相変わらずな君と僕
Name change
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流石にいつまでもこのままじゃいけないー。
そう思った俺は、今日が土曜で仕事も休みだったのを利用して、名前がこの家に残して行ったものを片付けてしまうことに決めた。
流石に勝手に捨てることもできないし、全部集めたら名前に連絡して、取りに来るか、俺が送るかするからどうすればいいか聞けばいい。
決して、名前に連絡を取るきっかけが欲しかったわけじゃ、ない。
あれがないこれがないとよくものを失くすところがあったから、見えていないところにもたくさんあるのだろうと予測は出来た。
だから、段ボールがあればよかったのだろうが、仕方なく俺の家にあるもので一番大きな黒いトートバッグを、クローゼットの奥から引っ張り出してきた。
まずは寝室の中から始めれば、案の定、いろんな場所から名前が探していた文庫本や探しもしていなかったガラクタにしか見えない雑貨が出て来た。
その他にも、本棚には俺のと一緒に並んで、名前が好きだった漫画や、結局クリアしないまま飽きてしまったゲームソフトもある。
そのすべてをあまり見もせずに、黒いトートバッグにサッと放り込んだ。
(これは…、アイツも欲しくねぇだろ。)
黒猫のぬいぐるみを一度手に取った後、また白猫のぬいぐるみの隣に戻してやった。
これは、初めてのデートで、俺に似ているから欲しいと言って名前が買ったものだ。
別れたあの日、当然のように、名前に置いて行かれてしまったコイツを初めて自分にそっくりだと思った。
寝室は隅々まで見終わって、リビングでも名前が置いて行ったものを探した。
もともと物を置いていないリビングは、寝室よりも時間はかからなかった。
これで終わりかー。
そう思いながらリビングを見渡した時、ソファの背もたれの下の方に何かがはまっているのに気が付いた。
(なんだ?)
不思議に思いながら指をつっこんで取ってみると、淡いピンク色のマニキュアだった。
見覚えのあるそれに、思わずリビングのローテーブルを見てしまう。
生きるために必要最低限あればいいと思ってる俺は、物が少ないとよく言われる。
でも、そのすべてが俺が厳選したものばかりだ。
このガラス製のローテーブルも、気に入って買ったものだった。
そんな大切なローテーブルは、真ん中から少しズレた場所に淡いピンク色のマニキュアがついている。
シンナー臭いからやめろという俺の話も聞かないで、ダラダラとドラマを見ながらマニキュアを塗っていた名前が、間違ってつけてしまったのだ。
名前はすぐに謝ったし、除光液で消そうとしていたけれど、そもそもシンナー臭い空間にもイライラしていた俺は、テレビを見ながらそんなことするからだとブチギレて話も聞かなかった。
そういえばあれから、名前がマニキュアをしているのを見ていない。
いや、実際は分からない。
だって俺は、名前のことを何も見ていなかったのだから。
髪を切ったって気づいてやれなかった俺が、爪の先の色の違いに気づくはずはないのだ。
無意識に力強く握りしめていたマニキュアも、黒いトートバッグの中に放り投げた。
そして、もう一度、リビングを見渡す
今度こそ本当に、リビングは俺だけの楽園を取り戻したはずだ。
後は、洗面所の棚のほとんどを占領している化粧品と歯ブラシだけだ。
邪魔で仕方のない化粧品も、どうせ3日坊主で終わるのだから無駄だと何度言っても、今度はちゃんと続けるからと聞かない名前がコレクションしたものだ。
せめて3日は使ったのかどうかも怪しい。
アレは、使わないままだったのだし、歯ブラシと一緒に捨ててもいいのかもしれない。
そう思って、俺は一旦、休憩することに決めて、ソファに座る。
黒いトートバッグの中には、名前の欠片が無造作に詰め込まれていた。
なんとなく抱きしめてみると、フワリと名前が気に入ってつけていた香水の匂いが微かにした。
無造作に詰め込まれた名前の忘れ物の中に、見覚えのある香水の瓶があったことを思い出した。
黒いトートバッグの中を漁る俺は、傍から見たら必死過ぎて笑えたと思う。
でも、思いついてしまったのだ。
とてつもなく虚しくて、情けなくて、格好悪くて、でも、俺に唯一出来る名前を感じられる方法をー。
残りが少なくなった香水の瓶を見つけた俺は、慣れない手つきで自分の手首につけた。
その途端に、名前の香りがふわりと俺の身体を包んだ。
そのまま、名前の欠片を集めて詰め込んだ黒いトートバッグを抱きしめれば、香りがさらに強くなった気がした。
そういえば、まだ仲が良かった頃は、よくこうして抱きしめていたなー。
眠たくなったからとか、逆に眠れないからとか、お腹が空いたからとか、暇だからとか、理由なんてあってないようなものだった。
それでも、名前は俺の腕の中で嬉しそうに笑っていた。
化粧もしていない素の笑顔が可愛くて、愛おしくて、仕方なかった。
(あぁ、そうか…。)
あまりにも簡単すぎることに、今さら気づいた俺は、黒いトートバッグを抱きしめたまま、ゴロンとソファに横になった。
俺が名前を抱きしめていたのは、名前が好きだったからだ。
大好きで大好きで、可愛くて仕方がなくて、愛していたから、俺は抱きしめていた。
それなら、背中を合わせて眠るようになった頃の俺は、名前を好きじゃなくなっていたのだろうか。
抱きしめようともしなくなったというのは、そういうことだろうか。
「名前…。」
俺の声はもう名前には届かないと分かっていて、名前を呼んでしまう。
あの頃は、それすら出来なかった。
名前を呼んでも、すぐそこにいる名前に振り向いてもらえなかったら悲しくなると思ったからだ。
臆病な俺は、自分が傷つくのが怖くて、名前に触れられなかったー。
だって、背中越しに感じる名前の気配すら、俺は愛していたからー。
今もこうして、名前の欠片を抱きしめて、もう一度だけでいいから会いたいとひたすら願ってしまうくらいにー。
そう思った俺は、今日が土曜で仕事も休みだったのを利用して、名前がこの家に残して行ったものを片付けてしまうことに決めた。
流石に勝手に捨てることもできないし、全部集めたら名前に連絡して、取りに来るか、俺が送るかするからどうすればいいか聞けばいい。
決して、名前に連絡を取るきっかけが欲しかったわけじゃ、ない。
あれがないこれがないとよくものを失くすところがあったから、見えていないところにもたくさんあるのだろうと予測は出来た。
だから、段ボールがあればよかったのだろうが、仕方なく俺の家にあるもので一番大きな黒いトートバッグを、クローゼットの奥から引っ張り出してきた。
まずは寝室の中から始めれば、案の定、いろんな場所から名前が探していた文庫本や探しもしていなかったガラクタにしか見えない雑貨が出て来た。
その他にも、本棚には俺のと一緒に並んで、名前が好きだった漫画や、結局クリアしないまま飽きてしまったゲームソフトもある。
そのすべてをあまり見もせずに、黒いトートバッグにサッと放り込んだ。
(これは…、アイツも欲しくねぇだろ。)
黒猫のぬいぐるみを一度手に取った後、また白猫のぬいぐるみの隣に戻してやった。
これは、初めてのデートで、俺に似ているから欲しいと言って名前が買ったものだ。
別れたあの日、当然のように、名前に置いて行かれてしまったコイツを初めて自分にそっくりだと思った。
寝室は隅々まで見終わって、リビングでも名前が置いて行ったものを探した。
もともと物を置いていないリビングは、寝室よりも時間はかからなかった。
これで終わりかー。
そう思いながらリビングを見渡した時、ソファの背もたれの下の方に何かがはまっているのに気が付いた。
(なんだ?)
不思議に思いながら指をつっこんで取ってみると、淡いピンク色のマニキュアだった。
見覚えのあるそれに、思わずリビングのローテーブルを見てしまう。
生きるために必要最低限あればいいと思ってる俺は、物が少ないとよく言われる。
でも、そのすべてが俺が厳選したものばかりだ。
このガラス製のローテーブルも、気に入って買ったものだった。
そんな大切なローテーブルは、真ん中から少しズレた場所に淡いピンク色のマニキュアがついている。
シンナー臭いからやめろという俺の話も聞かないで、ダラダラとドラマを見ながらマニキュアを塗っていた名前が、間違ってつけてしまったのだ。
名前はすぐに謝ったし、除光液で消そうとしていたけれど、そもそもシンナー臭い空間にもイライラしていた俺は、テレビを見ながらそんなことするからだとブチギレて話も聞かなかった。
そういえばあれから、名前がマニキュアをしているのを見ていない。
いや、実際は分からない。
だって俺は、名前のことを何も見ていなかったのだから。
髪を切ったって気づいてやれなかった俺が、爪の先の色の違いに気づくはずはないのだ。
無意識に力強く握りしめていたマニキュアも、黒いトートバッグの中に放り投げた。
そして、もう一度、リビングを見渡す
今度こそ本当に、リビングは俺だけの楽園を取り戻したはずだ。
後は、洗面所の棚のほとんどを占領している化粧品と歯ブラシだけだ。
邪魔で仕方のない化粧品も、どうせ3日坊主で終わるのだから無駄だと何度言っても、今度はちゃんと続けるからと聞かない名前がコレクションしたものだ。
せめて3日は使ったのかどうかも怪しい。
アレは、使わないままだったのだし、歯ブラシと一緒に捨ててもいいのかもしれない。
そう思って、俺は一旦、休憩することに決めて、ソファに座る。
黒いトートバッグの中には、名前の欠片が無造作に詰め込まれていた。
なんとなく抱きしめてみると、フワリと名前が気に入ってつけていた香水の匂いが微かにした。
無造作に詰め込まれた名前の忘れ物の中に、見覚えのある香水の瓶があったことを思い出した。
黒いトートバッグの中を漁る俺は、傍から見たら必死過ぎて笑えたと思う。
でも、思いついてしまったのだ。
とてつもなく虚しくて、情けなくて、格好悪くて、でも、俺に唯一出来る名前を感じられる方法をー。
残りが少なくなった香水の瓶を見つけた俺は、慣れない手つきで自分の手首につけた。
その途端に、名前の香りがふわりと俺の身体を包んだ。
そのまま、名前の欠片を集めて詰め込んだ黒いトートバッグを抱きしめれば、香りがさらに強くなった気がした。
そういえば、まだ仲が良かった頃は、よくこうして抱きしめていたなー。
眠たくなったからとか、逆に眠れないからとか、お腹が空いたからとか、暇だからとか、理由なんてあってないようなものだった。
それでも、名前は俺の腕の中で嬉しそうに笑っていた。
化粧もしていない素の笑顔が可愛くて、愛おしくて、仕方なかった。
(あぁ、そうか…。)
あまりにも簡単すぎることに、今さら気づいた俺は、黒いトートバッグを抱きしめたまま、ゴロンとソファに横になった。
俺が名前を抱きしめていたのは、名前が好きだったからだ。
大好きで大好きで、可愛くて仕方がなくて、愛していたから、俺は抱きしめていた。
それなら、背中を合わせて眠るようになった頃の俺は、名前を好きじゃなくなっていたのだろうか。
抱きしめようともしなくなったというのは、そういうことだろうか。
「名前…。」
俺の声はもう名前には届かないと分かっていて、名前を呼んでしまう。
あの頃は、それすら出来なかった。
名前を呼んでも、すぐそこにいる名前に振り向いてもらえなかったら悲しくなると思ったからだ。
臆病な俺は、自分が傷つくのが怖くて、名前に触れられなかったー。
だって、背中越しに感じる名前の気配すら、俺は愛していたからー。
今もこうして、名前の欠片を抱きしめて、もう一度だけでいいから会いたいとひたすら願ってしまうくらいにー。