手で守ることが出来なくても、触れることすら許されない世界に引き裂かれてしまってもー。
彼女には幸せでいて欲しいのだー。