◇第二十一話◇触れられない星
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シャワーを浴びて部屋着のワンピースに着替えた後も私は談話室でルル達とのお喋りを楽しんでいた。
そして、1人、1人と眠気とともに部屋に帰っていき、いつの間にか誰もいなくなっていた。
シンと静まり返った広い部屋は、実際よりも少し寒い気がする。
羽織っている大きめのカーディガンを抱きしめた。
私は、すっかり冷めた紅茶の入ったティーカップを持ってバルコニーに出ると、手すりの縁に腰を下ろし夜空を見上げる。
(今日はね、久しぶりにすごく楽しかったの。
ヒルラみたいに、ペトラ達とも親友になれたら嬉しいな。なれるかな?)
ヒルラなら何て答えるだろう、そんなことを考えながら、夜空の星を見上げる。
当然、ヒルラから返事は返ってこないから、私は彼女が言いそうなことを想像するしか出来ない。
どこにいてもしていることは同じで、少し可笑しくなる。
でも、そう思ったのは、私だけではなかったらしい。
「お前はいつもそこにいるな。」
声をかけてきたのは、リヴァイ兵長だった。
こんな時間まで仕事をしていたのか、兵団服姿のままであることに驚いた。
リヴァイ兵長の言った、そこ、とは兵舎の談話室のベランダのことだろう。
ベランダで夜空を見上げているのを見られたことも何度かあるし、仕事の合間の休憩はいつも談話室のベランダをリクエストしていた。
すっかり私のイメージは談話室の外になってしまっているようだ。
「夜風が気持ちがいいんですよ。」
「さみいだけだろうが。」
温かい紅茶を飲みながら冷たい夜風にあたるのが気持ちいいのだ。
そう言えば、興味が沸いたのか、仕方なくなのか、リヴァイ兵長は隣に来て手すりに背中を預けて夜空を見上げた。
やっぱり寒いだけだと文句を言うリヴァイ兵長をクスクス笑うと、持っているティーカップを渡された。
「お前の渡せ。」
「え?」
「お前の紅茶の方が夜風に合って気持ちいいんだろ。」
「え?そんなの関係ないですよ、それにこれはもう冷めてて―。」
「かせ。」
リヴァイ兵長は、人の話も聞かないで、私の持っているティーカップを強引に奪い、代わりに自分の分を私に渡した。
そして、一口飲んで、一瞬身体を震わせた。
ほら、やっぱり寒いのだ。
だって、その紅茶はすっかり冷めて冷たくなっているのだからー。
「だから、言ったんですよ。
はい、どうぞ。リヴァイ兵長の紅茶をお返しするので、これ飲んで温まってください。」
「必要ねぇ。」
リヴァイ兵長は、ふい、と目を反らしてしまう。
冷たい言い方と冷たい夜風に反して、リヴァイ兵長に強引に渡されたティーカップは温かい。
「あったかい…。」
喉の奥を優しく通り抜ける温かい紅茶よりも、リヴァイ兵長の優しさが温かかった。
でも、それをどう伝えればリヴァイ兵長は素直に受け止めてくれるだろう。
思った通り、ありがとうございます、と礼を言ってもリヴァイ兵長からは気のない返事が返ってきただけだった。
「あの星のどこかに、私の親友がいるらしいんです。」
「…そうか。」
見上げた夜空には幾千の星が輝いている。
星がすべて、亡くなった誰かなのだとしたら、その数があまりにも多すぎる。
リヴァイ兵長はいつもの調子で、会話を弾ませようという意識は感じなかったけれど、その声がいつもよりも優しい気がした。
「でも、こんなに遠くちゃ、どこにいるか分かんないですよね。
世界で一番空に近いところまで飛べたら、また会えるのかな…。」
夜空に手を伸ばしてみたけれど、ひんやりとした夜風が触れるだけだ。
時々、猛烈に襲われる寂しさ。
それを誤魔化すように空を見上げて、私は親友の声を探す。
幸せになってねーそう笑った彼女は、将来安泰の恋人との結婚を破談にしてまで調査兵団に入った私のことをどう思っているのだろう。
もし、ここにヒルラがいるのなら、相談したいこと、愚痴りたいこと、不安なこと、話したいことがたくさんあったのに―。
せめて、夜空の星になった彼女と話したくてこうして夜空を見上げたって、いつもならお喋りなヒルラは、今は聞き役に徹していて何も言ってくれない。
リヴァイ兵長は、何も答えず、談話室を出ていった。
そして、1人、1人と眠気とともに部屋に帰っていき、いつの間にか誰もいなくなっていた。
シンと静まり返った広い部屋は、実際よりも少し寒い気がする。
羽織っている大きめのカーディガンを抱きしめた。
私は、すっかり冷めた紅茶の入ったティーカップを持ってバルコニーに出ると、手すりの縁に腰を下ろし夜空を見上げる。
(今日はね、久しぶりにすごく楽しかったの。
ヒルラみたいに、ペトラ達とも親友になれたら嬉しいな。なれるかな?)
ヒルラなら何て答えるだろう、そんなことを考えながら、夜空の星を見上げる。
当然、ヒルラから返事は返ってこないから、私は彼女が言いそうなことを想像するしか出来ない。
どこにいてもしていることは同じで、少し可笑しくなる。
でも、そう思ったのは、私だけではなかったらしい。
「お前はいつもそこにいるな。」
声をかけてきたのは、リヴァイ兵長だった。
こんな時間まで仕事をしていたのか、兵団服姿のままであることに驚いた。
リヴァイ兵長の言った、そこ、とは兵舎の談話室のベランダのことだろう。
ベランダで夜空を見上げているのを見られたことも何度かあるし、仕事の合間の休憩はいつも談話室のベランダをリクエストしていた。
すっかり私のイメージは談話室の外になってしまっているようだ。
「夜風が気持ちがいいんですよ。」
「さみいだけだろうが。」
温かい紅茶を飲みながら冷たい夜風にあたるのが気持ちいいのだ。
そう言えば、興味が沸いたのか、仕方なくなのか、リヴァイ兵長は隣に来て手すりに背中を預けて夜空を見上げた。
やっぱり寒いだけだと文句を言うリヴァイ兵長をクスクス笑うと、持っているティーカップを渡された。
「お前の渡せ。」
「え?」
「お前の紅茶の方が夜風に合って気持ちいいんだろ。」
「え?そんなの関係ないですよ、それにこれはもう冷めてて―。」
「かせ。」
リヴァイ兵長は、人の話も聞かないで、私の持っているティーカップを強引に奪い、代わりに自分の分を私に渡した。
そして、一口飲んで、一瞬身体を震わせた。
ほら、やっぱり寒いのだ。
だって、その紅茶はすっかり冷めて冷たくなっているのだからー。
「だから、言ったんですよ。
はい、どうぞ。リヴァイ兵長の紅茶をお返しするので、これ飲んで温まってください。」
「必要ねぇ。」
リヴァイ兵長は、ふい、と目を反らしてしまう。
冷たい言い方と冷たい夜風に反して、リヴァイ兵長に強引に渡されたティーカップは温かい。
「あったかい…。」
喉の奥を優しく通り抜ける温かい紅茶よりも、リヴァイ兵長の優しさが温かかった。
でも、それをどう伝えればリヴァイ兵長は素直に受け止めてくれるだろう。
思った通り、ありがとうございます、と礼を言ってもリヴァイ兵長からは気のない返事が返ってきただけだった。
「あの星のどこかに、私の親友がいるらしいんです。」
「…そうか。」
見上げた夜空には幾千の星が輝いている。
星がすべて、亡くなった誰かなのだとしたら、その数があまりにも多すぎる。
リヴァイ兵長はいつもの調子で、会話を弾ませようという意識は感じなかったけれど、その声がいつもよりも優しい気がした。
「でも、こんなに遠くちゃ、どこにいるか分かんないですよね。
世界で一番空に近いところまで飛べたら、また会えるのかな…。」
夜空に手を伸ばしてみたけれど、ひんやりとした夜風が触れるだけだ。
時々、猛烈に襲われる寂しさ。
それを誤魔化すように空を見上げて、私は親友の声を探す。
幸せになってねーそう笑った彼女は、将来安泰の恋人との結婚を破談にしてまで調査兵団に入った私のことをどう思っているのだろう。
もし、ここにヒルラがいるのなら、相談したいこと、愚痴りたいこと、不安なこと、話したいことがたくさんあったのに―。
せめて、夜空の星になった彼女と話したくてこうして夜空を見上げたって、いつもならお喋りなヒルラは、今は聞き役に徹していて何も言ってくれない。
リヴァイ兵長は、何も答えず、談話室を出ていった。