◇51話◇消してしまいたい
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びしょ濡れになってしまった自分のシャツは雑に脱ぎ捨てて、大きめのバスタオルで彼女の身体を包んだ。
そして、横抱きにして寝室まで運ぶと、ベッドの縁にそっと座るように降ろす。
反らしても目に入ってしまう白い肌を必死に見ないようにして、タオルで優しく触れて濡れた身体を拭いた。
その間、彼女は嫌がることもなければ、何かを言うようなこともなく、ただじっと目を伏せていた。
それがひどく痛々しくて、モブリットはこみあげる怒りを必死に抑え込みながら、隅から隅までを優しく拭く。
分かっている。
リヴァイを責めるのは、それはそれで間違っていると理解している。
だからこそ、悔しいのだ。
誰も悪くないー。
そう言えば、ペトラが鏡を割ったとき、なまえはそんなことを言っていたっけ。
確かにそうだ。誰も悪くないー。
だから、悔しい。苦しいのだ。
彼女も、自分もー。
「傷薬持ってくるよ。」
ベッドの上からシーツを手繰りよせて、彼女の肩にかけた。
身体中にある傷に薬を塗りたいから、出来れば、服はまだ着ないままでいて欲しかった。
「寒い?」
「…大丈夫。ごめん。」
「気にしないで。」
彼女のしっとり濡れた髪を優しく撫でる。
モブリットは濡れたタオルをシャワールームの籠に持って行くと、チェスト横の棚の引き出しを開いた。
調査兵をしていると、大きい怪我からほんの小さな怪我まで、傷を作ることが多い。
だから、簡単な応急処置が出来る程度の処置セットくらいなら持っていた。
あまり使うことはなかったけれど、こういう風に役に立ってよかった。
良くはないけれど、よかったー。
自分のシャツも出そうと思ったけれど、まずは彼女の傷に薬を塗るのが先だと思い直して、処置セットの入った箱だけを持って、ベッドに戻る。
ベッドに座る彼女の足元に膝をついて、傷薬を取り出した。
指に少しだけ軟膏をつけると、彼女に声をかける。
「薬を塗るね。嫌だったり、痛かったりしたら言って?」
彼女が小さく頷いたのを確認してから、まずは、首元辺りに出来た引っかき傷に指を触れた。
傷の下には赤い痕がある。
身体中にある紅い痕。
その幾つもに、ひっかき傷や擦った痕が重なっている。
そうやって自分を傷つけながら、彼女が必死にどうにかして消そうとしたのだと思うと、やるせなくなる。
「…っ。」
「ごめんっ。痛かった?」
薬を塗っていると、彼女が小さく震えて、目を固く瞑った。
慌てて訊ねれば、彼女は小さく首を横に振る。
そして、なんとも悲しそうに言うのだ。
「やっぱり…、すぐには消せないんだなと思ったら、絶望しただけ…。
消えてくれるまで、私は身体も、自分のものじゃなくなるんだね…。」
「…そんなに嫌なら、俺が消してあげようか。」
気づいたら、自分でも驚くくらいに大胆なことを言っていた。
本当に消すことが出来るのかー。
期待を込めた顔でモブリットを見た彼女は、その言葉の意味を理解していないようだった。
だから、モブリットは、彼女の首元の赤い痕を指で押すようにして、塗ったばかりの薬を拭いながら、リヴァイの痕の消し方を教えてやる。
「リヴァイ兵長が残した呪いみたいなこの痕、俺がひとつ残らず上書きして消してしまえば、
身体に残ったなまえの亡霊に君が苦しめられることもないよ。」
彼女の驚いた顔を見て、モブリットは我に返る。
何を言ってしまったのだろう。
いくら、彼女を苦しめる痕を一刻も早く消してやりたかったからと言って、自分の願望を詰め込み過ぎだ。
まだ酒が残っているせいだ。
ガンガンと殴られてるみたいに、頭が痛いから。
「ごめん、変なこと言った。忘れて。」
モブリットは早口で言うと、傷薬をまた指に少し乗せる。
なんとなく、彼女の顔を見るのが恥ずかしくて、今度は足の甲に残る赤い擦ったような痕に薬を塗ろうとしてー。
彼女の小さな手が、モブリットの指を包んだ。
驚いたときには、指の先に乗っていた薬を、彼女の指が拭ってしまっていた。
思わず顔を上げれば、彼女が躊躇いがちに言う。
「…消して。今すぐ、消してほしい…。」
シーツを肩からかけただけで、白い肌はすべて露になっている。
柔らかそうな胸まで、目の前にあるのだ。
しかも、それは惚れている女でー。
潤んだ瞳で懇願するようにそんなことを言われて、どれくらいの男が理性を保つことが出来るのだろう。
少なくとも、モブリットはほんの僅かに理性は残してはいたものの、欲望が勝ってくれることを望んでいた。
「いいの?後悔しないかい?」
彼女の頬を厭らしく撫でながら、止める気なんてほとんどないくせに、ズルいことを訊いた。
「早く、消してしまいたい…。」
後悔しないとは言わず、彼女は消えてしまいそうな声で答えた。
でも、その答えで十分だった。
モブリットは、ベッドの縁に座る彼女の身体を抱き上げて、ベッドの中央に座らせた。
ペタンと座り込む彼女の前に自分も座って、彼女の両肩に触れる。
ひどく緊張しているのが、空気を通して伝わってくる。
いや、緊張しているのは自分の方かもしれない。
でも、もう誰も止められないということは理解していた。
『攫っちまえばいいのに。』
まだ酒の抜けていない頭に、昨夜のハンジの言葉が響き続ける。
背徳感は、引き留めるどころか、背中を押す。
彼女の首筋に顔を埋めて、紅い痕と傷を口に含めば、薬の苦い味が口の中に広がった。
「…んっ。」
ほんの少しだけ、彼女が首を竦めて小さく声を漏らした。
それは、無意識の抵抗の意志なのか、そうではないのか。
深く考えるのは止めにした。
身体中にある他の男の痕を、自分の痕に上書きしてもいいという許可が出たのだから、今はそれに集中するのだ。
自分にそう言い聞かせて、罪悪感を無視する。
目につくところ、至るところに咲いた紅い痕。
リヴァイが、なまえを深く愛した痕は、彼女には酷すぎる。
首筋から肩、鎖骨ー。
続けやすいように彼女を優しく寝かせた。
白い肌の上を唇が滑るように落ちて、その度に赤い痕を上書きしていく。
「んん…っ。」
胸のそばにまで落ちてくると、彼女は声を押し殺すようになった。
自分の手の甲を口に押しあてて、必死に堪える姿がいじらしくて、余計にそそられる。
堪えて欲しくなんかない。
声を聞かせてほしい。
でも、それを願う権利はないし、そもそもこれは、そういう行為じゃない。
虚しいくらいに。
あぁ、そうだ。これはただの、応急処置だー。
「モブリット…っ、そこ、恥ずかしい…っ。」
太ももの赤い痕に唇を這わせようとして、脚を広げるように触れたとき、彼女の手が初めて止めに入った。
顔を上げれば、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている彼女が見えた。
そんなの、男にとっては、誘っているのと同じなのにー。
恥ずかしい理由ならすぐに理解できたから、彼女の下半身ごと隠すように頭からシーツをかぶった。
「これなら暗くて見えないから、恥ずかしくないだろう?」
本当は、カーテンを閉め切っているとはいえ、こんな朝っぱらの明るい部屋では、シーツをかぶったところで、視界の明るさはそれほど変わらない。
少しだけ、やりづらくなるくらいだ。
でも、彼女を強引に納得させるのには成功したようだった。
「…あんまり見ないでね。」
「大丈夫だよ。」
たぶんー。
心の中で付け足して、モブリットは今度こそ彼女の太ももの赤い痕を口に含んだ。
昨日、彼女を攫いに行けばよかったと、酒に溺れたことを後悔したけれど、こんな大胆なことが出来ているのもまた、酒の力なのだと思う。
まだ、頭がガンガンしてる。
そして、横抱きにして寝室まで運ぶと、ベッドの縁にそっと座るように降ろす。
反らしても目に入ってしまう白い肌を必死に見ないようにして、タオルで優しく触れて濡れた身体を拭いた。
その間、彼女は嫌がることもなければ、何かを言うようなこともなく、ただじっと目を伏せていた。
それがひどく痛々しくて、モブリットはこみあげる怒りを必死に抑え込みながら、隅から隅までを優しく拭く。
分かっている。
リヴァイを責めるのは、それはそれで間違っていると理解している。
だからこそ、悔しいのだ。
誰も悪くないー。
そう言えば、ペトラが鏡を割ったとき、なまえはそんなことを言っていたっけ。
確かにそうだ。誰も悪くないー。
だから、悔しい。苦しいのだ。
彼女も、自分もー。
「傷薬持ってくるよ。」
ベッドの上からシーツを手繰りよせて、彼女の肩にかけた。
身体中にある傷に薬を塗りたいから、出来れば、服はまだ着ないままでいて欲しかった。
「寒い?」
「…大丈夫。ごめん。」
「気にしないで。」
彼女のしっとり濡れた髪を優しく撫でる。
モブリットは濡れたタオルをシャワールームの籠に持って行くと、チェスト横の棚の引き出しを開いた。
調査兵をしていると、大きい怪我からほんの小さな怪我まで、傷を作ることが多い。
だから、簡単な応急処置が出来る程度の処置セットくらいなら持っていた。
あまり使うことはなかったけれど、こういう風に役に立ってよかった。
良くはないけれど、よかったー。
自分のシャツも出そうと思ったけれど、まずは彼女の傷に薬を塗るのが先だと思い直して、処置セットの入った箱だけを持って、ベッドに戻る。
ベッドに座る彼女の足元に膝をついて、傷薬を取り出した。
指に少しだけ軟膏をつけると、彼女に声をかける。
「薬を塗るね。嫌だったり、痛かったりしたら言って?」
彼女が小さく頷いたのを確認してから、まずは、首元辺りに出来た引っかき傷に指を触れた。
傷の下には赤い痕がある。
身体中にある紅い痕。
その幾つもに、ひっかき傷や擦った痕が重なっている。
そうやって自分を傷つけながら、彼女が必死にどうにかして消そうとしたのだと思うと、やるせなくなる。
「…っ。」
「ごめんっ。痛かった?」
薬を塗っていると、彼女が小さく震えて、目を固く瞑った。
慌てて訊ねれば、彼女は小さく首を横に振る。
そして、なんとも悲しそうに言うのだ。
「やっぱり…、すぐには消せないんだなと思ったら、絶望しただけ…。
消えてくれるまで、私は身体も、自分のものじゃなくなるんだね…。」
「…そんなに嫌なら、俺が消してあげようか。」
気づいたら、自分でも驚くくらいに大胆なことを言っていた。
本当に消すことが出来るのかー。
期待を込めた顔でモブリットを見た彼女は、その言葉の意味を理解していないようだった。
だから、モブリットは、彼女の首元の赤い痕を指で押すようにして、塗ったばかりの薬を拭いながら、リヴァイの痕の消し方を教えてやる。
「リヴァイ兵長が残した呪いみたいなこの痕、俺がひとつ残らず上書きして消してしまえば、
身体に残ったなまえの亡霊に君が苦しめられることもないよ。」
彼女の驚いた顔を見て、モブリットは我に返る。
何を言ってしまったのだろう。
いくら、彼女を苦しめる痕を一刻も早く消してやりたかったからと言って、自分の願望を詰め込み過ぎだ。
まだ酒が残っているせいだ。
ガンガンと殴られてるみたいに、頭が痛いから。
「ごめん、変なこと言った。忘れて。」
モブリットは早口で言うと、傷薬をまた指に少し乗せる。
なんとなく、彼女の顔を見るのが恥ずかしくて、今度は足の甲に残る赤い擦ったような痕に薬を塗ろうとしてー。
彼女の小さな手が、モブリットの指を包んだ。
驚いたときには、指の先に乗っていた薬を、彼女の指が拭ってしまっていた。
思わず顔を上げれば、彼女が躊躇いがちに言う。
「…消して。今すぐ、消してほしい…。」
シーツを肩からかけただけで、白い肌はすべて露になっている。
柔らかそうな胸まで、目の前にあるのだ。
しかも、それは惚れている女でー。
潤んだ瞳で懇願するようにそんなことを言われて、どれくらいの男が理性を保つことが出来るのだろう。
少なくとも、モブリットはほんの僅かに理性は残してはいたものの、欲望が勝ってくれることを望んでいた。
「いいの?後悔しないかい?」
彼女の頬を厭らしく撫でながら、止める気なんてほとんどないくせに、ズルいことを訊いた。
「早く、消してしまいたい…。」
後悔しないとは言わず、彼女は消えてしまいそうな声で答えた。
でも、その答えで十分だった。
モブリットは、ベッドの縁に座る彼女の身体を抱き上げて、ベッドの中央に座らせた。
ペタンと座り込む彼女の前に自分も座って、彼女の両肩に触れる。
ひどく緊張しているのが、空気を通して伝わってくる。
いや、緊張しているのは自分の方かもしれない。
でも、もう誰も止められないということは理解していた。
『攫っちまえばいいのに。』
まだ酒の抜けていない頭に、昨夜のハンジの言葉が響き続ける。
背徳感は、引き留めるどころか、背中を押す。
彼女の首筋に顔を埋めて、紅い痕と傷を口に含めば、薬の苦い味が口の中に広がった。
「…んっ。」
ほんの少しだけ、彼女が首を竦めて小さく声を漏らした。
それは、無意識の抵抗の意志なのか、そうではないのか。
深く考えるのは止めにした。
身体中にある他の男の痕を、自分の痕に上書きしてもいいという許可が出たのだから、今はそれに集中するのだ。
自分にそう言い聞かせて、罪悪感を無視する。
目につくところ、至るところに咲いた紅い痕。
リヴァイが、なまえを深く愛した痕は、彼女には酷すぎる。
首筋から肩、鎖骨ー。
続けやすいように彼女を優しく寝かせた。
白い肌の上を唇が滑るように落ちて、その度に赤い痕を上書きしていく。
「んん…っ。」
胸のそばにまで落ちてくると、彼女は声を押し殺すようになった。
自分の手の甲を口に押しあてて、必死に堪える姿がいじらしくて、余計にそそられる。
堪えて欲しくなんかない。
声を聞かせてほしい。
でも、それを願う権利はないし、そもそもこれは、そういう行為じゃない。
虚しいくらいに。
あぁ、そうだ。これはただの、応急処置だー。
「モブリット…っ、そこ、恥ずかしい…っ。」
太ももの赤い痕に唇を這わせようとして、脚を広げるように触れたとき、彼女の手が初めて止めに入った。
顔を上げれば、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている彼女が見えた。
そんなの、男にとっては、誘っているのと同じなのにー。
恥ずかしい理由ならすぐに理解できたから、彼女の下半身ごと隠すように頭からシーツをかぶった。
「これなら暗くて見えないから、恥ずかしくないだろう?」
本当は、カーテンを閉め切っているとはいえ、こんな朝っぱらの明るい部屋では、シーツをかぶったところで、視界の明るさはそれほど変わらない。
少しだけ、やりづらくなるくらいだ。
でも、彼女を強引に納得させるのには成功したようだった。
「…あんまり見ないでね。」
「大丈夫だよ。」
たぶんー。
心の中で付け足して、モブリットは今度こそ彼女の太ももの赤い痕を口に含んだ。
昨日、彼女を攫いに行けばよかったと、酒に溺れたことを後悔したけれど、こんな大胆なことが出来ているのもまた、酒の力なのだと思う。
まだ、頭がガンガンしてる。