◇第百二十八話◇合わない辻褄と誰かが吐いている嘘
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雨によって訓練が中止になった調査兵達は、書類仕事に追われていた。
今のうちに、壁外調査前の書類を片付けたり、座学の勉強をしたり、とそれぞれ兵舎内で出来ることに取り組んでいた。
一部の調査兵は、チャンスだとばかりに談話室でお酒を煽っているようではあったけれどー。
でも、その賑やかな声が、今の私の寂しい心には唯一の拠り所でもあった。
だから、ハンジさんのところへ書類を提出しに行った帰り、用もなく談話室に入った私は、窓から外を眺めた。
激しい雨は相変わらず窓を叩き続けていて、まるで叱られているような気になった。
早く気づけー、とー。
それでもー。
(今日は、帰ってくるのかな…。)
私は、ため息を呑み込む。
あの日から数日、ずっと雨が続いていた。
そして、リヴァイ兵長の出張も続いている。
昼前に出ては、朝方に帰ってくる生活で、寝る時間もずれてしまったせいで、最近はまともに顔も見ていない。
本当は、何をしているのだろうー。
気になるけれど、聞かないのは、リヴァイ兵長が唯一見せてくれる私への優しさに縋っているからだ。
朝方にこっそり帰ってきたリヴァイ兵長はいつも、静かに私の部屋に入ってくる。
そして、起きて待ってなくていいと言われてしまった手前、寝たふりをしている私に気づきもせずに、頬を撫でるのだ。
雨に濡れた手は冷たくて、それなのに優しくて、温かくて、泣きそうになる。
雨に濡れても消えないくらいに身体に染み込ませた花の香りの香水が、リヴァイ兵長が部屋を出て行ったあとも残り続けるから、涙が出る。
それでも、私は信じていてー。
「なまえも飲むかっ。」
一番賑やかな声の主に声に振り返れば、昼間から完璧に出来上がったゲルガーさんが、酒の瓶を片手にニーッと口の端を上げていた。
その向こうでは、ゲルガーさんの班を中心にミケ分隊長の分隊の調査兵達がお酒を楽しんでいる。
「私はまだモブリットさんに提出する書類が残ってるので、遠慮しておきます。」
「じゃあ、問題ねぇなっ!モブリットもそこで出来上がってるぜ!」
「え?」
ゲルガーさんは、私の腕を引っ張り無理やり酒の席へと連れて行く。
強制参加させられそうになっている新しい仲間の登場に沸く酒飲み達の中に、確かに、モブリットさんがいた。
普段からハンジさんのことで気苦労が堪えないモブリットさんが、実は一番の酒飲みだという噂は聞いたことがあった。
でも、私の歓迎会のときの飲み方も紳士的だったし、ただの噂だと信じて疑わなかった。
でも、顔を赤くして完全に酔っぱらい、グラスではなく、瓶に口をつけて酒を煽っている。
豪快な飲みっぷりに、私は自分の目を疑った。
「ほらっ、なまえも飲め!」
ゲルガーさんが強引にグラスを私の手に持たせようとするのを、私は断った。
「本当に大丈夫です。もし、リヴァイ兵長が早く帰ってきても
酔っぱらって寝てたら、また会えないから。」
「健気だねぇ~。お前は本当にイイ女だ!
自分の男が、他の女と会ってても文句ひとつ言わねぇで、待ってやってるんだからよ。
よし!!飲め!!俺が許可する!!!」
ゲルガーさんが、もう一度、私の手にグラスを強引に押しつけてくる。
今度こそ、私はそのグラスを受け取ってしまった。
グラスの中で揺れるお酒みたいに、私の頭もグラグラしていた。
まだ一口もお酒を呑んでいないはずなのに、ぼんやりする。
まるで、頭に霧がかかったみたいだ。
「あー、いたいた。なまえも酒飲んでんの?意外だね~。」
私を探してやってきたのは、ハンジさんだった。
モブリットさんも見つかってしまい、私と一緒にハンジさんの執務室兼自室に連行された。
「どんだけ酒呑んだの?モブリットは顔赤すぎ、なまえは顔青すぎ。
ねぇ、聞いてる?巨人化実験でさぁ~ー。」
執務室兼自室に入るなり、この雨の中で巨人化実験をしたいのだと嬉々として語りだしたハンジさんを、私はただぼんやり眺め続けていた。
でもそれも、エレンの監視役であるリヴァイ兵長がいないから、叶わないのだと、あともう少し話させてから教えてやろうと思う。
今のうちに、壁外調査前の書類を片付けたり、座学の勉強をしたり、とそれぞれ兵舎内で出来ることに取り組んでいた。
一部の調査兵は、チャンスだとばかりに談話室でお酒を煽っているようではあったけれどー。
でも、その賑やかな声が、今の私の寂しい心には唯一の拠り所でもあった。
だから、ハンジさんのところへ書類を提出しに行った帰り、用もなく談話室に入った私は、窓から外を眺めた。
激しい雨は相変わらず窓を叩き続けていて、まるで叱られているような気になった。
早く気づけー、とー。
それでもー。
(今日は、帰ってくるのかな…。)
私は、ため息を呑み込む。
あの日から数日、ずっと雨が続いていた。
そして、リヴァイ兵長の出張も続いている。
昼前に出ては、朝方に帰ってくる生活で、寝る時間もずれてしまったせいで、最近はまともに顔も見ていない。
本当は、何をしているのだろうー。
気になるけれど、聞かないのは、リヴァイ兵長が唯一見せてくれる私への優しさに縋っているからだ。
朝方にこっそり帰ってきたリヴァイ兵長はいつも、静かに私の部屋に入ってくる。
そして、起きて待ってなくていいと言われてしまった手前、寝たふりをしている私に気づきもせずに、頬を撫でるのだ。
雨に濡れた手は冷たくて、それなのに優しくて、温かくて、泣きそうになる。
雨に濡れても消えないくらいに身体に染み込ませた花の香りの香水が、リヴァイ兵長が部屋を出て行ったあとも残り続けるから、涙が出る。
それでも、私は信じていてー。
「なまえも飲むかっ。」
一番賑やかな声の主に声に振り返れば、昼間から完璧に出来上がったゲルガーさんが、酒の瓶を片手にニーッと口の端を上げていた。
その向こうでは、ゲルガーさんの班を中心にミケ分隊長の分隊の調査兵達がお酒を楽しんでいる。
「私はまだモブリットさんに提出する書類が残ってるので、遠慮しておきます。」
「じゃあ、問題ねぇなっ!モブリットもそこで出来上がってるぜ!」
「え?」
ゲルガーさんは、私の腕を引っ張り無理やり酒の席へと連れて行く。
強制参加させられそうになっている新しい仲間の登場に沸く酒飲み達の中に、確かに、モブリットさんがいた。
普段からハンジさんのことで気苦労が堪えないモブリットさんが、実は一番の酒飲みだという噂は聞いたことがあった。
でも、私の歓迎会のときの飲み方も紳士的だったし、ただの噂だと信じて疑わなかった。
でも、顔を赤くして完全に酔っぱらい、グラスではなく、瓶に口をつけて酒を煽っている。
豪快な飲みっぷりに、私は自分の目を疑った。
「ほらっ、なまえも飲め!」
ゲルガーさんが強引にグラスを私の手に持たせようとするのを、私は断った。
「本当に大丈夫です。もし、リヴァイ兵長が早く帰ってきても
酔っぱらって寝てたら、また会えないから。」
「健気だねぇ~。お前は本当にイイ女だ!
自分の男が、他の女と会ってても文句ひとつ言わねぇで、待ってやってるんだからよ。
よし!!飲め!!俺が許可する!!!」
ゲルガーさんが、もう一度、私の手にグラスを強引に押しつけてくる。
今度こそ、私はそのグラスを受け取ってしまった。
グラスの中で揺れるお酒みたいに、私の頭もグラグラしていた。
まだ一口もお酒を呑んでいないはずなのに、ぼんやりする。
まるで、頭に霧がかかったみたいだ。
「あー、いたいた。なまえも酒飲んでんの?意外だね~。」
私を探してやってきたのは、ハンジさんだった。
モブリットさんも見つかってしまい、私と一緒にハンジさんの執務室兼自室に連行された。
「どんだけ酒呑んだの?モブリットは顔赤すぎ、なまえは顔青すぎ。
ねぇ、聞いてる?巨人化実験でさぁ~ー。」
執務室兼自室に入るなり、この雨の中で巨人化実験をしたいのだと嬉々として語りだしたハンジさんを、私はただぼんやり眺め続けていた。
でもそれも、エレンの監視役であるリヴァイ兵長がいないから、叶わないのだと、あともう少し話させてから教えてやろうと思う。