ドレスで身体の損傷を、メイクで傷を隠したことで、開かずの扉になっていた棺の蓋は外された。
棺の中で眠るのは、まるで御伽噺のお姫様のようだった。
真っ白のウェディングドレスを身に纏い、綺麗にセットされた髪。真っ赤な口紅を塗った唇は、微笑んでいるようだった。

「フロリアン…っ。あぁ…っ、フロリアン…っ。」

彼女の母親が棺にしがみつき泣きじゃくる。
その隣で、父親はただじっと彼女を見つめていて、娘の花嫁姿を目に焼き付けようとしているようだった。

「ありがとう…、本当にありがとう…っ。
　君達のおかげで、僕達は、フロリアンの花嫁姿を、見ることが出来た…っ。
　フロリアンは、花嫁になれ、なれた…っ。」

涙を流しながら、フロリアンの彼は頭を下げた。
握っていた拳は開かれ、震えていた。

「頭を上げてください。」

声をかけても、フロリアンの彼は頭を下げ続けていた。
でも、私達は礼を言われたくてやったわけでもなければ、彼女の両親に娘の花嫁姿を見せてやろうなんておごったことを考えたわけでもない。
ただー。

「だって、私達は、フロリアンのブライズメイドだから。
　彼女を世界一幸せな花嫁にしてあげるって約束をしてて
　それを守ってあげなくちゃ、いけなくて…っ。」

言いながら、悔しさで涙が出た。
必死に堪えていたのに、もうダメだった。
世界一幸せな花嫁にしてあげると約束したのに、こんな悲しい式になるはずじゃなかったのにー。

「ごめん…っ、ごめんね…っ。」

膝から崩れ落ちて、私は両手で顔を覆って泣いた。
マレーネが私を抱きしめる。マレーネをエルマが、そうやってお互いを抱きしめ合って泣く私達が着ているのは、お揃いの色のワンピースだけれど、フロリアンの好きな黄色のドレスじゃない。
どうして、喪服なんて着ているんだろうー。
今日の日を、笑って過ごしたかった。
そう誰よりも願っているのは、フロリアン、あなたよねー。