◇第百二十九話◇会いたくない
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相変わらずの朝帰りが続いていた数日後、私の心はどんより曇っていたけれど、外の天気は漸く晴れになった。
訓練場に出た私は、眩しすぎる太陽の光を手で隠し、目を細めた。
さすがに雨が続きすぎて、身体を動かしたくてウズウズしていた調査兵達は、早速、立体起動装置で飛び上がる。
その隣で、リヴァイ班とハンジ班は、今日の予定の確認が始まる。
でも、まずは、雨の日の巨人の身体の動きを調べたかったのに、リヴァイ兵長がいなかったせいでエレンの巨人化の許可が下りなかったことへの恨み節がハンジさんから延々と続く。
朝からこうしてリヴァイ兵長がいるのは久しぶりだった。
だから、ハンジさんも今のうちに文句を言っておこうと思ったのだろう。
「任務なんだから仕方ねぇだろ。」
「サボっちゃえばいいじゃん!そもそも本当に任務なわけ、それは?」
「任務だ。」
「リヴァイさ、ちょっと後で話があるんだけど。」
「聞く気はねぇ。」
「じゃあ、ここで言ってもいいかい。」
「削ぐ。」
ハンジさんとリヴァイ兵長の睨み合いが始まり、ついに不穏な空気になってしまった。
この場をなんとか切り抜けようとモブリットさんが、代わりに今日の予定の報告を始め出す。
とりあえず、ハンジさんとリヴァイ兵長の言い争いは終わったが、お互いに顔も合わさず、とても不機嫌な様子だ。
せっかく、今日はリヴァイ兵長がいるのにー。
久しぶりに真正面で見るリヴァイ兵長の顔が不機嫌だなんて、悲しい。
「あー!いたいたー!リヴァイっ!」
とても親し気にリヴァイ兵長の名前を呼び捨てにした声がして、みんながその声の主を探す。
兵士達が刃を振るう訓練場には不似合いなレースの可愛らしいワンピースを身に纏った若い女性がすぐに見つかった。
太陽の光を反射させてキラキラ光る金髪の長い髪をカールさせた美女を見たとき、リヴァイ兵長が一瞬だけ眉を顰めた。
でも、まるで恋人にするみたいに抱き着いた美女を引き剥がそうとはしなかった。
美女は、リヴァイ兵長にギュッと抱きついたまま話し始めた。
2人のまわりで、何が起こっているか分からずに呆然としている私達のことなんて、全く見えていないみたいだった。
「晴れたらデートしてくれるって約束だったでしょう?」
「今日は訓練だから行かねぇと言ったはずだ。」
「でも、晴れたもんっ。だから、会いにー。」
「とにかく、離れてくれないかな。私達は今、生きるための訓練の最中なんだ。
君だって、リヴァイが死んだら嫌なんだろう。」
ハンジさんが、リヴァイ兵長に抱き着く美女の腕を掴んで引き剥がそうとするけれど、「えー、いやだぁ。泣いちゃう。」と可愛らしく口を尖らせるだけで、離れようとはしない。
どうやら、ハンジさんも彼女のことを知っているようだった。
きっと、ゲルガーさんはこの人のことを言っていたのだろう。
後は、他に誰が知っているのだろう。
リヴァイ兵長の心変わりを、知っていたのは誰なのだろう。
でも、もう、そんなこと、どうだっていいー。
私が信じたリヴァイ兵長はもう、崩れて、壊れて、粉々に落ちていったのだから。
漸く私を見てくれて、リヴァイ兵長と目が合った。
言いたいことは、一つだけ。
「ずっと、そうやって、私のことを裏切ってたんですか。」
「聞け、俺はー。」
「信じてたんです。ずっと…。最近、会えなくても、おかしいと思っても、ずっと…。
変な噂を聞いても、ずっと…。信じて、たのに…。」
リヴァイ兵長は、涙に驚いているようだった。
どうして、泣かないとでも思ったのだろうか。
こんな状況、私はどうやったら笑えるというのだろう。
平然としていたら、おかしい。
リヴァイ兵長みたいに平然としていたらおかしいでしょう。
だって、私はリヴァイ兵長が好きなのにー。
「違うんだ、俺はー。」
焦ったように私に伸ばしたリヴァイ兵長の手は、美女に掴まれて私には届かなかった。
「あなたがリヴァイ兵長の恋人?へぇ~、そうなんだぁ~。
あのリーゼントの人達が言ってた通りね。
まぁ、やっぱり、私の方が美人だけど。」
美女は、リヴァイ兵長に抱き着いたままで、私を品定めするみたいに上から下までを舐めまわすように見た。
そして、勝ち誇ったように口の端を上げる。
濃すぎないけれど、しっかりしている化粧と綺麗にカールした髪。長い爪には薄いピンク色が乗せられていて、細くて綺麗な指は怪我とは無縁のようだった。
レースの可愛らしいワンピースを纏う女性らしい彼女には、兵団服の女なんて、女には見えなかったに違いない。
「ねぇ、私にリヴァイを頂戴よ。」
「い…っ、いや…!」
気づいたら、必死に首を横に振っていた。
浮気相手に抱きつかれている恋人を、それでも泣きながら繋ぎ止めたいと願うなんてー。
自分が惨め過ぎた。
でも、好きなのだ。大好きで。愛していて。
だから、リヴァイ兵長から別れようと言ってもらえないと、私は手放せない。
どんなにひどいことをされても、手放せないー。
「いいじゃない、私の方がリヴァイにはお似合いよ。
それに、リヴァイも、あなたとは絶対に結婚しないって言ってたわよ。」
「おい、黙れ。それ以上喋ったら、もう許さねぇぞ。」
「あなただって、自分と結婚してくれない男と一緒にいるのはツラいでしょう?
新しく素敵な恋人探しなさいよ。その方が、あなたの為よ。」
堪えきれず、背を向けるとき、美女の勝ち誇った笑みが見えた。
悲しい。苦しい。悔しいー。
「待て!!なまえ!!」
走って逃げる私の後ろを追いかけてきたのは、名前を呼ぶリヴァイ兵長の声だけだったー。
訓練場に出た私は、眩しすぎる太陽の光を手で隠し、目を細めた。
さすがに雨が続きすぎて、身体を動かしたくてウズウズしていた調査兵達は、早速、立体起動装置で飛び上がる。
その隣で、リヴァイ班とハンジ班は、今日の予定の確認が始まる。
でも、まずは、雨の日の巨人の身体の動きを調べたかったのに、リヴァイ兵長がいなかったせいでエレンの巨人化の許可が下りなかったことへの恨み節がハンジさんから延々と続く。
朝からこうしてリヴァイ兵長がいるのは久しぶりだった。
だから、ハンジさんも今のうちに文句を言っておこうと思ったのだろう。
「任務なんだから仕方ねぇだろ。」
「サボっちゃえばいいじゃん!そもそも本当に任務なわけ、それは?」
「任務だ。」
「リヴァイさ、ちょっと後で話があるんだけど。」
「聞く気はねぇ。」
「じゃあ、ここで言ってもいいかい。」
「削ぐ。」
ハンジさんとリヴァイ兵長の睨み合いが始まり、ついに不穏な空気になってしまった。
この場をなんとか切り抜けようとモブリットさんが、代わりに今日の予定の報告を始め出す。
とりあえず、ハンジさんとリヴァイ兵長の言い争いは終わったが、お互いに顔も合わさず、とても不機嫌な様子だ。
せっかく、今日はリヴァイ兵長がいるのにー。
久しぶりに真正面で見るリヴァイ兵長の顔が不機嫌だなんて、悲しい。
「あー!いたいたー!リヴァイっ!」
とても親し気にリヴァイ兵長の名前を呼び捨てにした声がして、みんながその声の主を探す。
兵士達が刃を振るう訓練場には不似合いなレースの可愛らしいワンピースを身に纏った若い女性がすぐに見つかった。
太陽の光を反射させてキラキラ光る金髪の長い髪をカールさせた美女を見たとき、リヴァイ兵長が一瞬だけ眉を顰めた。
でも、まるで恋人にするみたいに抱き着いた美女を引き剥がそうとはしなかった。
美女は、リヴァイ兵長にギュッと抱きついたまま話し始めた。
2人のまわりで、何が起こっているか分からずに呆然としている私達のことなんて、全く見えていないみたいだった。
「晴れたらデートしてくれるって約束だったでしょう?」
「今日は訓練だから行かねぇと言ったはずだ。」
「でも、晴れたもんっ。だから、会いにー。」
「とにかく、離れてくれないかな。私達は今、生きるための訓練の最中なんだ。
君だって、リヴァイが死んだら嫌なんだろう。」
ハンジさんが、リヴァイ兵長に抱き着く美女の腕を掴んで引き剥がそうとするけれど、「えー、いやだぁ。泣いちゃう。」と可愛らしく口を尖らせるだけで、離れようとはしない。
どうやら、ハンジさんも彼女のことを知っているようだった。
きっと、ゲルガーさんはこの人のことを言っていたのだろう。
後は、他に誰が知っているのだろう。
リヴァイ兵長の心変わりを、知っていたのは誰なのだろう。
でも、もう、そんなこと、どうだっていいー。
私が信じたリヴァイ兵長はもう、崩れて、壊れて、粉々に落ちていったのだから。
漸く私を見てくれて、リヴァイ兵長と目が合った。
言いたいことは、一つだけ。
「ずっと、そうやって、私のことを裏切ってたんですか。」
「聞け、俺はー。」
「信じてたんです。ずっと…。最近、会えなくても、おかしいと思っても、ずっと…。
変な噂を聞いても、ずっと…。信じて、たのに…。」
リヴァイ兵長は、涙に驚いているようだった。
どうして、泣かないとでも思ったのだろうか。
こんな状況、私はどうやったら笑えるというのだろう。
平然としていたら、おかしい。
リヴァイ兵長みたいに平然としていたらおかしいでしょう。
だって、私はリヴァイ兵長が好きなのにー。
「違うんだ、俺はー。」
焦ったように私に伸ばしたリヴァイ兵長の手は、美女に掴まれて私には届かなかった。
「あなたがリヴァイ兵長の恋人?へぇ~、そうなんだぁ~。
あのリーゼントの人達が言ってた通りね。
まぁ、やっぱり、私の方が美人だけど。」
美女は、リヴァイ兵長に抱き着いたままで、私を品定めするみたいに上から下までを舐めまわすように見た。
そして、勝ち誇ったように口の端を上げる。
濃すぎないけれど、しっかりしている化粧と綺麗にカールした髪。長い爪には薄いピンク色が乗せられていて、細くて綺麗な指は怪我とは無縁のようだった。
レースの可愛らしいワンピースを纏う女性らしい彼女には、兵団服の女なんて、女には見えなかったに違いない。
「ねぇ、私にリヴァイを頂戴よ。」
「い…っ、いや…!」
気づいたら、必死に首を横に振っていた。
浮気相手に抱きつかれている恋人を、それでも泣きながら繋ぎ止めたいと願うなんてー。
自分が惨め過ぎた。
でも、好きなのだ。大好きで。愛していて。
だから、リヴァイ兵長から別れようと言ってもらえないと、私は手放せない。
どんなにひどいことをされても、手放せないー。
「いいじゃない、私の方がリヴァイにはお似合いよ。
それに、リヴァイも、あなたとは絶対に結婚しないって言ってたわよ。」
「おい、黙れ。それ以上喋ったら、もう許さねぇぞ。」
「あなただって、自分と結婚してくれない男と一緒にいるのはツラいでしょう?
新しく素敵な恋人探しなさいよ。その方が、あなたの為よ。」
堪えきれず、背を向けるとき、美女の勝ち誇った笑みが見えた。
悲しい。苦しい。悔しいー。
「待て!!なまえ!!」
走って逃げる私の後ろを追いかけてきたのは、名前を呼ぶリヴァイ兵長の声だけだったー。