やっと言える
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
壁外調査が終わって帰ってきたばかりでも、仕事があるというのは嘘ではなくて、私は書類に必要な資料を探すために図書室に来ていた。
これまでの多くの調査兵達が命を賭して作り上げた資料は、図書室の一番奥にある棚に数えきれないほどに並んでいる。
大体の目星をつけた場所から、資料を手に取って簡単に目を通しながら、必要な情報を確かめる。
細かい書類作業が苦手なミケが直属の上官である私は、ここにある資料の内容をそれなりに把握していた。
すぐにお目当ての資料を見つけ、そのまま図書室の机で資料作成を始めた。
書類の半分ほどが文字で埋められた頃、図書室の扉が開く音が聞こえた。
壁外調査直後の夜、こんなところにやって来るのは、1人くらいしか思いつかなかった。
ふわりと香ってきた紅茶に、それは間違いではなかったと確信する。
「いつもご苦労だな。」
リヴァイはそう言うと、ティーカップを机の上に置いた。
そして、気だるげに机に寄り掛かって、自分の分の紅茶を口に運ぶ。
私もペンを置き、礼を言った後に、ティーカップを手に取った。
壁外調査の後、私が図書室にいることをリヴァイが知るようになったのはいつの頃だっただろう。
地下街のゴロツキだった彼が調査兵団に入団した頃、私はまだ新兵を少し過ぎたばかりの調査兵だった。
あの頃から私は、誰もいないこの場所で、勇敢に散った仲間の死に打ちのめされていた。
泣き顔を見られた日のことなら、覚えている。
きっと、拭おうとして伸びた彼の手は、私に触れる前に落ちて、その代わり、こうして紅茶を持ってきてくれたんだっけ。
あの日から、私がひとりで抱えた傷を癒すのは、リヴァイが持ってきてくれる甘くて苦い紅茶になったー。
この時間は、私にとってどんな時間よりも尊い。
たとえ、優しい恋人が出来ても、彼に可愛らしい恋人が出来ても、失いたくないくらいー。
「ここに来る途中でペトラに会ったわよ。
リヴァイのこと探してたけど、会えた?」
「…いや、会ってねぇ。」
リヴァイは、チラリと私を見てから答えた。
「そう。それならまだ、リヴァイのこと探してるかもね。」
会いに行ってあげたらー、そう言うところなのかもしれない。
私もリヴァイも分かっていて、ティーカップで口元を隠し続けている。
「なまえは、モブリットが探してんじゃねぇのか。」
「私は大丈夫。さっきまで一緒に部屋に居たから。」
「そうか。」
短く答えたきり、リヴァイは口を噤んだ。
今、彼は何を考えているのだろう。
私が恋人のモブリットと部屋で何をしていたのかー。
それを考えているから、苦し気に眉を顰めているのだろうか。
モブリットと一緒に部屋にいたと答えた瞬間、ほんの一瞬だけ空気が変わったのに、私は気づいていた。
それはただの、願望だろうか。
ふとした仕草に、リヴァイが隠しているかもしれない気持ちを、ただひたすら探してばかりいるからー。
リヴァイに気づかれないように小さく首を横に振って、私は資料を手に取った。
本当に読んでいるかもわからないまま、ティーカップで口を隠しながら資料に目を通す。
そうやって誤魔化そうとしたのがいけなかったのだろう。
唇に届く前に、傾けたティーカップから紅茶が零れて私のシャツの胸元を濡らした。
「熱…っ!」
ビックリした拍子に思わずティーカップから手まで放してしまった。
白いシャツの胸元が紅茶の染みを作りながら濡れて、ティーカップが床に当たって割れる。
あぁ、こんな風に不誠実なくせに一途すぎる気持ちも割れて砕けたらー。
「…!?何やってんだっ!」
怒ったように言ったリヴァイは、自分のスカーフを乱暴に外した。
そして、濡れた私のシャツを雑にはだけさせて、胸元を拭く。
リヴァイのスカーフの下では、女のカタチと下着を見せつけていたけれど、リヴァイは気にならないようだった。
だから、ズキンと痛んだ胸は、気をつけろと苛立ったように言われたせいだったことにした。
「ったく、ハンジさんも人使い荒いよな。
壁外調査から帰ってきてすぐに、書類仕事とかあの人は働き過ぎだ。」
「早く本探して、終わらせちまおう。」
乱暴に開いた扉から聞き覚えのある調査兵達の声がした。
ハンジ班の調査兵のようだーと思ったときには、リヴァイに腕を引っぱられていた。
一番奥の本棚の裏で身を隠すようにして、リヴァイの腕の中に私はいた。
あっという間の出来事で驚いた私は、すぐそこの本棚で本を探しているらしい調査兵達に聞こえないように小さな声で訊ねる。
「なんで、隠れるの?」
「そんな恰好、男に見せるわけにはいかねぇだろ。」
小さな声で答えたリヴァイは、相変わらず苛立っていた。
勝手なことをする腕の中で、私は自分の胸元を見下ろす。
はだけたシャツに露になった肌は、少し赤くはなっているけれど、火傷にはなっていなさそうだ。
でも、心はもうとっくに焦げ付いていて、ジリジリと私を追い詰めていくー。
同じように焦げてくれないだろうか。
そんな願いを込めて、リヴァイの胸にそっと手を添えた。
腕の中で視線を上げれば、あの切れ長の綺麗な瞳がとても近くにあった。
ただじっと見つめたら、彼の心が読めるだろうかー。
こうしてずっと命が尽きるまで見つめ合ったのなら、死ぬ前までには、彼は私の心を読もうとしてくれるだろうかー。
私達は、さらけ出す勇気を、持てるのだろうかー。
本棚を一枚隔てた向こうからは、気心知れた調査兵達のいつもの日常の会話が聞こえているのに、息を潜めて見つめ合う私達を包むこの空間だけは、別の時空の中にあるみたいだった。
見つめ合ったまま、リヴァイの手が、私の頬に添えられる。
まるで引力がそうさせているみたいに、私達の唇が近づいていく。
漸く、私も彼も、見つめ合う瞳の奥に、昔から本当は知りたかった真実を暴いたー。
だから、早くー。
早く、唇を奪ってー。
もう戻れなくして、そうしないと私ー。
「ケイジ、なまえはいる?」
本棚のすぐ向こうでモブリットの声がした瞬間、私を抱きしめるリヴァイの腕の力が強くなったのを感じた。
私を探していたらしいモブリットに、ケイジ達が机の上に資料や書類はあるが姿は見ていないと答えている声が続いたのを聞きながら、少し強引に唇が押しつけられる。
瞳を閉じれば、強引だった唇とは裏腹に、優しく抱き寄せられた。
初めてのキスなのに、すぐそこに恋人がいて私のことを探しているのに、なぜかとても安心していた。
瘡蓋も出来ずに血を流し続けていた心の傷が、優しく塞がっていくようなー。
そこへ、いつもは誰も来ない図書室なのに、また新しく調査兵が入ってきたようだった。
「モブリットさん達、リヴァイ兵長を見ませんでした?」
リヴァイを探すペトラの声がした瞬間、背徳感は罪悪感に変わった。
思わず、抱きしめる腕から逃れようとリヴァイの胸板を両手で押した。
でも、造作もなく捕まえられて、私はさらにきつく腕の中に閉じ込められてしまった。
そして、驚いたときに無防備に開いてしまった唇の隙間から舌が滑り込まれる。
それこそ逃げるべきだったのかもしれないのに、甘く苦い紅茶の味が私の心も身体も麻痺させた。
もっとしてー。
そう懇願するように、私もリヴァイの咥内に舌を這わせる。
本棚一枚隔てた向こうで、モブリットとペトラがいつまでも見つからない恋人の居場所はどこだろうかと首を傾げている声がする。
それを遠くに聞きながら、私とリヴァイはお互いを激しく求め合う。
はだけたシャツの胸元からリヴァイの手が滑りこまれたのを感じながら、私は背中に手をまわし抱き着き、ひたすら唇に噛みつきあう。
私のシャツはほとんど脱がされて、リヴァイのシャツも胸元がはだけだした頃、気づけばもう図書室には誰もいなくなっていた。
本当に2人きりだ。
あぁ、やっと、言えるー。
本当はずっと、好きだった
たとえ、誰を傷つけてもー。
明日、世界が終ろうともー。
あなたがいればもう、なにも怖くなかったー。
これまでの多くの調査兵達が命を賭して作り上げた資料は、図書室の一番奥にある棚に数えきれないほどに並んでいる。
大体の目星をつけた場所から、資料を手に取って簡単に目を通しながら、必要な情報を確かめる。
細かい書類作業が苦手なミケが直属の上官である私は、ここにある資料の内容をそれなりに把握していた。
すぐにお目当ての資料を見つけ、そのまま図書室の机で資料作成を始めた。
書類の半分ほどが文字で埋められた頃、図書室の扉が開く音が聞こえた。
壁外調査直後の夜、こんなところにやって来るのは、1人くらいしか思いつかなかった。
ふわりと香ってきた紅茶に、それは間違いではなかったと確信する。
「いつもご苦労だな。」
リヴァイはそう言うと、ティーカップを机の上に置いた。
そして、気だるげに机に寄り掛かって、自分の分の紅茶を口に運ぶ。
私もペンを置き、礼を言った後に、ティーカップを手に取った。
壁外調査の後、私が図書室にいることをリヴァイが知るようになったのはいつの頃だっただろう。
地下街のゴロツキだった彼が調査兵団に入団した頃、私はまだ新兵を少し過ぎたばかりの調査兵だった。
あの頃から私は、誰もいないこの場所で、勇敢に散った仲間の死に打ちのめされていた。
泣き顔を見られた日のことなら、覚えている。
きっと、拭おうとして伸びた彼の手は、私に触れる前に落ちて、その代わり、こうして紅茶を持ってきてくれたんだっけ。
あの日から、私がひとりで抱えた傷を癒すのは、リヴァイが持ってきてくれる甘くて苦い紅茶になったー。
この時間は、私にとってどんな時間よりも尊い。
たとえ、優しい恋人が出来ても、彼に可愛らしい恋人が出来ても、失いたくないくらいー。
「ここに来る途中でペトラに会ったわよ。
リヴァイのこと探してたけど、会えた?」
「…いや、会ってねぇ。」
リヴァイは、チラリと私を見てから答えた。
「そう。それならまだ、リヴァイのこと探してるかもね。」
会いに行ってあげたらー、そう言うところなのかもしれない。
私もリヴァイも分かっていて、ティーカップで口元を隠し続けている。
「なまえは、モブリットが探してんじゃねぇのか。」
「私は大丈夫。さっきまで一緒に部屋に居たから。」
「そうか。」
短く答えたきり、リヴァイは口を噤んだ。
今、彼は何を考えているのだろう。
私が恋人のモブリットと部屋で何をしていたのかー。
それを考えているから、苦し気に眉を顰めているのだろうか。
モブリットと一緒に部屋にいたと答えた瞬間、ほんの一瞬だけ空気が変わったのに、私は気づいていた。
それはただの、願望だろうか。
ふとした仕草に、リヴァイが隠しているかもしれない気持ちを、ただひたすら探してばかりいるからー。
リヴァイに気づかれないように小さく首を横に振って、私は資料を手に取った。
本当に読んでいるかもわからないまま、ティーカップで口を隠しながら資料に目を通す。
そうやって誤魔化そうとしたのがいけなかったのだろう。
唇に届く前に、傾けたティーカップから紅茶が零れて私のシャツの胸元を濡らした。
「熱…っ!」
ビックリした拍子に思わずティーカップから手まで放してしまった。
白いシャツの胸元が紅茶の染みを作りながら濡れて、ティーカップが床に当たって割れる。
あぁ、こんな風に不誠実なくせに一途すぎる気持ちも割れて砕けたらー。
「…!?何やってんだっ!」
怒ったように言ったリヴァイは、自分のスカーフを乱暴に外した。
そして、濡れた私のシャツを雑にはだけさせて、胸元を拭く。
リヴァイのスカーフの下では、女のカタチと下着を見せつけていたけれど、リヴァイは気にならないようだった。
だから、ズキンと痛んだ胸は、気をつけろと苛立ったように言われたせいだったことにした。
「ったく、ハンジさんも人使い荒いよな。
壁外調査から帰ってきてすぐに、書類仕事とかあの人は働き過ぎだ。」
「早く本探して、終わらせちまおう。」
乱暴に開いた扉から聞き覚えのある調査兵達の声がした。
ハンジ班の調査兵のようだーと思ったときには、リヴァイに腕を引っぱられていた。
一番奥の本棚の裏で身を隠すようにして、リヴァイの腕の中に私はいた。
あっという間の出来事で驚いた私は、すぐそこの本棚で本を探しているらしい調査兵達に聞こえないように小さな声で訊ねる。
「なんで、隠れるの?」
「そんな恰好、男に見せるわけにはいかねぇだろ。」
小さな声で答えたリヴァイは、相変わらず苛立っていた。
勝手なことをする腕の中で、私は自分の胸元を見下ろす。
はだけたシャツに露になった肌は、少し赤くはなっているけれど、火傷にはなっていなさそうだ。
でも、心はもうとっくに焦げ付いていて、ジリジリと私を追い詰めていくー。
同じように焦げてくれないだろうか。
そんな願いを込めて、リヴァイの胸にそっと手を添えた。
腕の中で視線を上げれば、あの切れ長の綺麗な瞳がとても近くにあった。
ただじっと見つめたら、彼の心が読めるだろうかー。
こうしてずっと命が尽きるまで見つめ合ったのなら、死ぬ前までには、彼は私の心を読もうとしてくれるだろうかー。
私達は、さらけ出す勇気を、持てるのだろうかー。
本棚を一枚隔てた向こうからは、気心知れた調査兵達のいつもの日常の会話が聞こえているのに、息を潜めて見つめ合う私達を包むこの空間だけは、別の時空の中にあるみたいだった。
見つめ合ったまま、リヴァイの手が、私の頬に添えられる。
まるで引力がそうさせているみたいに、私達の唇が近づいていく。
漸く、私も彼も、見つめ合う瞳の奥に、昔から本当は知りたかった真実を暴いたー。
だから、早くー。
早く、唇を奪ってー。
もう戻れなくして、そうしないと私ー。
「ケイジ、なまえはいる?」
本棚のすぐ向こうでモブリットの声がした瞬間、私を抱きしめるリヴァイの腕の力が強くなったのを感じた。
私を探していたらしいモブリットに、ケイジ達が机の上に資料や書類はあるが姿は見ていないと答えている声が続いたのを聞きながら、少し強引に唇が押しつけられる。
瞳を閉じれば、強引だった唇とは裏腹に、優しく抱き寄せられた。
初めてのキスなのに、すぐそこに恋人がいて私のことを探しているのに、なぜかとても安心していた。
瘡蓋も出来ずに血を流し続けていた心の傷が、優しく塞がっていくようなー。
そこへ、いつもは誰も来ない図書室なのに、また新しく調査兵が入ってきたようだった。
「モブリットさん達、リヴァイ兵長を見ませんでした?」
リヴァイを探すペトラの声がした瞬間、背徳感は罪悪感に変わった。
思わず、抱きしめる腕から逃れようとリヴァイの胸板を両手で押した。
でも、造作もなく捕まえられて、私はさらにきつく腕の中に閉じ込められてしまった。
そして、驚いたときに無防備に開いてしまった唇の隙間から舌が滑り込まれる。
それこそ逃げるべきだったのかもしれないのに、甘く苦い紅茶の味が私の心も身体も麻痺させた。
もっとしてー。
そう懇願するように、私もリヴァイの咥内に舌を這わせる。
本棚一枚隔てた向こうで、モブリットとペトラがいつまでも見つからない恋人の居場所はどこだろうかと首を傾げている声がする。
それを遠くに聞きながら、私とリヴァイはお互いを激しく求め合う。
はだけたシャツの胸元からリヴァイの手が滑りこまれたのを感じながら、私は背中に手をまわし抱き着き、ひたすら唇に噛みつきあう。
私のシャツはほとんど脱がされて、リヴァイのシャツも胸元がはだけだした頃、気づけばもう図書室には誰もいなくなっていた。
本当に2人きりだ。
あぁ、やっと、言えるー。
本当はずっと、好きだった
たとえ、誰を傷つけてもー。
明日、世界が終ろうともー。
あなたがいればもう、なにも怖くなかったー。
2/2ページ