◇第百四十二話◇すくうために必要なのは、許し合うこと
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何度も謝る私を抱きしめ続けたリヴァイ兵長は、ゆっくりと身体を離すと、私の顔を覗き込んでから口を開いた。
「なまえも言え。言いてぇこと、たくさんあるんじゃねぇーのか。
言っとくが、察してもらおうなんて思っても、俺には分からん。
女心なんて気にして生きてきたことはねぇんだからな。」
まっすぐに見つめる優しい瞳は、私の全てを受け入れると言ってくれていた。
そっと腰にまわる手も、頭を撫でる手も、私を安心させてくれる。
言葉を作るために息を吸う、私の唇が動くー。
でも結局、勇気が出なくて口を噤んだ。
私は、臆病だ。そして、ズルい。
「…私は・・・・・。」
「なんだ、言え。」
「私は…、ただ、好きなんです。リヴァイ兵長のことが好き過ぎて嫌われるのが、怖いです。
だから、言えなくなるんです。
言ってもいいって言われても、無理です、そんなの…。」
目を伏せる。
リヴァイ兵長がせっかく向き合おうとしてくれているのに、私は臆病だ。
これがリヴァイ兵長が相手でなければ、私は気持ちを素直に言えたはずなのに、恋になると全くダメになってしまう。
リヴァイ兵長を死ぬほど心配させて、巨人の大群に飛び込む無茶は出来るくせに、私を受け入れると言ってくれる優しくて温かい胸に飛び込む勇気がない。
「じゃあ、聞くが、カラネス区の出張の件、あれはなまえは本当に納得してんのか。」
思い出したくない件を持ち出されて、私は思わず目を反らした。
それが、あまりにも分かりやすい返事だったことに気づきもしないで、口を噤む。
「仕方のねぇことにいちいち文句をつけるようなめんどくせぇ女と違って、
なまえは理解力のあるイイ女だって、俺は思ってるぞ。
それでいいのか?」
「…いいです。」
「よくねぇーだろ。いいか、よく聞け。今さら、なまえが悪い女だと気づいたところで
俺は嫌いにはならん。そもそも、なまえが最高にいい女なのは俺が一番知ってる。
嫉妬に狂って面倒くせぇこと言うくらいが、ちょうどいいんだ。」
目を伏せたまま、しばらく考える。
リヴァイ兵長の言葉はいつも嘘がない。
ヒドイことを言われたときだって、いつだって優しさと、温かい心がある。
私が信じていないのは、すべてを包み込むと言ってくれているリヴァイ兵長じゃない。
世界で一番素敵な人に愛され続ける自信がない、弱い自分だ。
でも、こんな私を、リヴァイ兵長は愛してくれた。
今だってー。
「…本当に、嫌いになりませんか?今日のことも、私のこと、嫌いになってない…?」
「なってねぇから、今こうして喧嘩しようって言ってんだろ。
わかったら、思ってること全部言ってしまえ。」
リヴァイ兵長のまっすぐな目を見て、私は拳に力を入れた。
そして話したのは、カラネス区へ出張に行った最初の日の夜のこと。
怖い夢を見た夜にそばにいてくれなかったことを咎めた。
香水が染みつくまで一緒にいた誰かがいる証拠を残したまま私に触れたことも、会いに来た彼女を拒絶してくれなかったことも、私を追いかけてくれなかったこともー。
リヴァイ兵長は、私を抱きしめたまま、本当にすべてを受け止めてくれた。
「任務だって言われたら、何も言えなくなるじゃないですか。ズルいです…、そんなの。
私の為に黙ってたって言われて、私は何て言えばよかったんですか?ありがとうですか?
私を不安にさせて、傷つけて、それを仕方ないで終わらせるなんて、ズルい…っ。」
「あぁ、そうだな。俺は言い訳ばかりして、なまえに文句を言わせねぇようにした。
本当にすまなかった。」
「私が、リヴァイ兵長のいないベッドで独りぼっちのときに、
あの人はずっとリヴァイ兵長と一緒にいたなんて、どんなに惨めか、わかりますか…。」
「最低だな。俺が最低だった。」
「それにあの人は…、リヴァイ兵長のこと名前で呼んでて…。」
「名前?」
「呼び捨てに、してたじゃないですか…っ。私は違うのに…。」
言いながら、子供みたいだと気づいて、顔を隠すように次第に下を向いた。
こんなことまで言うつもりじゃなかったのにー。
何でも優しく聞いてくれるから、調子に乗った。
あぁ、本当に最悪だ。
子供だと思われたに違いないー。
そんな私の頬を、リヴァイ兵長の両手が包んで、少し強引に上を向かせた。
目が合うと、リヴァイ兵長が口を開く。
「そんなこと、考えてたのか?」
「…っ、忘れてください。間違えました。」
「嘘つけ。間違えてねぇーだろ。」
「だって…っ、名前で呼びたいのにとか子供みたいだしっ、
それに、私は部下なんだから、そんなことできないの分かってます…。」
顔を伏せそうになるのを、リヴァイ兵長の両手が許さない。
そして、少し困ったように、でも、優しく言う。
「なまえは確かに俺の部下だ。でも、その前に恋人だろう?
好きなように呼べばいい。俺だって、どうでもいい女に名前を呼ばれるより
なまえに呼ばれてぇに決まってるじゃねぇーか。」
そう言うと、リヴァイ兵長はまた、私に短いキスをした。
ほんとに一瞬だけ唇が重なった後、リヴァイ兵長は私の両頬を手で包んだまま、お願いするように言った。
「名前で呼んでみてくれ。俺も、聞いてみてぇ。」
リヴァイ兵長には珍しい、少しだけ甘えるような表情。
私は、口を開きかけては閉じて、目を見つめては逃げるように反らして、願望と照れ臭さの間で揺れ続ける。
なんとか勇気を出して名前を呼ぼうとしても、結局恥ずかしくなって出来なかった。
「リヴァ…イ、兵長。」
「なんでだよ、違ぇーだろ。」
「だって、恥ずかしいです…。」
「ひとの名前が恥ずかしいとはなんだ。」
「違います…!リヴァイ兵長の名前はカッコイイですっ!」
「本気にすんな。」
呆れた様にため息つきながら、リヴァイ兵長は私の髪をクシャリと撫でる。
苦笑に歪む口元も優しくて、あぁ、名前で呼んでみたいと今までよりももっと強く思う。
でもやっぱり、今までずっと部下として名前を呼んでいたから、今さらそれを変えるのはなんだか照れ臭い。
「よし、決めた。なまえが俺を呼び捨てに出来たら、この喧嘩は終わりにしよう。」
「え?」
「なまえが俺の名前を呼んだら、仲直りだ。
それまでずっと、喧嘩は継続だ。」
「そんな…っ、ズルいです、そんなの…っ。」
「喧嘩のときに出た本音をちゃんと2人で解決するために、こうしてんじゃねーか。
俺はもう二度と、なまえのどんな些細な願いも見過ごさねぇと決めてるんだ。」
強引な台詞が、すごく優しくて、切ないくらいに私に教えてくれる。
私の愛する人は、私を心から大切にしようとしてくれているんだってこと。
私はこの人を、心から信じていいのだと。
「愛してる、…リヴァイ。」
初めて名前を呼んだ私に、リヴァイ兵長は少しずつ目を見開いていく。
それが余計に私を恥ずかしくさせる。
「上出来だ。これで、仲直りだな。」
リヴァイ兵長は私の髪を優しく撫でると、背中に手をまわして抱きしめた。
そして、私の肩に顎を乗せて、呟いた。
「癖になりそうだ。想像以上の、破壊力だった。」
零れたような感想が、可愛くて、嬉しくて、やっと私の顔に笑顔が浮かぶ。
こんな残酷な世界で、好きになった人がリヴァイ兵長で本当によかった。
本当にー。
「なまえも言え。言いてぇこと、たくさんあるんじゃねぇーのか。
言っとくが、察してもらおうなんて思っても、俺には分からん。
女心なんて気にして生きてきたことはねぇんだからな。」
まっすぐに見つめる優しい瞳は、私の全てを受け入れると言ってくれていた。
そっと腰にまわる手も、頭を撫でる手も、私を安心させてくれる。
言葉を作るために息を吸う、私の唇が動くー。
でも結局、勇気が出なくて口を噤んだ。
私は、臆病だ。そして、ズルい。
「…私は・・・・・。」
「なんだ、言え。」
「私は…、ただ、好きなんです。リヴァイ兵長のことが好き過ぎて嫌われるのが、怖いです。
だから、言えなくなるんです。
言ってもいいって言われても、無理です、そんなの…。」
目を伏せる。
リヴァイ兵長がせっかく向き合おうとしてくれているのに、私は臆病だ。
これがリヴァイ兵長が相手でなければ、私は気持ちを素直に言えたはずなのに、恋になると全くダメになってしまう。
リヴァイ兵長を死ぬほど心配させて、巨人の大群に飛び込む無茶は出来るくせに、私を受け入れると言ってくれる優しくて温かい胸に飛び込む勇気がない。
「じゃあ、聞くが、カラネス区の出張の件、あれはなまえは本当に納得してんのか。」
思い出したくない件を持ち出されて、私は思わず目を反らした。
それが、あまりにも分かりやすい返事だったことに気づきもしないで、口を噤む。
「仕方のねぇことにいちいち文句をつけるようなめんどくせぇ女と違って、
なまえは理解力のあるイイ女だって、俺は思ってるぞ。
それでいいのか?」
「…いいです。」
「よくねぇーだろ。いいか、よく聞け。今さら、なまえが悪い女だと気づいたところで
俺は嫌いにはならん。そもそも、なまえが最高にいい女なのは俺が一番知ってる。
嫉妬に狂って面倒くせぇこと言うくらいが、ちょうどいいんだ。」
目を伏せたまま、しばらく考える。
リヴァイ兵長の言葉はいつも嘘がない。
ヒドイことを言われたときだって、いつだって優しさと、温かい心がある。
私が信じていないのは、すべてを包み込むと言ってくれているリヴァイ兵長じゃない。
世界で一番素敵な人に愛され続ける自信がない、弱い自分だ。
でも、こんな私を、リヴァイ兵長は愛してくれた。
今だってー。
「…本当に、嫌いになりませんか?今日のことも、私のこと、嫌いになってない…?」
「なってねぇから、今こうして喧嘩しようって言ってんだろ。
わかったら、思ってること全部言ってしまえ。」
リヴァイ兵長のまっすぐな目を見て、私は拳に力を入れた。
そして話したのは、カラネス区へ出張に行った最初の日の夜のこと。
怖い夢を見た夜にそばにいてくれなかったことを咎めた。
香水が染みつくまで一緒にいた誰かがいる証拠を残したまま私に触れたことも、会いに来た彼女を拒絶してくれなかったことも、私を追いかけてくれなかったこともー。
リヴァイ兵長は、私を抱きしめたまま、本当にすべてを受け止めてくれた。
「任務だって言われたら、何も言えなくなるじゃないですか。ズルいです…、そんなの。
私の為に黙ってたって言われて、私は何て言えばよかったんですか?ありがとうですか?
私を不安にさせて、傷つけて、それを仕方ないで終わらせるなんて、ズルい…っ。」
「あぁ、そうだな。俺は言い訳ばかりして、なまえに文句を言わせねぇようにした。
本当にすまなかった。」
「私が、リヴァイ兵長のいないベッドで独りぼっちのときに、
あの人はずっとリヴァイ兵長と一緒にいたなんて、どんなに惨めか、わかりますか…。」
「最低だな。俺が最低だった。」
「それにあの人は…、リヴァイ兵長のこと名前で呼んでて…。」
「名前?」
「呼び捨てに、してたじゃないですか…っ。私は違うのに…。」
言いながら、子供みたいだと気づいて、顔を隠すように次第に下を向いた。
こんなことまで言うつもりじゃなかったのにー。
何でも優しく聞いてくれるから、調子に乗った。
あぁ、本当に最悪だ。
子供だと思われたに違いないー。
そんな私の頬を、リヴァイ兵長の両手が包んで、少し強引に上を向かせた。
目が合うと、リヴァイ兵長が口を開く。
「そんなこと、考えてたのか?」
「…っ、忘れてください。間違えました。」
「嘘つけ。間違えてねぇーだろ。」
「だって…っ、名前で呼びたいのにとか子供みたいだしっ、
それに、私は部下なんだから、そんなことできないの分かってます…。」
顔を伏せそうになるのを、リヴァイ兵長の両手が許さない。
そして、少し困ったように、でも、優しく言う。
「なまえは確かに俺の部下だ。でも、その前に恋人だろう?
好きなように呼べばいい。俺だって、どうでもいい女に名前を呼ばれるより
なまえに呼ばれてぇに決まってるじゃねぇーか。」
そう言うと、リヴァイ兵長はまた、私に短いキスをした。
ほんとに一瞬だけ唇が重なった後、リヴァイ兵長は私の両頬を手で包んだまま、お願いするように言った。
「名前で呼んでみてくれ。俺も、聞いてみてぇ。」
リヴァイ兵長には珍しい、少しだけ甘えるような表情。
私は、口を開きかけては閉じて、目を見つめては逃げるように反らして、願望と照れ臭さの間で揺れ続ける。
なんとか勇気を出して名前を呼ぼうとしても、結局恥ずかしくなって出来なかった。
「リヴァ…イ、兵長。」
「なんでだよ、違ぇーだろ。」
「だって、恥ずかしいです…。」
「ひとの名前が恥ずかしいとはなんだ。」
「違います…!リヴァイ兵長の名前はカッコイイですっ!」
「本気にすんな。」
呆れた様にため息つきながら、リヴァイ兵長は私の髪をクシャリと撫でる。
苦笑に歪む口元も優しくて、あぁ、名前で呼んでみたいと今までよりももっと強く思う。
でもやっぱり、今までずっと部下として名前を呼んでいたから、今さらそれを変えるのはなんだか照れ臭い。
「よし、決めた。なまえが俺を呼び捨てに出来たら、この喧嘩は終わりにしよう。」
「え?」
「なまえが俺の名前を呼んだら、仲直りだ。
それまでずっと、喧嘩は継続だ。」
「そんな…っ、ズルいです、そんなの…っ。」
「喧嘩のときに出た本音をちゃんと2人で解決するために、こうしてんじゃねーか。
俺はもう二度と、なまえのどんな些細な願いも見過ごさねぇと決めてるんだ。」
強引な台詞が、すごく優しくて、切ないくらいに私に教えてくれる。
私の愛する人は、私を心から大切にしようとしてくれているんだってこと。
私はこの人を、心から信じていいのだと。
「愛してる、…リヴァイ。」
初めて名前を呼んだ私に、リヴァイ兵長は少しずつ目を見開いていく。
それが余計に私を恥ずかしくさせる。
「上出来だ。これで、仲直りだな。」
リヴァイ兵長は私の髪を優しく撫でると、背中に手をまわして抱きしめた。
そして、私の肩に顎を乗せて、呟いた。
「癖になりそうだ。想像以上の、破壊力だった。」
零れたような感想が、可愛くて、嬉しくて、やっと私の顔に笑顔が浮かぶ。
こんな残酷な世界で、好きになった人がリヴァイ兵長で本当によかった。
本当にー。