翼を失った小鳥達の愛の歌
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痩せて骨と皮だけになった身体には、白いレースのウェディングドレスは重過ぎた。
久しぶりに立ち上がったせいでよろける私を、リヴァイが愛おしそうに抱き上げる。
私はもう本当に、歩くことすら出来ないらしい。
『リヴァイと一緒に、月が見たい。
初めてのデートの場所で、愛を誓い合いたい。』
これから2人きりで結婚式をしようと言うリヴァイに、私はひどく久しぶりに、自分のしたいことを口にした。
もうずっと、ただじっと虚ろな目で、ぼんやりとしているだけだった私のおねだりに、リヴァイも驚いていた。
でも、すぐに、嬉しそうに破顔して、私の願いを受け入れた。
自由に空を飛び回る調査兵達が寝静まった真夜中、私は、リヴァイに横抱きに抱えられて、地下牢から上がって来た。
もう100年ほどの時間が経ってしまったのかもしれないような気がしていたけれど、シンと静まり返った冷たい廊下は、私の記憶にあるままだった。
私を抱えたまま兵舎を出たリヴァイは、ウォール・ローゼの壁の前で立ち止まる。
見上げると、高すぎる壁は、途中から夜の闇に紛れてしまって一番上までは見えなかった。
「振り落とされるなよ。」
遠い日、リヴァイが私に言ったのと同じセリフだった。
あの頃、私は、直属の上官だった彼が大好きで仕方がなかった。
その強さに憧れ、意外と人間臭い彼の人柄を知れば知るほど、惹かれていった。
憧れが恋に変わるのは、あっという間で、彼もまた、まるで奇跡みたいに私を愛してくれた。
そう、こんな風に、狂ってしまうほどに———。
懐かしい立体起動装置のガスが噴射される音がしてすぐに、私達の身体が飛び上がった。
そして、彼に恋に落ちたスピードで、私は壁の上にやって来る。
「リヴァイの隣に立ちたい。あの頃みたいに。」
私を横抱きにしたままにしようとしていたリヴァイは、一瞬だけ、迷うように視線を左右に動かした。
でも、考えがまとまったのか、リヴァイは、一度頷いてから、まるでガラス細工に触れているようにそっと、私の身体を壁の上に降ろした。
思わずよろけそうになった私を、リヴァイの腕が支える。
あぁ、私はもう、リヴァイがいないと生きていけないのだ。
「ありがとう、もう大丈夫よ。」
礼を言って、リヴァイの腕から身体を離した私は、一緒に見たいと言っていた月は見上げずに、壁の下に視線を落とした。
昼間であれば、口を開けて人間が落ちてくるのを今か今かと待ち侘びる巨人が見えたのかもしれない。
でも、月明かりが照らすだけの真夜中では、眼下に終わりのない闇が果てしなく広がっているように見えた。
それは、巨人が口を開いている現実よりも、怖ろしく不気味に思える。
「なまえ。」
リヴァイが、私の名前を呼ぶ。
そして、腰を抱き寄せて、頬に手を添えた。
「永遠の愛を誓うのに、キスは要らないわ。」
目を閉じようとした彼の唇に人差し指を立てる。
リヴァイは、眉を顰めることすらしない。
きっと初めから、分かっていたのだろう。
そうして、彼もまた、それを望んでいたのだ。
いや、もしかしたら私は、彼の呪いに操られているのかもしれない。
それとも、私達はお互いに、愛の呪いに囚われているのだろうか。
もう、今さら、どちらだっていいのだけれど———。
リヴァイの肩を、枝のようになってしまった細い指で押した。
ふわりと、身体が浮くのを感じる。
それはまるで、スローモーションのようだった。
紙よりも軽くなったように感じていた身体が、壁の縁を乗り越えた。
あぁ、久しぶりに、私は空を飛んだのだ。
堕ちていく私を、リヴァイの空虚な瞳がただじっと、見下ろしていた————。
小鳥よ、空を飛べ
切り落とされた翼で、最期に力強く、空を飛べ
最期に妖しい光を放つ月の浮かぶ夜の闇を映した後、目を閉じた。
閉じた瞼には、何も映らない。
今から、私は地面に叩きつけられて、屍と化す。
私を殺したのは、リヴァイだ。
でも、私の瞳が最期に映したのは彼ではないし、彼を想って死ぬわけでもない。
永遠に私を独り占めしたいというリヴァイの願いも、自由に空を飛びたいという私の願いも叶わず、落ちていく。
そう、私の死は、ただの無意味なのだ。
これが、私の愛し方を間違えたリヴァイと、自分の人生を台無しにした自分自身への最大の復讐だ。
雫が落ちてきて、私の頬を濡らした。
雨だろうか。
哀れな小鳥の最期を憂いて、空が泣いているのだろうか。
目を閉じている私には、分からなかった————。
久しぶりに立ち上がったせいでよろける私を、リヴァイが愛おしそうに抱き上げる。
私はもう本当に、歩くことすら出来ないらしい。
『リヴァイと一緒に、月が見たい。
初めてのデートの場所で、愛を誓い合いたい。』
これから2人きりで結婚式をしようと言うリヴァイに、私はひどく久しぶりに、自分のしたいことを口にした。
もうずっと、ただじっと虚ろな目で、ぼんやりとしているだけだった私のおねだりに、リヴァイも驚いていた。
でも、すぐに、嬉しそうに破顔して、私の願いを受け入れた。
自由に空を飛び回る調査兵達が寝静まった真夜中、私は、リヴァイに横抱きに抱えられて、地下牢から上がって来た。
もう100年ほどの時間が経ってしまったのかもしれないような気がしていたけれど、シンと静まり返った冷たい廊下は、私の記憶にあるままだった。
私を抱えたまま兵舎を出たリヴァイは、ウォール・ローゼの壁の前で立ち止まる。
見上げると、高すぎる壁は、途中から夜の闇に紛れてしまって一番上までは見えなかった。
「振り落とされるなよ。」
遠い日、リヴァイが私に言ったのと同じセリフだった。
あの頃、私は、直属の上官だった彼が大好きで仕方がなかった。
その強さに憧れ、意外と人間臭い彼の人柄を知れば知るほど、惹かれていった。
憧れが恋に変わるのは、あっという間で、彼もまた、まるで奇跡みたいに私を愛してくれた。
そう、こんな風に、狂ってしまうほどに———。
懐かしい立体起動装置のガスが噴射される音がしてすぐに、私達の身体が飛び上がった。
そして、彼に恋に落ちたスピードで、私は壁の上にやって来る。
「リヴァイの隣に立ちたい。あの頃みたいに。」
私を横抱きにしたままにしようとしていたリヴァイは、一瞬だけ、迷うように視線を左右に動かした。
でも、考えがまとまったのか、リヴァイは、一度頷いてから、まるでガラス細工に触れているようにそっと、私の身体を壁の上に降ろした。
思わずよろけそうになった私を、リヴァイの腕が支える。
あぁ、私はもう、リヴァイがいないと生きていけないのだ。
「ありがとう、もう大丈夫よ。」
礼を言って、リヴァイの腕から身体を離した私は、一緒に見たいと言っていた月は見上げずに、壁の下に視線を落とした。
昼間であれば、口を開けて人間が落ちてくるのを今か今かと待ち侘びる巨人が見えたのかもしれない。
でも、月明かりが照らすだけの真夜中では、眼下に終わりのない闇が果てしなく広がっているように見えた。
それは、巨人が口を開いている現実よりも、怖ろしく不気味に思える。
「なまえ。」
リヴァイが、私の名前を呼ぶ。
そして、腰を抱き寄せて、頬に手を添えた。
「永遠の愛を誓うのに、キスは要らないわ。」
目を閉じようとした彼の唇に人差し指を立てる。
リヴァイは、眉を顰めることすらしない。
きっと初めから、分かっていたのだろう。
そうして、彼もまた、それを望んでいたのだ。
いや、もしかしたら私は、彼の呪いに操られているのかもしれない。
それとも、私達はお互いに、愛の呪いに囚われているのだろうか。
もう、今さら、どちらだっていいのだけれど———。
リヴァイの肩を、枝のようになってしまった細い指で押した。
ふわりと、身体が浮くのを感じる。
それはまるで、スローモーションのようだった。
紙よりも軽くなったように感じていた身体が、壁の縁を乗り越えた。
あぁ、久しぶりに、私は空を飛んだのだ。
堕ちていく私を、リヴァイの空虚な瞳がただじっと、見下ろしていた————。
小鳥よ、空を飛べ
切り落とされた翼で、最期に力強く、空を飛べ
最期に妖しい光を放つ月の浮かぶ夜の闇を映した後、目を閉じた。
閉じた瞼には、何も映らない。
今から、私は地面に叩きつけられて、屍と化す。
私を殺したのは、リヴァイだ。
でも、私の瞳が最期に映したのは彼ではないし、彼を想って死ぬわけでもない。
永遠に私を独り占めしたいというリヴァイの願いも、自由に空を飛びたいという私の願いも叶わず、落ちていく。
そう、私の死は、ただの無意味なのだ。
これが、私の愛し方を間違えたリヴァイと、自分の人生を台無しにした自分自身への最大の復讐だ。
雫が落ちてきて、私の頬を濡らした。
雨だろうか。
哀れな小鳥の最期を憂いて、空が泣いているのだろうか。
目を閉じている私には、分からなかった————。
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