◇58話◇無駄に甘くない苦い紅茶
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駐屯兵団施設のリコの部屋で夕食を済ませて帰ってくると、リヴァイはまだ執務室で書き仕事をしていた。
出張後の報告や会議で書類仕事が増えたのだそうだ。
遅くなりそうだから先に寝室で休んでいて構わないと言われて、一日中、リコの部屋でお喋りをして過ごした私は、心苦しい気持ちになる。
そもそも、この世界で私は職がない。
リヴァイや調査兵達にお願いして簡単な雑用を手伝わせてもらうことはあるけれど、結局、力のない私は彼らに助けられてばかりで役に立っているとも思えなかった。
だからというわけだけでもないけれど、私は湯沸室へ入ると、リヴァイが好んで飲んでいる紅茶を淹れた。
淹れたばかりの紅茶をトレイに乗せて執務室に戻ると、リヴァイが真剣に書類にペンを走らせていた。
時々、訓練をしている姿なら見ていたけれど、あまり書類仕事をすることはなかったからとても新鮮な感じがする。
邪魔をしないようにー。
そう思って、デスクの邪魔にならなそうなところにそっと紅茶のカップを置いたつもりだったのだけれど、あまり意味はなかったようだ。
リヴァイがすぐに気がついて顔を上げた。
「寝室に行ったんじゃなかったのか?
…紅茶か?」
「うん、休憩中にでも飲んでもらおうと思って持ってきたんだけど…。
ごめんね、邪魔しちゃったね。」
「いや、構わねぇ。
ちょうど休もうと思ってたところだ、助かる。」
リヴァイは疲れた様子で息を吐くように言うと、紅茶に手を伸ばした。
午後からは会議詰めだったらしいし、デスクの上にはいくつもの書類が重なっている。
本当に大変なようだ。
少しでも休んでもらえるのならよかったー。
そんなことを思いながら、ティーカップを口に運ぶ様子を見ていたら、紅茶を口にした途端にリヴァイが何かに気づいたような様子で眉間に僅かに皴を寄せた。
それはほんの一瞬だったけれど、ティーカップを口から離したリヴァイは、紅茶を見下ろして黙り込んでしまった。
「ごめん、美味しくなかったかな?」
「…いや、なんでもねぇ。
なまえが紅茶を淹れるなんて珍しいことするから驚いただけだ。
いつも2人でいるときは、紅茶を淹れるのは俺の方だっただろう?」
「そうだけど。たまには、私だって紅茶を淹れることくらいあるの。」
そういえば、私がこの世界に来てからも、いつも紅茶を作ってくれるのはリヴァイだった。
だから、わざと頬を膨らませれば、彼は僅かに眉尻を下げて苦笑を漏らした。
「たまには、な。」
「うるさいな。」
「たまにの割には紅茶は美味ぇ。無駄に甘くもねぇしな。」
「私の紅茶は無駄に甘いと思ってたの?
甘いものが好きでも、紅茶まで無駄に甘くはしないよ。失礼だな。」
「あぁ、確かにそうだな。
とにかく、紅茶は助かった。疲れも取れそうだ、ありがとな。」
「どういたしまして。」
もう一度、紅茶を口に運ぶリヴァイに微笑む。
美味いー、小さく呟く彼にホッとしつつ、仕事の邪魔をするわけにはいかないので、先に寝室へ戻ることを伝えて背を向けた。
出張後の報告や会議で書類仕事が増えたのだそうだ。
遅くなりそうだから先に寝室で休んでいて構わないと言われて、一日中、リコの部屋でお喋りをして過ごした私は、心苦しい気持ちになる。
そもそも、この世界で私は職がない。
リヴァイや調査兵達にお願いして簡単な雑用を手伝わせてもらうことはあるけれど、結局、力のない私は彼らに助けられてばかりで役に立っているとも思えなかった。
だからというわけだけでもないけれど、私は湯沸室へ入ると、リヴァイが好んで飲んでいる紅茶を淹れた。
淹れたばかりの紅茶をトレイに乗せて執務室に戻ると、リヴァイが真剣に書類にペンを走らせていた。
時々、訓練をしている姿なら見ていたけれど、あまり書類仕事をすることはなかったからとても新鮮な感じがする。
邪魔をしないようにー。
そう思って、デスクの邪魔にならなそうなところにそっと紅茶のカップを置いたつもりだったのだけれど、あまり意味はなかったようだ。
リヴァイがすぐに気がついて顔を上げた。
「寝室に行ったんじゃなかったのか?
…紅茶か?」
「うん、休憩中にでも飲んでもらおうと思って持ってきたんだけど…。
ごめんね、邪魔しちゃったね。」
「いや、構わねぇ。
ちょうど休もうと思ってたところだ、助かる。」
リヴァイは疲れた様子で息を吐くように言うと、紅茶に手を伸ばした。
午後からは会議詰めだったらしいし、デスクの上にはいくつもの書類が重なっている。
本当に大変なようだ。
少しでも休んでもらえるのならよかったー。
そんなことを思いながら、ティーカップを口に運ぶ様子を見ていたら、紅茶を口にした途端にリヴァイが何かに気づいたような様子で眉間に僅かに皴を寄せた。
それはほんの一瞬だったけれど、ティーカップを口から離したリヴァイは、紅茶を見下ろして黙り込んでしまった。
「ごめん、美味しくなかったかな?」
「…いや、なんでもねぇ。
なまえが紅茶を淹れるなんて珍しいことするから驚いただけだ。
いつも2人でいるときは、紅茶を淹れるのは俺の方だっただろう?」
「そうだけど。たまには、私だって紅茶を淹れることくらいあるの。」
そういえば、私がこの世界に来てからも、いつも紅茶を作ってくれるのはリヴァイだった。
だから、わざと頬を膨らませれば、彼は僅かに眉尻を下げて苦笑を漏らした。
「たまには、な。」
「うるさいな。」
「たまにの割には紅茶は美味ぇ。無駄に甘くもねぇしな。」
「私の紅茶は無駄に甘いと思ってたの?
甘いものが好きでも、紅茶まで無駄に甘くはしないよ。失礼だな。」
「あぁ、確かにそうだな。
とにかく、紅茶は助かった。疲れも取れそうだ、ありがとな。」
「どういたしまして。」
もう一度、紅茶を口に運ぶリヴァイに微笑む。
美味いー、小さく呟く彼にホッとしつつ、仕事の邪魔をするわけにはいかないので、先に寝室へ戻ることを伝えて背を向けた。