No more Just Another ...
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彼にとって、ただのよくある〝いつもの金曜の夜〟が始まった。
仕事が終わり、親友の家にやってきた彼は、指定席になっている3人掛けのソファに座って、親友の末の妹に淹れさせた紅茶を飲む。
親友が風呂に向かい、リビングに1人になったタイミングで、彼は、ただのよくある〝いつものため息〟を零した。
あと30分もすれば、彼女を迎えに男がやってくる。
ただのよくある〝友達の友達〟というやつだ。
きっと今頃、彼女は、ポーチから口紅を取り出して、薄い唇を真っ赤に塗り潰しているんだろう。
あの口紅は、子供の頃から変わらない無邪気な笑顔の彼女には、あまり似合わない。
でも、彼女は今夜も、迎えにくる男のために真っ赤な口紅を塗ることを知っている。
そうして、今夜も彼は、好物の紅茶の味もよく分からないまま、自分に言い聞かせる。
(大丈夫。酒を1,2杯飲むだけだ。どうにかなるわけない。)
彼は、表情では、何も気にしていないフリをする。
彼女は、親友の妹で、それ以上でも以下でもない。
そして、2階から聞こえてくる足音も、耳に入っていないみたいに、紅茶を飲む。
それが、ただのよくある〝いつもの光景〟だった。
でも、今夜の彼は、いつもとは違っていた。
飲みかけのティーカップをローテーブルの上に置いて、立ち上がる。
そして、階段の手すりに触れると、2階を見上げた。
彼は、ただのよくある〝恋〟をしていた。
相手は、親友の妹だ。
生意気で、我儘で、凄く美人なわけでもなければ可愛げもない。
でも、なぜか憎めない。無邪気に笑う愛しい女だった。
親友を裏切っている気がして、これまでずっとその気持ちを抑え込んできた。
別の女と付き合ってみたりもした。
でも、彼はもう、限界だった。
そして、もう誤魔化すのはやめることにした。
彼は、階段に足を踏み出した。
そして、一歩、一歩、確実に階段を上がる。
いつもよりも時間をかけて2階にやってきた彼は、彼女の部屋の扉の前に立った。
そうして、彼は、いつもとは全く違うことを、自分に言い聞かせる。
(大丈夫。ただ1言、2言、なまえに伝えるだけだ。)
彼女の部屋の前で、彼は、ただのよくある〝いつもの深呼吸〟をした。
この扉が開けば、〝いつもの金曜の夜〟が終わる。
結末がどうなっても、後悔はしない。
彼女に、伝えるのだ。
ずっと言いたかったことを。
『行くな。』と『俺にしろ。』を————。
I'm sick of, 〝it's just another Friday Night〟
(〝いつもの金曜の夜〟にはもううんざりしてる)
彼女にとって、ただのよくある〝いつもの金曜の夜〟が始まるはずだった。
仕事が終わり、家に帰った彼女は、黒いワンピースに着替えてから、ドレッサーの椅子に座る。
そして、ただのよくある〝いつもの深呼吸〟をしてから、自分自身を見つめようとしたとき、扉を叩く音がした。
扉の向こうからは、彼が彼女の名前を呼ぶ声がする。
彼女は驚きながらも立ち上がり、戸惑いながら扉を開いた。
彼が、少し緊張した面持ちで、ずっと胸に秘めていた気持ちを言葉にする。
今から、彼も彼女も知らない〝初めての金曜の夜〟が始まる—————。
仕事が終わり、親友の家にやってきた彼は、指定席になっている3人掛けのソファに座って、親友の末の妹に淹れさせた紅茶を飲む。
親友が風呂に向かい、リビングに1人になったタイミングで、彼は、ただのよくある〝いつものため息〟を零した。
あと30分もすれば、彼女を迎えに男がやってくる。
ただのよくある〝友達の友達〟というやつだ。
きっと今頃、彼女は、ポーチから口紅を取り出して、薄い唇を真っ赤に塗り潰しているんだろう。
あの口紅は、子供の頃から変わらない無邪気な笑顔の彼女には、あまり似合わない。
でも、彼女は今夜も、迎えにくる男のために真っ赤な口紅を塗ることを知っている。
そうして、今夜も彼は、好物の紅茶の味もよく分からないまま、自分に言い聞かせる。
(大丈夫。酒を1,2杯飲むだけだ。どうにかなるわけない。)
彼は、表情では、何も気にしていないフリをする。
彼女は、親友の妹で、それ以上でも以下でもない。
そして、2階から聞こえてくる足音も、耳に入っていないみたいに、紅茶を飲む。
それが、ただのよくある〝いつもの光景〟だった。
でも、今夜の彼は、いつもとは違っていた。
飲みかけのティーカップをローテーブルの上に置いて、立ち上がる。
そして、階段の手すりに触れると、2階を見上げた。
彼は、ただのよくある〝恋〟をしていた。
相手は、親友の妹だ。
生意気で、我儘で、凄く美人なわけでもなければ可愛げもない。
でも、なぜか憎めない。無邪気に笑う愛しい女だった。
親友を裏切っている気がして、これまでずっとその気持ちを抑え込んできた。
別の女と付き合ってみたりもした。
でも、彼はもう、限界だった。
そして、もう誤魔化すのはやめることにした。
彼は、階段に足を踏み出した。
そして、一歩、一歩、確実に階段を上がる。
いつもよりも時間をかけて2階にやってきた彼は、彼女の部屋の扉の前に立った。
そうして、彼は、いつもとは全く違うことを、自分に言い聞かせる。
(大丈夫。ただ1言、2言、なまえに伝えるだけだ。)
彼女の部屋の前で、彼は、ただのよくある〝いつもの深呼吸〟をした。
この扉が開けば、〝いつもの金曜の夜〟が終わる。
結末がどうなっても、後悔はしない。
彼女に、伝えるのだ。
ずっと言いたかったことを。
『行くな。』と『俺にしろ。』を————。
I'm sick of, 〝it's just another Friday Night〟
(〝いつもの金曜の夜〟にはもううんざりしてる)
彼女にとって、ただのよくある〝いつもの金曜の夜〟が始まるはずだった。
仕事が終わり、家に帰った彼女は、黒いワンピースに着替えてから、ドレッサーの椅子に座る。
そして、ただのよくある〝いつもの深呼吸〟をしてから、自分自身を見つめようとしたとき、扉を叩く音がした。
扉の向こうからは、彼が彼女の名前を呼ぶ声がする。
彼女は驚きながらも立ち上がり、戸惑いながら扉を開いた。
彼が、少し緊張した面持ちで、ずっと胸に秘めていた気持ちを言葉にする。
今から、彼も彼女も知らない〝初めての金曜の夜〟が始まる—————。
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