◇第百三十九話◇瞳に映した最悪な事実
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ストヘス区、中央通りを調査兵団の護送車が通過する。
その時が、最後のチャンスだった。
隙を見てエレンには護送車から抜け出してもらい、アルミン達と合流。
うまくアニを誘導して、可能なら地下で巨人化させることなく捕獲するのが目的だ。
そうして壁を壊す巨人の仲間を捕えられれば、当然収集の話はなくなり、王都の意識も壁の防衛に傾くと踏んだのだ。
アルミンは、それこそ命懸けでうまくやったと思っていた。
それなのに、漸く地下の入口まで来たところで、アニが立ち止まってしまった。
計画に、気づかれてしまったようだ。
「まったく…傷つくよ。一体…いつから。アルミン…あんたは私を
そんな目で見るようになったの?」
地下の入口から動かないままで、アニは階段の途中で立ち止まったアルミンとミカサ、そして、エレンを見下ろす。
立体起動装置のレバーを持つアルミンの手は、カタカタと震えていた。
「被験体の巨人殺しの犯人にさせられた先輩兵士が言ってたんだ。
逃げていく犯人の後ろ姿を見たって。」
「へぇ、目撃証言あったんだ。良かったね。」
「わざと見せたんだよね。なまえさんが疑われるように。」
「さぁ?犯人の気持ちなんて、私は知らない。」
「兵団マントならいくらでも偽装出来る。でも、赤いブレスレットをつけてたって口走ったんだ。
ねぇ、アニ、そのブレスレット、なまえさんとお揃いなんじゃないの?」
アルミンの指摘に、アニは僅かに唇を噛むと、左手首を右手で隠した。
「ねぇ、どうしてなまえさんが疑われるように仕向けたの?」
「だから、私は知らないってー。」
「なまえさんを壁外調査に行かせたくなかったんだよね?
それは…、なまえさんが強い兵士だから?厄介だと思った?
それとも…、死んでほしくなかったから?」
「もし、そうだったらどうなるの?」
「アニにとって、なまえさんが大切な人なら、僕達の願いを聞いて欲しいんだ。」
「バカだね。今ここになまえがいないってのがいい答え。
もう、私の顔も見たくないんだよね。私はもう会えない。」
アニが目を伏せた。
敵だと分かっていながら、胸が苦しくなった。
やっぱり、アニは、なまえを守ろうとしていたのだ。
あの悲劇の現場で、彼女が傷つかないように。万が一、彼女が死ぬことがないようにー。
「アニに会いたいって言ったのを、エルヴィン団長が止めたんだ。
なまえさんってほら…、すぐ顔に出ちゃうから。」
「あぁ…、バカだからね、本当に…バカだよ。」
アニが自嘲気味な笑みを浮かべる。
それは誰を嘲笑ったのだろう。自分自身を馬鹿にしたように見えた。
「なまえさんから、アニに伝えて欲しいことがあるって言われてる。」
「何?」
「赤いブレスレット、大事にしてくれてありがとう。
なまえさんにとってそれは、アニとの絆だって言ってたよ。
傷つけてごめんって、謝るのは自分でしたいって言ってたんだった。ごめん、忘れて。」
「…ほんと、バカだね。お人好し通り越して、本当バカだよ。」
アニの声はとても悲しそうで、太陽の陰に隠れた横顔は、泣いているように見えた。
「今から僕達と一緒に行こう。アニは人類の敵なのかもしれないけど、
でも、なまえさんはずっとアニの味方だよ。きっと、守ってくれる。
それを知ってるから、アニもなまえさんだけは守りたかったんじゃないの?」
「…もう遅い。遅いんだよ。私は、そっちに行けない。」
「何も遅くないよ、だってー。」
「私の手は汚れて、戦死にもなり損ねた…。」
アニが呟くように言う。
やっぱり、なまえの言っていた通り、アニが望んで人を殺すような人間だとは思えない。
「ねぇ、私からもなまえに伝言伝えてよ。」
それは、大勢の人達を恐怖のどん底に陥れた人類の敵の願いとは到底思えないような、とても悲しくて、切ない伝言だったー。
その時が、最後のチャンスだった。
隙を見てエレンには護送車から抜け出してもらい、アルミン達と合流。
うまくアニを誘導して、可能なら地下で巨人化させることなく捕獲するのが目的だ。
そうして壁を壊す巨人の仲間を捕えられれば、当然収集の話はなくなり、王都の意識も壁の防衛に傾くと踏んだのだ。
アルミンは、それこそ命懸けでうまくやったと思っていた。
それなのに、漸く地下の入口まで来たところで、アニが立ち止まってしまった。
計画に、気づかれてしまったようだ。
「まったく…傷つくよ。一体…いつから。アルミン…あんたは私を
そんな目で見るようになったの?」
地下の入口から動かないままで、アニは階段の途中で立ち止まったアルミンとミカサ、そして、エレンを見下ろす。
立体起動装置のレバーを持つアルミンの手は、カタカタと震えていた。
「被験体の巨人殺しの犯人にさせられた先輩兵士が言ってたんだ。
逃げていく犯人の後ろ姿を見たって。」
「へぇ、目撃証言あったんだ。良かったね。」
「わざと見せたんだよね。なまえさんが疑われるように。」
「さぁ?犯人の気持ちなんて、私は知らない。」
「兵団マントならいくらでも偽装出来る。でも、赤いブレスレットをつけてたって口走ったんだ。
ねぇ、アニ、そのブレスレット、なまえさんとお揃いなんじゃないの?」
アルミンの指摘に、アニは僅かに唇を噛むと、左手首を右手で隠した。
「ねぇ、どうしてなまえさんが疑われるように仕向けたの?」
「だから、私は知らないってー。」
「なまえさんを壁外調査に行かせたくなかったんだよね?
それは…、なまえさんが強い兵士だから?厄介だと思った?
それとも…、死んでほしくなかったから?」
「もし、そうだったらどうなるの?」
「アニにとって、なまえさんが大切な人なら、僕達の願いを聞いて欲しいんだ。」
「バカだね。今ここになまえがいないってのがいい答え。
もう、私の顔も見たくないんだよね。私はもう会えない。」
アニが目を伏せた。
敵だと分かっていながら、胸が苦しくなった。
やっぱり、アニは、なまえを守ろうとしていたのだ。
あの悲劇の現場で、彼女が傷つかないように。万が一、彼女が死ぬことがないようにー。
「アニに会いたいって言ったのを、エルヴィン団長が止めたんだ。
なまえさんってほら…、すぐ顔に出ちゃうから。」
「あぁ…、バカだからね、本当に…バカだよ。」
アニが自嘲気味な笑みを浮かべる。
それは誰を嘲笑ったのだろう。自分自身を馬鹿にしたように見えた。
「なまえさんから、アニに伝えて欲しいことがあるって言われてる。」
「何?」
「赤いブレスレット、大事にしてくれてありがとう。
なまえさんにとってそれは、アニとの絆だって言ってたよ。
傷つけてごめんって、謝るのは自分でしたいって言ってたんだった。ごめん、忘れて。」
「…ほんと、バカだね。お人好し通り越して、本当バカだよ。」
アニの声はとても悲しそうで、太陽の陰に隠れた横顔は、泣いているように見えた。
「今から僕達と一緒に行こう。アニは人類の敵なのかもしれないけど、
でも、なまえさんはずっとアニの味方だよ。きっと、守ってくれる。
それを知ってるから、アニもなまえさんだけは守りたかったんじゃないの?」
「…もう遅い。遅いんだよ。私は、そっちに行けない。」
「何も遅くないよ、だってー。」
「私の手は汚れて、戦死にもなり損ねた…。」
アニが呟くように言う。
やっぱり、なまえの言っていた通り、アニが望んで人を殺すような人間だとは思えない。
「ねぇ、私からもなまえに伝言伝えてよ。」
それは、大勢の人達を恐怖のどん底に陥れた人類の敵の願いとは到底思えないような、とても悲しくて、切ない伝言だったー。