◇第百二十七話◇悪夢に溺れる夜に私を沈める貴方
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兵門の周りに見回りの調査兵が数名いるだけで、真夜中の兵舎はとても静かだった。
馬車の降口には、見回りの調査兵すらいなかった。
適当に羽織ってきただけのカーディガンだけでは、寒い。
ベンチに腰をおろした私は、袖口を伸ばし、両手に息を吹きかけた。
一瞬、暖かくなったような気もしたけれど、すぐに夜風の冷たさに凍えだす。
夜空を見上げると、分厚い雲に覆われ、月も星も見えなかった。
明日は雨だろうか。
だから、こんなに寒いのかもしれない。
早く、リヴァイ兵長に会いたい。
力強くて優しい腕に抱きしめられて、温まりたい。
安心、したいー。
夜には帰ってくると言っていたのに、何か、問題でも起きたのだろうか。
しばらく、凍えた両手を温めながら、待っていると声をかけられた。
「あれ?なまえか?こんな夜中に何やってるんだ?」
顔を上げると、ダイが訝しげな顔をしながら私の前に立った。
「リヴァイ兵長を待ってるの。」
「リヴァイ兵長?」
「昼間、出張に行ったの。でも、今夜には帰るって言ってたから。」
「リヴァイ兵長は今日泊りがけだぞ。」
「え?」
「ゲルガーさん達が少し前に帰って来て、見回りしてたから会ったんだ。
それで、リヴァイ兵長だけ、泊ってくることになったって。聞いてなかったのか?」
「うん…。リヴァイ兵長に何かあったの?」
「いや、帰りが遅くなったから泊ってくるだけだって言ってた。
明日も特に急ぎの仕事もないし、泊ることにしたってさ。
だから、心配することねぇよ。」
「そ、っか。なら、よかった。」
「おう。」
私はうまく笑えていただろうか。
でも、私の心は、ショックを隠し切れなかった。
あぁ、避けられてるんだー。
そう思って。
最近ずっと気まずかったし、今日はオルオとペトラから結婚の話を聞いてしまったから、夜に顔を合わせたらその話題になると思ったのだろうか。
それでもきっと、リヴァイ兵長は帰ってくると信じてた。
どんなに遅くなっても、絶対に。
だって、いつも、そうだったから。
リヴァイ兵長は、どんなに遅くなっても帰ってきた。
出来るだけ、泊りの出張にならないようにしてくれたのにー。
気づいたら、私はベッドの上にいた。
自分のベッドの上で、シングルベッドの上で、隣に誰もいないことを嘆いて泣いていた。
『大丈夫だ。俺がずっと、そばにいてやるから。』
リヴァイ兵長の優しい腕が私を抱きしめて、愛おしそうに頭を撫でてくれたのは、遠い昔の出来事じゃない。
私の妄想でもない。
確かに、リヴァイ兵長はそう言ってくれた。
怖い夢を見たら、自分に抱き着けばいいと言ってくれたじゃないか。
そばにいてくれるって、抱きしめてあげるってー。
夢の中で、ルルが死んだ。
グンタが、エルドが、ペトラとオルオが、死んだ。
リヴァイ兵長の瞳も死んだ。
そして、悪夢から目覚めた私は、これから、リヴァイ兵長の愛が死に行くのを見ることになるのかもしれない。
どの悪夢が一番ツラいのだろう。
あぁ、でも、すべてが悪夢ならいいのに。
眠れないで苦しむ悪夢くらいなら、私は堪えられる。
リヴァイ兵長がいるのなら、堪えられるのにー。
「どうして…。」
壊れた機械みたいに、私の唇はそればかり繰り返していた。
あの夜、私が安心して眠れたのは、リヴァイ兵長が抱きしめてくれたから。だからなのにー。
馬車の降口には、見回りの調査兵すらいなかった。
適当に羽織ってきただけのカーディガンだけでは、寒い。
ベンチに腰をおろした私は、袖口を伸ばし、両手に息を吹きかけた。
一瞬、暖かくなったような気もしたけれど、すぐに夜風の冷たさに凍えだす。
夜空を見上げると、分厚い雲に覆われ、月も星も見えなかった。
明日は雨だろうか。
だから、こんなに寒いのかもしれない。
早く、リヴァイ兵長に会いたい。
力強くて優しい腕に抱きしめられて、温まりたい。
安心、したいー。
夜には帰ってくると言っていたのに、何か、問題でも起きたのだろうか。
しばらく、凍えた両手を温めながら、待っていると声をかけられた。
「あれ?なまえか?こんな夜中に何やってるんだ?」
顔を上げると、ダイが訝しげな顔をしながら私の前に立った。
「リヴァイ兵長を待ってるの。」
「リヴァイ兵長?」
「昼間、出張に行ったの。でも、今夜には帰るって言ってたから。」
「リヴァイ兵長は今日泊りがけだぞ。」
「え?」
「ゲルガーさん達が少し前に帰って来て、見回りしてたから会ったんだ。
それで、リヴァイ兵長だけ、泊ってくることになったって。聞いてなかったのか?」
「うん…。リヴァイ兵長に何かあったの?」
「いや、帰りが遅くなったから泊ってくるだけだって言ってた。
明日も特に急ぎの仕事もないし、泊ることにしたってさ。
だから、心配することねぇよ。」
「そ、っか。なら、よかった。」
「おう。」
私はうまく笑えていただろうか。
でも、私の心は、ショックを隠し切れなかった。
あぁ、避けられてるんだー。
そう思って。
最近ずっと気まずかったし、今日はオルオとペトラから結婚の話を聞いてしまったから、夜に顔を合わせたらその話題になると思ったのだろうか。
それでもきっと、リヴァイ兵長は帰ってくると信じてた。
どんなに遅くなっても、絶対に。
だって、いつも、そうだったから。
リヴァイ兵長は、どんなに遅くなっても帰ってきた。
出来るだけ、泊りの出張にならないようにしてくれたのにー。
気づいたら、私はベッドの上にいた。
自分のベッドの上で、シングルベッドの上で、隣に誰もいないことを嘆いて泣いていた。
『大丈夫だ。俺がずっと、そばにいてやるから。』
リヴァイ兵長の優しい腕が私を抱きしめて、愛おしそうに頭を撫でてくれたのは、遠い昔の出来事じゃない。
私の妄想でもない。
確かに、リヴァイ兵長はそう言ってくれた。
怖い夢を見たら、自分に抱き着けばいいと言ってくれたじゃないか。
そばにいてくれるって、抱きしめてあげるってー。
夢の中で、ルルが死んだ。
グンタが、エルドが、ペトラとオルオが、死んだ。
リヴァイ兵長の瞳も死んだ。
そして、悪夢から目覚めた私は、これから、リヴァイ兵長の愛が死に行くのを見ることになるのかもしれない。
どの悪夢が一番ツラいのだろう。
あぁ、でも、すべてが悪夢ならいいのに。
眠れないで苦しむ悪夢くらいなら、私は堪えられる。
リヴァイ兵長がいるのなら、堪えられるのにー。
「どうして…。」
壊れた機械みたいに、私の唇はそればかり繰り返していた。
あの夜、私が安心して眠れたのは、リヴァイ兵長が抱きしめてくれたから。だからなのにー。