「私を好きなら、どうして浮気なんてするの…っ。」

謝ったリヴァイは、何かを言おうとしていたけれど、私は言い訳を許さずに、彼を責めた。

「ちょっと待て、どういう———。」
「分かんない…っ。リヴァイが、分かんないよ…っ。」

私は両手で顔を覆って、嗚咽を漏らす。
リヴァイが私を引き留めてくれてホッとしたのか、今まで聞いたことがないような甘い言葉が嬉しかったのか、それとも、浮気を認められたことがショックだったのか。
涙の理由はもう分からない。
リヴァイの考えてることが、分からない。
だって、心変わりの方がまだ理解出来たのだ。
あんなにたくさんの、私の好きなところをすらすらと並べられるくらいに、本当に私を愛してくれているのなら、どうして———。
どうして、他の女の人のことも愛せてしまうのか。
別れ話をするって、彼女に言っていたくせに———。

「あぁ…、そういうことか。」

少しして、リヴァイが小さく何かを呟いたのが聞こえた。
でも、それが何だったのか分からないまま、私は、リヴァイに肩を抱き寄せられていた。
私が5年かけて覚えた力強い腕と紅茶と石鹸の香りに包まれる。
いつも、まるで自分のものみたいに、私を抱きしめては、キスをするリヴァイの仕草が好きだった。
でも、今は、唐突のそれに驚いてしまった。
私の戸惑いは、抱きしめる腕からリヴァイにも伝わったはずだ。
それなのに、彼は、私をもっと戸惑わせることを言い出した。

「結婚しよう。」

耳元から聞こえて来たのは、確かにリヴァイの低い声で、プロポーズのセリフだった。