◇55話◇3つの想いがすれ違う夜
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まだ、ボーッとしている。
ソファに座って、部屋の主の帰りを待ちながら、さっきモブリットに何を言われたのかを思い返す。
自分が、何をしてしまったのかー。
(…最低だ。)
頭を抱えた。
なまえになってリヴァイの恋人としてこの世界に残ると決めたのにー。
自分の人生を捨ててでも、愛したい人だと思っていたのにー。
今だって、そう想っているはずなのにー。
嬉しかった。
モブリットが見ているのが、なまえではなくて私なのだと知って、すごく嬉しくてー。
でもー。
扉が開いて、部屋の主が帰ってきたことに気づいて顔を上げた。
「このフロアの奥の部屋が空いてるから、
そこを使ってもいいように許可貰えたよ。」
「ありがとう。ごめんね、気を遣わせて。」
ホッとして、私は立ち上がって礼を言った。
気にしなくていいと言うモブリットはいつも通りで、ついさっきのことはなかったことになっているみたいだった。
それとも、私が夢でも見ていたのだろうか。
「気にしなくていいよ。
俺が、リヴァイ兵長の部屋に君を戻したくないだけだから。」
さらりとモブリットが言ったそれで、さっきのは夢ではなかったのだと理解する。
「そ、そっか…っ。」
返事に困って、我ながら呆れる返事をして、私は顔を伏せた。
よく分からないけど、なんだかすごく恥ずかしいー。
自分に真っすぐに好意を向けられるのなんて、久しぶり過ぎるせいだ。
リコに馬鹿にされるくらいに虚しい生活を送っていたからー。
「俺の部屋に泊まっていってもらってもいいんだけど、
さすがに今夜は、君をベッドに押し倒してしまいそうだから。」
伏せた視線の先にモブリットのブーツが入る。
そして、そっと顎に指を添えられて、顔を上に向けられる。
目が合うと、モブリットが優しく微笑む。
「君が許してくれるなら、さっきの部屋はキャンセルしてくるけど、
どうする?」
「キャンセルなしでっ!」
本当に馬鹿みたいに、焦ったように声を張り上げていた。
顔も真っ赤だったと思う。
モブリットは吹き出すと、可笑しそうに腹を抱えて爆笑する。
「そんな食い気味に拒否られると、傷つくよ。」
笑いながら言われても、全く傷ついたようには見えないのだけれどー。
なんだか、とても楽しそうだ。
からかわれてるのだろうか。
「モブリット、キャラが変わったね。」
私は、口を尖らせた。
モブリットは好きなだけ腹を抱えて笑って、漸く落ち着くと、何だかスッキリした顔をしていた。
「これが本当の俺だから。」
「本当の?そんな意地悪なのが?」
「そうだよ。俺、そんなにいい奴じゃないし。結構、腹黒いんだよ。」
「え、腹黒いんだ。」
「もうすげぇ真っ黒。」
「えー、人は見かけによらないね。」
クスクスと笑う。
モブリットといると、すごく楽だ。
難しいことを考えなくて良いし、気を遣わないでいられる。
それは、モブリットがさっき言ったように、私を私として見てくれているからなのかもしれない。
そして、絶対に私を否定しないからー。
そのままを受け入れてくれるから、モブリットの前で私は、気負わずに私らしくいられているのだと思う。
「これは、俺がなまえにも見せてなかった俺だから。
君にしか見せてないって、覚えててね。」
「…うん。」
真っすぐに私を見る目を見ていられなくて、照れ臭さで目を伏せる。
さっきまで意地悪く笑っていたのに、急に優しい顔でそんなことを言うのはズルい。
「もう部屋に行く?」
「うん、あんまり遅くまでモブリットの部屋にお邪魔するわけにもいかないし。」
「押し倒されるから?」
「ち…っ、違…っ!」
「冗談だよ。」
モブリットは本当に面白そうにクスクスと笑う。
面白いおもちゃでも見つけた気でいるに違いない。
むーっと頬を膨らませれば、笑いながら謝られた。
絶対に、悪いと思っていないやつだ。
「さっきも言ったけど、返事はまだしないでほしい。」
扉を開ける前に、モブリットは、あのときと同じ真剣な顔をして言う。
私は小さく頷いた。
本当は、今すぐちゃんと返事をするべきなのだと思う。
そもそも、私には恋人と呼ぶ人がいるのだ。
考える以前の問題のはずなのにー。
「返事を貰うまでは、俺が勝手に君のことを好きでいられるから。
無理やり、返事を止めてしまってごめんな。」
モブリットが困ったように微笑む。
あぁ、やっぱり、この人は優しい人だ。
意地悪く笑ってからかってくるし、自分のことを腹黒いなんて言っていたけど。
私が考えていることを先読みして、すべてを自分のせいにしようとしてくれてー。
「ありがー。」
礼を伝えようとしたけれど、最後まで言えないままモブリットに唇を塞がれた。
ほんの少し触れるだけのキスで、すぐに離れたけれど、私は驚いてしまってー。
「これで、部屋に戻ってからも、俺のこと思い出すだろ?
リヴァイ兵長のことを想う時間を、少しくらいは奪えたかな。」
モブリットはニヒルに口の端を上げる。
腹黒というのは、本当かもしれない。
そして、策士だ。
だって、少しくらいどころかー。
私は、さっきからずっと、モブリットのことばかり考えているからー。
ソファに座って、部屋の主の帰りを待ちながら、さっきモブリットに何を言われたのかを思い返す。
自分が、何をしてしまったのかー。
(…最低だ。)
頭を抱えた。
なまえになってリヴァイの恋人としてこの世界に残ると決めたのにー。
自分の人生を捨ててでも、愛したい人だと思っていたのにー。
今だって、そう想っているはずなのにー。
嬉しかった。
モブリットが見ているのが、なまえではなくて私なのだと知って、すごく嬉しくてー。
でもー。
扉が開いて、部屋の主が帰ってきたことに気づいて顔を上げた。
「このフロアの奥の部屋が空いてるから、
そこを使ってもいいように許可貰えたよ。」
「ありがとう。ごめんね、気を遣わせて。」
ホッとして、私は立ち上がって礼を言った。
気にしなくていいと言うモブリットはいつも通りで、ついさっきのことはなかったことになっているみたいだった。
それとも、私が夢でも見ていたのだろうか。
「気にしなくていいよ。
俺が、リヴァイ兵長の部屋に君を戻したくないだけだから。」
さらりとモブリットが言ったそれで、さっきのは夢ではなかったのだと理解する。
「そ、そっか…っ。」
返事に困って、我ながら呆れる返事をして、私は顔を伏せた。
よく分からないけど、なんだかすごく恥ずかしいー。
自分に真っすぐに好意を向けられるのなんて、久しぶり過ぎるせいだ。
リコに馬鹿にされるくらいに虚しい生活を送っていたからー。
「俺の部屋に泊まっていってもらってもいいんだけど、
さすがに今夜は、君をベッドに押し倒してしまいそうだから。」
伏せた視線の先にモブリットのブーツが入る。
そして、そっと顎に指を添えられて、顔を上に向けられる。
目が合うと、モブリットが優しく微笑む。
「君が許してくれるなら、さっきの部屋はキャンセルしてくるけど、
どうする?」
「キャンセルなしでっ!」
本当に馬鹿みたいに、焦ったように声を張り上げていた。
顔も真っ赤だったと思う。
モブリットは吹き出すと、可笑しそうに腹を抱えて爆笑する。
「そんな食い気味に拒否られると、傷つくよ。」
笑いながら言われても、全く傷ついたようには見えないのだけれどー。
なんだか、とても楽しそうだ。
からかわれてるのだろうか。
「モブリット、キャラが変わったね。」
私は、口を尖らせた。
モブリットは好きなだけ腹を抱えて笑って、漸く落ち着くと、何だかスッキリした顔をしていた。
「これが本当の俺だから。」
「本当の?そんな意地悪なのが?」
「そうだよ。俺、そんなにいい奴じゃないし。結構、腹黒いんだよ。」
「え、腹黒いんだ。」
「もうすげぇ真っ黒。」
「えー、人は見かけによらないね。」
クスクスと笑う。
モブリットといると、すごく楽だ。
難しいことを考えなくて良いし、気を遣わないでいられる。
それは、モブリットがさっき言ったように、私を私として見てくれているからなのかもしれない。
そして、絶対に私を否定しないからー。
そのままを受け入れてくれるから、モブリットの前で私は、気負わずに私らしくいられているのだと思う。
「これは、俺がなまえにも見せてなかった俺だから。
君にしか見せてないって、覚えててね。」
「…うん。」
真っすぐに私を見る目を見ていられなくて、照れ臭さで目を伏せる。
さっきまで意地悪く笑っていたのに、急に優しい顔でそんなことを言うのはズルい。
「もう部屋に行く?」
「うん、あんまり遅くまでモブリットの部屋にお邪魔するわけにもいかないし。」
「押し倒されるから?」
「ち…っ、違…っ!」
「冗談だよ。」
モブリットは本当に面白そうにクスクスと笑う。
面白いおもちゃでも見つけた気でいるに違いない。
むーっと頬を膨らませれば、笑いながら謝られた。
絶対に、悪いと思っていないやつだ。
「さっきも言ったけど、返事はまだしないでほしい。」
扉を開ける前に、モブリットは、あのときと同じ真剣な顔をして言う。
私は小さく頷いた。
本当は、今すぐちゃんと返事をするべきなのだと思う。
そもそも、私には恋人と呼ぶ人がいるのだ。
考える以前の問題のはずなのにー。
「返事を貰うまでは、俺が勝手に君のことを好きでいられるから。
無理やり、返事を止めてしまってごめんな。」
モブリットが困ったように微笑む。
あぁ、やっぱり、この人は優しい人だ。
意地悪く笑ってからかってくるし、自分のことを腹黒いなんて言っていたけど。
私が考えていることを先読みして、すべてを自分のせいにしようとしてくれてー。
「ありがー。」
礼を伝えようとしたけれど、最後まで言えないままモブリットに唇を塞がれた。
ほんの少し触れるだけのキスで、すぐに離れたけれど、私は驚いてしまってー。
「これで、部屋に戻ってからも、俺のこと思い出すだろ?
リヴァイ兵長のことを想う時間を、少しくらいは奪えたかな。」
モブリットはニヒルに口の端を上げる。
腹黒というのは、本当かもしれない。
そして、策士だ。
だって、少しくらいどころかー。
私は、さっきからずっと、モブリットのことばかり考えているからー。