◇第百二十九話◇会いたくない
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壁外調査前の大事な時期に訓練をサボるわけにはいかない。
でも、そんな大事な時期でも、訓練に身が入るとも思えなくて、私は壁を守る駐屯兵達のそばで、仰向けに倒れていた。
なんて気持ちのいい青い空だろう。
手を伸ばしてみたけれど、あの澄んだ綺麗な青には触れられそうになかった。
「一応、アンタのとこの班長に居場所は伝えておいたから。」
視界いっぱいに、呆れ顔のリコさんの顔が入った。
礼を言うと、リコさんはため息をついて隣に座った。
真っ赤な目で泣きながら歩いていた私を見つけたのは、リコさんだった。
詳しいことを聞こうとはせず、兵舎に戻りたくないのなら巨人観察でもするかという全く魅力的ではない誘い文句に乗って、壁の上にやって来た。
こんなに高い場所に来ても、やっぱり空は高かった。
「リコさんって、恋人いますか?」
「削いでいい?」
「いやです。」
「じゃあ、聞くな。」
「私は、いるんです。」
「本気で削ぐよ。」
「でも、たぶん、兵舎に戻ったら、いなくなります。」
「…へぇ。」
「フラれちゃうんだろうなぁ~…。嫌だなぁ…。」
また涙が出てきて、青い空が濡れていく。
あぁ、これが海なのだろうか。
海の中に入ったら、こんな風に青が悲しく滲むのだろうか。
綺麗な青はきっと、遠くから見ているだけの方が、良いのだろう。
両目を隠す私の手を、リコさんの手が握った。
小さな手は、意外とかたくて、必死に訓練を積んで生きようとしているリコさんらしいと思った。
「でも、私が悪いんです。私がきっと、無理させちゃったから…。」
「何があったかは知らないけどさ、男と女の間にあることで
どっちかだけが悪いなんてないんじゃないの?」
「そうなんですかねぇ…。」
「そうだよ。」
「でも、やっぱり、もっとどうにか出来なかったのかなって
自分を責めちゃいます。」
「まぁ…、そうかもね。」
「会いたいなぁ~…。」
「帰れば。」
「会いたくないんですもん。」
「ジレンマだね。」
「今日、リコさんのところに泊っていいですか。」
「死ぬほど拒否。」
「一泊だけ。」
「アンタの班長からもちゃんと帰すように言われてんのよ。」
「じゃあ、リコさんが私の部屋にお泊りしませんか?」
「ダメ。ちゃんと話してきなさい。
話し合えば分かるって、アンタの班長も言ってたから。」
「…何が、分かるんだろう。私たちがもう、終わっちゃったってこと…?」
唇を噛んだ。
両手で隠れているから、もう滲む海すら見えない。
あぁ、会いたい。
会いたくないー。
終わりたく、ないー。
でも、そんな大事な時期でも、訓練に身が入るとも思えなくて、私は壁を守る駐屯兵達のそばで、仰向けに倒れていた。
なんて気持ちのいい青い空だろう。
手を伸ばしてみたけれど、あの澄んだ綺麗な青には触れられそうになかった。
「一応、アンタのとこの班長に居場所は伝えておいたから。」
視界いっぱいに、呆れ顔のリコさんの顔が入った。
礼を言うと、リコさんはため息をついて隣に座った。
真っ赤な目で泣きながら歩いていた私を見つけたのは、リコさんだった。
詳しいことを聞こうとはせず、兵舎に戻りたくないのなら巨人観察でもするかという全く魅力的ではない誘い文句に乗って、壁の上にやって来た。
こんなに高い場所に来ても、やっぱり空は高かった。
「リコさんって、恋人いますか?」
「削いでいい?」
「いやです。」
「じゃあ、聞くな。」
「私は、いるんです。」
「本気で削ぐよ。」
「でも、たぶん、兵舎に戻ったら、いなくなります。」
「…へぇ。」
「フラれちゃうんだろうなぁ~…。嫌だなぁ…。」
また涙が出てきて、青い空が濡れていく。
あぁ、これが海なのだろうか。
海の中に入ったら、こんな風に青が悲しく滲むのだろうか。
綺麗な青はきっと、遠くから見ているだけの方が、良いのだろう。
両目を隠す私の手を、リコさんの手が握った。
小さな手は、意外とかたくて、必死に訓練を積んで生きようとしているリコさんらしいと思った。
「でも、私が悪いんです。私がきっと、無理させちゃったから…。」
「何があったかは知らないけどさ、男と女の間にあることで
どっちかだけが悪いなんてないんじゃないの?」
「そうなんですかねぇ…。」
「そうだよ。」
「でも、やっぱり、もっとどうにか出来なかったのかなって
自分を責めちゃいます。」
「まぁ…、そうかもね。」
「会いたいなぁ~…。」
「帰れば。」
「会いたくないんですもん。」
「ジレンマだね。」
「今日、リコさんのところに泊っていいですか。」
「死ぬほど拒否。」
「一泊だけ。」
「アンタの班長からもちゃんと帰すように言われてんのよ。」
「じゃあ、リコさんが私の部屋にお泊りしませんか?」
「ダメ。ちゃんと話してきなさい。
話し合えば分かるって、アンタの班長も言ってたから。」
「…何が、分かるんだろう。私たちがもう、終わっちゃったってこと…?」
唇を噛んだ。
両手で隠れているから、もう滲む海すら見えない。
あぁ、会いたい。
会いたくないー。
終わりたく、ないー。