私史上、一番大好きな恋をした
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廊下を歩きながら、もう何年も前に友人と交わした言葉が、頭の中で何度もリピートされていた。
なぜかは分からないけれど、モヤモヤする。
リヴァイさんのことは、素敵だと思う。
きっと、この世で一番、私が彼のことを素敵だと思ってる自信がある。
それに、あんなに素敵な人に恋人になってもらえた私は、やっぱり、この世で一番幸運だし、幸せだとも思ってる。
でも———。
なんだか、モヤモヤする。
リヴァイさんの部屋の扉の前で立ち止まって、ノックをしようとした手が、無意識に止まる。
付き合いたての頃にも、こうして、扉を叩くことに躊躇したことが何度もある。
この扉の向こうにいるのが、世界で一番素敵な恋人だと思うと、胸が舞い上がって、緊張で身体が強張ってしまうのだ。
でも、それはもう3年も昔のことだ。
いつの間にか、まるで、自分の部屋のように扉を開けるようになっていった。
そしてまた、今、私はこの扉を叩けない。
胸は、舞い上がるどころか、どんよりと沈んでいて、不安で身体が強張る。
(よし。)
あの頃みたいに深呼吸をした後、心の中で気合を入れて扉を叩く。
すぐに「入れ。」と返事が聞こえてきた。
でも、別に、リヴァイさんは、扉の向こうにいるのが私だと分かって、部屋に入るように促したわけじゃない。
自分に用のある誰かを受け入れただけのことだ。
「あぁ…、なまえか。」
中に入ると、デスクに向かって座っていたリヴァイさんが、ゆっくりと振り向いた。
そして、私を見つけて、小さく呟くように言う。
「今、いい?」
「なんだ?」
「少し、話がしたいなと思って。」
「あ~…。悪い、明日までに出さねぇといけねぇ仕事があるから、
今日は無理だ。」
「そっか。じゃあ、仕方ないね。」
「あぁ、悪かったな。
用がねぇなら、もう部屋に戻って寝ろ。明日も朝から訓練だろ。」
リヴァイさんは、すぐにまたデスクへと身体を向ける。
一緒に寝るだけでもいいから、そばにおいてほしい———そう思うのは、我儘なのだろうか。
でも、それをリヴァイさんに言う勇気がない、ということは、少なくとも私は、それを〝我儘〟だと思っているということなのだろう。
「———うん、おやすみなさい。」
自分だけ、名残惜しそうにしているのはあまりにも寂しくて、私もリヴァイさんに背を向けた。
扉を開けて、うるさくしないように気を遣っている風を装って、ゆっくり時間をかけて閉める。
でもやっぱり、リヴァイさんは、振り向いてくれない。
(そういえば、目も合わなかったな。)
私は、来た道を逆戻りしながら気づく。
確かにリヴァイさんはこっちを向いていたはずなのに、視線はどこか違うところにあった。
それが、今の私達の関係全てを物語っているような気がして、泣けてきた。
『大好きです。リヴァイさんの隣にいるのは、ずっと私だったら良いな。』
『なまえが離れていかねぇ限りは、そうだろうな。』
『本当?』
『一生かけて試してみればいい。』
『じゃあ、一生一緒ですね。』
『ならいい。』
さっきまで頭の中で繰り返されていた友人との会話が、恋人たちの甘い会話にかき消されていく。
自信をもって、幸せだと言えた日々も確かにあったはずだった。
大好きな人との途切れない未来を期待して、幸せな将来を夢を見たりもした。
でも、最近は、あの頃の私が願っていた〝長い付き合い〟が、私達の心と距離を離していく。
一歩、踏み出して、〝我儘〟を伝えたら、良くも悪くも何かが変わるんだろう。
でも私には、その賭けに出て、確かめる勇気がない。
理性では、もう無理だと分かっていても、そんなのただの思い過ごしだって、まだリヴァイさんが好きで仕方ない私が、期待してるから———。
「どうしたんだい?」
廊下の向こうから歩いてきたモブリットが、泣いている私に気づいて声をかけてきた。
心配そうに私の顔を覗き込もうとするから、慌てて涙を拭って、下手くそな笑みを顔に貼り付ける。
「なんでもないよ。埃が目に入っちゃったのかなっ。」
誤魔化すように笑ったけれど、モブリットは、私が歩いてきた廊下の先を見て気づいてしまったようだった。
モブリットが、少しだけ眉を顰めた後に、私の腕を掴む。
そして、そのまま、戸惑う私を引っ張って、一番近くの会議室へと連れ込む。
静かに扉を閉めてから、モブリットが振り向く。
「泣きなよ、俺しか見てないから。」
モブリットが、濡れたばかりの私の頬に優しく触れる。
「そういうんじゃ———。」
「せっかくの同期だろ。弱いところを見せあうのなんて、慣れてるじゃないか。」
「本当に…、大丈夫なの。私は、傷ついてなんかいないから。」
「でも、泣いてる。つらいんじゃないのかい?」
「違うの。リヴァイさんは世界で一番素敵な恋人で、世界を救う人なんだよ。
そんな人に恋人になってもらえて、世界一幸せな私は、
我儘なんか言わないでちゃんと支えてあげなくちゃ。」
世界で一番素敵な人の恋人として相応しい私にならないといけないの———震える声が、すべてを物語ってる。
無理していることくらい、もうずっと前から、本当は分かっていた。
分かっていたのだ。
でも、認めるのが怖くて、悲しくて、永遠に、リヴァイさんを失ってしまいそうで———。
「なまえが、リヴァイ兵長の恋人として頑張ってること、知ってるよ。
今のままで、十分、皆が羨む素敵な恋人さ。少なくとも、俺にとってはそうだよ。」
モブリットは、もう泣いていない私の頬を優しく撫でながら、慰めてくれる。
そんな優しい友人に、私は首を横に振ることしか出来なかった。
「ダメ…、ダメだよ。私、本当は我儘なの。リヴァイさんの恋人として、相応しくないの。」
「そうかな。たとえば、どんな我儘だい?」
「一緒に…、居たい、とか…。」
「とか?」
「話を、聞いて、欲しいとか…。」
「どんな話?」
「今日、あった…どうでもいい、こと。
ハンジさんが、ソニーがあくびしたって報告に興奮しすぎて、滑って転んだ拍子に
エルヴィン団長の眼鏡をお尻で踏んで壊しちゃったこと、とか。」
「しかもその報告、コニーのジョークだったんだよね。」
「そう…!もう笑っちゃって!ハンジさんと団長には悪いけど、
笑っちゃって!私、笑っちゃって…。」
面白いことを思い出したはずなのに、私の瞳からは、涙が溢れだして止まらない。
モブリットが涙を拭ってくれているけれど、全然、追いつかない。
苦笑を浮かべるモブリットの優しい表情は、なんとなく想像はつくけれど、涙で滲んで何も見えない。
でも、自分の気持ちは、見えてしまったのだ。
私は、ただ———。
そう、私は、ただ———。
「リヴァイさん、に…っ、こんっ、こんな…風に…っ、
くだら、ない話っ、を…っ、聞いて、欲しかった…っ。
面白いね…っ、て、明日、は…、どんな楽しいことがある、かなって
一緒に…、なんでもない、時間を…っ、過ごしたい…っ。」
涙が止まらない。
リヴァイさんへの想いが、止まらない。
好きだ。大好きだ。
私は、リヴァイさんが、大好き———。
なのに———。
「俺が聞いてあげるよ。世界一どうでもいい話も、史上最悪で面倒な我儘も
なまえから聞けるものなら、なんだって聞いてあげる。」
モブリットが、私を抱きしめる。
リヴァイさんを想って、泣きじゃくる私ごと抱きしめてくれる。
暖かくて、優しい腕の居心地の良さに、喉の奥が締まって、苦しくなって、鼻がツンとする。
「聞かせて。俺に、聞かせてほしい。誰より最初に。
誰よりも、真剣に聞くから。」
「…っ。モブリット…っ。」
モブリットの背中に手をまわした。
ギュッと、しがみつくように抱き着いて泣きじゃくったその瞬間、私史上、最も頑張った恋が、終わりを告げた。
だって、大好きだから、無理をしてしまった。大好きだから、私が私ではいられなくなった。
大好きだから、嫌いになりたくない。大好きだから、大好きだから、私———。
大好きだから、サヨナラ。
少しだけ目を見開いた後、傷ついたように目を細めて唇を噛んだあなたを見て、気づいたの。
あなたの言った通りだった。
私が去っていくまで、あなたは本当に、私の恋人でいてくれたんだね。
なぜかは分からないけれど、モヤモヤする。
リヴァイさんのことは、素敵だと思う。
きっと、この世で一番、私が彼のことを素敵だと思ってる自信がある。
それに、あんなに素敵な人に恋人になってもらえた私は、やっぱり、この世で一番幸運だし、幸せだとも思ってる。
でも———。
なんだか、モヤモヤする。
リヴァイさんの部屋の扉の前で立ち止まって、ノックをしようとした手が、無意識に止まる。
付き合いたての頃にも、こうして、扉を叩くことに躊躇したことが何度もある。
この扉の向こうにいるのが、世界で一番素敵な恋人だと思うと、胸が舞い上がって、緊張で身体が強張ってしまうのだ。
でも、それはもう3年も昔のことだ。
いつの間にか、まるで、自分の部屋のように扉を開けるようになっていった。
そしてまた、今、私はこの扉を叩けない。
胸は、舞い上がるどころか、どんよりと沈んでいて、不安で身体が強張る。
(よし。)
あの頃みたいに深呼吸をした後、心の中で気合を入れて扉を叩く。
すぐに「入れ。」と返事が聞こえてきた。
でも、別に、リヴァイさんは、扉の向こうにいるのが私だと分かって、部屋に入るように促したわけじゃない。
自分に用のある誰かを受け入れただけのことだ。
「あぁ…、なまえか。」
中に入ると、デスクに向かって座っていたリヴァイさんが、ゆっくりと振り向いた。
そして、私を見つけて、小さく呟くように言う。
「今、いい?」
「なんだ?」
「少し、話がしたいなと思って。」
「あ~…。悪い、明日までに出さねぇといけねぇ仕事があるから、
今日は無理だ。」
「そっか。じゃあ、仕方ないね。」
「あぁ、悪かったな。
用がねぇなら、もう部屋に戻って寝ろ。明日も朝から訓練だろ。」
リヴァイさんは、すぐにまたデスクへと身体を向ける。
一緒に寝るだけでもいいから、そばにおいてほしい———そう思うのは、我儘なのだろうか。
でも、それをリヴァイさんに言う勇気がない、ということは、少なくとも私は、それを〝我儘〟だと思っているということなのだろう。
「———うん、おやすみなさい。」
自分だけ、名残惜しそうにしているのはあまりにも寂しくて、私もリヴァイさんに背を向けた。
扉を開けて、うるさくしないように気を遣っている風を装って、ゆっくり時間をかけて閉める。
でもやっぱり、リヴァイさんは、振り向いてくれない。
(そういえば、目も合わなかったな。)
私は、来た道を逆戻りしながら気づく。
確かにリヴァイさんはこっちを向いていたはずなのに、視線はどこか違うところにあった。
それが、今の私達の関係全てを物語っているような気がして、泣けてきた。
『大好きです。リヴァイさんの隣にいるのは、ずっと私だったら良いな。』
『なまえが離れていかねぇ限りは、そうだろうな。』
『本当?』
『一生かけて試してみればいい。』
『じゃあ、一生一緒ですね。』
『ならいい。』
さっきまで頭の中で繰り返されていた友人との会話が、恋人たちの甘い会話にかき消されていく。
自信をもって、幸せだと言えた日々も確かにあったはずだった。
大好きな人との途切れない未来を期待して、幸せな将来を夢を見たりもした。
でも、最近は、あの頃の私が願っていた〝長い付き合い〟が、私達の心と距離を離していく。
一歩、踏み出して、〝我儘〟を伝えたら、良くも悪くも何かが変わるんだろう。
でも私には、その賭けに出て、確かめる勇気がない。
理性では、もう無理だと分かっていても、そんなのただの思い過ごしだって、まだリヴァイさんが好きで仕方ない私が、期待してるから———。
「どうしたんだい?」
廊下の向こうから歩いてきたモブリットが、泣いている私に気づいて声をかけてきた。
心配そうに私の顔を覗き込もうとするから、慌てて涙を拭って、下手くそな笑みを顔に貼り付ける。
「なんでもないよ。埃が目に入っちゃったのかなっ。」
誤魔化すように笑ったけれど、モブリットは、私が歩いてきた廊下の先を見て気づいてしまったようだった。
モブリットが、少しだけ眉を顰めた後に、私の腕を掴む。
そして、そのまま、戸惑う私を引っ張って、一番近くの会議室へと連れ込む。
静かに扉を閉めてから、モブリットが振り向く。
「泣きなよ、俺しか見てないから。」
モブリットが、濡れたばかりの私の頬に優しく触れる。
「そういうんじゃ———。」
「せっかくの同期だろ。弱いところを見せあうのなんて、慣れてるじゃないか。」
「本当に…、大丈夫なの。私は、傷ついてなんかいないから。」
「でも、泣いてる。つらいんじゃないのかい?」
「違うの。リヴァイさんは世界で一番素敵な恋人で、世界を救う人なんだよ。
そんな人に恋人になってもらえて、世界一幸せな私は、
我儘なんか言わないでちゃんと支えてあげなくちゃ。」
世界で一番素敵な人の恋人として相応しい私にならないといけないの———震える声が、すべてを物語ってる。
無理していることくらい、もうずっと前から、本当は分かっていた。
分かっていたのだ。
でも、認めるのが怖くて、悲しくて、永遠に、リヴァイさんを失ってしまいそうで———。
「なまえが、リヴァイ兵長の恋人として頑張ってること、知ってるよ。
今のままで、十分、皆が羨む素敵な恋人さ。少なくとも、俺にとってはそうだよ。」
モブリットは、もう泣いていない私の頬を優しく撫でながら、慰めてくれる。
そんな優しい友人に、私は首を横に振ることしか出来なかった。
「ダメ…、ダメだよ。私、本当は我儘なの。リヴァイさんの恋人として、相応しくないの。」
「そうかな。たとえば、どんな我儘だい?」
「一緒に…、居たい、とか…。」
「とか?」
「話を、聞いて、欲しいとか…。」
「どんな話?」
「今日、あった…どうでもいい、こと。
ハンジさんが、ソニーがあくびしたって報告に興奮しすぎて、滑って転んだ拍子に
エルヴィン団長の眼鏡をお尻で踏んで壊しちゃったこと、とか。」
「しかもその報告、コニーのジョークだったんだよね。」
「そう…!もう笑っちゃって!ハンジさんと団長には悪いけど、
笑っちゃって!私、笑っちゃって…。」
面白いことを思い出したはずなのに、私の瞳からは、涙が溢れだして止まらない。
モブリットが涙を拭ってくれているけれど、全然、追いつかない。
苦笑を浮かべるモブリットの優しい表情は、なんとなく想像はつくけれど、涙で滲んで何も見えない。
でも、自分の気持ちは、見えてしまったのだ。
私は、ただ———。
そう、私は、ただ———。
「リヴァイさん、に…っ、こんっ、こんな…風に…っ、
くだら、ない話っ、を…っ、聞いて、欲しかった…っ。
面白いね…っ、て、明日、は…、どんな楽しいことがある、かなって
一緒に…、なんでもない、時間を…っ、過ごしたい…っ。」
涙が止まらない。
リヴァイさんへの想いが、止まらない。
好きだ。大好きだ。
私は、リヴァイさんが、大好き———。
なのに———。
「俺が聞いてあげるよ。世界一どうでもいい話も、史上最悪で面倒な我儘も
なまえから聞けるものなら、なんだって聞いてあげる。」
モブリットが、私を抱きしめる。
リヴァイさんを想って、泣きじゃくる私ごと抱きしめてくれる。
暖かくて、優しい腕の居心地の良さに、喉の奥が締まって、苦しくなって、鼻がツンとする。
「聞かせて。俺に、聞かせてほしい。誰より最初に。
誰よりも、真剣に聞くから。」
「…っ。モブリット…っ。」
モブリットの背中に手をまわした。
ギュッと、しがみつくように抱き着いて泣きじゃくったその瞬間、私史上、最も頑張った恋が、終わりを告げた。
だって、大好きだから、無理をしてしまった。大好きだから、私が私ではいられなくなった。
大好きだから、嫌いになりたくない。大好きだから、大好きだから、私———。
大好きだから、サヨナラ。
少しだけ目を見開いた後、傷ついたように目を細めて唇を噛んだあなたを見て、気づいたの。
あなたの言った通りだった。
私が去っていくまで、あなたは本当に、私の恋人でいてくれたんだね。
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