◇第百五十一話◇未来を憂う月
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真夜中、ウォール・マリアのシガンシナ区。
なんとか逃げ切ったライナーは、ベルトルト、そしてユミルと一緒にいた。
外門の壁上に辿り着き、漸く、腰を降ろす。
獣の巨人であるジークとはここで落ち合うことになっている。
調査兵団の精鋭達に追い詰められて、先に逃げたようだったから、どこかにいるはずだ。
だがもうー。
「あ~~~…、疲れた。」
ライナーの気持ちを代弁するように言って、ユミルが外門の壁上で仰向けに倒れた。
「ユミル…。なんで俺達のところにきた?」
「あぁ…そりゃ、私が馬鹿だからだな。
里帰りのお土産になってやってんだよ。
手ぶらじゃお前ら帰ってくれねぇだろ。」
ユミルの言っていることは最もだった。
アニを連れて帰るのが目的だったとしても、それが叶わなかった今となっては、他に何かが必要だ。
それがユミルであれば、自分達にとっては好都合ではある。
でもー。
「このまま故郷に行けばお前はまず助からないんだぞ…?
逃げるなら…今だ。」
「…何言ってんだ。バカ野郎。私はもう疲れた。
もいいんだよ。…もう。」
「ユミル…、なんで…僕を助けてくれたの?」
ベルトルトが訊ねた。
ユミルは一度、ベルトルトの方に視線を向けた後、夜空を見上げた。
今夜は満月だ。
こんな真っ暗な世界を、柔らかく優しい月の光が、淡く照らしている。
そのおかげで、ライナー達はお互いの姿を確認することが出来ていた。
「許したかったからかな。」
「許す?僕達を?」
「さぁ…。あんた達かもしれないし、自分のことかもしれない。
それとも、この世界か…。」
「なんだよ、それ。」
「残酷な世界を救うのは、お互いに許し合うことだって言ったヤツがいたんだよ。」
「…なまえか。」
「バカだろう?そんな単純なもんじゃねぇ。
長い憎しみの歴史の上にこの世界が出来てんだからな。
私だって分かってるんだ。でも、なんでだろうなぁ…。」
ユミルはそう言うと、ゆっくりと手を夜空に伸ばす。
大きく開いて手のひらで、まるで月を包み込もうとしているように見えた。
「人類の敵にすら優しい馬鹿みたいな世界をさ、見たくなっちまったんだ。
そのためにはさ、まずは自分が変わらないとなぁ。ダメ、だよなぁ…。
グッと、堪えてさ。どれくらい、アイツは堪えてるんだろうなぁ…。バカだぜ、ほんと。」
最後にユミルは、ヒストリアに会いたい、と呟いた。
彼女は、彼女達は、苦しみの全てを必死に堪えて、優しい未来を夢見ているというのだろうか。
そんなもの、ないのにー。
そんなものがあれば、こんな残酷な世界はやってきていないのにー。
『あなた達がその手を伸ばしてくれるなら、私は掴むよ。』
あのとき、あの手を掴めたらどうなっていたのだろう。
ライナーは、ユミルがしているように仰向けに横になる。
淡い月の光は、相変わらず優しくて、朝を忘れそうになるくらいに黒い夜を、いつまでも照らし続けていた。
なんとか逃げ切ったライナーは、ベルトルト、そしてユミルと一緒にいた。
外門の壁上に辿り着き、漸く、腰を降ろす。
獣の巨人であるジークとはここで落ち合うことになっている。
調査兵団の精鋭達に追い詰められて、先に逃げたようだったから、どこかにいるはずだ。
だがもうー。
「あ~~~…、疲れた。」
ライナーの気持ちを代弁するように言って、ユミルが外門の壁上で仰向けに倒れた。
「ユミル…。なんで俺達のところにきた?」
「あぁ…そりゃ、私が馬鹿だからだな。
里帰りのお土産になってやってんだよ。
手ぶらじゃお前ら帰ってくれねぇだろ。」
ユミルの言っていることは最もだった。
アニを連れて帰るのが目的だったとしても、それが叶わなかった今となっては、他に何かが必要だ。
それがユミルであれば、自分達にとっては好都合ではある。
でもー。
「このまま故郷に行けばお前はまず助からないんだぞ…?
逃げるなら…今だ。」
「…何言ってんだ。バカ野郎。私はもう疲れた。
もいいんだよ。…もう。」
「ユミル…、なんで…僕を助けてくれたの?」
ベルトルトが訊ねた。
ユミルは一度、ベルトルトの方に視線を向けた後、夜空を見上げた。
今夜は満月だ。
こんな真っ暗な世界を、柔らかく優しい月の光が、淡く照らしている。
そのおかげで、ライナー達はお互いの姿を確認することが出来ていた。
「許したかったからかな。」
「許す?僕達を?」
「さぁ…。あんた達かもしれないし、自分のことかもしれない。
それとも、この世界か…。」
「なんだよ、それ。」
「残酷な世界を救うのは、お互いに許し合うことだって言ったヤツがいたんだよ。」
「…なまえか。」
「バカだろう?そんな単純なもんじゃねぇ。
長い憎しみの歴史の上にこの世界が出来てんだからな。
私だって分かってるんだ。でも、なんでだろうなぁ…。」
ユミルはそう言うと、ゆっくりと手を夜空に伸ばす。
大きく開いて手のひらで、まるで月を包み込もうとしているように見えた。
「人類の敵にすら優しい馬鹿みたいな世界をさ、見たくなっちまったんだ。
そのためにはさ、まずは自分が変わらないとなぁ。ダメ、だよなぁ…。
グッと、堪えてさ。どれくらい、アイツは堪えてるんだろうなぁ…。バカだぜ、ほんと。」
最後にユミルは、ヒストリアに会いたい、と呟いた。
彼女は、彼女達は、苦しみの全てを必死に堪えて、優しい未来を夢見ているというのだろうか。
そんなもの、ないのにー。
そんなものがあれば、こんな残酷な世界はやってきていないのにー。
『あなた達がその手を伸ばしてくれるなら、私は掴むよ。』
あのとき、あの手を掴めたらどうなっていたのだろう。
ライナーは、ユミルがしているように仰向けに横になる。
淡い月の光は、相変わらず優しくて、朝を忘れそうになるくらいに黒い夜を、いつまでも照らし続けていた。