朝早く、目が覚めた。
綺麗な寝顔のリヴァイは、今日も私の身体を両腕で雁字搦めに抱きしめて眠っている。
きっと、私の心ももう、彼のものー。
だから、逃げたくなってしまった。
モブリットの優しさに甘えてしまいたくなった。
違う誰かの代わりに愛されるというのは、私が思っていたよりもツラくて、苦しくて。
リヴァイを想う気持ちは、私が知っていた恋よりもずっとずっと深くて、苦しくて。

「ごめんね…。」

呟くように言って、リヴァイの顔にかかっていた前髪をそっと上げてやる。
そうすると僅かに眉を顰めた。

「ん…。」

小さく唸るような声の後、リヴァイがさらにキツく私を抱き寄せる。
熱いくらいの体温に包まれて、私は泣きそうになる。
だって、きっと、私がなまえではないと彼が知れば、抱きしめてくれたその腕で、突き放されてしまうのだろうと分かっているからー。
あぁ、だからきっと私は、そうなってしまう前に、彼から逃げたかったのだ。
これ以上、彼から傷つけられる前に、私を守ってくれる誰かの腕の中に入り込んでしまいたかった。
だって、リヴァイを愛することがこんなに苦しいことだなんて知らなくてー。

(最初から、ハンジもモブリットも忠告してたのにな…。)

無視をした私が悪い。
それにやっぱりどうしたって、リヴァイが好きだ。
逃げたくなるくらい、愛してる。
規則正しい寝息と心臓の音をもっと聞きたくて、胸元にすり寄る。
そうすれば、リヴァイは応えるように私の背中を抱き直す。
他の誰かと勘違いしてするそれが、私を死ぬほど苦しめる。嫉妬でおかしくさせようとする。
それなのに、私は痛いくらいのこの腕の中を手放せないー。
今日、ちゃんと言おう。モブリットに、私の気持ちをちゃんとー。
目を閉じれば、モブリットの優しい声と腕の温もりを思い出してしまってー。
私はもう一度、誰にかも分からないままで「ごめんなさい。」と呟いていた。