◇第二十一話◇触れられない星
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「わぁ…!」
視界を遮るものは何もない。
降ってきそうなほどに星が輝く満天の夜空に鳥肌が立った。
『離すなよ。』
談話室に戻ってきたリヴァイ兵長は、立体起動装置を装備していた。
私の腰を片腕で抱き上げた後、リヴァイ兵長は、驚く私に説明もなしにアンカーを近くの木に飛ばした。
気づけば、あっという間に、古城の一番高い屋根の上に飛び降りていた。
そして、腰を下ろし見上げた夜空の美しさに、私は息を呑む。
言葉をなくし、語彙力がないせいで、感嘆の声を上げることしかできなかった。
「友人には会えそうか。」
私の隣に腰を下ろし、リヴァイ兵長も夜空を見上げた。
その言葉で、わざわざ立体起動装置まで使って、古城の屋根の上まで来た理由を理解した。
「ここじゃまだダメですね。
世界で一番空に近いのはきっと、壁の上だから。」
少し意地悪く、からかうように言うと、リヴァイ兵長に睨まれた。
それがおかしくて、笑った。
少しだけ、涙が出たのは、寒さと乾燥のせいだと思う。
「トロスト区に帰ったらな。」
「連れてってくれるんですか?」
夜に壁上に行けるのは、見張りの駐屯兵だけだと決まっている。
調査兵団の兵士長だと言っても、さすがにルールを破ることは出来ない。
「おれの気が向いた時に、お前がちゃんと生きてればな。」
「それっていつですか?」
「さぁな。100年後ならいいな。」
「えー、生きてないですよ、それ。」
「せいぜい死なねぇように訓練に励め。」
「訓練してても寿命で死にます。」
「だろうな。」
「連れてく気ないでしょ、リヴァイ兵長。」
「さぁ。」
適当過ぎるリヴァイ兵長がおかしくて、私はまた笑った。
そして、リヴァイ兵長は、また夜空を見上げる。
その視線の先を追いかけるように、もう一度、私も夜空を見上げた。
相変わらず、星は遠くて、手を伸ばしても触れられそうにない。
でも、それでもいい気がしてきた。
少なくとも、今夜は、星になったヒルラに会えなくても、私は寂しさを感じなくてもいい気がする。
調査兵団に入って初めて、壁の中で飼われている現実を知った。そして、世界は悲劇で溢れていたのだということを。
だから、無性にヒルラに会いたくなる。
あの日の悲劇は悪夢だったのだと言って欲しくて、明日になればすべて元通りになっていてほしくて。
でも、今、肩が触れそうで触れない距離に座るリヴァイ兵長の優しさも、私にとっては現実で、真実。
世界は悲劇に溢れていたけれど、勇敢で優しい兵士達が守る幸せで出来ているんだ。
ふいに、冷たい風が吹いた。
兵団服だけでマントも着ていないリヴァイ兵長には、寒いかもしれない。
「部屋に戻りましょうか。」
私は、厚めのカーディガンを抱きしめながら立ち上がった。
視界を遮るものは何もない。
降ってきそうなほどに星が輝く満天の夜空に鳥肌が立った。
『離すなよ。』
談話室に戻ってきたリヴァイ兵長は、立体起動装置を装備していた。
私の腰を片腕で抱き上げた後、リヴァイ兵長は、驚く私に説明もなしにアンカーを近くの木に飛ばした。
気づけば、あっという間に、古城の一番高い屋根の上に飛び降りていた。
そして、腰を下ろし見上げた夜空の美しさに、私は息を呑む。
言葉をなくし、語彙力がないせいで、感嘆の声を上げることしかできなかった。
「友人には会えそうか。」
私の隣に腰を下ろし、リヴァイ兵長も夜空を見上げた。
その言葉で、わざわざ立体起動装置まで使って、古城の屋根の上まで来た理由を理解した。
「ここじゃまだダメですね。
世界で一番空に近いのはきっと、壁の上だから。」
少し意地悪く、からかうように言うと、リヴァイ兵長に睨まれた。
それがおかしくて、笑った。
少しだけ、涙が出たのは、寒さと乾燥のせいだと思う。
「トロスト区に帰ったらな。」
「連れてってくれるんですか?」
夜に壁上に行けるのは、見張りの駐屯兵だけだと決まっている。
調査兵団の兵士長だと言っても、さすがにルールを破ることは出来ない。
「おれの気が向いた時に、お前がちゃんと生きてればな。」
「それっていつですか?」
「さぁな。100年後ならいいな。」
「えー、生きてないですよ、それ。」
「せいぜい死なねぇように訓練に励め。」
「訓練してても寿命で死にます。」
「だろうな。」
「連れてく気ないでしょ、リヴァイ兵長。」
「さぁ。」
適当過ぎるリヴァイ兵長がおかしくて、私はまた笑った。
そして、リヴァイ兵長は、また夜空を見上げる。
その視線の先を追いかけるように、もう一度、私も夜空を見上げた。
相変わらず、星は遠くて、手を伸ばしても触れられそうにない。
でも、それでもいい気がしてきた。
少なくとも、今夜は、星になったヒルラに会えなくても、私は寂しさを感じなくてもいい気がする。
調査兵団に入って初めて、壁の中で飼われている現実を知った。そして、世界は悲劇で溢れていたのだということを。
だから、無性にヒルラに会いたくなる。
あの日の悲劇は悪夢だったのだと言って欲しくて、明日になればすべて元通りになっていてほしくて。
でも、今、肩が触れそうで触れない距離に座るリヴァイ兵長の優しさも、私にとっては現実で、真実。
世界は悲劇に溢れていたけれど、勇敢で優しい兵士達が守る幸せで出来ているんだ。
ふいに、冷たい風が吹いた。
兵団服だけでマントも着ていないリヴァイ兵長には、寒いかもしれない。
「部屋に戻りましょうか。」
私は、厚めのカーディガンを抱きしめながら立ち上がった。