相変わらずな君と僕
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軽くシャワーを浴びた俺は、濡れた髪をタオルで雑に拭きながら洗面台の前に立った。
コップの中では、相変わらず、青の歯ブラシに寄り添うようにピンク色の歯ブラシが並んでいる。
(捨てねぇとな。)
ピンク色の歯ブラシを手に取って、ゴミ箱の上にまで持って行く。
後は、歯ブラシを握りしめるこの手を離すだけでいい。
そうやって、ちゃんと捨てないといけないのだ。
名前がもう使うことのない歯ブラシも、名前を想ってる未練たらしい気持ちもー。
でも、今日も俺はこの手を離すことは出来ないまま、また青い歯ブラシの隣に並べてしまう。
鏡には、疲れた顔で歯を磨いている俺が映っている。
コップの中に寄り添って入ってた歯ブラシと同じように、ここで名前と2人で並んで歯磨きをしていた頃は、モゴモゴと喋りながら、今日の予定なんかをお互いに教え合ったりしていたっけ。
別に、いつか名前が戻ってくるかもしれない、なんて愚かな期待をして、歯磨きを残しているわけじゃない。
長い倦怠期にも嫌気がさして別れた俺達は、もう一度やり直すことなんてきっとないのだと思ってる。
だからせめてー。
ほんの少し、まだあと少し、あと数秒だけでもいいから、俺の中に名前と過ごした時間を残していたかった。
歯磨きを終わらせた俺は、リビングに戻ってからキッチンで朝食の準備を始める。
まずは、やかんに水を入れて沸かす。
その間に、キッチンの棚を開けて紅茶の葉を入れてある瓶を取り出した。
『ほんと、リヴァイって掃除以外は何も出来ないよね。』
呆れた様にため息を吐いていた名前を思い出したから、自慢してやりたくなる。
確かに名前が出て行ってすぐの頃は、紅茶の葉を入れてある瓶の在り処すら分からずに困ったけれど、今ではもう1人で何でも出来るのだ。
(湯が沸く前に、パンでも焼いておくか。)
コンビニ弁当や外食ばかりでは身体を壊すと名前がいつも言っていたから、無添加をうたってる食パンを昨日の仕事帰りにコンビニで買ってきたのを思い出した。
早速袋から取り出して、トースターの網の上に乗せた。
何分くらい焼けばいいか分からなかったから、とりあえず10分くらいに設定した。
後は、時々、様子を見ればいい。
火にかけたヤカンを確認すると、まだ全然沸きそうになかった。
それなら、この間に昨日の夜に干しておいた洗濯を取り込んでおこうと決めて、リビングに向かう。
大きな窓を開ければ、夏を過ぎたというのにまだ蒸し暑い風が俺の身体をぶつかって流れていった。
名前の趣味で買った黒いサンダルを履いてベランダに出た俺は、夜の間にカラカラに渇いた洗濯物をひとつひとつ手に取って部屋に取り込んだ。
すべて取り込み終えれば、また白いサンダルの隣に並ぶようにして黒いサンダルを脱いでリビングに戻る。
毎日のように洗濯もしているから、取り込んだのもシャツにズボン、下着や靴下が少しだけだった。
さっと畳んでから、寝室のチェストに仕舞う。
それからやっとキッチンに戻った俺は、カタカタと蓋を揺らしながら、お湯を吹き出しているヤカンに気づいて目を丸くする。
慌てて火を止めようとすれば、ヤカンの持ち手に手があたってしまった。
ガチャンッと音を立てて、ヤカンが床に落ちて、沸騰した熱湯が零れた。
「熱っつ…!」
運よく身体にはお湯はかからずに済んだが、指にあたってしまって思わず手を引っ込めた。
舌打ちを打ってから、洗面所に取りに行ったタオルで床を拭けば、朝出してしまおうと夜のうちにまとめておいたゴミ袋が目に入った。
雑に詰め込まれているのは、コンビニ弁当の空箱ばかりだ。
『またコンビニ弁当?もう、それはダメ!
今から、栄養のあるもの作ってあげるから、ちゃんと食べて。
じゃないと、いつか身体壊しちゃうよ。』
コンビニ弁当や外食ばかりの俺に、名前はいつもグチグチと文句ばかりを言っていた。
あの頃は、それが俺の身体の心配をしているのだと分かっていても、面倒で仕方がなかった。
だって、コンビニ弁当や外食だって死なない程度の栄養は取れるし、あとの片付けもないから楽じゃないか。
ほら、今だって自炊をしようとして、朝の忙しい時間に無駄な掃除をしないといけなくなってしまった。
今ではコンビニ弁当を食べていても、外食続きでも、文句を言われることはない。
自由だ。だから俺は、今の方がいい。
今の方が、いいー。
またヤカンに火をかけてお湯を沸かすだけのやる気をなくした俺は、今朝は紅茶は諦めることにした。
確か、冷蔵庫に牛乳があったはずだ。
そう思って、冷蔵庫を開けて牛乳パックを取り出せば、賞味期限は一週間前に切れていた。
麦茶もここ最近は作っていないから、ない。
あるのは、昨日、コンビニ弁当と一緒に買ったペットボトルの水だけだ。
最近はずっと食材の買い出しもしていなかったし、冷蔵庫の中はそれ以外ほとんど空だった。
名前がいる頃は、こんなことはなかったのにー。
そんなことを考えてしまって、すぐに冷蔵庫の扉を閉めた。
(なんか、焦げ臭ぇ…。)
訝し気に眉を顰めて、トースターでパンを焼いていたことを思い出した。
慌ててトースターを開けて中を確認すれば、無添加をうたっていたパンが、身体に悪そうな真っ黒な色に変わっていた。
1人でだって朝食を作れるのだと意気込んでいたくせに、結局は相変わらずの自分に嫌気が差してため息を呑み込めば、代わりに舌打ちが漏れた。
悪魔の食い物みたいな死ぬほど熱い真っ黒のトーストを真っ白の皿の上に乗せて、水のペットボトルを持ってリビングのローテーブルに置いた。
テレビをつけたら、いつもの朝の情報番組がやってなくて、今日は土曜だと気づく。
それならまだ寝ていればよかったと思いながら、真っ黒のかたすぎるトーストを齧った。
「苦ぇ…。」
当然、美味しいわけなんかなくて、眉を顰めて呟く。
せっかくの無添加もこれじゃ台無しだ。
無理に仕事を詰め込んで、寝不足も続いている俺の身体は、最近では、身体に悪いと名前が口を酸っぱく言っていたコンビニ弁当で出来ている。
そこにこの真っ黒に焦げたトーストなんか食べたら、本当に身体が壊れてしまうかもしれない。
あぁー。
早く、俺の身体は壊れてしまわないだろうか。
俺の心が、壊れてしまう前にー。
絶望的なことを願いながら、真っ黒に焦げたトーストを無理して齧る。
苦いし、かたい。
コンビニ弁当も、飽きてしまった。
味は濃いし、食べた後は身体が重たくなるし、何より美味しくない。
美味しくないのだ。
何を食べても、美味しくないどころか何の感情も湧いてこない。
あぁ、今、無性に、名前の作った料理が食べたい。
コップの中では、相変わらず、青の歯ブラシに寄り添うようにピンク色の歯ブラシが並んでいる。
(捨てねぇとな。)
ピンク色の歯ブラシを手に取って、ゴミ箱の上にまで持って行く。
後は、歯ブラシを握りしめるこの手を離すだけでいい。
そうやって、ちゃんと捨てないといけないのだ。
名前がもう使うことのない歯ブラシも、名前を想ってる未練たらしい気持ちもー。
でも、今日も俺はこの手を離すことは出来ないまま、また青い歯ブラシの隣に並べてしまう。
鏡には、疲れた顔で歯を磨いている俺が映っている。
コップの中に寄り添って入ってた歯ブラシと同じように、ここで名前と2人で並んで歯磨きをしていた頃は、モゴモゴと喋りながら、今日の予定なんかをお互いに教え合ったりしていたっけ。
別に、いつか名前が戻ってくるかもしれない、なんて愚かな期待をして、歯磨きを残しているわけじゃない。
長い倦怠期にも嫌気がさして別れた俺達は、もう一度やり直すことなんてきっとないのだと思ってる。
だからせめてー。
ほんの少し、まだあと少し、あと数秒だけでもいいから、俺の中に名前と過ごした時間を残していたかった。
歯磨きを終わらせた俺は、リビングに戻ってからキッチンで朝食の準備を始める。
まずは、やかんに水を入れて沸かす。
その間に、キッチンの棚を開けて紅茶の葉を入れてある瓶を取り出した。
『ほんと、リヴァイって掃除以外は何も出来ないよね。』
呆れた様にため息を吐いていた名前を思い出したから、自慢してやりたくなる。
確かに名前が出て行ってすぐの頃は、紅茶の葉を入れてある瓶の在り処すら分からずに困ったけれど、今ではもう1人で何でも出来るのだ。
(湯が沸く前に、パンでも焼いておくか。)
コンビニ弁当や外食ばかりでは身体を壊すと名前がいつも言っていたから、無添加をうたってる食パンを昨日の仕事帰りにコンビニで買ってきたのを思い出した。
早速袋から取り出して、トースターの網の上に乗せた。
何分くらい焼けばいいか分からなかったから、とりあえず10分くらいに設定した。
後は、時々、様子を見ればいい。
火にかけたヤカンを確認すると、まだ全然沸きそうになかった。
それなら、この間に昨日の夜に干しておいた洗濯を取り込んでおこうと決めて、リビングに向かう。
大きな窓を開ければ、夏を過ぎたというのにまだ蒸し暑い風が俺の身体をぶつかって流れていった。
名前の趣味で買った黒いサンダルを履いてベランダに出た俺は、夜の間にカラカラに渇いた洗濯物をひとつひとつ手に取って部屋に取り込んだ。
すべて取り込み終えれば、また白いサンダルの隣に並ぶようにして黒いサンダルを脱いでリビングに戻る。
毎日のように洗濯もしているから、取り込んだのもシャツにズボン、下着や靴下が少しだけだった。
さっと畳んでから、寝室のチェストに仕舞う。
それからやっとキッチンに戻った俺は、カタカタと蓋を揺らしながら、お湯を吹き出しているヤカンに気づいて目を丸くする。
慌てて火を止めようとすれば、ヤカンの持ち手に手があたってしまった。
ガチャンッと音を立てて、ヤカンが床に落ちて、沸騰した熱湯が零れた。
「熱っつ…!」
運よく身体にはお湯はかからずに済んだが、指にあたってしまって思わず手を引っ込めた。
舌打ちを打ってから、洗面所に取りに行ったタオルで床を拭けば、朝出してしまおうと夜のうちにまとめておいたゴミ袋が目に入った。
雑に詰め込まれているのは、コンビニ弁当の空箱ばかりだ。
『またコンビニ弁当?もう、それはダメ!
今から、栄養のあるもの作ってあげるから、ちゃんと食べて。
じゃないと、いつか身体壊しちゃうよ。』
コンビニ弁当や外食ばかりの俺に、名前はいつもグチグチと文句ばかりを言っていた。
あの頃は、それが俺の身体の心配をしているのだと分かっていても、面倒で仕方がなかった。
だって、コンビニ弁当や外食だって死なない程度の栄養は取れるし、あとの片付けもないから楽じゃないか。
ほら、今だって自炊をしようとして、朝の忙しい時間に無駄な掃除をしないといけなくなってしまった。
今ではコンビニ弁当を食べていても、外食続きでも、文句を言われることはない。
自由だ。だから俺は、今の方がいい。
今の方が、いいー。
またヤカンに火をかけてお湯を沸かすだけのやる気をなくした俺は、今朝は紅茶は諦めることにした。
確か、冷蔵庫に牛乳があったはずだ。
そう思って、冷蔵庫を開けて牛乳パックを取り出せば、賞味期限は一週間前に切れていた。
麦茶もここ最近は作っていないから、ない。
あるのは、昨日、コンビニ弁当と一緒に買ったペットボトルの水だけだ。
最近はずっと食材の買い出しもしていなかったし、冷蔵庫の中はそれ以外ほとんど空だった。
名前がいる頃は、こんなことはなかったのにー。
そんなことを考えてしまって、すぐに冷蔵庫の扉を閉めた。
(なんか、焦げ臭ぇ…。)
訝し気に眉を顰めて、トースターでパンを焼いていたことを思い出した。
慌ててトースターを開けて中を確認すれば、無添加をうたっていたパンが、身体に悪そうな真っ黒な色に変わっていた。
1人でだって朝食を作れるのだと意気込んでいたくせに、結局は相変わらずの自分に嫌気が差してため息を呑み込めば、代わりに舌打ちが漏れた。
悪魔の食い物みたいな死ぬほど熱い真っ黒のトーストを真っ白の皿の上に乗せて、水のペットボトルを持ってリビングのローテーブルに置いた。
テレビをつけたら、いつもの朝の情報番組がやってなくて、今日は土曜だと気づく。
それならまだ寝ていればよかったと思いながら、真っ黒のかたすぎるトーストを齧った。
「苦ぇ…。」
当然、美味しいわけなんかなくて、眉を顰めて呟く。
せっかくの無添加もこれじゃ台無しだ。
無理に仕事を詰め込んで、寝不足も続いている俺の身体は、最近では、身体に悪いと名前が口を酸っぱく言っていたコンビニ弁当で出来ている。
そこにこの真っ黒に焦げたトーストなんか食べたら、本当に身体が壊れてしまうかもしれない。
あぁー。
早く、俺の身体は壊れてしまわないだろうか。
俺の心が、壊れてしまう前にー。
絶望的なことを願いながら、真っ黒に焦げたトーストを無理して齧る。
苦いし、かたい。
コンビニ弁当も、飽きてしまった。
味は濃いし、食べた後は身体が重たくなるし、何より美味しくない。
美味しくないのだ。
何を食べても、美味しくないどころか何の感情も湧いてこない。
あぁ、今、無性に、名前の作った料理が食べたい。