次の日の夜、リヴァイは珍しく早く帰ってきた。
似合わないくせに、右手には花束を持っている。
今日は記念日でも何でもないはずなのにー。
なまえは驚いていて、そして、躊躇いがちに訊ねる。

「どうしたの…？どうして、そんなに早いの…？お花も…。」
「なまえに早く会いたくて、急いだ。
　花は…、お前が笑ってくれるかと、思って…。」

リヴァイが、花束を差し出す。
恥ずかしいならしなきゃいいのに、顔が真っ赤だ。
戸惑いながら、なまえは花束を受け取った。
こんなこと、少なくとも、僕が知る中では初めてだ。

「寂しい思いをさせて、すまなかった。　
　でも分かってほしい。昔も今も、俺にとって一番大切なのはなまえだ。
　これからは、どんなささいなことでも大切にすると約束する。」

だから俺を諦めないでー。
散々、なまえを泣かせておいて、リヴァイは勝手なことを言う。
ズルい。リヴァイはいつもズルい。
いつだって、なまえの心を独り占めにするんだから。
どうすれば彼女が嬉しいか、何を言えば彼女が喜ぶか、知ってるんだ。

「愛してる。」
「…っ、リヴァイ…っ。」

リヴァイは、乱暴になまえの手を掴んで、腕の中に抱きしめる。
渡したばかりの花束が床に落ちて、僕の頬を殴った。
なまえはリヴァイの背中にしがみついて、泣いていた。
いつもみたいに泣いているのに、今日のなまえはすごく幸せそうだ。
嬉しそうだ。
だから、僕はー。
この恋を諦めるよ。
だって、





生憎、僕もアイツも、彼女を世界一幸せにしたいのは一緒だから






神様、僕を人間にしてくださいってお願いは、もうしないよ。
だからどうか、大好きな彼女が
大好きな人とずっと幸せでいられる魔法をかけてあげて。
彼女の綺麗で華奢な手から、
ほんのささいな幸せもこぼれ落ちませんようにー。