◇第百六十四話◇嗚咽
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ハンジは、なまえの両親から、リヴァイへのお願いを言付かっていた。
兵舎にまでやって来た彼らに、会っていけばいいとは伝えたのだけれど、自分達に会うのはつらいだろうからーと伝言だけ伝えて帰っていった。
リヴァイの部屋に向かう途中、何人もの調査兵達とすれ違った。
ウォール・マリア奪還作戦成功の一報は、号外として世界中にばら撒かれ、今、あちこちで歓喜の声が上がっている。
でも、その喜びの勝利をもたらした調査兵団の兵舎の中は今、悲しみに暮れていた。
壁の中で不自由に生きていた人類が、自由を夢見始めようとしている。
本当にすごいことなのに、ハンジ達はまだ、それを喜べずにいる。
だって、この世から、最も優しい兵士が消えてしまったからー。
その兵士が、この世界の勝利をもたらしてくれたのにー。
いつか、なまえは言っていたっけ。
誰も死なせない兵士は死んだーと。
でも、なまえは多くの兵士の命を救った。そして、人類に未来をくれた。
兵士になると決めたあの日から、なまえだけはずっと変わらなかったー。
いつだって誰よりも兵士らしくなくて、優し過ぎて、でも、誰よりも強かった。
もしかして、今日の日のために、神様はなまえが調査兵団に入団するように仕向けたのだろうか。
もしもそうなら、それは人類にとってとても有難いことで、そして、なまえを愛する者たちにとってそれはあまりにも残酷でー。
リヴァイの執務室兼自室の扉の前で、ハンジは一度大きく深呼吸をした。
ノックをしてみるが、返事はない。
この部屋には、なまえの想い出がありすぎることをハンジだけではなく、調査兵のみんなが知っている。
リヴァイのことが心配になって、ハンジはそっと扉を開けた。
灯りのついていない執務室は暗かった。
寝室にいるのだろうか。
そっと扉を閉めて、ハンジは中に入る。
ソファの上に脱ぎ捨てられている兵団ジャケットに気づき、リヴァイらしくないそれにとても胸が締め付けられた。
赤黒く染まった血、それがなまえのものだなんて、今でもまだ信じたくない。
後ろから肩を叩かれて、ドッキリですよ、なんて無邪気な笑顔で驚かせてくれるような気がするのだ。
でも、振り返ってみても、そこに会いたい笑顔はない。
その代わり、デスクの上にある婚姻届けを見つけてしまった。
この部屋に戻ってきたリヴァイは、幸せそうに並んだ名前を、一体どんな気持ちで見たのだろうー。
ハンジは雑に頭を掻いてため息を吐くと、寝室の扉の前に立った。
でも、その扉に触れることはしなかった。
扉の向こうから聞こえてくる嗚咽、そして、愛おしい人の名前を呼ぶ涙声ー。
感情を殺したような顔で立っていたリヴァイは今にも壊れそうで、心配だった。
でもやっぱり、彼を素直に出来るのはなまえだけなのだろう。
だって、この部屋に足を踏み入れた時から、なまえの甘い香りで溢れていたから。
泣けばいい。好きなだけ、泣けばいい。
ハンジは、涙を拭うことはせず、扉に背を向け部屋を出た。
伝言を伝えて、少しだけでもリヴァイの心が救われたらー。
そう思って急いだのだけれど、今はきっと、2人きりでいさせてあげるのがいいからー。
兵舎にまでやって来た彼らに、会っていけばいいとは伝えたのだけれど、自分達に会うのはつらいだろうからーと伝言だけ伝えて帰っていった。
リヴァイの部屋に向かう途中、何人もの調査兵達とすれ違った。
ウォール・マリア奪還作戦成功の一報は、号外として世界中にばら撒かれ、今、あちこちで歓喜の声が上がっている。
でも、その喜びの勝利をもたらした調査兵団の兵舎の中は今、悲しみに暮れていた。
壁の中で不自由に生きていた人類が、自由を夢見始めようとしている。
本当にすごいことなのに、ハンジ達はまだ、それを喜べずにいる。
だって、この世から、最も優しい兵士が消えてしまったからー。
その兵士が、この世界の勝利をもたらしてくれたのにー。
いつか、なまえは言っていたっけ。
誰も死なせない兵士は死んだーと。
でも、なまえは多くの兵士の命を救った。そして、人類に未来をくれた。
兵士になると決めたあの日から、なまえだけはずっと変わらなかったー。
いつだって誰よりも兵士らしくなくて、優し過ぎて、でも、誰よりも強かった。
もしかして、今日の日のために、神様はなまえが調査兵団に入団するように仕向けたのだろうか。
もしもそうなら、それは人類にとってとても有難いことで、そして、なまえを愛する者たちにとってそれはあまりにも残酷でー。
リヴァイの執務室兼自室の扉の前で、ハンジは一度大きく深呼吸をした。
ノックをしてみるが、返事はない。
この部屋には、なまえの想い出がありすぎることをハンジだけではなく、調査兵のみんなが知っている。
リヴァイのことが心配になって、ハンジはそっと扉を開けた。
灯りのついていない執務室は暗かった。
寝室にいるのだろうか。
そっと扉を閉めて、ハンジは中に入る。
ソファの上に脱ぎ捨てられている兵団ジャケットに気づき、リヴァイらしくないそれにとても胸が締め付けられた。
赤黒く染まった血、それがなまえのものだなんて、今でもまだ信じたくない。
後ろから肩を叩かれて、ドッキリですよ、なんて無邪気な笑顔で驚かせてくれるような気がするのだ。
でも、振り返ってみても、そこに会いたい笑顔はない。
その代わり、デスクの上にある婚姻届けを見つけてしまった。
この部屋に戻ってきたリヴァイは、幸せそうに並んだ名前を、一体どんな気持ちで見たのだろうー。
ハンジは雑に頭を掻いてため息を吐くと、寝室の扉の前に立った。
でも、その扉に触れることはしなかった。
扉の向こうから聞こえてくる嗚咽、そして、愛おしい人の名前を呼ぶ涙声ー。
感情を殺したような顔で立っていたリヴァイは今にも壊れそうで、心配だった。
でもやっぱり、彼を素直に出来るのはなまえだけなのだろう。
だって、この部屋に足を踏み入れた時から、なまえの甘い香りで溢れていたから。
泣けばいい。好きなだけ、泣けばいい。
ハンジは、涙を拭うことはせず、扉に背を向け部屋を出た。
伝言を伝えて、少しだけでもリヴァイの心が救われたらー。
そう思って急いだのだけれど、今はきっと、2人きりでいさせてあげるのがいいからー。