◇第百三十話◇深い愛は試されて、傷をつけて
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夕方、リコさんに首根っこを掴まれて兵舎に戻ってきた私を、今度はハンジさんが抱えて宿舎に持ち帰った。
そして、エルヴィン団長の部屋に放り込まれた。
真相を今すぐに白状しやがれと、ハンジさんは怒り心頭で、わけのわからないまま、私は、エルヴィン団長が部下に頭を下げるところの目撃者になった。
いや、当事者だ。
頭を下げられたのは、リヴァイ兵長だけではなくて、私もだった。
今朝の美女は、カラネス区の有力者の一人娘なのだそうだ。
前回の壁外調査出発の際に、リヴァイ兵長を見て一目惚れして以来、ずっとファンだった彼女が、次の壁外調査で万が一にでもリヴァイ兵長が死んでしまう前に会いたいと父親におねだりをしたのが、急遽カラネス区へ出張になった日の理由らしい。
そこにゲルガーさん達も同行させたのも、間違っても間違いが起きないように見張りと、彼女への牽制の為だったらしいが、結局は、一人娘可愛さの父親が、壁外調査に出るまで娘の我儘を聞いてくれれば融資金を増やすと言い出したことで、雲行きは変わる。
それをエルヴィン団長が了承し、リヴァイ兵長に任務として言い渡したということだった。
初めは拒否したリヴァイ兵長も、結局は団長命令に逆らえない。
あの美女は、壁外調査に行くまでずっと一緒にいたいと言っていたそうだが、せめて少しでも私の顔が見たいからと、リヴァイ兵長は彼女が寝てから兵舎に帰ってきていたのだと、ハンジさんが教えてくれた。
でも、それももう終わった。
今日、リヴァイ兵長の恋人を絶対に傷つけないという約束を破って、彼女が兵舎に来たことに激怒したハンジさんが、カラネス区の有力者の元へ文句を言いに行こうとしたよりも先に、もう会わなくていいという連絡が来たそうだ。
一人娘が可愛いからこそ、調査兵団の兵士と交際させるつもりなんてなかった父親は、彼女が本気でリヴァイ兵長と結婚したいと言い出すとは思ってもいなかったのだろう。
今、彼らの家ではバトルが発生しているらしいけれど、どちらにしろリヴァイ兵長には恋人がいて結婚する気もないからもう二度とそのような願いは聞けない、とハンジさんを通してエルヴィン団長の答えが彼らに届いている。
「傷つけて、悪かった。」
「いえ、お仕事なら、仕方ないですから…。」
部屋に戻った私とリヴァイ兵長は、いつものようにソファに並んで座っていた。
誤解は解け、リヴァイ兵長の腕の中に抱きしめられても、私達はまだ気まずいままだった。
たぶん、2人とも気づいているからだ。
今日のはただのきっかけに過ぎなくて、本当はその前から、私達には綻びが出来ていたことを。
それから目を反らしていただけで、確かにあった綻びが、こんな事態を生んでしまったのだと。
リヴァイ兵長はきっと、傷つけてしまったと自分のことを責めながらも、信じてもらえなかったことに傷ついている。
私は、信じられなかった自分を責めながら、どうして断ってくれなかったのか、せめて教えてくれたらよかったのにと、本当はリヴァイ兵長を責めている。
でも、私達はお互いの心の内を話さない。
お互いに、相手が何を思い、何を考えているか、薄々気づいているくせに、また目を反らす。
分からないからだ。
薄く見えている表面の先、その奥に、どんな答えが隠れているのかが分からなくて、確かめる勇気がなくて、口を噤む。
それが、正しい選択ではないことは、分かっているくせにー。
そして、エルヴィン団長の部屋に放り込まれた。
真相を今すぐに白状しやがれと、ハンジさんは怒り心頭で、わけのわからないまま、私は、エルヴィン団長が部下に頭を下げるところの目撃者になった。
いや、当事者だ。
頭を下げられたのは、リヴァイ兵長だけではなくて、私もだった。
今朝の美女は、カラネス区の有力者の一人娘なのだそうだ。
前回の壁外調査出発の際に、リヴァイ兵長を見て一目惚れして以来、ずっとファンだった彼女が、次の壁外調査で万が一にでもリヴァイ兵長が死んでしまう前に会いたいと父親におねだりをしたのが、急遽カラネス区へ出張になった日の理由らしい。
そこにゲルガーさん達も同行させたのも、間違っても間違いが起きないように見張りと、彼女への牽制の為だったらしいが、結局は、一人娘可愛さの父親が、壁外調査に出るまで娘の我儘を聞いてくれれば融資金を増やすと言い出したことで、雲行きは変わる。
それをエルヴィン団長が了承し、リヴァイ兵長に任務として言い渡したということだった。
初めは拒否したリヴァイ兵長も、結局は団長命令に逆らえない。
あの美女は、壁外調査に行くまでずっと一緒にいたいと言っていたそうだが、せめて少しでも私の顔が見たいからと、リヴァイ兵長は彼女が寝てから兵舎に帰ってきていたのだと、ハンジさんが教えてくれた。
でも、それももう終わった。
今日、リヴァイ兵長の恋人を絶対に傷つけないという約束を破って、彼女が兵舎に来たことに激怒したハンジさんが、カラネス区の有力者の元へ文句を言いに行こうとしたよりも先に、もう会わなくていいという連絡が来たそうだ。
一人娘が可愛いからこそ、調査兵団の兵士と交際させるつもりなんてなかった父親は、彼女が本気でリヴァイ兵長と結婚したいと言い出すとは思ってもいなかったのだろう。
今、彼らの家ではバトルが発生しているらしいけれど、どちらにしろリヴァイ兵長には恋人がいて結婚する気もないからもう二度とそのような願いは聞けない、とハンジさんを通してエルヴィン団長の答えが彼らに届いている。
「傷つけて、悪かった。」
「いえ、お仕事なら、仕方ないですから…。」
部屋に戻った私とリヴァイ兵長は、いつものようにソファに並んで座っていた。
誤解は解け、リヴァイ兵長の腕の中に抱きしめられても、私達はまだ気まずいままだった。
たぶん、2人とも気づいているからだ。
今日のはただのきっかけに過ぎなくて、本当はその前から、私達には綻びが出来ていたことを。
それから目を反らしていただけで、確かにあった綻びが、こんな事態を生んでしまったのだと。
リヴァイ兵長はきっと、傷つけてしまったと自分のことを責めながらも、信じてもらえなかったことに傷ついている。
私は、信じられなかった自分を責めながら、どうして断ってくれなかったのか、せめて教えてくれたらよかったのにと、本当はリヴァイ兵長を責めている。
でも、私達はお互いの心の内を話さない。
お互いに、相手が何を思い、何を考えているか、薄々気づいているくせに、また目を反らす。
分からないからだ。
薄く見えている表面の先、その奥に、どんな答えが隠れているのかが分からなくて、確かめる勇気がなくて、口を噤む。
それが、正しい選択ではないことは、分かっているくせにー。