◇第二十三話◇残った貴方の跡は
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割れたティーカップの後始末をペトラに頼んだリヴァイ兵長は、私を医務室に連れて行った。
ここにきてから私はずっと、消毒をした指に包帯を巻くリヴァイ兵長の器用な手の動きを、ただじっと見ている。
そうしないと、少し切っただけの指先に大げさに施されていく処置に、胸の痛さと共に恥ずかしさが爆発しそうだったから。
「いつからいたんだ。」
「え?」
傷口のことを聞いてからは、ずっと黙って処置をしていたリヴァイ兵長が急に口を開くから驚いた。
「…いや、なんでもねぇ。」
リヴァイ兵長はそれだけ言うと、私が指を動かしてしまったせいでズレてしまった包帯を綺麗に巻き直し始めた。
「そう、ですか…。」
急に喋りだすリヴァイ兵長に驚いて答えられなかったけれど、何を訊ねられたのかは聞こえていた。
でも、私も、それ以上は追及せずに口を閉ざした。
それからもお互いに何か話すわけでもなく、リヴァイ兵長はただただ丁寧に包帯を巻いてくれた。
私はそんなリヴァイ兵長の手をひたすらに見つめながら、頭の中に蘇るイメージを必死に消そうと戦っていた。
傷に触らないようにそっと優しく触れるリヴァイ兵長のこの手は、少し前までは恋人のためだけにあったこととか―。
「ありがとうございました。」
医務室を出て、頭を下げた私に、リヴァイ兵長は何も答えなかった。
きっと呆れていて、そして、迷惑なやつだと思ったに決まっている。
後ろからリヴァイ兵長の視線を感じたけれど、私は振り返らなかった。
「あ、おかえり~。遅かっ―。」
「ルルっ。」
部屋に戻った私は、ルルに抱き着いた。
廊下を歩く間中、ずっと我慢していたの。
平然とした顔で歩いて、夜更かしの兵士とたまにすれ違っても何事もないように「おやすみ。」って言えたの。
だから、今だけ、ほんの少しだけ素直にならせて。
きっと今頃、リヴァイ兵長とペトラは一緒にいるんだろう。
だから、今だけ―。
「好きだったの…っ、ちょっとだけよ。まだ、だい、だいじょうぶっ。
でも、ちょっとだけ…っ、好きだったから、だから…っ!」
「うん、大丈夫だよ。大丈夫。」
まとまりのない私の泣き言を、ルルは抱きしめてくれた。
髪を撫でるルルの優しい手が、リヴァイ兵長を思い出させて、また泣いてしまったけれど、大丈夫。
これだけ泣けば、大泣きすれば、明日には忘れてる。
ひとりぼっちで不安なときに優しくされたら誰だって、どうも思っていないはずの人に恋をしたと勘違いすることだってあるし、この気持ちは一時の迷いに違いないし、大丈夫。
忘れてる。
こんな気持ち、明日には忘れてる。
ペトラの髪を撫でた優しいリヴァイ兵長の手の動きも、重なる2人の影も―。
だから、どうか、私を抱きしめたときのリヴァイ兵長の温もりはー。
どうか―。
ここにきてから私はずっと、消毒をした指に包帯を巻くリヴァイ兵長の器用な手の動きを、ただじっと見ている。
そうしないと、少し切っただけの指先に大げさに施されていく処置に、胸の痛さと共に恥ずかしさが爆発しそうだったから。
「いつからいたんだ。」
「え?」
傷口のことを聞いてからは、ずっと黙って処置をしていたリヴァイ兵長が急に口を開くから驚いた。
「…いや、なんでもねぇ。」
リヴァイ兵長はそれだけ言うと、私が指を動かしてしまったせいでズレてしまった包帯を綺麗に巻き直し始めた。
「そう、ですか…。」
急に喋りだすリヴァイ兵長に驚いて答えられなかったけれど、何を訊ねられたのかは聞こえていた。
でも、私も、それ以上は追及せずに口を閉ざした。
それからもお互いに何か話すわけでもなく、リヴァイ兵長はただただ丁寧に包帯を巻いてくれた。
私はそんなリヴァイ兵長の手をひたすらに見つめながら、頭の中に蘇るイメージを必死に消そうと戦っていた。
傷に触らないようにそっと優しく触れるリヴァイ兵長のこの手は、少し前までは恋人のためだけにあったこととか―。
「ありがとうございました。」
医務室を出て、頭を下げた私に、リヴァイ兵長は何も答えなかった。
きっと呆れていて、そして、迷惑なやつだと思ったに決まっている。
後ろからリヴァイ兵長の視線を感じたけれど、私は振り返らなかった。
「あ、おかえり~。遅かっ―。」
「ルルっ。」
部屋に戻った私は、ルルに抱き着いた。
廊下を歩く間中、ずっと我慢していたの。
平然とした顔で歩いて、夜更かしの兵士とたまにすれ違っても何事もないように「おやすみ。」って言えたの。
だから、今だけ、ほんの少しだけ素直にならせて。
きっと今頃、リヴァイ兵長とペトラは一緒にいるんだろう。
だから、今だけ―。
「好きだったの…っ、ちょっとだけよ。まだ、だい、だいじょうぶっ。
でも、ちょっとだけ…っ、好きだったから、だから…っ!」
「うん、大丈夫だよ。大丈夫。」
まとまりのない私の泣き言を、ルルは抱きしめてくれた。
髪を撫でるルルの優しい手が、リヴァイ兵長を思い出させて、また泣いてしまったけれど、大丈夫。
これだけ泣けば、大泣きすれば、明日には忘れてる。
ひとりぼっちで不安なときに優しくされたら誰だって、どうも思っていないはずの人に恋をしたと勘違いすることだってあるし、この気持ちは一時の迷いに違いないし、大丈夫。
忘れてる。
こんな気持ち、明日には忘れてる。
ペトラの髪を撫でた優しいリヴァイ兵長の手の動きも、重なる2人の影も―。
だから、どうか、私を抱きしめたときのリヴァイ兵長の温もりはー。
どうか―。