その夜は、明けない
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カウンター席に並んで腰を降ろした2人に、ドリンクのメニューを渡した。
何を頼まれてもいいように、お酒の用意を幾つもしていたのだけれど、ペトラもリヴァイさんも紅茶を頼んだ。
リヴァイさんは紅茶が大好物なのだそうだ。
とりあえず、お昼ご飯を食べに来るということだったので、食事の準備をしていたのだ。
蛇口の水で綺麗になっていく手を凝視しながら、私はリヴァイさんに訊ねた。
「リヴァイさんは、好き嫌いあります?」
「いや、特にねぇ。」
「それならよかった。後は、お口に合えばいいんですけど。
すぐ出しますね。」
調理直前まで準備していた食材を手に取って、フライパンに火をかける。
お鍋の中のスープも弱火で煮込んでおこう。
「なまえの料理は本当に美味しいんですよっ。
絶対に、リヴァイ兵長も気に入ります!舌がとろけますよ!」
「もう、ペトラ、やめてよ。無駄にハードルが上がっちゃう。」
「大丈夫っ。私の舌はいつもとろけてるからっ。」
「ペトラの舌のレベルがねぇ…。」
「失礼だよっ。ねぇ、リヴァイ兵長?」
「あ?あぁ…、お前の舌のレベルを俺は知らねぇから。」
「そこは、私の肩を持つんですよ。」
「あぁ、そうだったのか。悪かったな。」
ため息を吐いたペトラの頭を、リヴァイさんは眉尻を下げて愛おしそうに撫でた。
幸せそうな2人を視界に入れて、軽いお喋りをしながら料理する手をせっせと動かし続ける。
出せる直前まで準備を終わらせていたから、料理はすぐに出来上がった。
そして、カウンターの上にズラリと並ぶ料理を見て、作りすぎたーと後悔する。
可愛い妹と恋人が来るからと、張り切りすぎてしまった。
「わぁ…!美味しそう…!ねぇ、リヴァイ兵長っ。」
「あぁ、なまえは本当に料理がうめぇんだな。」
「ありがとう。褒めてもこれくらいしか出ないけどね。」
「これだけでりゃ、充分だ。」
ペトラとリヴァイさんが、料理にフォークをさすのをドキドキしながら見ていた。
まるで、テストか何かの前みたいだ。
「美味しいっ!」
「うめぇ。」
ほとんど同時に感想が聞こえてきて、私はホッと胸を撫でおろした。
安心したところで、私も漸く、カウンター内の椅子に座る。
2人の馴れ初めでも聞いてみようかと思ったのだけれど、先にペトラに恒例の辱めを受けるー。
「リヴァイ兵長もなまえは良いお嫁さんになると思うでしょう?」
「あ?あ~…、そうだな。」
リヴァイさんは、チラリと私を見た後に、短く答えた。
自分の恋人に、他の女性の評価を訊ねられたら困ってしまうに決まっている。
でも、ペトラは幸せでいっぱいで、自分の恋人が困っていることに気づいていないようだ。
「ですよね?でも、もう何年も恋人いないんですよ。
長く付き合ってた人にフラれちゃって、ずーっと引きずってるんです。
美人なのに、勿体ないですよね。」
「へぇ。」
「鵜呑みにしないでくださいっ。もう引きずってないからっ。」
「そんなこと言って、交際の申し込みだって今まで何度もあったのに全部断っちゃうし。」
「それは、私の好みの人がいなかったから、それだけ。」
「そんなこと言って、恋人作る気ないでしょう?
ねぇ、リヴァイ兵長、素敵な人をなまえに紹介してくださいよ。」
「俺が?」
「リヴァイさんの紹介なら、素敵な人がいそうですね。
優しくて、私だけを愛してくれそうな人。誰かいません?」
捕らえられた心を、早急に解放したかった。
それには、ちょうどいいんじゃないかと思ってしまってー。
でも、そんな私のやましい心が、顔に出ていたのだろうか。
リヴァイさんは、とても冷たい目で私を見た後、スッと目を反らした。
「てめぇの男くらい、てめぇで探せ。」
「ちょ、ちょっとっ!リヴァイ兵長っ!そんな風に言わなくてもー。」
「いいのよ、ペトラ。リヴァイさんの言う通りだもん。
頑張って、私もペトラみたいに素敵な恋人ゲットするっ。」
笑顔を作って、下手くそな拳を握る。
ペトラは少し困ったように、リヴァイさんをチラリと見た後、私に笑顔を返した。
基本的に言葉が冷たいリヴァイさんは、口数も少なかった。
いつの間にか、私とペトラのいつものお喋りになっていたのに、嫌な顔一つしないで紅茶を飲んでいたリヴァイさんは、本当に素敵な恋人だと思う。
そして、気づいた時にはそれなりに時間が過ぎていて、多すぎた料理にお腹いっぱいになったペトラのフォークはもう随分前にテーブルの上に置かれていた。
でもー。
「リヴァイさん、無理しないでくださいっ。
全部食べなくて大丈夫ですよ。
私が作り過ぎちゃって…、ごめんなさい。」
「せっかく作ってくれたんだ。食う。」
「でもー。」
「俺がいいって言ってんだから、いいじゃねぇーか。うるせぇ。」
リヴァイさんは、いつもこんなに冷たいのだろうか。
それとも、私は嫌われてしまったのだろうか。
可愛い妹の恋人に、一目で心を奪われてしまう悪い姉だからー。
ペトラはしきりに、私に謝っていたけれど、きっと謝らないといけないのは、私の方ー。
結局、リヴァイさんは大量の料理をすべて平らげてしまった。
2人が帰った後、空になった幾つものお皿を見つめて、私はシャツの胸元を握りしめる。
ペトラの言う通りだ。
もう何年もずっと、昔の恋人を引きずっていた。
早く忘れたいと思っていた。
早く、新しい恋がしたいとー。
でもだからって、こんなのは望んでない。
幸せになれる恋が、したかっただけなのに。
ペトラにも祝福してもらえる、楽しい恋がー。
こんなのって、あんまりだー。
ーーーーーー
ーーー
ー
「リヴァイ兵長、今日は体調が悪かったんですか?」
「いや。」
「なんか、様子がおかしかったですよ?
すごく冷たいし、少食なのにあんなにたくさん食べたり…。
なまえもビックリしてましたよ。なまえが何かしました?」
「…いや、なまえは何も悪くねぇよ。
体調が、悪かっただけだ。」
何を頼まれてもいいように、お酒の用意を幾つもしていたのだけれど、ペトラもリヴァイさんも紅茶を頼んだ。
リヴァイさんは紅茶が大好物なのだそうだ。
とりあえず、お昼ご飯を食べに来るということだったので、食事の準備をしていたのだ。
蛇口の水で綺麗になっていく手を凝視しながら、私はリヴァイさんに訊ねた。
「リヴァイさんは、好き嫌いあります?」
「いや、特にねぇ。」
「それならよかった。後は、お口に合えばいいんですけど。
すぐ出しますね。」
調理直前まで準備していた食材を手に取って、フライパンに火をかける。
お鍋の中のスープも弱火で煮込んでおこう。
「なまえの料理は本当に美味しいんですよっ。
絶対に、リヴァイ兵長も気に入ります!舌がとろけますよ!」
「もう、ペトラ、やめてよ。無駄にハードルが上がっちゃう。」
「大丈夫っ。私の舌はいつもとろけてるからっ。」
「ペトラの舌のレベルがねぇ…。」
「失礼だよっ。ねぇ、リヴァイ兵長?」
「あ?あぁ…、お前の舌のレベルを俺は知らねぇから。」
「そこは、私の肩を持つんですよ。」
「あぁ、そうだったのか。悪かったな。」
ため息を吐いたペトラの頭を、リヴァイさんは眉尻を下げて愛おしそうに撫でた。
幸せそうな2人を視界に入れて、軽いお喋りをしながら料理する手をせっせと動かし続ける。
出せる直前まで準備を終わらせていたから、料理はすぐに出来上がった。
そして、カウンターの上にズラリと並ぶ料理を見て、作りすぎたーと後悔する。
可愛い妹と恋人が来るからと、張り切りすぎてしまった。
「わぁ…!美味しそう…!ねぇ、リヴァイ兵長っ。」
「あぁ、なまえは本当に料理がうめぇんだな。」
「ありがとう。褒めてもこれくらいしか出ないけどね。」
「これだけでりゃ、充分だ。」
ペトラとリヴァイさんが、料理にフォークをさすのをドキドキしながら見ていた。
まるで、テストか何かの前みたいだ。
「美味しいっ!」
「うめぇ。」
ほとんど同時に感想が聞こえてきて、私はホッと胸を撫でおろした。
安心したところで、私も漸く、カウンター内の椅子に座る。
2人の馴れ初めでも聞いてみようかと思ったのだけれど、先にペトラに恒例の辱めを受けるー。
「リヴァイ兵長もなまえは良いお嫁さんになると思うでしょう?」
「あ?あ~…、そうだな。」
リヴァイさんは、チラリと私を見た後に、短く答えた。
自分の恋人に、他の女性の評価を訊ねられたら困ってしまうに決まっている。
でも、ペトラは幸せでいっぱいで、自分の恋人が困っていることに気づいていないようだ。
「ですよね?でも、もう何年も恋人いないんですよ。
長く付き合ってた人にフラれちゃって、ずーっと引きずってるんです。
美人なのに、勿体ないですよね。」
「へぇ。」
「鵜呑みにしないでくださいっ。もう引きずってないからっ。」
「そんなこと言って、交際の申し込みだって今まで何度もあったのに全部断っちゃうし。」
「それは、私の好みの人がいなかったから、それだけ。」
「そんなこと言って、恋人作る気ないでしょう?
ねぇ、リヴァイ兵長、素敵な人をなまえに紹介してくださいよ。」
「俺が?」
「リヴァイさんの紹介なら、素敵な人がいそうですね。
優しくて、私だけを愛してくれそうな人。誰かいません?」
捕らえられた心を、早急に解放したかった。
それには、ちょうどいいんじゃないかと思ってしまってー。
でも、そんな私のやましい心が、顔に出ていたのだろうか。
リヴァイさんは、とても冷たい目で私を見た後、スッと目を反らした。
「てめぇの男くらい、てめぇで探せ。」
「ちょ、ちょっとっ!リヴァイ兵長っ!そんな風に言わなくてもー。」
「いいのよ、ペトラ。リヴァイさんの言う通りだもん。
頑張って、私もペトラみたいに素敵な恋人ゲットするっ。」
笑顔を作って、下手くそな拳を握る。
ペトラは少し困ったように、リヴァイさんをチラリと見た後、私に笑顔を返した。
基本的に言葉が冷たいリヴァイさんは、口数も少なかった。
いつの間にか、私とペトラのいつものお喋りになっていたのに、嫌な顔一つしないで紅茶を飲んでいたリヴァイさんは、本当に素敵な恋人だと思う。
そして、気づいた時にはそれなりに時間が過ぎていて、多すぎた料理にお腹いっぱいになったペトラのフォークはもう随分前にテーブルの上に置かれていた。
でもー。
「リヴァイさん、無理しないでくださいっ。
全部食べなくて大丈夫ですよ。
私が作り過ぎちゃって…、ごめんなさい。」
「せっかく作ってくれたんだ。食う。」
「でもー。」
「俺がいいって言ってんだから、いいじゃねぇーか。うるせぇ。」
リヴァイさんは、いつもこんなに冷たいのだろうか。
それとも、私は嫌われてしまったのだろうか。
可愛い妹の恋人に、一目で心を奪われてしまう悪い姉だからー。
ペトラはしきりに、私に謝っていたけれど、きっと謝らないといけないのは、私の方ー。
結局、リヴァイさんは大量の料理をすべて平らげてしまった。
2人が帰った後、空になった幾つものお皿を見つめて、私はシャツの胸元を握りしめる。
ペトラの言う通りだ。
もう何年もずっと、昔の恋人を引きずっていた。
早く忘れたいと思っていた。
早く、新しい恋がしたいとー。
でもだからって、こんなのは望んでない。
幸せになれる恋が、したかっただけなのに。
ペトラにも祝福してもらえる、楽しい恋がー。
こんなのって、あんまりだー。
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「リヴァイ兵長、今日は体調が悪かったんですか?」
「いや。」
「なんか、様子がおかしかったですよ?
すごく冷たいし、少食なのにあんなにたくさん食べたり…。
なまえもビックリしてましたよ。なまえが何かしました?」
「…いや、なまえは何も悪くねぇよ。
体調が、悪かっただけだ。」