◇第二十話◇誤解を解く
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部屋になまえはいなかった。
近くにいた兵士になまえを見ていないかを聞いてみると、夜になるといつもどこかへ出かけてしまうと言われた。
誰に聞いても同じだ。
だが、誰もどこへ向かっているのかまでは知らないようだった。
一体どこへ行ってしまったのだろう。
『結構ヒドイこと言われていたので…、
巨人ではなく仲間になまえが潰されないかと心配です。』
ペトラの言葉を思い出して、焦る。
誰が何と言おうとなまえの力は調査兵団には必要だ。
これからの壁外任務でも大いに役に立ってくれるだろうし、金欠だからまだまだお使いに行ってオマケしてもらわないと困る。
今日、エルヴィンに出した兵団資金計画書はなまえのオマケも見越した金額を書いてあるのだ。
兵舎中を探して、ハンジが談話室にたどり着いた頃には、夜の月は空の一番高いところに昇っていた。
『天使のようだね。』
今朝、なまえを見たときのナナバの声が蘇った。
夜の闇が白いワンピースを神々しく光らせる。
ベランダの手すりの縁に腰を下ろし、膝を抱えて月を見上げるなまえのワンピースの裾がヒラヒラと揺れて、まるで天使の羽のようだった。
スラリと伸びた細く白い手足は今にも折れそうで、悪い噂とは違うけれど、無性に守ってあげたくなってしまう。
不思議なのは、そんななまえのそばにリヴァイがいたことだ。
ベランダの手すりにもたれかかり、紅茶を飲みながら何かを話している。
よく見てみると、なまえの手にもティーカップがある。
兵士達がなまえは夜になるといつもどこかへ出かけていくと言っていたが、もしかして毎晩2人で紅茶を飲んでいるということか。
(え?付き合ってんの、あの2人?)
一緒に行動することも多い2人だからありえなくもない組み合わせだが、意外でもあった。
驚いた。
見てはいけないものを見たのかもしれないけれど、このまま放ってもおけない。
なまえは自分がスカウトしてきた大切な兵士だ。
知らないうちに、あっという間に手を出されていたことに文句のひとつも言ってやらないといけない。
なにより、面白いからからかいたい―。
下世話な好奇心でワクワクさせながら、ハンジは、2人に気づかれないように近づいた。
「私、リヴァイ兵長に色目使ってるらしいですよ。」
「へぇ…、知らなかったな。気づいてやれなくて悪かったな。」
ベランダに続く窓に手を触れようとしていたハンジの手が止まる。
自然と会話の中に出てきたそれは、ペトラから聞いた悪い噂のひとつだった。
思わず、柱の後ろに身を隠してしまった。
聞き耳を立てようとしていたわけではない。
ハンジがいることなど気づきもせず、なまえとリヴァイは話を続けた。
「ついにリヴァイ兵長まで落とした私は、今すぐ巨人に食べられたらいいそうです。」
「心配するな。落とされた覚えはねぇよ。
まだまだ長生きしやがれ。」
「そういうことじゃなくて!
リヴァイ兵長が無視してればいいって言うから、そうしてたのに。
なんか、どんどん噂がひどくなってる気がするんですけど。」
「あとはお前の人徳だと言っただろ。悪ぃのはおれじゃねぇ。
クソみてぇな自分を恨むんだな。」
「そういうの無責任って言うんですよ。」
「元来、おれはお前のために責任を負ったつもりはねぇ。」
「ショックです、とても。泣きそうです。」
「嘘つけ。」
口を尖らせるなまえに、リヴァイは適当に返している。
いつの間に、2人はこんな風に軽口をたたき合えるまで距離が縮まったのだろう。
一緒に壁外任務に出ることがあると言っても、まだ数回だ。
それに、一緒にと言っても班行動だから、2人きりでこんな風に真夜中の逢瀬を重ねる仲になるきっかけには薄い気がする。
でも、ハンジがショックだったのは、そのことじゃない。
(うそ…。なんで?なんで、リヴァイなの?)
兵団内で流れる良くない噂。想像していたよりも酷い状態だったそれを、ハンジが認識したのは今日だ。
でも、リヴァイはその前から、なまえが悪い噂を立てられているどころか、文句を言われていることまで知っていたような様子だ。
むしろ、なまえからリヴァイに相談をしたように聞こえた。
どうして、会う機会が一番多いはずの自分じゃないのか。
調査兵団に誘ったのは自分で、悪い噂のきっかけを作ったのも自分なのだから、相談するのはリヴァイではないはずだ。
それなのに、どうして―。
それから2人は、紅茶の話で盛り上がっていた。
主に、なまえが新しく手に入れた紅茶の葉がどれほど美味しかったのかを褒め称えていて、それに対して時々リヴァイが何か言うくらいだったけれど、それでも、自分となまえとの距離よりも2人の距離は近い気がした。
ショックだった。
たぶん、寂しい―、そう思ったのだと思う。
気づくと、ハンジは静かにその場を離れていた。
近くにいた兵士になまえを見ていないかを聞いてみると、夜になるといつもどこかへ出かけてしまうと言われた。
誰に聞いても同じだ。
だが、誰もどこへ向かっているのかまでは知らないようだった。
一体どこへ行ってしまったのだろう。
『結構ヒドイこと言われていたので…、
巨人ではなく仲間になまえが潰されないかと心配です。』
ペトラの言葉を思い出して、焦る。
誰が何と言おうとなまえの力は調査兵団には必要だ。
これからの壁外任務でも大いに役に立ってくれるだろうし、金欠だからまだまだお使いに行ってオマケしてもらわないと困る。
今日、エルヴィンに出した兵団資金計画書はなまえのオマケも見越した金額を書いてあるのだ。
兵舎中を探して、ハンジが談話室にたどり着いた頃には、夜の月は空の一番高いところに昇っていた。
『天使のようだね。』
今朝、なまえを見たときのナナバの声が蘇った。
夜の闇が白いワンピースを神々しく光らせる。
ベランダの手すりの縁に腰を下ろし、膝を抱えて月を見上げるなまえのワンピースの裾がヒラヒラと揺れて、まるで天使の羽のようだった。
スラリと伸びた細く白い手足は今にも折れそうで、悪い噂とは違うけれど、無性に守ってあげたくなってしまう。
不思議なのは、そんななまえのそばにリヴァイがいたことだ。
ベランダの手すりにもたれかかり、紅茶を飲みながら何かを話している。
よく見てみると、なまえの手にもティーカップがある。
兵士達がなまえは夜になるといつもどこかへ出かけていくと言っていたが、もしかして毎晩2人で紅茶を飲んでいるということか。
(え?付き合ってんの、あの2人?)
一緒に行動することも多い2人だからありえなくもない組み合わせだが、意外でもあった。
驚いた。
見てはいけないものを見たのかもしれないけれど、このまま放ってもおけない。
なまえは自分がスカウトしてきた大切な兵士だ。
知らないうちに、あっという間に手を出されていたことに文句のひとつも言ってやらないといけない。
なにより、面白いからからかいたい―。
下世話な好奇心でワクワクさせながら、ハンジは、2人に気づかれないように近づいた。
「私、リヴァイ兵長に色目使ってるらしいですよ。」
「へぇ…、知らなかったな。気づいてやれなくて悪かったな。」
ベランダに続く窓に手を触れようとしていたハンジの手が止まる。
自然と会話の中に出てきたそれは、ペトラから聞いた悪い噂のひとつだった。
思わず、柱の後ろに身を隠してしまった。
聞き耳を立てようとしていたわけではない。
ハンジがいることなど気づきもせず、なまえとリヴァイは話を続けた。
「ついにリヴァイ兵長まで落とした私は、今すぐ巨人に食べられたらいいそうです。」
「心配するな。落とされた覚えはねぇよ。
まだまだ長生きしやがれ。」
「そういうことじゃなくて!
リヴァイ兵長が無視してればいいって言うから、そうしてたのに。
なんか、どんどん噂がひどくなってる気がするんですけど。」
「あとはお前の人徳だと言っただろ。悪ぃのはおれじゃねぇ。
クソみてぇな自分を恨むんだな。」
「そういうの無責任って言うんですよ。」
「元来、おれはお前のために責任を負ったつもりはねぇ。」
「ショックです、とても。泣きそうです。」
「嘘つけ。」
口を尖らせるなまえに、リヴァイは適当に返している。
いつの間に、2人はこんな風に軽口をたたき合えるまで距離が縮まったのだろう。
一緒に壁外任務に出ることがあると言っても、まだ数回だ。
それに、一緒にと言っても班行動だから、2人きりでこんな風に真夜中の逢瀬を重ねる仲になるきっかけには薄い気がする。
でも、ハンジがショックだったのは、そのことじゃない。
(うそ…。なんで?なんで、リヴァイなの?)
兵団内で流れる良くない噂。想像していたよりも酷い状態だったそれを、ハンジが認識したのは今日だ。
でも、リヴァイはその前から、なまえが悪い噂を立てられているどころか、文句を言われていることまで知っていたような様子だ。
むしろ、なまえからリヴァイに相談をしたように聞こえた。
どうして、会う機会が一番多いはずの自分じゃないのか。
調査兵団に誘ったのは自分で、悪い噂のきっかけを作ったのも自分なのだから、相談するのはリヴァイではないはずだ。
それなのに、どうして―。
それから2人は、紅茶の話で盛り上がっていた。
主に、なまえが新しく手に入れた紅茶の葉がどれほど美味しかったのかを褒め称えていて、それに対して時々リヴァイが何か言うくらいだったけれど、それでも、自分となまえとの距離よりも2人の距離は近い気がした。
ショックだった。
たぶん、寂しい―、そう思ったのだと思う。
気づくと、ハンジは静かにその場を離れていた。