◇第百四十二話◇すくうために必要なのは、許し合うこと
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「今度ばかりは、俺は本気で怒ってる。」
疲弊した身体で帰ってきた私を待っていたのは、鬼と化したリヴァイ兵長だった。
トロスト区の兵舎。
リヴァイ兵長の執務室兼自室の冷たい床に正座させられた私を仁王立ちで見下ろし、睨みつける。
女型の巨人捕獲作戦の途中での任務放棄。
勝手な行動をとった挙句、最大の敵である鎧の巨人と超大型巨人の前で自ら武器を放棄。
会議の中で、ハンジさんやミケ分隊長、ナナバさん達からの報告を聞きながら、リヴァイ兵長から放たれる殺気はどんどん大きくなっていった。
会議中も、会議室を出た後も、私と目を合わせようともしないまま部屋に戻り、すぐに正座させられた。
分かっている。
リヴァイ兵長を怒らせる理由なら、ありすぎた。
「…アニと同郷が104期の新兵にいることを、まずはハンジさんに報告してから
ミケ分隊長の元へ向かうべきでした。」
「違ぇだろ。俺が怒ってんのは、
どうして自分の命を軽く見るような行動をとるのかってことだ。」
「そんな行動をとった覚えはありません。」
「ほう、じゃあ、なぜ、ヤツらの前で武器を捨てた。」
「敵じゃないと、分かってほしかったんです。
武器を持っていては、信じてもらえません。」
「バカか。アイツらは敵だ。親友が超大型巨人が蹴った岩に潰されて死んだんだろ。
忘れるな。アイツは、お前の親友の仇だ。」
「分かってます!敵です!でも、敵じゃない!!
私は、ベルトルトとライナーがどんな人間か知ってる!
アニがどんなにいい子かも知ってる!!だからー。」
分かってくれると思ったのだ。
彼らなら、きっと分かってくれる。
アニをひとりにしないために戻って来てくれるし、人類のためにどうすべきかもきっと一緒に考えてくれる。
そう、信じただけー。
震える声で、あのときの気持ちを、言葉に詰まりながら必死に説明した。
危険だった。命が懸かってた。
でも、無謀だとはどうしても思えなかった。
私にはもう、信じることしか、出来ることは残されていなかったからー。
聞き終えたリヴァイ兵長は、片手で頭を抱えた。
呆れられたのだろう。
分かっている。
結局私は、何も得られなかったのだからー。
しばらくの沈黙の後、頭を抱えたままで、リヴァイ兵長が漸く口を開く。
「仲間を殺しまくった女のために何が出来るか必死に考えて、命懸けてる間、
なまえの頭に、たった一瞬でも、俺は過ぎったのか…?
俺がどんな思いで、なまえの帰りを待っているか、少しは考えたか…?」
絞り出すように出てきたそれに、ハッと息を呑んだ。
そして、それこそが、リヴァイ兵長の質問の答えに違いなかった。
今にも泣きだしそうな、苦し気なその姿に、胸が痛い。
リヴァイ兵長が心配しているのが、分からなかったわけじゃない。
でもー。
「心配ばかりかけて、申し訳ないとは…考えました。」
「…あぁ、そうか。お前の気持ちは、よく分かった。
もういい。出ていけ。」
何かを諦めたような表情で、リヴァイ兵長は私に背を向けた。
慌てて立ち上がり、デスクへ向かう背中に声をかけた。
「リヴァイ兵長っ、本当にすみませんでしたっ。
これからはもっとちゃんとー。」
「悪い、お前のことを殴っちまいそうなんだ。顔も見たくない。
出て行ってくれ。」
リヴァイ兵長は、椅子に腰かけ、私に背を向ける。
冷たい背中、リヴァイ兵長から拒絶の言葉を投げられたのは初めてだった。
私は、優しいリヴァイ兵長にそんな風に思わせてしまうほど、彼の気持ちを蔑ろにしたー。
誰よりも優しく、私を守ってくれていた人を、傷つけたー。
唇を噛み、頭を下げて、私は自分の部屋に戻った。
疲弊した身体で帰ってきた私を待っていたのは、鬼と化したリヴァイ兵長だった。
トロスト区の兵舎。
リヴァイ兵長の執務室兼自室の冷たい床に正座させられた私を仁王立ちで見下ろし、睨みつける。
女型の巨人捕獲作戦の途中での任務放棄。
勝手な行動をとった挙句、最大の敵である鎧の巨人と超大型巨人の前で自ら武器を放棄。
会議の中で、ハンジさんやミケ分隊長、ナナバさん達からの報告を聞きながら、リヴァイ兵長から放たれる殺気はどんどん大きくなっていった。
会議中も、会議室を出た後も、私と目を合わせようともしないまま部屋に戻り、すぐに正座させられた。
分かっている。
リヴァイ兵長を怒らせる理由なら、ありすぎた。
「…アニと同郷が104期の新兵にいることを、まずはハンジさんに報告してから
ミケ分隊長の元へ向かうべきでした。」
「違ぇだろ。俺が怒ってんのは、
どうして自分の命を軽く見るような行動をとるのかってことだ。」
「そんな行動をとった覚えはありません。」
「ほう、じゃあ、なぜ、ヤツらの前で武器を捨てた。」
「敵じゃないと、分かってほしかったんです。
武器を持っていては、信じてもらえません。」
「バカか。アイツらは敵だ。親友が超大型巨人が蹴った岩に潰されて死んだんだろ。
忘れるな。アイツは、お前の親友の仇だ。」
「分かってます!敵です!でも、敵じゃない!!
私は、ベルトルトとライナーがどんな人間か知ってる!
アニがどんなにいい子かも知ってる!!だからー。」
分かってくれると思ったのだ。
彼らなら、きっと分かってくれる。
アニをひとりにしないために戻って来てくれるし、人類のためにどうすべきかもきっと一緒に考えてくれる。
そう、信じただけー。
震える声で、あのときの気持ちを、言葉に詰まりながら必死に説明した。
危険だった。命が懸かってた。
でも、無謀だとはどうしても思えなかった。
私にはもう、信じることしか、出来ることは残されていなかったからー。
聞き終えたリヴァイ兵長は、片手で頭を抱えた。
呆れられたのだろう。
分かっている。
結局私は、何も得られなかったのだからー。
しばらくの沈黙の後、頭を抱えたままで、リヴァイ兵長が漸く口を開く。
「仲間を殺しまくった女のために何が出来るか必死に考えて、命懸けてる間、
なまえの頭に、たった一瞬でも、俺は過ぎったのか…?
俺がどんな思いで、なまえの帰りを待っているか、少しは考えたか…?」
絞り出すように出てきたそれに、ハッと息を呑んだ。
そして、それこそが、リヴァイ兵長の質問の答えに違いなかった。
今にも泣きだしそうな、苦し気なその姿に、胸が痛い。
リヴァイ兵長が心配しているのが、分からなかったわけじゃない。
でもー。
「心配ばかりかけて、申し訳ないとは…考えました。」
「…あぁ、そうか。お前の気持ちは、よく分かった。
もういい。出ていけ。」
何かを諦めたような表情で、リヴァイ兵長は私に背を向けた。
慌てて立ち上がり、デスクへ向かう背中に声をかけた。
「リヴァイ兵長っ、本当にすみませんでしたっ。
これからはもっとちゃんとー。」
「悪い、お前のことを殴っちまいそうなんだ。顔も見たくない。
出て行ってくれ。」
リヴァイ兵長は、椅子に腰かけ、私に背を向ける。
冷たい背中、リヴァイ兵長から拒絶の言葉を投げられたのは初めてだった。
私は、優しいリヴァイ兵長にそんな風に思わせてしまうほど、彼の気持ちを蔑ろにしたー。
誰よりも優しく、私を守ってくれていた人を、傷つけたー。
唇を噛み、頭を下げて、私は自分の部屋に戻った。