その夜は、明けない
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あれから数日、毎日のようにお店に顔を出していたリヴァイが来なくなった。
私の願いが届いてしまったのかもしれない。
呼び捨てで名前を呼べとか、敬語を使うな、とか、勝手なことを言っておいてー。
それを披露する機会もないまま、消えてしまった。
本当に、気まぐれな人だー。
そんなことを思い始めた頃、リヴァイは、本当にお酒をクソほど呑む友人を引き連れて、バーに様変わりした店にやって来た。
「っだーーーッ!なぁぁぁあにが!!巨人だ!!実験だぁッ!
少しは、俺の身にもなってみろってんだっ!!」
「そうだ!そうだ!!」
金髪のおっとりした男性、モブリットは、来たときとは様変わりしていた。
彼は、調査兵団一の酒豪らしい。
どうやら彼は直属の上官に恋心を抱いているものの、彼女は巨人に夢中で全く相手にしてもらえていないようだ。
それを囃し立てているリーゼントの若い男性、ゲルガーもまたかなりの酒豪だった。
彼らはテーブル席で向かい合って座り、さっきから絶え間なくお酒を呑み続けては、愚痴を叫び続けている。
彼らを連れて来たリヴァイだけは、ゆっくりと愉しみたいのか、愚痴大会には参加せずにカウンターに座って、マイペースに呑んでいた。
さっきから私は、お酒のストックが気になって仕方がない。
彼ら2人だけで、この店の酒をすべて飲み干そうとしているに違いない。
「だから言っただろ。しっかり酒を用意しておけと。
そのための準備時間もやったはずだ。
まさか、客の酒がなくなるなんてことは、ならねぇよな?」
珍しく紅茶ではなくお酒の入ったグラスを持つリヴァイが、してやったり顔で口の端を上げる。
最近ずっと顔を出していなかったのは、彼にとっては、私がお酒の準備をするための時間をあげていたということだったらしい。
分かりづらすぎる。
「そのときは、リヴァイに責任を持ってお酒の買い出しに行ってもらおうかな。」
「誰が行くか。」
冷たく吐くリヴァイだったけれど、いつもより表情が豊かに見える。
気の置けない友人達が一緒だからかもしれない。
饒舌になっているのはきっと、お酒のせいなのだと思う。
「今日はお友達と私のお店に行くことはペトラには言ってあるの?」
「いや、別にわざわざ教えることでもねぇだろ。」
「ダメよ、それは言わなくちゃ。
夜に男の人達だけでお酒を呑みに行ったって知ったら、きっと心配する。
だから、私のところに行くってー。」
「なまえの店で酒を呑むと言えば、アイツは安心するのか?」
リヴァイの切れ長の三白眼が、私の目を射抜く。
その向こうにある、不誠実な想いまで見抜こうとしているみたいにー。
なんて、ズルい言い方をするんだろう。
あぁ、そうだ。
きっと、どのお店に行くよりも、私のところでお酒を呑むのが一番危ない。
だって、私には下心があるからー。
お酒に酔ったリヴァイが、間違いを起こしてくれないかと、本当は思っているからー。
「安心するでしょう。
私がちゃーんとリヴァイが浮気しないように目を光らせるからね。」
「へぇ。そりゃ、面倒だな。」
リヴァイは、さほど面倒そうでもなく、なんでもないことのように言って、残りのお酒を呑みほした。
おかわりは何にするかを訊ねれば、私の好きなお酒の銘柄を訊かれた。
不思議に思いながら教えてやれば、それを呑むと言う。
そして、それだけ言って、モブリットとゲルガーのところへ行ってしまった。
本当に、気まぐれな男の人の考えることはよく分からない。
「はい、どうぞ。」
新しいグラスを出して、私の好きなカクテルを注いだ。
リヴァイが戻って来たので、カウンターに出す。
「あぁ、それは要らねえ。俺はこれを呑む。」
カウンターに座ったリヴァイの手には、さっきモブリット達に出した酒の瓶があった。
どうやら、彼らのテーブルにそれを取りに行っていたようだ。
(欲しいって言うから注いだのに…。)
文句は諸々あったけれど、何を言ったところで100倍返しで負かされそうだった。
お酒ではなくて、文句を呑み込んで、グラスを片付けようとする私に、リヴァイが言うー。
「捨てるのはもったいねぇだろ。なまえがそれを呑め。」
「私が?」
「あぁ、俺がおごる。」
「でも…。」
確かに、夜のバーの時間には、お客さんと一緒にお酒を呑むこともあった。
特に珍しいことじゃない。
でも、今夜はー。
お酒を呑んでしまったら、私は口を滑らせてしまうかもしれない。
何か、間違いを起こすかもー。
「酔っちまえよ。」
リヴァイが、私にグラスを差し出す。
そんな風に、熱い目で私を見るのは、ズルい。ズルいのだ、いつも、リヴァイはー。
震える手で、私はリヴァイからグラスを受け取る。
「俺も、なまえも、酔ってしまえばいい。」
リヴァイから受け取ったグラスを口につける勇気はない。
それなのに、リヴァイは酒の瓶を煽る。
でも、さっき、モブリットとゲルガーが言っていたじゃないか。
リヴァイは、幾らお酒を呑んでも、ちっとも変わらないんだって。
ざるなんだって、言われていたじゃないか。
酔っぱらうことなんて、出来ないくせにー。
お店のお酒のストックがなくなる寸前で、モブリットとゲルガーは酔っぱらって眠ってしまった。
さっきまでの騒がしさが嘘のように静かになった店内で、リヴァイと私は、まるで2人きりになってしまったようだった。
何杯もお酒をお代わりしたリヴァイは、顔色すら変わらない。
リヴァイから受け取ったお酒は、いつの間にか氷がすべてとけていて、きっともう美味しくないに違いない。
「なまえ。」
リヴァイが、私の名前を呼ぶ。
他の誰が呼ぶのとも違う、妖艶な響きに胸が高鳴る。
視線が絡み合う。
引力にひかれあうみたいに、唇が近づいていくー。
このまま、めちゃくちゃに絡まってしまえばいいー。
お互いの視線が、もう他には向けないように、絡まりあってしまえばー。
そんな風に心の奥では思うのに、ペトラの笑顔が瞼の奥にチラつき続ける。
それはきっと、リヴァイも同じなのだと思う。
「2人に、ブランケットを持ってくるね。」
リヴァイの唇に、そっと手を添える。
それでもきっと、酔っぱらったリヴァイが強引に奪ってくれるのなら、私は受け入れたと思う。
でも、それが当然であるように、リヴァイは離れていく。
私達は結局、理性を捨てれらなかった。
大切な人を、裏切れなかったー。
私の願いが届いてしまったのかもしれない。
呼び捨てで名前を呼べとか、敬語を使うな、とか、勝手なことを言っておいてー。
それを披露する機会もないまま、消えてしまった。
本当に、気まぐれな人だー。
そんなことを思い始めた頃、リヴァイは、本当にお酒をクソほど呑む友人を引き連れて、バーに様変わりした店にやって来た。
「っだーーーッ!なぁぁぁあにが!!巨人だ!!実験だぁッ!
少しは、俺の身にもなってみろってんだっ!!」
「そうだ!そうだ!!」
金髪のおっとりした男性、モブリットは、来たときとは様変わりしていた。
彼は、調査兵団一の酒豪らしい。
どうやら彼は直属の上官に恋心を抱いているものの、彼女は巨人に夢中で全く相手にしてもらえていないようだ。
それを囃し立てているリーゼントの若い男性、ゲルガーもまたかなりの酒豪だった。
彼らはテーブル席で向かい合って座り、さっきから絶え間なくお酒を呑み続けては、愚痴を叫び続けている。
彼らを連れて来たリヴァイだけは、ゆっくりと愉しみたいのか、愚痴大会には参加せずにカウンターに座って、マイペースに呑んでいた。
さっきから私は、お酒のストックが気になって仕方がない。
彼ら2人だけで、この店の酒をすべて飲み干そうとしているに違いない。
「だから言っただろ。しっかり酒を用意しておけと。
そのための準備時間もやったはずだ。
まさか、客の酒がなくなるなんてことは、ならねぇよな?」
珍しく紅茶ではなくお酒の入ったグラスを持つリヴァイが、してやったり顔で口の端を上げる。
最近ずっと顔を出していなかったのは、彼にとっては、私がお酒の準備をするための時間をあげていたということだったらしい。
分かりづらすぎる。
「そのときは、リヴァイに責任を持ってお酒の買い出しに行ってもらおうかな。」
「誰が行くか。」
冷たく吐くリヴァイだったけれど、いつもより表情が豊かに見える。
気の置けない友人達が一緒だからかもしれない。
饒舌になっているのはきっと、お酒のせいなのだと思う。
「今日はお友達と私のお店に行くことはペトラには言ってあるの?」
「いや、別にわざわざ教えることでもねぇだろ。」
「ダメよ、それは言わなくちゃ。
夜に男の人達だけでお酒を呑みに行ったって知ったら、きっと心配する。
だから、私のところに行くってー。」
「なまえの店で酒を呑むと言えば、アイツは安心するのか?」
リヴァイの切れ長の三白眼が、私の目を射抜く。
その向こうにある、不誠実な想いまで見抜こうとしているみたいにー。
なんて、ズルい言い方をするんだろう。
あぁ、そうだ。
きっと、どのお店に行くよりも、私のところでお酒を呑むのが一番危ない。
だって、私には下心があるからー。
お酒に酔ったリヴァイが、間違いを起こしてくれないかと、本当は思っているからー。
「安心するでしょう。
私がちゃーんとリヴァイが浮気しないように目を光らせるからね。」
「へぇ。そりゃ、面倒だな。」
リヴァイは、さほど面倒そうでもなく、なんでもないことのように言って、残りのお酒を呑みほした。
おかわりは何にするかを訊ねれば、私の好きなお酒の銘柄を訊かれた。
不思議に思いながら教えてやれば、それを呑むと言う。
そして、それだけ言って、モブリットとゲルガーのところへ行ってしまった。
本当に、気まぐれな男の人の考えることはよく分からない。
「はい、どうぞ。」
新しいグラスを出して、私の好きなカクテルを注いだ。
リヴァイが戻って来たので、カウンターに出す。
「あぁ、それは要らねえ。俺はこれを呑む。」
カウンターに座ったリヴァイの手には、さっきモブリット達に出した酒の瓶があった。
どうやら、彼らのテーブルにそれを取りに行っていたようだ。
(欲しいって言うから注いだのに…。)
文句は諸々あったけれど、何を言ったところで100倍返しで負かされそうだった。
お酒ではなくて、文句を呑み込んで、グラスを片付けようとする私に、リヴァイが言うー。
「捨てるのはもったいねぇだろ。なまえがそれを呑め。」
「私が?」
「あぁ、俺がおごる。」
「でも…。」
確かに、夜のバーの時間には、お客さんと一緒にお酒を呑むこともあった。
特に珍しいことじゃない。
でも、今夜はー。
お酒を呑んでしまったら、私は口を滑らせてしまうかもしれない。
何か、間違いを起こすかもー。
「酔っちまえよ。」
リヴァイが、私にグラスを差し出す。
そんな風に、熱い目で私を見るのは、ズルい。ズルいのだ、いつも、リヴァイはー。
震える手で、私はリヴァイからグラスを受け取る。
「俺も、なまえも、酔ってしまえばいい。」
リヴァイから受け取ったグラスを口につける勇気はない。
それなのに、リヴァイは酒の瓶を煽る。
でも、さっき、モブリットとゲルガーが言っていたじゃないか。
リヴァイは、幾らお酒を呑んでも、ちっとも変わらないんだって。
ざるなんだって、言われていたじゃないか。
酔っぱらうことなんて、出来ないくせにー。
お店のお酒のストックがなくなる寸前で、モブリットとゲルガーは酔っぱらって眠ってしまった。
さっきまでの騒がしさが嘘のように静かになった店内で、リヴァイと私は、まるで2人きりになってしまったようだった。
何杯もお酒をお代わりしたリヴァイは、顔色すら変わらない。
リヴァイから受け取ったお酒は、いつの間にか氷がすべてとけていて、きっともう美味しくないに違いない。
「なまえ。」
リヴァイが、私の名前を呼ぶ。
他の誰が呼ぶのとも違う、妖艶な響きに胸が高鳴る。
視線が絡み合う。
引力にひかれあうみたいに、唇が近づいていくー。
このまま、めちゃくちゃに絡まってしまえばいいー。
お互いの視線が、もう他には向けないように、絡まりあってしまえばー。
そんな風に心の奥では思うのに、ペトラの笑顔が瞼の奥にチラつき続ける。
それはきっと、リヴァイも同じなのだと思う。
「2人に、ブランケットを持ってくるね。」
リヴァイの唇に、そっと手を添える。
それでもきっと、酔っぱらったリヴァイが強引に奪ってくれるのなら、私は受け入れたと思う。
でも、それが当然であるように、リヴァイは離れていく。
私達は結局、理性を捨てれらなかった。
大切な人を、裏切れなかったー。