◇45話◇私が死んだ日、惨い嘘で彼を地獄に縛りつけた
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あれから数日、私はただひたすらなまえになろうとしていた。
朝から晩まで、病室で眠り続けるリヴァイのベッド脇の椅子に座って、処置の時間以外は常にそばにいた。
そして、その日あった調査兵団のことを話して聞かせた。
夜になれば、いつまでも部屋の主の戻らないリヴァイの執務室に帰り、今度は、デスクの椅子にはりついて、ハンジとモブリットから、この世界の成り立ちからなまえの家族や友人関係のことまでありとあらゆることを教えてもらっている。
本当は知りたくないリヴァイとなまえの想い出話も、知っている限り聞かせてもらった。
癖や仕草、見た目や性格に関わるものはほとんど同じなようで、私がなまえになるためにしなければならないのは、ほぼ記憶の暗記だった。
「その手帳は手放せないね。」
なまえの情報を書き込んでいると、ハンジが言った。
顔を上げて、手帳を手に取る。
「うん、毎日持ち歩いてるよ。
モブリット、本当にありがとうね。」
「どういたしまして。」
胸ポケットに入る程度の小振りなこの手帳は、モブリットがくれたものだ。
なまえは友人も多かったし、人生のほとんどすべてを知ろうと思ったら暗記なんて出来ないだろうかーと、持ち歩いていつでも確認できるように手帳をくれたのだ。
これは本当に役に立っている。
兵舎の中でなまえの知り合いを見かけたり、気になることがある度に、すぐにこの手帳をチェック出来るのは心強かった。
「それにしても、何度見てもこの文字は何を書いてるのかサッパリだね。」
ハンジが手帳を手に取って、食い入るように書き込まれた文字を見る。
「万が一、その手帳を失くしてしまっても、私の世界の文字で書けば、
なまえのプライバシーを勝手に人に見られることはないからね。」
「そうだね。私もそれがいいと思うよ。今度私にも教えてよ。
機密情報の書類を作るときに役に立ちそうだ。」
「役に立てるならいつでも教えるよ。ハンジはすぐに覚えそうだね。」
ハンジはそう言って、私に手帳を返す。
受け取った私は、手帳を改めて見直す。
カタカナではなく、ひらがなと漢字を使って書くようにしている。
この世界の文字はカタカナに似ているから、カタカナにすると頭のいい人には解読されてしまうかもしれないと思ったのだ。
この手帳には、私しか読めない文字で、なまえの家族構成や友人関係、生涯愛し続けた恋人との出逢いー、彼女の人生のいろんなことが記されている。
本当は、こんな小さな手帳には書ききれないほどのなまえの人生や想い、重みがあったはずだ。
それを私が、こんな風にー。
まるで、彼女の人生を乗っ取ろうとしているみたいで、自分が怖くなるときがあるー。
「ちゃんと寝てるかい?
俺達が部屋に戻った後は、この世界の文字も勉強してるんだろう?」
モブリットがデスクの上に置かれたノートを手に取って言った。
そのノートには、この世界の文字がびっしり書かれている。
前に一度、モブリットに教えてもらっているからそれほど苦労はしていないけれど、忘れている文字もあるから、寝る前にノートに書いて復習している。
「記憶は取り戻したのに、文字の読み書きは出来ないっておかしいからね。
それに、昼間はリヴァイのところでお昼寝してるから大丈夫だよ。
むしろ、夜も昼も寝てて、寝過ぎて頭が痛いくらい。」
少し茶化すように言えば、ハンジとモブリットは苦笑を漏らした。
あれから、彼らはもう、私に否定的なことは一切言わなくなった。
ただひたすらに、私の協力をしてくれている。
本当は、思うところもあるのだと思う。
でも、私は気づかないふりをしている。
この世界に残りたいから。
リヴァイのそばに、いたいからー。
「なまえさん!!リヴァイ兵長が目を覚ました!!」
扉が勢いよく開き、オルオが駆けこんできて叫んだ。
自分の反射神経はこんなに優れていたのかと驚いた。
だって、ハンジとモブリットが走り出すよりも先に、私は執務室を飛び出していたから。
朝から晩まで、病室で眠り続けるリヴァイのベッド脇の椅子に座って、処置の時間以外は常にそばにいた。
そして、その日あった調査兵団のことを話して聞かせた。
夜になれば、いつまでも部屋の主の戻らないリヴァイの執務室に帰り、今度は、デスクの椅子にはりついて、ハンジとモブリットから、この世界の成り立ちからなまえの家族や友人関係のことまでありとあらゆることを教えてもらっている。
本当は知りたくないリヴァイとなまえの想い出話も、知っている限り聞かせてもらった。
癖や仕草、見た目や性格に関わるものはほとんど同じなようで、私がなまえになるためにしなければならないのは、ほぼ記憶の暗記だった。
「その手帳は手放せないね。」
なまえの情報を書き込んでいると、ハンジが言った。
顔を上げて、手帳を手に取る。
「うん、毎日持ち歩いてるよ。
モブリット、本当にありがとうね。」
「どういたしまして。」
胸ポケットに入る程度の小振りなこの手帳は、モブリットがくれたものだ。
なまえは友人も多かったし、人生のほとんどすべてを知ろうと思ったら暗記なんて出来ないだろうかーと、持ち歩いていつでも確認できるように手帳をくれたのだ。
これは本当に役に立っている。
兵舎の中でなまえの知り合いを見かけたり、気になることがある度に、すぐにこの手帳をチェック出来るのは心強かった。
「それにしても、何度見てもこの文字は何を書いてるのかサッパリだね。」
ハンジが手帳を手に取って、食い入るように書き込まれた文字を見る。
「万が一、その手帳を失くしてしまっても、私の世界の文字で書けば、
なまえのプライバシーを勝手に人に見られることはないからね。」
「そうだね。私もそれがいいと思うよ。今度私にも教えてよ。
機密情報の書類を作るときに役に立ちそうだ。」
「役に立てるならいつでも教えるよ。ハンジはすぐに覚えそうだね。」
ハンジはそう言って、私に手帳を返す。
受け取った私は、手帳を改めて見直す。
カタカナではなく、ひらがなと漢字を使って書くようにしている。
この世界の文字はカタカナに似ているから、カタカナにすると頭のいい人には解読されてしまうかもしれないと思ったのだ。
この手帳には、私しか読めない文字で、なまえの家族構成や友人関係、生涯愛し続けた恋人との出逢いー、彼女の人生のいろんなことが記されている。
本当は、こんな小さな手帳には書ききれないほどのなまえの人生や想い、重みがあったはずだ。
それを私が、こんな風にー。
まるで、彼女の人生を乗っ取ろうとしているみたいで、自分が怖くなるときがあるー。
「ちゃんと寝てるかい?
俺達が部屋に戻った後は、この世界の文字も勉強してるんだろう?」
モブリットがデスクの上に置かれたノートを手に取って言った。
そのノートには、この世界の文字がびっしり書かれている。
前に一度、モブリットに教えてもらっているからそれほど苦労はしていないけれど、忘れている文字もあるから、寝る前にノートに書いて復習している。
「記憶は取り戻したのに、文字の読み書きは出来ないっておかしいからね。
それに、昼間はリヴァイのところでお昼寝してるから大丈夫だよ。
むしろ、夜も昼も寝てて、寝過ぎて頭が痛いくらい。」
少し茶化すように言えば、ハンジとモブリットは苦笑を漏らした。
あれから、彼らはもう、私に否定的なことは一切言わなくなった。
ただひたすらに、私の協力をしてくれている。
本当は、思うところもあるのだと思う。
でも、私は気づかないふりをしている。
この世界に残りたいから。
リヴァイのそばに、いたいからー。
「なまえさん!!リヴァイ兵長が目を覚ました!!」
扉が勢いよく開き、オルオが駆けこんできて叫んだ。
自分の反射神経はこんなに優れていたのかと驚いた。
だって、ハンジとモブリットが走り出すよりも先に、私は執務室を飛び出していたから。