赤い花火が咲く夏の夜
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結局、分隊長の尻拭いがやっと終わったのは、花火大会が始まった後だった。
ミケさんの執務室まで書類を届けに行った帰り、昨晩のように、シンと静まり返った兵舎の廊下を、私は独りきりでぼんやりとしながら歩く。
いつもなら、賑やかな仲間達の声がまだ聞こえている時間なのだけれど、今夜は調査兵のほとんどが花火大会に出かけているらしい。
胸ポケットから取り出した懐中時計を確認すれば、もうそろそろ花火が上がる時間だった。
(リヴァイ兵長の隣で見る花火は、どれくらい綺麗なんだろう。)
そんなことを考えてしまって自己嫌悪に陥る。
どうせ、リヴァイ兵長と花火大会に行く約束をしていたとしても、一緒に行くことは叶わなかったのだ。
だから、ちょうどよかったじゃないか———そんな風に自分を慰めるしかなかった。
(今夜はもうお風呂に入って早めに寝よう。)
そして、早く失恋なんて忘れてしまおう——。
そんなことを考えながら宿舎の廊下を曲がった私は、自室の扉の前に人影を見つけた。
すぐに私に気がついて、こちらを見たのは、リヴァイ兵長だった。
視線が合えば、いつものようにドキッとしてしまう。
でも、すぐに私を支配したのは、疑問だった。
「遅ぇ。どこ行ってやがった。」
「え…、あ…あの、どうしてここに…?」
私がやって来た途端に不機嫌そうに口を尖らせたリヴァイ兵長に、混乱してしまう。
だって、今頃、リヴァイ兵長はペトラと2人で幸せそうに花火を見上げているはずだったのだ。
それなのに、どうして———。
私を待っていたようだったから、何か仕事を残していてリヴァイ兵長の大事なデートを台無しにしてしまったのかもしれないと、必死に頭をまわす。
「あ?一緒に花火大会に行くと約束しただろおが。
忘れてたとは言わせねぇぞ。」
「そんな…!忘れてなんていません…っ。
ミケさんから頼まれた仕事が今、終わったところで…っ。」
「チッ、ミケのクソ野郎が。
部屋にはいねぇし、いつまで待っても戻って来ねぇし、
ひとりで勝手に行っちまったのかと思ったじゃねぇか。」
リヴァイ兵長は文句を言った後に、ため息を吐いた。
でも、どこかホッとしているようにも見えたのだ。
もしかして、本当に、私と花火大会に行くつもりだったのだろうか。
でも、だって——、それならどうして———。
「ペトラと…、行くんだと思ってました…。
行かなくても、いいんですか?念願の、デートなんですよね…?」
言いながら、胸が引き裂かれそうだった。
だって、消えないのだ。瞼の裏に焼き付いた光景が、耳まで赤く染めたリヴァイ兵長の照れた表情が、私をずっと苦しめる。
早く、忘れてしまいたいのに——。
あぁ、もういっそ、ペトラと恋人なのだとそう言ってくれたら、この恋を終わりにできるのに———。
「あ?」
私の気持ちなんて知るはずもなく、リヴァイ兵長が、これでもかと言う程に眉を顰めた。
彼を纏う雰囲気まで怒りに変わった気がした。
「この前、花火大会の日に部屋に迎えに行くってペトラを誘ってるのを見たんですっ。
ペトラも楽しみって言ってたから、2人で行くんだと思ってて…っ。
一緒に行ってもらえないなら残業して忘れちゃおうって…、」
慌てて言い訳をした私は、リヴァイ兵長が目を見開いたのを見て、自分が口を滑らせてしまったことに気づく。
これでは、私が、2人の秘密の逢瀬をコッソリ盗み見をしていたと暴露したようなものだ。
「あ、あの、ごめんなさい…!私、盗み見しようと思ったわけじゃなくてっ。
なかなか眠れなくて廊下をフラフラしてたら、偶々っ。」
「あれはただの訓練だ。」
私の早口の言い訳に重ねて、リヴァイ兵長が口を開いた。
でも、よく意味が分からなかった。
「訓練?」
「お前を誘う、訓練だ…っ。」
リヴァイ兵長は、私から目を反らすようにして斜め下へと視線を向ける。
廊下の板張りを見ているのかどうかも分からないリヴァイ兵長は、ひどく恥ずかしそうにしていて、耳まで真っ赤だ。
そのときだった。
ヒューーー、という高い音が聞こえた後、大きな爆発音が響いた。
その途端に、物寂しかった薄暗い廊下が赤や黄色、緑の鮮やかな光で満たされた。
何度も何度も、大きな爆発音が響くとともに、綺麗な光が私達をいろんな色に変えていく。
でも、その間もずっと、リヴァイ兵長の頬だけはずっと真っ赤で———。
「…悪い。俺がもっと早く声をかけるべきだった。
そうすれば、お前に残業なんかさせねぇで花火を見せてやれたのに。」
リヴァイさんが、悔しそうに言う。
でも、私は首を横に振った。
「花火を見るよりも、ずっと素敵なものが見られたから、いいんです。」
不思議そうにするリヴァイ兵長に、私はクスリと笑った。
すると、リヴァイ兵長が、やっぱりまた頬を赤くしてチッと舌打ちをする。
今夜、私とあなたの頬に、花火よりも鮮やかな赤が咲いた
ねぇ、リヴァイ兵長。
なんだ?
どうせ、今夜はみんないないし、2人で少し羽目を外しません?
くだらねぇことを企んでる顔だな、悪くねぇ。
じゃあ、何しましょうか。
お前が考えるんじゃねぇのかよ。
私を誘う前に他の娘を誘った罰ですよ。
チッ。
だからもう、私以外の娘を誘わないでくださいね。
訓練なら、
訓練でもダメです!
…分かってる。
ふふ。
機嫌がいいな。
だって、今年は凄く素敵な夏になりそうだから。
バカか。これからは、毎年だ。
ミケさんの執務室まで書類を届けに行った帰り、昨晩のように、シンと静まり返った兵舎の廊下を、私は独りきりでぼんやりとしながら歩く。
いつもなら、賑やかな仲間達の声がまだ聞こえている時間なのだけれど、今夜は調査兵のほとんどが花火大会に出かけているらしい。
胸ポケットから取り出した懐中時計を確認すれば、もうそろそろ花火が上がる時間だった。
(リヴァイ兵長の隣で見る花火は、どれくらい綺麗なんだろう。)
そんなことを考えてしまって自己嫌悪に陥る。
どうせ、リヴァイ兵長と花火大会に行く約束をしていたとしても、一緒に行くことは叶わなかったのだ。
だから、ちょうどよかったじゃないか———そんな風に自分を慰めるしかなかった。
(今夜はもうお風呂に入って早めに寝よう。)
そして、早く失恋なんて忘れてしまおう——。
そんなことを考えながら宿舎の廊下を曲がった私は、自室の扉の前に人影を見つけた。
すぐに私に気がついて、こちらを見たのは、リヴァイ兵長だった。
視線が合えば、いつものようにドキッとしてしまう。
でも、すぐに私を支配したのは、疑問だった。
「遅ぇ。どこ行ってやがった。」
「え…、あ…あの、どうしてここに…?」
私がやって来た途端に不機嫌そうに口を尖らせたリヴァイ兵長に、混乱してしまう。
だって、今頃、リヴァイ兵長はペトラと2人で幸せそうに花火を見上げているはずだったのだ。
それなのに、どうして———。
私を待っていたようだったから、何か仕事を残していてリヴァイ兵長の大事なデートを台無しにしてしまったのかもしれないと、必死に頭をまわす。
「あ?一緒に花火大会に行くと約束しただろおが。
忘れてたとは言わせねぇぞ。」
「そんな…!忘れてなんていません…っ。
ミケさんから頼まれた仕事が今、終わったところで…っ。」
「チッ、ミケのクソ野郎が。
部屋にはいねぇし、いつまで待っても戻って来ねぇし、
ひとりで勝手に行っちまったのかと思ったじゃねぇか。」
リヴァイ兵長は文句を言った後に、ため息を吐いた。
でも、どこかホッとしているようにも見えたのだ。
もしかして、本当に、私と花火大会に行くつもりだったのだろうか。
でも、だって——、それならどうして———。
「ペトラと…、行くんだと思ってました…。
行かなくても、いいんですか?念願の、デートなんですよね…?」
言いながら、胸が引き裂かれそうだった。
だって、消えないのだ。瞼の裏に焼き付いた光景が、耳まで赤く染めたリヴァイ兵長の照れた表情が、私をずっと苦しめる。
早く、忘れてしまいたいのに——。
あぁ、もういっそ、ペトラと恋人なのだとそう言ってくれたら、この恋を終わりにできるのに———。
「あ?」
私の気持ちなんて知るはずもなく、リヴァイ兵長が、これでもかと言う程に眉を顰めた。
彼を纏う雰囲気まで怒りに変わった気がした。
「この前、花火大会の日に部屋に迎えに行くってペトラを誘ってるのを見たんですっ。
ペトラも楽しみって言ってたから、2人で行くんだと思ってて…っ。
一緒に行ってもらえないなら残業して忘れちゃおうって…、」
慌てて言い訳をした私は、リヴァイ兵長が目を見開いたのを見て、自分が口を滑らせてしまったことに気づく。
これでは、私が、2人の秘密の逢瀬をコッソリ盗み見をしていたと暴露したようなものだ。
「あ、あの、ごめんなさい…!私、盗み見しようと思ったわけじゃなくてっ。
なかなか眠れなくて廊下をフラフラしてたら、偶々っ。」
「あれはただの訓練だ。」
私の早口の言い訳に重ねて、リヴァイ兵長が口を開いた。
でも、よく意味が分からなかった。
「訓練?」
「お前を誘う、訓練だ…っ。」
リヴァイ兵長は、私から目を反らすようにして斜め下へと視線を向ける。
廊下の板張りを見ているのかどうかも分からないリヴァイ兵長は、ひどく恥ずかしそうにしていて、耳まで真っ赤だ。
そのときだった。
ヒューーー、という高い音が聞こえた後、大きな爆発音が響いた。
その途端に、物寂しかった薄暗い廊下が赤や黄色、緑の鮮やかな光で満たされた。
何度も何度も、大きな爆発音が響くとともに、綺麗な光が私達をいろんな色に変えていく。
でも、その間もずっと、リヴァイ兵長の頬だけはずっと真っ赤で———。
「…悪い。俺がもっと早く声をかけるべきだった。
そうすれば、お前に残業なんかさせねぇで花火を見せてやれたのに。」
リヴァイさんが、悔しそうに言う。
でも、私は首を横に振った。
「花火を見るよりも、ずっと素敵なものが見られたから、いいんです。」
不思議そうにするリヴァイ兵長に、私はクスリと笑った。
すると、リヴァイ兵長が、やっぱりまた頬を赤くしてチッと舌打ちをする。
今夜、私とあなたの頬に、花火よりも鮮やかな赤が咲いた
ねぇ、リヴァイ兵長。
なんだ?
どうせ、今夜はみんないないし、2人で少し羽目を外しません?
くだらねぇことを企んでる顔だな、悪くねぇ。
じゃあ、何しましょうか。
お前が考えるんじゃねぇのかよ。
私を誘う前に他の娘を誘った罰ですよ。
チッ。
だからもう、私以外の娘を誘わないでくださいね。
訓練なら、
訓練でもダメです!
…分かってる。
ふふ。
機嫌がいいな。
だって、今年は凄く素敵な夏になりそうだから。
バカか。これからは、毎年だ。
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