◇第二十九話◇相応しいパートナー
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「これくらいで疲れてたら、すぐに巨人の胃袋だぞ。」
もう何度目かのそのセリフに、息も絶え絶えの私は、肩で呼吸をしながら、必死に頷いて答えるしか出来なかった。
それに、立体起動装置を扱うために酷使しているありとあらゆる筋肉が悲鳴を上げて、身体中が痛い。
もうこんなにつらい訓練今すぐ逃げ出したいけれど、このままだと、壁外調査の任務についた途端に巨人の胃袋行きだとリヴァイ兵長に宣言されてしまったし、それは嫌だ。
ハンジさんの独断と偏見と強引さによって、私に任された任務は、巨人の捕獲を行う巨人化したエレンを守ることだった。
トロスト区奪還作戦のときのように巨人が近くの人間に目もくれずにエレンに寄って行った場合の盾であり、矛にならなければない。
リヴァイ兵長以外のリヴァイ班は、エレンの補佐と守備を行う。
そこまで巨人を近づけさせないのが、私とリヴァイ兵長の任務なのだ。
何体の巨人が現れるかは分からないが、その数はトロスト区奪還作戦のときの比ではないだろう、となんとも恐ろしいことをエルヴィン団長が言っていたー。
「休憩だ。おれが戻ったら、続きを始める。」
なんとか掠れた声で返事をして、私は立体起動装置で地面に降りた。
リヴァイ兵長は、立体起動装置を使ってあっという間に遠くへ行ってしまった。
忙しい人だ、本当に。
でも、とにかくやっと休める。
「お疲れさま。大変そうだな。」
声をかけてきたのはグンタだった。
地面に座り込んだ私のもとに、他のリヴァイ班のメンバーもやってきた。
彼らも巨人化実験と合わせて行っていた訓練が、休憩に入ったようだ。
「それにしても、リヴァイ兵長の訓練は厳しいなぁ。
見てるこっちもキツそうだと思ったよ。」
「仕方がない。なまえの実力で、リヴァイ兵長と同等の任務をこなすのは厳しい。
ここまでしても、足りないくらいだ…。」
「そもそもどうしてリヴァイ兵長は、この俺ではなくなまえを選んだのか。
俺には分かっている。そう、俺にはな。」
「ハンジ分隊長が推したからだと聞いてるぞ。」
「なまえもあの人の下についたばっかりに、
大変な役目を押し付けられて可哀想にな。」
彼らが、私の心配をしてくれているのはもちろん分かっている。
でも、壁外調査でリヴァイ兵長と同じ配置をされたのが私だと聞いてからの彼らの目の色は僅かに変わった。
尊敬するリヴァイ兵長と同じ配置ではなかったことの落胆と、なぜお前なのかという困惑と敵意。
私は認められていないー、リヴァイ兵長のパートナーとして。
そんなの最もだ。
だって、リヴァイ兵長だって―。
「リヴァイ兵長も、ペトラとかエルド達の方が相応しい配置だって言ってたし
私もそう思うんだけど…。任されたからには、必死に頑張ー。」
「いいよね。なまえは。」
私の話を遮った冷たい声。
顔を上げて顔を見るまで、それが誰のものか分からなかった。
いや、顔を見ても、それでも、私を見下ろす冷たい瞳が、ペトラのものだと理解するまでに頭が追いつかなかった。
「ハンジさんのお気に入りってだけで、リヴァイ兵長のパートナーになれるんだから。
それなら、私も必死に訓練するんじゃなくて、ハンジさんのご機嫌取りをすればよかー。」
「ペトラ、お前、何言ってんだ。」
グンタに肩を握られ、ペトラは目を見開いた。
色を失った氷みたいだった瞳に光が戻ったように見えた途端に、ペトラは私から目を反らした。
「ごめん、頭冷やしてくる。」
ペトラは、誰の顔も見ないまま、背を向けてしまった。
その後ろをオルオがオロオロした様子で追いかけていく。
エルドとグンタは戸惑った様子で、私とペトラ達の背中を交互に見るけれど、何も言わない。
同じことを、思っていたのかもしれない。
ペトラの今のセリフは、聞き覚えがあった。
前に、似たようなことを言われたことがある。
悪い噂が流れていた頃だ。
敵意だけで出来た言葉をぶつけられて、傷つけられた私を助けてくれたのが、ペトラだった。
そんな優しいペトラに、私はあのときの彼女達と同じセリフを言わせたのかー。
「私、エルヴィン団長にお願いしてくる。」
「え?」
「もっと相応しい配置があるもの。
私にはこの任務は荷が重すぎる。」
「ダメだ。」
立ち上がった私の腕を、グンタが掴んだ。
驚いて彼の顔を見た。
怒っているのかと思ったが違った。
真剣な目は、任務を遂行しているときのまっすぐなグンタの目だ。
エルドも同じような顔をしている。
「どうして?」
「ハンジ分隊長もエルヴィン団長も、好き嫌いで配置を決めるような人じゃない。」
「でも、今回の私の配置はおかしー。」
「おかしくない!」
エルドが大声を出して、ビックリした。
いつも、冷静な人だから。
「悪い。おれ達は嫉妬してた。
でも、それはなまえがリヴァイ兵長のパートナーに選ばれたからじゃない。」
「おれ達も気づいてたからだ。なまえが…、一番その役に相応しいと。」
「そんなっ!そんなことー。」
「あるんだよ。あんまり言わせんなよ。
一応、おれ達のそれなりにあるプライドも傷ついてるんだぜ?」
グンタは、困ったように眉尻を下げた。
唇を噛むエルドは、すごく悔しそうでー。
(私が…、相応しい?まさか、そんなこと。)
今回の私の任務配置は、無謀だと思っていた。
みんな、そう思っていると感じていたし、リヴァイ兵長だってそんな風に言っていた。
でも、なんで、エルドとグンタは、まるで私に負けたみたいな顔をしているのかー。
「ペトラのこと許してやってくれよ。」
「え?」
「人一倍、リヴァイ兵長に憧れてたからさ。
悔しかったんだと思うよ。友人なら尚更さ。」
「アイツもちゃんと分かってる。
お前が、実力で選ばれたんだってこと。」
エルドとグンタはそう言って、私の髪をクシャリと撫でると、ペトラの様子を見てくると行ってしまった。
2人が触れて乱れた髪を触る。
絡まった髪が指にひっかかって痛くて、胸が苦しくなった。
もう何度目かのそのセリフに、息も絶え絶えの私は、肩で呼吸をしながら、必死に頷いて答えるしか出来なかった。
それに、立体起動装置を扱うために酷使しているありとあらゆる筋肉が悲鳴を上げて、身体中が痛い。
もうこんなにつらい訓練今すぐ逃げ出したいけれど、このままだと、壁外調査の任務についた途端に巨人の胃袋行きだとリヴァイ兵長に宣言されてしまったし、それは嫌だ。
ハンジさんの独断と偏見と強引さによって、私に任された任務は、巨人の捕獲を行う巨人化したエレンを守ることだった。
トロスト区奪還作戦のときのように巨人が近くの人間に目もくれずにエレンに寄って行った場合の盾であり、矛にならなければない。
リヴァイ兵長以外のリヴァイ班は、エレンの補佐と守備を行う。
そこまで巨人を近づけさせないのが、私とリヴァイ兵長の任務なのだ。
何体の巨人が現れるかは分からないが、その数はトロスト区奪還作戦のときの比ではないだろう、となんとも恐ろしいことをエルヴィン団長が言っていたー。
「休憩だ。おれが戻ったら、続きを始める。」
なんとか掠れた声で返事をして、私は立体起動装置で地面に降りた。
リヴァイ兵長は、立体起動装置を使ってあっという間に遠くへ行ってしまった。
忙しい人だ、本当に。
でも、とにかくやっと休める。
「お疲れさま。大変そうだな。」
声をかけてきたのはグンタだった。
地面に座り込んだ私のもとに、他のリヴァイ班のメンバーもやってきた。
彼らも巨人化実験と合わせて行っていた訓練が、休憩に入ったようだ。
「それにしても、リヴァイ兵長の訓練は厳しいなぁ。
見てるこっちもキツそうだと思ったよ。」
「仕方がない。なまえの実力で、リヴァイ兵長と同等の任務をこなすのは厳しい。
ここまでしても、足りないくらいだ…。」
「そもそもどうしてリヴァイ兵長は、この俺ではなくなまえを選んだのか。
俺には分かっている。そう、俺にはな。」
「ハンジ分隊長が推したからだと聞いてるぞ。」
「なまえもあの人の下についたばっかりに、
大変な役目を押し付けられて可哀想にな。」
彼らが、私の心配をしてくれているのはもちろん分かっている。
でも、壁外調査でリヴァイ兵長と同じ配置をされたのが私だと聞いてからの彼らの目の色は僅かに変わった。
尊敬するリヴァイ兵長と同じ配置ではなかったことの落胆と、なぜお前なのかという困惑と敵意。
私は認められていないー、リヴァイ兵長のパートナーとして。
そんなの最もだ。
だって、リヴァイ兵長だって―。
「リヴァイ兵長も、ペトラとかエルド達の方が相応しい配置だって言ってたし
私もそう思うんだけど…。任されたからには、必死に頑張ー。」
「いいよね。なまえは。」
私の話を遮った冷たい声。
顔を上げて顔を見るまで、それが誰のものか分からなかった。
いや、顔を見ても、それでも、私を見下ろす冷たい瞳が、ペトラのものだと理解するまでに頭が追いつかなかった。
「ハンジさんのお気に入りってだけで、リヴァイ兵長のパートナーになれるんだから。
それなら、私も必死に訓練するんじゃなくて、ハンジさんのご機嫌取りをすればよかー。」
「ペトラ、お前、何言ってんだ。」
グンタに肩を握られ、ペトラは目を見開いた。
色を失った氷みたいだった瞳に光が戻ったように見えた途端に、ペトラは私から目を反らした。
「ごめん、頭冷やしてくる。」
ペトラは、誰の顔も見ないまま、背を向けてしまった。
その後ろをオルオがオロオロした様子で追いかけていく。
エルドとグンタは戸惑った様子で、私とペトラ達の背中を交互に見るけれど、何も言わない。
同じことを、思っていたのかもしれない。
ペトラの今のセリフは、聞き覚えがあった。
前に、似たようなことを言われたことがある。
悪い噂が流れていた頃だ。
敵意だけで出来た言葉をぶつけられて、傷つけられた私を助けてくれたのが、ペトラだった。
そんな優しいペトラに、私はあのときの彼女達と同じセリフを言わせたのかー。
「私、エルヴィン団長にお願いしてくる。」
「え?」
「もっと相応しい配置があるもの。
私にはこの任務は荷が重すぎる。」
「ダメだ。」
立ち上がった私の腕を、グンタが掴んだ。
驚いて彼の顔を見た。
怒っているのかと思ったが違った。
真剣な目は、任務を遂行しているときのまっすぐなグンタの目だ。
エルドも同じような顔をしている。
「どうして?」
「ハンジ分隊長もエルヴィン団長も、好き嫌いで配置を決めるような人じゃない。」
「でも、今回の私の配置はおかしー。」
「おかしくない!」
エルドが大声を出して、ビックリした。
いつも、冷静な人だから。
「悪い。おれ達は嫉妬してた。
でも、それはなまえがリヴァイ兵長のパートナーに選ばれたからじゃない。」
「おれ達も気づいてたからだ。なまえが…、一番その役に相応しいと。」
「そんなっ!そんなことー。」
「あるんだよ。あんまり言わせんなよ。
一応、おれ達のそれなりにあるプライドも傷ついてるんだぜ?」
グンタは、困ったように眉尻を下げた。
唇を噛むエルドは、すごく悔しそうでー。
(私が…、相応しい?まさか、そんなこと。)
今回の私の任務配置は、無謀だと思っていた。
みんな、そう思っていると感じていたし、リヴァイ兵長だってそんな風に言っていた。
でも、なんで、エルドとグンタは、まるで私に負けたみたいな顔をしているのかー。
「ペトラのこと許してやってくれよ。」
「え?」
「人一倍、リヴァイ兵長に憧れてたからさ。
悔しかったんだと思うよ。友人なら尚更さ。」
「アイツもちゃんと分かってる。
お前が、実力で選ばれたんだってこと。」
エルドとグンタはそう言って、私の髪をクシャリと撫でると、ペトラの様子を見てくると行ってしまった。
2人が触れて乱れた髪を触る。
絡まった髪が指にひっかかって痛くて、胸が苦しくなった。