◇57話◇謝るくらいなら、どこにも行かないで
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翌日、いつの間にか眠っていた私は、頬を撫でられている感触で目を覚ました。
ほんの一瞬だけ、寝ぼけまなこの向こうのリヴァイが泣きそうな顔をしているように見えた。
でも、おはようという声はいつもと変わらなかった。
「おはよぅ…。」
目をこすりながら、ゆっくりと身体を起こした。
今が何時かは分からないけれど、窓に差す太陽の光は痛いくらいに熱い。
寝過ぎてしまったらしい。
頭が痛い。
リヴァイは既に兵団服に着替えを済ませていて、出かける前のようだった。
「今から任務?」
「エルヴィンとハンジが戻った。
もうそろそろ会議が始まる。」
「そっか。」
寝室の時計に目をやれば、さすがにまだ昼にはなっていないが、短い針はそれなりに遅い時間を指していた。
ベッドから降りようとする私を、まるで捕まえるみたいにリヴァイが横から抱きしめる。
そのまますぐに唇を重ねられて驚いたけれど、包み込む紅茶と石鹸の香りが心地よくて、私は瞳を閉じて受け入れる。
でも、愛してると訴えるようなキスが、私に失恋を思い知らせようとしているみたいで、胸が痛くて、縋るようにリヴァイの腕を握りしめた。
深く重なるキスで私の頭と心が溶けそうな頃、漸く唇が離れる。
「さっき、リコが来た。」
ついさっきまで熱いキスを交わしていた唇が最初に伝えた言葉が、さっきの温度とは全く違っていて、意外を通り越して気が抜けてしまった。
「リコ?この部屋に来たの?」
「まだ寝てると伝えたら、叩き起こせと言われた。」
「リコらしい。」
困ったように眉尻を下げて、苦笑する。
その乱暴な申し出をリヴァイは断ってくれたらしく、起き次第で構わないので駐屯兵団施設のリコの部屋に来るように伝言を頼まれたということだった。
今日は非番のリコはずっと部屋にいる予定なのだそうだ。
「大切な話があると言ってたが、心当たりはあるのか。」
「んー…?なんだろう。全然、分かんない。」
私は困ったように首をすくめて、嘘を吐いた。
この世界のリコが私に用があるのなら、きっとパラレルワールドのことだろう。
もう元の世界へ戻るつもりはないと言うことは、リコにも直接伝えてある。
ハンジやモブリットと同じように、彼女も賛成はしてくれなかったけれど、明確に否定はされなかった。
私が帰る意思はないことを知っているはずなのに、今になってどんな大切な話なのだろう。
まさか、また鏡が繋がったとかー。
「何考えてる。」
「…!何の話なのかなぁ~って。」
無意識に難しい顔をしていたことに気が付いて、慌てて誤魔化すような笑みを見せる。
下手くそなそれをリヴァイは信じなかったはずだ。
でも、問い詰める代わりに、彼は私を抱きしめた。
「もう、どこにも行かないだろう?」
「え?」
掠れ声が、私の耳元で小さく漏れる。
確かめるというより、懇願するようなそれは不安に押し潰されそうになっているようだった。
「友人に会いに行くのを止めはしねぇ。自由にすればいい。
でも、お前の帰る場所は、俺だろう?」
「そうだよ。私の帰る場所は、リヴァイしかないよ。」
「もう、どこにも行くな。」
「…行かないよ。どこにも行かない。」
背中に手をまわして、抱きしめ返した。
決して大きくはないリヴァイが、無性に愛おしかった。
私を求めてくれているー、そう思えたからかもしれない。
この世で私だけが、リヴァイを安心させてあげられる存在のはずだからー。
「何度でも言う。
俺は、お前を苦しめてもそばにいてほしい。どこにもやる気はねぇ…!」
私を抱きしめるリヴァイの腕の力が強くなる。
だから私も抱きしめ返して、どこにも行かないと伝える。
それでも、リヴァイの腕はなかなか離れなかった。
不安が消えないみたいに、強く強く抱きしめられた。
ほんの一瞬だけ、寝ぼけまなこの向こうのリヴァイが泣きそうな顔をしているように見えた。
でも、おはようという声はいつもと変わらなかった。
「おはよぅ…。」
目をこすりながら、ゆっくりと身体を起こした。
今が何時かは分からないけれど、窓に差す太陽の光は痛いくらいに熱い。
寝過ぎてしまったらしい。
頭が痛い。
リヴァイは既に兵団服に着替えを済ませていて、出かける前のようだった。
「今から任務?」
「エルヴィンとハンジが戻った。
もうそろそろ会議が始まる。」
「そっか。」
寝室の時計に目をやれば、さすがにまだ昼にはなっていないが、短い針はそれなりに遅い時間を指していた。
ベッドから降りようとする私を、まるで捕まえるみたいにリヴァイが横から抱きしめる。
そのまますぐに唇を重ねられて驚いたけれど、包み込む紅茶と石鹸の香りが心地よくて、私は瞳を閉じて受け入れる。
でも、愛してると訴えるようなキスが、私に失恋を思い知らせようとしているみたいで、胸が痛くて、縋るようにリヴァイの腕を握りしめた。
深く重なるキスで私の頭と心が溶けそうな頃、漸く唇が離れる。
「さっき、リコが来た。」
ついさっきまで熱いキスを交わしていた唇が最初に伝えた言葉が、さっきの温度とは全く違っていて、意外を通り越して気が抜けてしまった。
「リコ?この部屋に来たの?」
「まだ寝てると伝えたら、叩き起こせと言われた。」
「リコらしい。」
困ったように眉尻を下げて、苦笑する。
その乱暴な申し出をリヴァイは断ってくれたらしく、起き次第で構わないので駐屯兵団施設のリコの部屋に来るように伝言を頼まれたということだった。
今日は非番のリコはずっと部屋にいる予定なのだそうだ。
「大切な話があると言ってたが、心当たりはあるのか。」
「んー…?なんだろう。全然、分かんない。」
私は困ったように首をすくめて、嘘を吐いた。
この世界のリコが私に用があるのなら、きっとパラレルワールドのことだろう。
もう元の世界へ戻るつもりはないと言うことは、リコにも直接伝えてある。
ハンジやモブリットと同じように、彼女も賛成はしてくれなかったけれど、明確に否定はされなかった。
私が帰る意思はないことを知っているはずなのに、今になってどんな大切な話なのだろう。
まさか、また鏡が繋がったとかー。
「何考えてる。」
「…!何の話なのかなぁ~って。」
無意識に難しい顔をしていたことに気が付いて、慌てて誤魔化すような笑みを見せる。
下手くそなそれをリヴァイは信じなかったはずだ。
でも、問い詰める代わりに、彼は私を抱きしめた。
「もう、どこにも行かないだろう?」
「え?」
掠れ声が、私の耳元で小さく漏れる。
確かめるというより、懇願するようなそれは不安に押し潰されそうになっているようだった。
「友人に会いに行くのを止めはしねぇ。自由にすればいい。
でも、お前の帰る場所は、俺だろう?」
「そうだよ。私の帰る場所は、リヴァイしかないよ。」
「もう、どこにも行くな。」
「…行かないよ。どこにも行かない。」
背中に手をまわして、抱きしめ返した。
決して大きくはないリヴァイが、無性に愛おしかった。
私を求めてくれているー、そう思えたからかもしれない。
この世で私だけが、リヴァイを安心させてあげられる存在のはずだからー。
「何度でも言う。
俺は、お前を苦しめてもそばにいてほしい。どこにもやる気はねぇ…!」
私を抱きしめるリヴァイの腕の力が強くなる。
だから私も抱きしめ返して、どこにも行かないと伝える。
それでも、リヴァイの腕はなかなか離れなかった。
不安が消えないみたいに、強く強く抱きしめられた。