◇第百四十三話◇引き裂かれる2人
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驚いて振り返った私に、父親の隣に並んだルーカスが、久しぶりだねとニコリと微笑んだ。
まるで、私を殺そうとしたことなんて、記憶からすっぽりと抜けているような優しく穏やかな笑みに、狂気の沙汰を感じる。
凍えるように背中が震え、恐怖に怯えた目でルーカスを見上げる。
リヴァイ兵長が、床に尻をついたままで、私の腕を引っ張った。
助けを求めるように、私もリヴァイ兵長に抱き着き、王子様の姿をした悪魔に背を向ける。
私を抱きしめたまま、リヴァイ兵長がルーカスを睨みつけているのを殺気で感じていた。
どうして、ルーカスがー。
私の疑問に答えるように母親が口を開いた。
「私達が調査兵の格好をしたなまえを見つけた日、ルーカスさんに会ったのよ。
そこで、私達にあなたが嘘を吐いていたことが分かったの。
それから、ルーカスさんが色々調べてくれたのよ。本当に、あなたの為に心配してー。」
「違う!!ルーカスは、私を殺そうとしたのよっ!その人は悪魔よ!!」
調査兵の姿を見られてからまだ数日、どうしてこんなに早く嘘がバレてしまったのかは理解した。
でも、それよりも問題は、ここにルーカスがいること。
彼の考えていることなんて、火を見るよりも明らかー。
でも、すっかりルーカスに騙されている母親は、私の腕を引っ張ってリヴァイ兵長から引き剥がそうとする。
「何を失礼なことを言ってるの!!!
あなたを殺そうとしてるのは、今あなたが抱き着いてる人でしょう!?
離れなさい!!!」
「いや!!絶対に嫌だ!!私とルーカスを結婚させる気でしょう!?
そんなところには絶対に行けない!!」
「元々、あなたはルーカスさんと結婚するはずだったんでしょう!?
自分のことを騙してたあなたをそれでもルーカスさんは許すと言ってくれてるのよ!
有難いと思いなさい!!さぁっ、帰るわよ!!」
「いやっ!!」
必死にリヴァイ兵長にしがみつく私を、母親も無理やり引き剥がそうとする。
104期の新兵達は、どうしたらいいか分からないという顔であたふたしていた。
「リヴァイくん、さっき、娘のことを心底惚れてると言っていたな。」
私がひどい言葉を投げつけてからただじっと黙っていた父親が、リヴァイ兵長を見下ろして、漸く口を開いた。
「あぁ。そうだ。俺はアンタの娘に心底惚れてる。
命に代えても、必ず守る。」
リヴァイ兵長は、真っすぐに父親を見上げて言ってくれた。
それが嬉しくて、私はギュゥッと抱き着く。
でもー。
「そんなことはしてくれなくていい。君は今まで通り人類の為に命を懸けなさい。
私だって、君たちがとても尊い任務に従事していることを理解していないわけじゃない。」
父親はそう言うと、床に膝をついて、リヴァイ兵長と視線を合わせた。
そしてー。
「そして、君が本当に私の娘を愛してるなら、なまえの幸せを願ってやってくれ。」
「私の幸せはリヴァイ兵長と一緒にいることなのっ。」
「娘は今、この通り君に夢中でこの世界の状況を理解していない。でも、リヴァイくん、君は違うだろ。
君が聡いことは知っている。君が素晴らしい兵士だということも、
私達の為に頭を下げられる強くて誠実な青年だということも理解した上で、お願いしている。」
「分かってるなら、リヴァイ兵長のそばにいることを許してよっ。」
「さぁ、その手を放すんだ。なまえを解放してやってくれ。」
父親の言葉になんて惑わされないと信じていた。
だから、私は強く強く、リヴァイ兵長に抱き着いた。
それなのにー。
私を抱きしめる腕の力がゆっくりと弱くなっていく。
そして、私の背中にまわるリヴァイ兵長の手が少しずつ離れてー。
「おいで、なまえ。君がいるべきところは、僕だよ。」
ルーカスが私の腕を引く。
ゆるく抱かれていた私の身体は、いともたやすくリヴァイ兵長から離れていった。
ショックを隠せない私の顔を、リヴァイ兵長は眉を顰めて、ひどく息苦しそうに見上げていたー。
それを見れば、喜んで手を放したわけではないとすぐにわかるのにー。
「いや…、リヴァイ兵長…?どうして…?」
リヴァイ兵長に伸ばした手は空を切り、強引に立たせられた私は、ルーカスに抱きすくめられる。
勝ち誇った顔で見下ろすルーカスに、リヴァイ兵長は漸く立ち上がったけれど、私を奪い返そうとはしてくれなかった。
「必ず迎えに行く。」
リヴァイ兵長は、ただ一言そう伝えただけだった。
父親とルーカスに無理やり引きずられる私を追いかけることはしないで、見送るリヴァイ兵長に必死に手を伸ばす。
必ず迎えに行くとはどういう意味だろう。
そんなの待てない。
私はずっとリヴァイ兵長のそばにいたい。
だから、今、私を守って。奪い返して。
どうして、今じゃないの。
どうして、私の手を放したの。
死ぬまで一緒だと約束したのにー。
兵門を出るところで、泣き喚いて抵抗する私を見つけたミケ分隊長とナナバさんが駆けつけてくれて、父親とルーカスを説得しようとしたけれどダメだった。
このままなまえを帰さないと、民間人を強制的に調査兵団に入団させたことを公表すると脅され、引き下がってもらうしかなかった。
王都にあるお城のようなお屋敷に向かう豪華な馬車に揺られながら、私はひたすら泣き続けていた。
まるで、私を殺そうとしたことなんて、記憶からすっぽりと抜けているような優しく穏やかな笑みに、狂気の沙汰を感じる。
凍えるように背中が震え、恐怖に怯えた目でルーカスを見上げる。
リヴァイ兵長が、床に尻をついたままで、私の腕を引っ張った。
助けを求めるように、私もリヴァイ兵長に抱き着き、王子様の姿をした悪魔に背を向ける。
私を抱きしめたまま、リヴァイ兵長がルーカスを睨みつけているのを殺気で感じていた。
どうして、ルーカスがー。
私の疑問に答えるように母親が口を開いた。
「私達が調査兵の格好をしたなまえを見つけた日、ルーカスさんに会ったのよ。
そこで、私達にあなたが嘘を吐いていたことが分かったの。
それから、ルーカスさんが色々調べてくれたのよ。本当に、あなたの為に心配してー。」
「違う!!ルーカスは、私を殺そうとしたのよっ!その人は悪魔よ!!」
調査兵の姿を見られてからまだ数日、どうしてこんなに早く嘘がバレてしまったのかは理解した。
でも、それよりも問題は、ここにルーカスがいること。
彼の考えていることなんて、火を見るよりも明らかー。
でも、すっかりルーカスに騙されている母親は、私の腕を引っ張ってリヴァイ兵長から引き剥がそうとする。
「何を失礼なことを言ってるの!!!
あなたを殺そうとしてるのは、今あなたが抱き着いてる人でしょう!?
離れなさい!!!」
「いや!!絶対に嫌だ!!私とルーカスを結婚させる気でしょう!?
そんなところには絶対に行けない!!」
「元々、あなたはルーカスさんと結婚するはずだったんでしょう!?
自分のことを騙してたあなたをそれでもルーカスさんは許すと言ってくれてるのよ!
有難いと思いなさい!!さぁっ、帰るわよ!!」
「いやっ!!」
必死にリヴァイ兵長にしがみつく私を、母親も無理やり引き剥がそうとする。
104期の新兵達は、どうしたらいいか分からないという顔であたふたしていた。
「リヴァイくん、さっき、娘のことを心底惚れてると言っていたな。」
私がひどい言葉を投げつけてからただじっと黙っていた父親が、リヴァイ兵長を見下ろして、漸く口を開いた。
「あぁ。そうだ。俺はアンタの娘に心底惚れてる。
命に代えても、必ず守る。」
リヴァイ兵長は、真っすぐに父親を見上げて言ってくれた。
それが嬉しくて、私はギュゥッと抱き着く。
でもー。
「そんなことはしてくれなくていい。君は今まで通り人類の為に命を懸けなさい。
私だって、君たちがとても尊い任務に従事していることを理解していないわけじゃない。」
父親はそう言うと、床に膝をついて、リヴァイ兵長と視線を合わせた。
そしてー。
「そして、君が本当に私の娘を愛してるなら、なまえの幸せを願ってやってくれ。」
「私の幸せはリヴァイ兵長と一緒にいることなのっ。」
「娘は今、この通り君に夢中でこの世界の状況を理解していない。でも、リヴァイくん、君は違うだろ。
君が聡いことは知っている。君が素晴らしい兵士だということも、
私達の為に頭を下げられる強くて誠実な青年だということも理解した上で、お願いしている。」
「分かってるなら、リヴァイ兵長のそばにいることを許してよっ。」
「さぁ、その手を放すんだ。なまえを解放してやってくれ。」
父親の言葉になんて惑わされないと信じていた。
だから、私は強く強く、リヴァイ兵長に抱き着いた。
それなのにー。
私を抱きしめる腕の力がゆっくりと弱くなっていく。
そして、私の背中にまわるリヴァイ兵長の手が少しずつ離れてー。
「おいで、なまえ。君がいるべきところは、僕だよ。」
ルーカスが私の腕を引く。
ゆるく抱かれていた私の身体は、いともたやすくリヴァイ兵長から離れていった。
ショックを隠せない私の顔を、リヴァイ兵長は眉を顰めて、ひどく息苦しそうに見上げていたー。
それを見れば、喜んで手を放したわけではないとすぐにわかるのにー。
「いや…、リヴァイ兵長…?どうして…?」
リヴァイ兵長に伸ばした手は空を切り、強引に立たせられた私は、ルーカスに抱きすくめられる。
勝ち誇った顔で見下ろすルーカスに、リヴァイ兵長は漸く立ち上がったけれど、私を奪い返そうとはしてくれなかった。
「必ず迎えに行く。」
リヴァイ兵長は、ただ一言そう伝えただけだった。
父親とルーカスに無理やり引きずられる私を追いかけることはしないで、見送るリヴァイ兵長に必死に手を伸ばす。
必ず迎えに行くとはどういう意味だろう。
そんなの待てない。
私はずっとリヴァイ兵長のそばにいたい。
だから、今、私を守って。奪い返して。
どうして、今じゃないの。
どうして、私の手を放したの。
死ぬまで一緒だと約束したのにー。
兵門を出るところで、泣き喚いて抵抗する私を見つけたミケ分隊長とナナバさんが駆けつけてくれて、父親とルーカスを説得しようとしたけれどダメだった。
このままなまえを帰さないと、民間人を強制的に調査兵団に入団させたことを公表すると脅され、引き下がってもらうしかなかった。
王都にあるお城のようなお屋敷に向かう豪華な馬車に揺られながら、私はひたすら泣き続けていた。