◇第百二十八話◇合わない辻褄と誰かが吐いている嘘
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翌日は思った通り、雨が降った。
結局眠れなかった私は、執務室のソファに座って夜を明かした。
そうして朝方、ようやくリヴァイ兵長は帰ってきた。
レインコートを着ていなかったのか全身びしょ濡れで、ソファに座る私を見てひどく驚いてー。
いや、ひどく狼狽えていた。
そして、いつもなら、帰ってきたらすぐに私を抱きしめるリヴァイ兵長は、雨に濡れているからとシャワールームに入った。
それもそうだ。
濡れた身体で私を抱きしめたら、私も濡れてしまうし。
それに、雨に濡れて冷えた身体は早く熱いシャワーで温めてほしい。
だからきっと、リヴァイ兵長がシャワールームに消えたのは、ふわりと私の元まで届いた香水を消すためじゃない。
ほんの一瞬、リヴァイ兵長が私の横を通り過ぎたときに香水の匂いがした。
でもきっと、それは私の勘違い。違う、絶対に違う。
(今日は、長いんだな…。)
いつもあっという間にシャワールームから出てくるのに、今日はいつまでもシャワーの音が消えない。
何をそんな一生懸命に洗い流そうとしているのだろう。
雨で冷えた身体だろうか。
それとも、その身体に残った私の知らない痕か。
それでもなければ、優しいリヴァイ兵長の心に刻まれてしまった罪悪感かもしれない。
悪い妄想を取り払うように、私は紅茶を作り始める。
色違いの翼の飾りのティーカップで、いつもよりも少し熱めのお湯で、リヴァイ兵長の好きな紅茶の葉で。
執務室のローテーブルの上に、ティーカップを置いたとき、部屋の扉が開いた。
「待たせて悪かった。」
漸く、リヴァイ兵長はシャワールームから出たようだった。
「いえ、大丈夫ですよ。紅茶作ったんです。
これで温まってください。」
「あぁ、助かる。」
リヴァイ兵長は、さっき私が置いたばかりのティーカップを手に取ると、ソファに腰をおろした。
なんとなく、隣に行けなくて、私はテーブルのそばに立ったまま、その様子を見ていた。
すると、リヴァイ兵長が、私に手を伸ばす。
「来ないのか。」
当然のように言うリヴァイ兵長に、少しホッとして、私はその手をとる。
隣に座れば、力強くて優しい腕が私の肩を抱いた。
リヴァイ兵長の肩に頭を乗せれば、いつもと同じ、私を安心させてくれる甘くて苦い紅茶の香りに包まれた。
やっとリヴァイ兵長が帰ってきたーと実感する。
すごく、あったかい。
凍えた心が解けていくみたいだー。
「今日もまた、昼から出張だ。コレを飲んだら少し寝る。
徹夜で行くのはさすがにキツい。」
「寝てないんですか?」
「あぁ。抜けられない仕事に付き合わされてこんな時間になっちまった。」
「え?」
「これからも出張が増えそうだ。」
「カラネス区にですか?」
「遅くなることも多くなると思う。
俺が帰ってこなかったら、先に寝ててくれ。もう待ってなくていい。
寝不足は、訓練に支障が出る。」
「…はい、わかりました。」
「寂しい思いさせて、悪ぃな。」
「…いえ、お仕事なら、仕方ないですから…。」
ティーカップをテーブルに置いたリヴァイ兵長に抱きしめられて、腕の中にいたおかげで顔を見られずに済んでよかった。
震えそうになる手で、リヴァイ兵長のシャツの胸元を握りしめる。
『帰りが遅くなったから泊ってくるだけだって言ってた。
明日も特に急ぎの仕事もないし、泊ることにしたってさ。』
ダイの声が蘇る。
胸がざわつき、不安と恐怖に襲われる。
どうしても、私には、リヴァイ兵長が、何を言っているのか理解できなかった。
とても、とても分かりやすいことを言ったのに。
仕事だから起きて待ってなくていいー、ただそれだけのはずなのに。
シャツの胸元に頬を寄せる。
ダイは、仕事じゃないと言っていた。ただ、帰りが遅くなったから泊るだけだってー。
明日は急ぎの仕事もないらしいと言っていた。
じゃあ、こんな時間まで寝ないで、リヴァイ兵長は何をしていたの。
明日、リヴァイ兵長は何処へ行くのー。
甘くて苦い紅茶の香りに混ざった石鹸の香りが、私の不安を煽った。
結局眠れなかった私は、執務室のソファに座って夜を明かした。
そうして朝方、ようやくリヴァイ兵長は帰ってきた。
レインコートを着ていなかったのか全身びしょ濡れで、ソファに座る私を見てひどく驚いてー。
いや、ひどく狼狽えていた。
そして、いつもなら、帰ってきたらすぐに私を抱きしめるリヴァイ兵長は、雨に濡れているからとシャワールームに入った。
それもそうだ。
濡れた身体で私を抱きしめたら、私も濡れてしまうし。
それに、雨に濡れて冷えた身体は早く熱いシャワーで温めてほしい。
だからきっと、リヴァイ兵長がシャワールームに消えたのは、ふわりと私の元まで届いた香水を消すためじゃない。
ほんの一瞬、リヴァイ兵長が私の横を通り過ぎたときに香水の匂いがした。
でもきっと、それは私の勘違い。違う、絶対に違う。
(今日は、長いんだな…。)
いつもあっという間にシャワールームから出てくるのに、今日はいつまでもシャワーの音が消えない。
何をそんな一生懸命に洗い流そうとしているのだろう。
雨で冷えた身体だろうか。
それとも、その身体に残った私の知らない痕か。
それでもなければ、優しいリヴァイ兵長の心に刻まれてしまった罪悪感かもしれない。
悪い妄想を取り払うように、私は紅茶を作り始める。
色違いの翼の飾りのティーカップで、いつもよりも少し熱めのお湯で、リヴァイ兵長の好きな紅茶の葉で。
執務室のローテーブルの上に、ティーカップを置いたとき、部屋の扉が開いた。
「待たせて悪かった。」
漸く、リヴァイ兵長はシャワールームから出たようだった。
「いえ、大丈夫ですよ。紅茶作ったんです。
これで温まってください。」
「あぁ、助かる。」
リヴァイ兵長は、さっき私が置いたばかりのティーカップを手に取ると、ソファに腰をおろした。
なんとなく、隣に行けなくて、私はテーブルのそばに立ったまま、その様子を見ていた。
すると、リヴァイ兵長が、私に手を伸ばす。
「来ないのか。」
当然のように言うリヴァイ兵長に、少しホッとして、私はその手をとる。
隣に座れば、力強くて優しい腕が私の肩を抱いた。
リヴァイ兵長の肩に頭を乗せれば、いつもと同じ、私を安心させてくれる甘くて苦い紅茶の香りに包まれた。
やっとリヴァイ兵長が帰ってきたーと実感する。
すごく、あったかい。
凍えた心が解けていくみたいだー。
「今日もまた、昼から出張だ。コレを飲んだら少し寝る。
徹夜で行くのはさすがにキツい。」
「寝てないんですか?」
「あぁ。抜けられない仕事に付き合わされてこんな時間になっちまった。」
「え?」
「これからも出張が増えそうだ。」
「カラネス区にですか?」
「遅くなることも多くなると思う。
俺が帰ってこなかったら、先に寝ててくれ。もう待ってなくていい。
寝不足は、訓練に支障が出る。」
「…はい、わかりました。」
「寂しい思いさせて、悪ぃな。」
「…いえ、お仕事なら、仕方ないですから…。」
ティーカップをテーブルに置いたリヴァイ兵長に抱きしめられて、腕の中にいたおかげで顔を見られずに済んでよかった。
震えそうになる手で、リヴァイ兵長のシャツの胸元を握りしめる。
『帰りが遅くなったから泊ってくるだけだって言ってた。
明日も特に急ぎの仕事もないし、泊ることにしたってさ。』
ダイの声が蘇る。
胸がざわつき、不安と恐怖に襲われる。
どうしても、私には、リヴァイ兵長が、何を言っているのか理解できなかった。
とても、とても分かりやすいことを言ったのに。
仕事だから起きて待ってなくていいー、ただそれだけのはずなのに。
シャツの胸元に頬を寄せる。
ダイは、仕事じゃないと言っていた。ただ、帰りが遅くなったから泊るだけだってー。
明日は急ぎの仕事もないらしいと言っていた。
じゃあ、こんな時間まで寝ないで、リヴァイ兵長は何をしていたの。
明日、リヴァイ兵長は何処へ行くのー。
甘くて苦い紅茶の香りに混ざった石鹸の香りが、私の不安を煽った。