◇55話◇3つの想いがすれ違う夜
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地に足がついていないようなそんな感じだ。
何かしていないとソワソワしてしまいそうだったから、モブリットはデスクで書き仕事をしていた。
明日の昼頃には、出張先からハンジが帰ってくる予定だ。
いつも通り、会議の結果をまとめさせられるのは分かっている。
先に想定できる範囲で書類の準備をしておけば、後から楽だー。
そう思っているはずなのだけれど、全く手がつかない。
自分が彼女にしたことが、本当にあったことか今でも信じられない。
まさか、自分があんなことをしてしまうなんてー。
これが本当の自分だなんて彼女には言ったけれど、まさか自分にそんな一面があったなんて、自分だって知らなくてー。
(会いたいな。)
少し前まで一緒にいたのに、もう会いたい。
自分の言葉ひとつひとつに素直に反応してくれた彼女がとても愛おしかった。
困ったような顔も、恥ずかしそうに染める頬も、少なくとも、あのとき、あの瞬間だけは、自分だけのものだったからー。
そんなことを考えていると、部屋の主の了承もとらずに扉が勝手に開いた。
乱暴に扉を開けて、最初から戦闘態勢で部屋に入ってきたのはリヴァイだった。
「遅かったですね。もう少し早く来るかと思ってました。
もしかして、彼女が自分から部屋に来てくれるのを待ってたんですか。」
ペンをデスクに置いて、リヴァイに声をかける。
リヴァイはチラリとモブリットの方を見たけれど、話す気はないとばかりに口を閉じたまま、まっすぐに寝室の扉へ向かう。
「他の男に抱かれた後の彼女を見たいなんて、悪趣味ですね。」
挑発的な台詞に、リヴァイはとても素直に反応してくれた。
扉に手をかける直前で動きを止め、振り返る。
そして、怖ろしいほどの形相で、モブリットを睨み返した。
「てめぇ、何のつもりだ。」
地を這うような低い声は、それだけで人を殺せそうな殺気を孕んでいた。
でも、今回に限っては、絶対に負けられなかった。
リヴァイが、壊れてしまうほどになまえを愛したように、モブリットも壊れてもいいと思えるほどに彼女を想っている。
彼女を傷つけるのが誰でも、何をしてでも、守り抜くー。
そう決めたのだ。
「あなたから彼女を攫ってしまうつもりです。」
モブリットは言いながら、ゆっくりと立ち上がる。
リヴァイが片眉をピクリと上げた。
「もうあなたには任せてはいられない。
さっき、私を拒まない彼女を、あなたにも見せてあげたはずですよ。」
「あぁ、最低に悪趣味なもんを見せられたな。
で、アイツをどこに隠した。ここにはいねぇんだろ。」
リヴァイは寝室の扉に気だるげに寄り掛かると、親指で後ろの扉を指した。
気づいていたらしい。
いや、それともー。
「なまえのことを信じてるんですね。それとも、信じたいんですか。」
「アイツは、くだらねぇ真似をする女じゃねぇ。」
「そうですね。リヴァイ兵長の知ってるなまえならそうだと思います。
なまえの名誉のために言っておきますけど、私となまえはあくまでもただの友人でしたよ。
あなたの愚痴を死ぬほど聞かされたけど、なまえは、いつだってあなたを愛していた。」
「分かってんなら、もう二度と、アイツに近づくんじゃねぇ。
今すぐ、アイツの居場所を吐け。」
なまえを奪われるなんてありえないと信じ切っているリヴァイが、悔しかった。
そこまで信じられるほど愛していて、愛されていて、それでも、彼女までその手に置いておこうとしている。
彼女の心を殺してまでー。
嫉妬と愛が、モブリットの心を確実に蝕んでいたー。
「本当に彼女は、私に抱かれてないと思ってるんですか。」
「ありえねぇな。」
「へぇ、リヴァイ兵長って意外と楽観的なんですね。」
「あぁ?」
「だって、俺はもう、胸に少し唇が触れるだけで反応してしまうことも知ってますよ。
あぁ、それから、傷ひとつない綺麗な背中の中心にある黒子が可愛いですよね。
背中は特に弱くて、少し撫でるだけで可愛い声を上げてー。」
カッと目を見開いたリヴァイが見えた瞬間には、力いっぱいに振りあげられた硬い拳に頬を殴られていた。
吹っ飛んだ身体が、デスクに腕や手を当てるから、書類やペンが散らばって落ちる。
モブリットは、仰向けで床に倒れ込んだ。
さすが、調査兵団の兵士長だ。
超硬質ブレードなんてなくたって巨人を殺せてしまうんじゃないかというほどに重たい拳だった。
肘をついて、なんとか上半身だけ起こせば、憎悪に満ちた顔でリヴァイに見下ろされた。
「てめぇ、自分が何したか分かってんのか。」
「後悔してませんよ。」
睨みつける恐ろしい瞳に負けじと、キッと睨み返した。
しばらくの睨み合いが続いた後、リヴァイはチッと舌打ちをして背を向けた。
寝室を確かめることもしないまま、部屋を出て行こうとする背中に、気づいたら声を投げつけていた。
「どうして俺の忠告を無視したんだ…!
ちゃんと今の彼女を見てやってくれって、言ったじゃないか…!!」
あぁ、きっとー。
これが本音なのだ。
確かに、彼女が欲しい。
自分の腕の中で笑ってくれたら、そんなに嬉しいことはない。
でも、本当に願うのはー。
彼女の幸せなのだ。
だから、リヴァイに見てあげて欲しかった。
なまえじゃなく、彼女の良さを、ほんの少しでも見て欲しかった。
彼女にしかない微笑みとか、優しさとか、弱さや強さ。
それだって、なまえに負けないくらい魅力的なのにー。
でもー。
「他人の女に手を出すクソ野郎が、デケェ口叩くんじゃねぇ。」
リヴァイは振り返りもせずに、冷たく言い捨てて部屋を出て行った。
怒りを込められて、力任せに激しく扉が閉まる。
「痛ってぇ…。殺す気だっただろ、あれ。」
モブリットは、殴られた頬に手を当てる。
口の端を切っているようで、血も出ているし、もう腫れてるし、最悪だ。
でも、本当に最悪なのは、リヴァイとなまえと彼女かー。
何かしていないとソワソワしてしまいそうだったから、モブリットはデスクで書き仕事をしていた。
明日の昼頃には、出張先からハンジが帰ってくる予定だ。
いつも通り、会議の結果をまとめさせられるのは分かっている。
先に想定できる範囲で書類の準備をしておけば、後から楽だー。
そう思っているはずなのだけれど、全く手がつかない。
自分が彼女にしたことが、本当にあったことか今でも信じられない。
まさか、自分があんなことをしてしまうなんてー。
これが本当の自分だなんて彼女には言ったけれど、まさか自分にそんな一面があったなんて、自分だって知らなくてー。
(会いたいな。)
少し前まで一緒にいたのに、もう会いたい。
自分の言葉ひとつひとつに素直に反応してくれた彼女がとても愛おしかった。
困ったような顔も、恥ずかしそうに染める頬も、少なくとも、あのとき、あの瞬間だけは、自分だけのものだったからー。
そんなことを考えていると、部屋の主の了承もとらずに扉が勝手に開いた。
乱暴に扉を開けて、最初から戦闘態勢で部屋に入ってきたのはリヴァイだった。
「遅かったですね。もう少し早く来るかと思ってました。
もしかして、彼女が自分から部屋に来てくれるのを待ってたんですか。」
ペンをデスクに置いて、リヴァイに声をかける。
リヴァイはチラリとモブリットの方を見たけれど、話す気はないとばかりに口を閉じたまま、まっすぐに寝室の扉へ向かう。
「他の男に抱かれた後の彼女を見たいなんて、悪趣味ですね。」
挑発的な台詞に、リヴァイはとても素直に反応してくれた。
扉に手をかける直前で動きを止め、振り返る。
そして、怖ろしいほどの形相で、モブリットを睨み返した。
「てめぇ、何のつもりだ。」
地を這うような低い声は、それだけで人を殺せそうな殺気を孕んでいた。
でも、今回に限っては、絶対に負けられなかった。
リヴァイが、壊れてしまうほどになまえを愛したように、モブリットも壊れてもいいと思えるほどに彼女を想っている。
彼女を傷つけるのが誰でも、何をしてでも、守り抜くー。
そう決めたのだ。
「あなたから彼女を攫ってしまうつもりです。」
モブリットは言いながら、ゆっくりと立ち上がる。
リヴァイが片眉をピクリと上げた。
「もうあなたには任せてはいられない。
さっき、私を拒まない彼女を、あなたにも見せてあげたはずですよ。」
「あぁ、最低に悪趣味なもんを見せられたな。
で、アイツをどこに隠した。ここにはいねぇんだろ。」
リヴァイは寝室の扉に気だるげに寄り掛かると、親指で後ろの扉を指した。
気づいていたらしい。
いや、それともー。
「なまえのことを信じてるんですね。それとも、信じたいんですか。」
「アイツは、くだらねぇ真似をする女じゃねぇ。」
「そうですね。リヴァイ兵長の知ってるなまえならそうだと思います。
なまえの名誉のために言っておきますけど、私となまえはあくまでもただの友人でしたよ。
あなたの愚痴を死ぬほど聞かされたけど、なまえは、いつだってあなたを愛していた。」
「分かってんなら、もう二度と、アイツに近づくんじゃねぇ。
今すぐ、アイツの居場所を吐け。」
なまえを奪われるなんてありえないと信じ切っているリヴァイが、悔しかった。
そこまで信じられるほど愛していて、愛されていて、それでも、彼女までその手に置いておこうとしている。
彼女の心を殺してまでー。
嫉妬と愛が、モブリットの心を確実に蝕んでいたー。
「本当に彼女は、私に抱かれてないと思ってるんですか。」
「ありえねぇな。」
「へぇ、リヴァイ兵長って意外と楽観的なんですね。」
「あぁ?」
「だって、俺はもう、胸に少し唇が触れるだけで反応してしまうことも知ってますよ。
あぁ、それから、傷ひとつない綺麗な背中の中心にある黒子が可愛いですよね。
背中は特に弱くて、少し撫でるだけで可愛い声を上げてー。」
カッと目を見開いたリヴァイが見えた瞬間には、力いっぱいに振りあげられた硬い拳に頬を殴られていた。
吹っ飛んだ身体が、デスクに腕や手を当てるから、書類やペンが散らばって落ちる。
モブリットは、仰向けで床に倒れ込んだ。
さすが、調査兵団の兵士長だ。
超硬質ブレードなんてなくたって巨人を殺せてしまうんじゃないかというほどに重たい拳だった。
肘をついて、なんとか上半身だけ起こせば、憎悪に満ちた顔でリヴァイに見下ろされた。
「てめぇ、自分が何したか分かってんのか。」
「後悔してませんよ。」
睨みつける恐ろしい瞳に負けじと、キッと睨み返した。
しばらくの睨み合いが続いた後、リヴァイはチッと舌打ちをして背を向けた。
寝室を確かめることもしないまま、部屋を出て行こうとする背中に、気づいたら声を投げつけていた。
「どうして俺の忠告を無視したんだ…!
ちゃんと今の彼女を見てやってくれって、言ったじゃないか…!!」
あぁ、きっとー。
これが本音なのだ。
確かに、彼女が欲しい。
自分の腕の中で笑ってくれたら、そんなに嬉しいことはない。
でも、本当に願うのはー。
彼女の幸せなのだ。
だから、リヴァイに見てあげて欲しかった。
なまえじゃなく、彼女の良さを、ほんの少しでも見て欲しかった。
彼女にしかない微笑みとか、優しさとか、弱さや強さ。
それだって、なまえに負けないくらい魅力的なのにー。
でもー。
「他人の女に手を出すクソ野郎が、デケェ口叩くんじゃねぇ。」
リヴァイは振り返りもせずに、冷たく言い捨てて部屋を出て行った。
怒りを込められて、力任せに激しく扉が閉まる。
「痛ってぇ…。殺す気だっただろ、あれ。」
モブリットは、殴られた頬に手を当てる。
口の端を切っているようで、血も出ているし、もう腫れてるし、最悪だ。
でも、本当に最悪なのは、リヴァイとなまえと彼女かー。