「愛してる」~それは、私の大嫌いな〝真実〟だった~
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楽しそうな笑い声から逃げるように、お酒で陽気になっている仲間達の輪から抜けた。
ジーク戦士長が貸切にしてくれた広いコテージを抜けて、適当に街を練り歩く。
たったひとつの腕章が、こんな夜にもエルディア人が観光地を歩き回ることを許してくれる。反対に言えば、この腕章がなければ、私は、収容区以外を自由に歩くことなんかできない。
壁の中は鳥籠のようだとエレンが怖い顔でよく話していたけれど、収容区に比べれば、随分と広いのだ。
でも彼は知らない。そして私も、両親を巨人に殺された彼の苦痛は知れない。
人間は、自分の知っている苦痛しか、分からないのだ。
それも仕方がない。
だって、自分の苦痛を和らげることすらできずに苦しむ私達が、他人の苦痛まで分かるようになってしまったら、もう生きる気力を失ってしまう。
だから、戦争というのは、起こるべくして起きているのだと思う。
そうやって、武器を持って立ち上がった人間の全てが悪であり、そして、英雄でもあるのだ。
どれくらい歩いたのかは分からない。
でも、気づいたら私は、街を抜けて、海岸まで来ていた。
紺色の夜が、黄色い月をより一層、美しく輝かせ、白い砂浜をグレーに変える。
「広いなぁ~…。」
立ち止まり、黒色に染まった海を眺めて、感嘆の声が漏れる。
久しぶりの、心の声だった気がする。
「遠い、なぁ…。」
あの日、ジャンの手を掴めなかった私の手が、遥か彼方にある地平線に伸ばされる。
あれから、私達は、計画を立てるばかりで、パラディ島への攻撃どころか、刺客を送ることすらしていない。
きっともう、ジャン達は、壁の外にいる不憫な同胞たちを駆逐し終えて、海を見つけているのだろうと思う。
初めて、視界におさめきれないほどの広い海を見たとき、彼らは一体、何を思ったのだろう。
その向こうに、自由という夢を馳せたのか。
それとも、自分達を裏切り、地獄へと落とした敵への復讐心がさらに燃え上がったのか。
ただただ自由に焦がれ、敵を駆逐することへの覚悟が増したのかもしれない。
私と、ジャンの心の距離は、あまりにも———。
「遠い…。」
「そうか?近ぇと思うけど。」
「遠いよ、地平線なんてあんなに遠くて。パラディ島は、さらにその向こ———。」
ハッとして、振り返った。
幻聴か、悪夢かと思った。
そう、思いたかった。
でも、振り向いた私が見たのは、あの日よりもずっと背が伸びて、似合わない髭を生やしたジャンだった。
ジーク戦士長が貸切にしてくれた広いコテージを抜けて、適当に街を練り歩く。
たったひとつの腕章が、こんな夜にもエルディア人が観光地を歩き回ることを許してくれる。反対に言えば、この腕章がなければ、私は、収容区以外を自由に歩くことなんかできない。
壁の中は鳥籠のようだとエレンが怖い顔でよく話していたけれど、収容区に比べれば、随分と広いのだ。
でも彼は知らない。そして私も、両親を巨人に殺された彼の苦痛は知れない。
人間は、自分の知っている苦痛しか、分からないのだ。
それも仕方がない。
だって、自分の苦痛を和らげることすらできずに苦しむ私達が、他人の苦痛まで分かるようになってしまったら、もう生きる気力を失ってしまう。
だから、戦争というのは、起こるべくして起きているのだと思う。
そうやって、武器を持って立ち上がった人間の全てが悪であり、そして、英雄でもあるのだ。
どれくらい歩いたのかは分からない。
でも、気づいたら私は、街を抜けて、海岸まで来ていた。
紺色の夜が、黄色い月をより一層、美しく輝かせ、白い砂浜をグレーに変える。
「広いなぁ~…。」
立ち止まり、黒色に染まった海を眺めて、感嘆の声が漏れる。
久しぶりの、心の声だった気がする。
「遠い、なぁ…。」
あの日、ジャンの手を掴めなかった私の手が、遥か彼方にある地平線に伸ばされる。
あれから、私達は、計画を立てるばかりで、パラディ島への攻撃どころか、刺客を送ることすらしていない。
きっともう、ジャン達は、壁の外にいる不憫な同胞たちを駆逐し終えて、海を見つけているのだろうと思う。
初めて、視界におさめきれないほどの広い海を見たとき、彼らは一体、何を思ったのだろう。
その向こうに、自由という夢を馳せたのか。
それとも、自分達を裏切り、地獄へと落とした敵への復讐心がさらに燃え上がったのか。
ただただ自由に焦がれ、敵を駆逐することへの覚悟が増したのかもしれない。
私と、ジャンの心の距離は、あまりにも———。
「遠い…。」
「そうか?近ぇと思うけど。」
「遠いよ、地平線なんてあんなに遠くて。パラディ島は、さらにその向こ———。」
ハッとして、振り返った。
幻聴か、悪夢かと思った。
そう、思いたかった。
でも、振り向いた私が見たのは、あの日よりもずっと背が伸びて、似合わない髭を生やしたジャンだった。