◇第二十四話◇好きになった人
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ストヘス区へ向かう馬車の中は、緊張感に包まれてー。
いなかった。
「それでねっ!エレンは少しずつ自我を保つことが出来るようになったんだっ!」
鼻息荒いハンジさんは、さっきからずっとエレンの巨人化実験の成果をエルヴィン団長に語っている。
ハンジ班から報告書が届いているはずなのだが、そういうことは頭からすっぽり抜けているのかもしれない。
窓の外を眺めながら、適当に相槌を打っているエルヴィン団長は、たぶん違うことを考えているのだと思う。
難しい顔をしているから。
私の隣に座るリヴァイ兵長は、窓枠に腕を乗せて、エルヴィン団長よりも興味なさげに窓の外を眺めている。
一緒に実験に参加しているわけだから、当然と言えば当然。
書記としてモブリットさんと一緒に参加している私も同じで、手持ち無沙汰で、今さら覚えられそうにない名簿をただなんとなくめくっていた。
「昨日は、」
リヴァイ兵長の声がして、名簿から顔を上げた。
他の誰かに声をかけたのかとも思ったけれど、窓の外を見ていた瞳がこちらを見ていたから、私で間違いなかったのだろう。
「どうしました?」
「昨日は、お前は何しにあそこに来たんだ。
何か用があったんじゃねぇのか。」
「あー…、何か飲み物ないかなぁって行っただけですよ。
キッチンに入ってすぐにティーカップ割っちゃって、それどころじゃなくなっちゃったけど。」
作り笑いで誤魔化した。
昨夜の医務室でも、私が何かを聞いていないかをリヴァイ兵長は確認したがっているようだった。
どうしても、ペトラと恋人であることは秘密にしておきたいのだろう。
同じ兵団で恋人同士という人もいるだろうが、リヴァイ兵長のように立場がある人だと、簡単に恋人も作れないのかもしれない。
でもそれは、私には関係のないこと。
何も関係ないことなのだ。
「そうか、残念だったな。」
「いえ、昨日は本当にすみませんでした。
邪魔してしまってー。」
そこまで言ってしまってから、余計なことを口走ったと後悔した。
チラリとリヴァイ兵長を見ると、答えに詰まっているように見えた。
やってしまった―。
「なまえ、おれとペトラは―。」
「あっ!包帯外したんです、私っ!ほらっ!」
私が何かを見たかもしれない。そう結論付けて、自分達は付き合っているとか、見なかったことにしてほしいとか、そんなことを言おうとしたんだろうか。
忠告されなくたってそんなこと誰にも言わないし、聞きたくもない。
誤魔化すように笑って見せた私の指を、リヴァイ兵長はチラリと見ただけですぐにつまらなそうに窓の外に視線を戻した。
「もう痛くねぇのか。」
「大丈夫ですっ。
包帯のまま会議に参加するわけにもいきませんから。」
「まぁ、そうだな。」
あまり興味がないのかもしれない。
これがペトラの傷だったらー、そんなことを考えてすぐに思考を止めた。
昨日からずっと、自分とペトラを比べてばかりだ。
もう何年も調査兵としてリヴァイ兵長を支えてきた彼女に、私の何が勝るというのだろう。
それに、もしも万が一、彼女より勝るものがあったとして、だから何になる。
リヴァイ兵長の心にいるのはペトラである時点で、私はもうすべてにおいて負けていることに変わりはないのだ。
そもそも恋なんてものは、勝ち負けではなくて。
ていうか、そもそも、これは恋じゃない。
「気の迷いに決まってる!!」
ハッと思ったときには、嬉々としてエレンの実験結果を話してたハンジさんも、難しい顔をして話を聞いていたエルヴィン団長も、興味なさそうに窓の外を見ていたリヴァイ兵長も、驚いた顔を私に向けていた。
「…巨人捕獲作戦をエレンに協力してほしいって気持ちは、
気の迷いじゃない自信があるんだけどな。」
眉尻を下げて、ハンジさんが悲しそうに言った。
いなかった。
「それでねっ!エレンは少しずつ自我を保つことが出来るようになったんだっ!」
鼻息荒いハンジさんは、さっきからずっとエレンの巨人化実験の成果をエルヴィン団長に語っている。
ハンジ班から報告書が届いているはずなのだが、そういうことは頭からすっぽり抜けているのかもしれない。
窓の外を眺めながら、適当に相槌を打っているエルヴィン団長は、たぶん違うことを考えているのだと思う。
難しい顔をしているから。
私の隣に座るリヴァイ兵長は、窓枠に腕を乗せて、エルヴィン団長よりも興味なさげに窓の外を眺めている。
一緒に実験に参加しているわけだから、当然と言えば当然。
書記としてモブリットさんと一緒に参加している私も同じで、手持ち無沙汰で、今さら覚えられそうにない名簿をただなんとなくめくっていた。
「昨日は、」
リヴァイ兵長の声がして、名簿から顔を上げた。
他の誰かに声をかけたのかとも思ったけれど、窓の外を見ていた瞳がこちらを見ていたから、私で間違いなかったのだろう。
「どうしました?」
「昨日は、お前は何しにあそこに来たんだ。
何か用があったんじゃねぇのか。」
「あー…、何か飲み物ないかなぁって行っただけですよ。
キッチンに入ってすぐにティーカップ割っちゃって、それどころじゃなくなっちゃったけど。」
作り笑いで誤魔化した。
昨夜の医務室でも、私が何かを聞いていないかをリヴァイ兵長は確認したがっているようだった。
どうしても、ペトラと恋人であることは秘密にしておきたいのだろう。
同じ兵団で恋人同士という人もいるだろうが、リヴァイ兵長のように立場がある人だと、簡単に恋人も作れないのかもしれない。
でもそれは、私には関係のないこと。
何も関係ないことなのだ。
「そうか、残念だったな。」
「いえ、昨日は本当にすみませんでした。
邪魔してしまってー。」
そこまで言ってしまってから、余計なことを口走ったと後悔した。
チラリとリヴァイ兵長を見ると、答えに詰まっているように見えた。
やってしまった―。
「なまえ、おれとペトラは―。」
「あっ!包帯外したんです、私っ!ほらっ!」
私が何かを見たかもしれない。そう結論付けて、自分達は付き合っているとか、見なかったことにしてほしいとか、そんなことを言おうとしたんだろうか。
忠告されなくたってそんなこと誰にも言わないし、聞きたくもない。
誤魔化すように笑って見せた私の指を、リヴァイ兵長はチラリと見ただけですぐにつまらなそうに窓の外に視線を戻した。
「もう痛くねぇのか。」
「大丈夫ですっ。
包帯のまま会議に参加するわけにもいきませんから。」
「まぁ、そうだな。」
あまり興味がないのかもしれない。
これがペトラの傷だったらー、そんなことを考えてすぐに思考を止めた。
昨日からずっと、自分とペトラを比べてばかりだ。
もう何年も調査兵としてリヴァイ兵長を支えてきた彼女に、私の何が勝るというのだろう。
それに、もしも万が一、彼女より勝るものがあったとして、だから何になる。
リヴァイ兵長の心にいるのはペトラである時点で、私はもうすべてにおいて負けていることに変わりはないのだ。
そもそも恋なんてものは、勝ち負けではなくて。
ていうか、そもそも、これは恋じゃない。
「気の迷いに決まってる!!」
ハッと思ったときには、嬉々としてエレンの実験結果を話してたハンジさんも、難しい顔をして話を聞いていたエルヴィン団長も、興味なさそうに窓の外を見ていたリヴァイ兵長も、驚いた顔を私に向けていた。
「…巨人捕獲作戦をエレンに協力してほしいって気持ちは、
気の迷いじゃない自信があるんだけどな。」
眉尻を下げて、ハンジさんが悲しそうに言った。