《謹賀新年》優しい手を繋いで
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年が明けて2日が経った。
でも、私とリヴァイさんに、迎えた新年を喜ぶ余裕はない。
想定以上の人数の参拝客に、万が一にと助っ人として呼んでいたリヴァイさんの後輩であるエルドさん達だけでは対応しきれなかったのだ。
急遽、私の友人であるエレンやミカサ達も呼び出して、駐車場や渋滞している近所の道の誘導や巫女をお願いした。
それでも、雪崩れ込むように細い獣道を上がってやって来た若者達に、私とリヴァイさんはもみくちゃにされ続けた。
リヴァイさん目当ての若い女性の参拝客が大半だけれど、中には、私に会いに来たという若い男性もいた。
アルミンに教えて貰ったことによると、ハンジさんのYouTubeチャンネルによって有名になれたこの神社についてのまとめページというのが出来ていたようで、そこに私の情報も詳しく書かれていたらしい。
私の写真も載っいたと聞いたリヴァイさんが、鬼のように怖い顔をしていた。
今、パソコンが得意なアルミンは、この忙しいときに、リヴァイさんからの阿修羅のような命令を受けて、そのまとめページや晒された私の写真の削除をさせられている。
インターネット上に出てしまった写真を消すことはほとんど100パーセント無理だと聞いたことがあるけれど、本当に出来るのだろうか———。
「本当にお疲れさまでした。」
夜、居間の炬燵で休んでいるリヴァイさんに紅茶を出した。
「あぁ、助かる。ありがとう。」
紅茶を受け取ったリヴァイさんの隣に、私も腰を降ろした。
三が日も過ぎていないし、まだ参拝客は続々とやって来ているけれど、大晦日から一睡も出来ていない私達を心配した友人達に促されて、今日はこのまま休ませてもらうことになったのだ。
今は、近くの神社のピクシス宮司が来てくれて、対応してくれている。
明日のお昼からはまた、神社に出て嬉しい悲鳴に忙しい1日が始まる。
「よかったな。」
私が隣に座ると、リヴァイさんが小さく微笑んだ。
でも、私は困ったように首を竦めた。
「こんなに参拝客がやってくるお正月、生まれてきて初めてで
嬉しいのか、驚いたのか、自分でもよく分かりません。」
嬉しくないと言えば、それは絶対に嘘になる。
でも、慌ただし過ぎて、それを実感する余裕がないのだ。
それは、リヴァイさんも同じだったのか、肯定の返事が返ってきた。
でも、私はそれだけじゃない。
本当は、あまり嬉しくない。
だって———。
「それに…、リヴァイさんの周りにいつも綺麗な女の人達がいて…、
これからもきっと、リヴァイさんに会いに来るんだろうし…、嫌だなって…。」
「あ?」
「だ…、だって…っ。リヴァイさんが、他の人を好きになっちゃうかもしれないし…、
やっと…っ、片想いが、実ったと思ったのに…。」
尻すぼみに本音を零しながら、私は握りしめた紅茶を見下ろす。
こんな風に、甘えたことを言えるのだから、リヴァイさんの気持ちを心の奥では信じているのだ。
だって、彼はとても誠実な人だと、私は誰よりも知っている自信がある。
だから私は、彼の心変わりを心配しているわけじゃない。
これはそう、ただの嫉妬だ。
醜くて、どす黒い、嫉妬なのだ。
「馬鹿か。」
リヴァイさんが、私の頭に手を乗せて、少し乱暴に髪をクシャリとする。
心配するな、とか、心変わりなんかしない、とか、そんなことを言うのかと思った。
でも、違った。
リヴァイさんは、少し怒ったような顔で、言う。
「やっと片想いが実ったのは、俺の方だ。どれだけ俺が我慢して来たと思ってんだ。
なまえの写真だけ見て会いに来やがったクソガキ共に、くれてやる気はねぇ。
お前は俺のもんだ。やっと掴んだお前の手を、一生離す気はねぇからな。」
リヴァイさんは、真剣に私を見つめた。
だから、私は吹き出して笑ってしまう。
だって、嬉しかったから。
嫉妬してたのは、私だけじゃなかったのだ。
彼も同じように、恋をしてる。
ヤキモチなんて、妬いちゃうくらいに、私を独り占めしたいと想ってくれている。
「笑ってられるとは、随分と余裕だな。」
不機嫌に肩を掴まれたときにはもう、私を見下ろすリヴァイさん越しに、古い天井を見上げていた。
驚いた私と目が合うと、リヴァイさんが、意地悪く口の端を上げた。
「すぐに、笑ってられなくしてやるよ。」
笑われたのが気に入らなかったのか、それとも、ただ本当に、我慢の限界だったのかは分からないけれど———。
どちらにしろ、私がとても幸せなことには変わりはない。
「部屋に行きましょうよ。」
「もう待てねぇ。」
リヴァイさんが私の首筋に噛みついた。
小さく跳ねた腰に、リヴァイさんの手が入り込む。
あぁ、このまま、彼に身を委ねたい。
でも——。
「お父さんとお母さんのが…、見てるから…っ。」
肩を押しながら言うと、リヴァイさんの動きが、ピタリと止まった。
そして、仲良く2人並んでいる壁掛けの写真へと視線を向けた後に、私を横抱きに抱えて立ち上がった。
「———お前達の娘は、俺が大事にする。
優しくするし、痛い思いは…、出来るだけさせねぇ。
だから、絶対に覗くんじゃねぇぞ。」
居間を出る前に、リヴァイさんは、両親の写真に本気の顔で、可笑しなことを言う。
だから、思わず笑ってしまって、面白過ぎて、涙まで出て来てしまった。
私を横抱きに抱えて廊下を歩きながら、リヴァイさんが文句を言う。
それすらも、私は嬉しくて、楽しいのだ。
今年はきっと良い年になる。
だって、私には、この世界で一番強い味方がいるから。
私はもう、泣くことさえ怖くない
優しい手で私を守り続けてくれるあなたがいるから
毎年、凍えるほどに寒くなる年末年始の夜。
私は、暖かい腕に包まれて、微睡みの中にいた。
「寝るのか?」
「ん~…。」
返事になっていないそれに、ククッと喉を鳴らして笑う彼の優しい声が聞こえる。
それすらも今の私には心地の良い子守唄のようだった。
でも、大切なことを言ってないことを思い出す。
「リヴァイさん。」
「どうした?」
ギュッと腰に抱き着きつく私に、リヴァイさんの優しい声が落ちてくる。
あぁ、本当に幸せだ。
「あけまして、おめでとうございます。」
「あぁ…!おめでとう。
そういえば、バタバタしてて言ってなかったな。」
「今年も、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、来年も再来年も、一生、よろしくな。」
「はい、ずっと。」
心地の良い音色みたいに、リヴァイさんの優しい唇が落ちてくる。
大切な人達から受け継いで来た大切な居場所で、私はこれからも大切な人と生きていくーーーー。
※モブリットさんが撮ってくれた進撃神社のポスターです。こんな神主様がいる神社なら、毎日通って、毎日御賽銭とお祈りを捧げます。
でも、私とリヴァイさんに、迎えた新年を喜ぶ余裕はない。
想定以上の人数の参拝客に、万が一にと助っ人として呼んでいたリヴァイさんの後輩であるエルドさん達だけでは対応しきれなかったのだ。
急遽、私の友人であるエレンやミカサ達も呼び出して、駐車場や渋滞している近所の道の誘導や巫女をお願いした。
それでも、雪崩れ込むように細い獣道を上がってやって来た若者達に、私とリヴァイさんはもみくちゃにされ続けた。
リヴァイさん目当ての若い女性の参拝客が大半だけれど、中には、私に会いに来たという若い男性もいた。
アルミンに教えて貰ったことによると、ハンジさんのYouTubeチャンネルによって有名になれたこの神社についてのまとめページというのが出来ていたようで、そこに私の情報も詳しく書かれていたらしい。
私の写真も載っいたと聞いたリヴァイさんが、鬼のように怖い顔をしていた。
今、パソコンが得意なアルミンは、この忙しいときに、リヴァイさんからの阿修羅のような命令を受けて、そのまとめページや晒された私の写真の削除をさせられている。
インターネット上に出てしまった写真を消すことはほとんど100パーセント無理だと聞いたことがあるけれど、本当に出来るのだろうか———。
「本当にお疲れさまでした。」
夜、居間の炬燵で休んでいるリヴァイさんに紅茶を出した。
「あぁ、助かる。ありがとう。」
紅茶を受け取ったリヴァイさんの隣に、私も腰を降ろした。
三が日も過ぎていないし、まだ参拝客は続々とやって来ているけれど、大晦日から一睡も出来ていない私達を心配した友人達に促されて、今日はこのまま休ませてもらうことになったのだ。
今は、近くの神社のピクシス宮司が来てくれて、対応してくれている。
明日のお昼からはまた、神社に出て嬉しい悲鳴に忙しい1日が始まる。
「よかったな。」
私が隣に座ると、リヴァイさんが小さく微笑んだ。
でも、私は困ったように首を竦めた。
「こんなに参拝客がやってくるお正月、生まれてきて初めてで
嬉しいのか、驚いたのか、自分でもよく分かりません。」
嬉しくないと言えば、それは絶対に嘘になる。
でも、慌ただし過ぎて、それを実感する余裕がないのだ。
それは、リヴァイさんも同じだったのか、肯定の返事が返ってきた。
でも、私はそれだけじゃない。
本当は、あまり嬉しくない。
だって———。
「それに…、リヴァイさんの周りにいつも綺麗な女の人達がいて…、
これからもきっと、リヴァイさんに会いに来るんだろうし…、嫌だなって…。」
「あ?」
「だ…、だって…っ。リヴァイさんが、他の人を好きになっちゃうかもしれないし…、
やっと…っ、片想いが、実ったと思ったのに…。」
尻すぼみに本音を零しながら、私は握りしめた紅茶を見下ろす。
こんな風に、甘えたことを言えるのだから、リヴァイさんの気持ちを心の奥では信じているのだ。
だって、彼はとても誠実な人だと、私は誰よりも知っている自信がある。
だから私は、彼の心変わりを心配しているわけじゃない。
これはそう、ただの嫉妬だ。
醜くて、どす黒い、嫉妬なのだ。
「馬鹿か。」
リヴァイさんが、私の頭に手を乗せて、少し乱暴に髪をクシャリとする。
心配するな、とか、心変わりなんかしない、とか、そんなことを言うのかと思った。
でも、違った。
リヴァイさんは、少し怒ったような顔で、言う。
「やっと片想いが実ったのは、俺の方だ。どれだけ俺が我慢して来たと思ってんだ。
なまえの写真だけ見て会いに来やがったクソガキ共に、くれてやる気はねぇ。
お前は俺のもんだ。やっと掴んだお前の手を、一生離す気はねぇからな。」
リヴァイさんは、真剣に私を見つめた。
だから、私は吹き出して笑ってしまう。
だって、嬉しかったから。
嫉妬してたのは、私だけじゃなかったのだ。
彼も同じように、恋をしてる。
ヤキモチなんて、妬いちゃうくらいに、私を独り占めしたいと想ってくれている。
「笑ってられるとは、随分と余裕だな。」
不機嫌に肩を掴まれたときにはもう、私を見下ろすリヴァイさん越しに、古い天井を見上げていた。
驚いた私と目が合うと、リヴァイさんが、意地悪く口の端を上げた。
「すぐに、笑ってられなくしてやるよ。」
笑われたのが気に入らなかったのか、それとも、ただ本当に、我慢の限界だったのかは分からないけれど———。
どちらにしろ、私がとても幸せなことには変わりはない。
「部屋に行きましょうよ。」
「もう待てねぇ。」
リヴァイさんが私の首筋に噛みついた。
小さく跳ねた腰に、リヴァイさんの手が入り込む。
あぁ、このまま、彼に身を委ねたい。
でも——。
「お父さんとお母さんのが…、見てるから…っ。」
肩を押しながら言うと、リヴァイさんの動きが、ピタリと止まった。
そして、仲良く2人並んでいる壁掛けの写真へと視線を向けた後に、私を横抱きに抱えて立ち上がった。
「———お前達の娘は、俺が大事にする。
優しくするし、痛い思いは…、出来るだけさせねぇ。
だから、絶対に覗くんじゃねぇぞ。」
居間を出る前に、リヴァイさんは、両親の写真に本気の顔で、可笑しなことを言う。
だから、思わず笑ってしまって、面白過ぎて、涙まで出て来てしまった。
私を横抱きに抱えて廊下を歩きながら、リヴァイさんが文句を言う。
それすらも、私は嬉しくて、楽しいのだ。
今年はきっと良い年になる。
だって、私には、この世界で一番強い味方がいるから。
私はもう、泣くことさえ怖くない
優しい手で私を守り続けてくれるあなたがいるから
毎年、凍えるほどに寒くなる年末年始の夜。
私は、暖かい腕に包まれて、微睡みの中にいた。
「寝るのか?」
「ん~…。」
返事になっていないそれに、ククッと喉を鳴らして笑う彼の優しい声が聞こえる。
それすらも今の私には心地の良い子守唄のようだった。
でも、大切なことを言ってないことを思い出す。
「リヴァイさん。」
「どうした?」
ギュッと腰に抱き着きつく私に、リヴァイさんの優しい声が落ちてくる。
あぁ、本当に幸せだ。
「あけまして、おめでとうございます。」
「あぁ…!おめでとう。
そういえば、バタバタしてて言ってなかったな。」
「今年も、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、来年も再来年も、一生、よろしくな。」
「はい、ずっと。」
心地の良い音色みたいに、リヴァイさんの優しい唇が落ちてくる。
大切な人達から受け継いで来た大切な居場所で、私はこれからも大切な人と生きていくーーーー。
※モブリットさんが撮ってくれた進撃神社のポスターです。こんな神主様がいる神社なら、毎日通って、毎日御賽銭とお祈りを捧げます。
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