あなたが伸ばした手の行方を
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夜空を包む冷たい空気に凍えて、身体が震えた時、ふ、と何かを思い出した気がした。
苦しくなる心臓と共に、立ち止まり動かなくなる私の両脚。
私の身体を流れていく冷たい空気が、ヒューヒューと鳴るから、まるで風が泣いているように聞こえた。
「どうした?」
隣を歩いていたはずの彼が、ついてこない私に気が付いて振り返った。
首を傾げる彼に、ひどく傷ついた顔で涙を流す姿がフラッシュバックする。
出逢った日から今日まで、彼が泣いているところなんて、一度も見たことがないはずなのに。
「腹でも痛ぇのか?」
見当違いの心配をして、眉尻を下げる彼が可笑しくて思わず吹き出してしまう。
すると、負けず嫌いの彼は、今度は不機嫌そうに眉を顰めた。
「ボーッとしてねぇで、行くぞ。」
そう言って、彼が私に差し伸べる手を見た、その時だった。
私は、人生で一度も味わったことのない胸の苦しみに襲われたのだ。
それは痛みになって、私を足元から崩れ落とそうとする。
その理由は分からない。
けれど、今までも何度だって私に伸ばされたその手を、今まで以上に愛おしく感じたのだ。
「———うんっ。」
私は、震える足で地面を蹴って、彼の元へと駆けだす。
差し出された手を掴まえた私の手を、彼は当然のように握り返した。
「本当に腹が痛ぇわけじゃねぇんだろうな。」
また歩き出すとすぐに、彼はじとっと疑い深い目で私を見る。
「痛くないよ。大丈夫。」
「新作のアイスが食いてぇからって、我慢してんじゃねぇのか。」
「私はそんなに卑しくない!」
「さぁ、どうだか。わざわざ、SNSで見つけたからって
夜中にコンビニに行きてぇと言い出すやつだからな。」
悪戯に目を細めた彼は、本当にお腹を壊しても知らないぞ、と叱るように心配をしてくれる。
まるで子供のように、私の体調を気に掛けるのは、出逢った日からの彼の癖だ。
私達の共通の友人達には、過保護な恋人だといつもからかわれている。
「ねぇ、リヴァイ。」
「なんだ?クソがしてぇのか?」
「だから、お腹壊してるわけじゃないってば。」
「なら、なんだ。」
「いつも、私に手を伸ばしてくれて、ありがとう。」
どうしても、そう伝えたくなったのだ。
幸せそうに微笑む私を見て、彼はフッと息を吐くように笑うと、髪をクシャリと撫でた。
その夜、家に帰るまでずっと、私達の手が離れなかった。
愛する人の手を掴む喜びを教えてくれた人
初めて、彼女に出逢った日。
生まれてきて今まで感じたこともない絶望が、俺を襲った。
心から大切に思っていたものが、手を掠めて消えていく。そんな感覚に、立っていられなくなったのだ。
今度こそ、彼女の手を掴んで守ってやりたい———まるで前世からの因縁のように俺はそう誓っていた。
そして今、俺が手を伸ばす先に、幸せそうに微笑み返す彼女がいてくれることが、こんなにも幸せだと知ることが出来た。
だからこれからもどうか、俺が手を伸ばす先には、君にいて欲しい。
そしてどうか、俺の手が虚しく空気を切ることがないように、強く握り返してくれ。
君のいない人生なんて、もう二度と、御免なんだ。
俺はずっと、死ぬまでずっと、君だけに手を伸ばし続けるから————。
苦しくなる心臓と共に、立ち止まり動かなくなる私の両脚。
私の身体を流れていく冷たい空気が、ヒューヒューと鳴るから、まるで風が泣いているように聞こえた。
「どうした?」
隣を歩いていたはずの彼が、ついてこない私に気が付いて振り返った。
首を傾げる彼に、ひどく傷ついた顔で涙を流す姿がフラッシュバックする。
出逢った日から今日まで、彼が泣いているところなんて、一度も見たことがないはずなのに。
「腹でも痛ぇのか?」
見当違いの心配をして、眉尻を下げる彼が可笑しくて思わず吹き出してしまう。
すると、負けず嫌いの彼は、今度は不機嫌そうに眉を顰めた。
「ボーッとしてねぇで、行くぞ。」
そう言って、彼が私に差し伸べる手を見た、その時だった。
私は、人生で一度も味わったことのない胸の苦しみに襲われたのだ。
それは痛みになって、私を足元から崩れ落とそうとする。
その理由は分からない。
けれど、今までも何度だって私に伸ばされたその手を、今まで以上に愛おしく感じたのだ。
「———うんっ。」
私は、震える足で地面を蹴って、彼の元へと駆けだす。
差し出された手を掴まえた私の手を、彼は当然のように握り返した。
「本当に腹が痛ぇわけじゃねぇんだろうな。」
また歩き出すとすぐに、彼はじとっと疑い深い目で私を見る。
「痛くないよ。大丈夫。」
「新作のアイスが食いてぇからって、我慢してんじゃねぇのか。」
「私はそんなに卑しくない!」
「さぁ、どうだか。わざわざ、SNSで見つけたからって
夜中にコンビニに行きてぇと言い出すやつだからな。」
悪戯に目を細めた彼は、本当にお腹を壊しても知らないぞ、と叱るように心配をしてくれる。
まるで子供のように、私の体調を気に掛けるのは、出逢った日からの彼の癖だ。
私達の共通の友人達には、過保護な恋人だといつもからかわれている。
「ねぇ、リヴァイ。」
「なんだ?クソがしてぇのか?」
「だから、お腹壊してるわけじゃないってば。」
「なら、なんだ。」
「いつも、私に手を伸ばしてくれて、ありがとう。」
どうしても、そう伝えたくなったのだ。
幸せそうに微笑む私を見て、彼はフッと息を吐くように笑うと、髪をクシャリと撫でた。
その夜、家に帰るまでずっと、私達の手が離れなかった。
愛する人の手を掴む喜びを教えてくれた人
初めて、彼女に出逢った日。
生まれてきて今まで感じたこともない絶望が、俺を襲った。
心から大切に思っていたものが、手を掠めて消えていく。そんな感覚に、立っていられなくなったのだ。
今度こそ、彼女の手を掴んで守ってやりたい———まるで前世からの因縁のように俺はそう誓っていた。
そして今、俺が手を伸ばす先に、幸せそうに微笑み返す彼女がいてくれることが、こんなにも幸せだと知ることが出来た。
だからこれからもどうか、俺が手を伸ばす先には、君にいて欲しい。
そしてどうか、俺の手が虚しく空気を切ることがないように、強く握り返してくれ。
君のいない人生なんて、もう二度と、御免なんだ。
俺はずっと、死ぬまでずっと、君だけに手を伸ばし続けるから————。
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