◇第百三十八話◇世界一美しい花嫁をおくる涙の結婚式
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壁外遠征にかかった費用と損害による痛手は、調査兵団の支持母体を失墜させるに十分であった。
それにより、エルヴィンを含む責任者が王都に収集されると同時に、エレンの引き渡しが決まった。
それを数日後に控えたその日、フロリアンの葬儀の準備が親族たちによってしめやかに行われていた。
結婚式を開くはずだった教会は、今日の分厚い雲に覆われた空のようにどんよりして見えた。
教会の入口に、泣き出しそうな空を見上げる若い男性がいた。
「あ…。」
私やマレーネ達の顔を見ると、彼は一瞬驚いた顔をした後、目を伏せてから頭を下げた。
握った拳が震えているのは、生き残った私達に思うことがあるからだろう。
それを必死に拳の内側に閉じ込めることが出来る強い人を選んだフロリアンには、男を見る目が合ったのだと知る。
優しくて強くて素敵な人でしょう?ボーッとしてるけど、なんて憎まれ口を忘れない惚気を言っているフロリアンを想像してしまう。
お悔やみの言葉を伝えた後、私達は彼に最後のお願いを伝えた。
驚いていたようだったが、是非にと頭を下げて私達の願いを聞き入れてくれた彼に連れられ、フロリアンが眠っている棺へと向かう。
「フィデリオさん、その方達は?」
彼に声をかけてきたのは、老婦人だった。
少し疲れたような印象は受けたが、髪を綺麗にまとめていて堂々と背筋を伸ばして立っている姿は、とてもフロリアンに似ていた。
「あぁ、お義母さん。彼女達はフロリアンの友人で、同じ調査兵の方達なんです。
フロリアンのためにってー。」
「帰ってください!」
彼が言い切る前に、フロリアンの母親は私達に冷たく言い放った。
その声を聞きつけた彼女の親族が続々と集まる。そして、彼らも又、調査兵団の兵士の顔なんか見たくないと罵り始める。
あの日のルルの両親と彼らが重なった。
あぁ、これからもずっと調査兵団に身を置き続ける限り、こんな瞳を何度も何度も向けられることになるのだろうか。
それでも、残された私達に出来ることなんて、あまりにも少なすぎるのだ。
だからせめてー。
私が頭を下げると、マレーネ達も一緒に頭を下げた。
「お母様の、皆様のお怒りも重々承知しております。
葬儀への出席は認めてもらえなくても構いません。
せめて、最後にフロリアンの為にできることを、私達にー。」
「分かるわけがないでしょう!?」
気づいたら、私は床に倒れていた。
フロリアンの母親に、突き飛ばされたらしい。
マレーネ達も他の親族に同じようなことをされたのか、床に倒れ、持ってきていたウェディングドレスやメイク道具が散乱していた。
「これは…、アンタ達…、私達を馬鹿にしに来たの!?
今日はあの娘の葬儀なのよ!?それなのに、こんなものをー。」
「違います!!」
声を張り上げたのは、フロリアンの彼だった。
みんなが一様に驚き、視線が彼に集まる。
「今日は…、僕とフロリアンの結婚式です…!
今日は、僕達の…っ、結婚式なんだ…っ。」
そう、本当だったら今日、彼女は世界一幸せな花嫁になるはずだった。
心から愛する人の隣で、彼女は誰よりも綺麗な笑顔を振りまいていたはずだったのにー。
それにより、エルヴィンを含む責任者が王都に収集されると同時に、エレンの引き渡しが決まった。
それを数日後に控えたその日、フロリアンの葬儀の準備が親族たちによってしめやかに行われていた。
結婚式を開くはずだった教会は、今日の分厚い雲に覆われた空のようにどんよりして見えた。
教会の入口に、泣き出しそうな空を見上げる若い男性がいた。
「あ…。」
私やマレーネ達の顔を見ると、彼は一瞬驚いた顔をした後、目を伏せてから頭を下げた。
握った拳が震えているのは、生き残った私達に思うことがあるからだろう。
それを必死に拳の内側に閉じ込めることが出来る強い人を選んだフロリアンには、男を見る目が合ったのだと知る。
優しくて強くて素敵な人でしょう?ボーッとしてるけど、なんて憎まれ口を忘れない惚気を言っているフロリアンを想像してしまう。
お悔やみの言葉を伝えた後、私達は彼に最後のお願いを伝えた。
驚いていたようだったが、是非にと頭を下げて私達の願いを聞き入れてくれた彼に連れられ、フロリアンが眠っている棺へと向かう。
「フィデリオさん、その方達は?」
彼に声をかけてきたのは、老婦人だった。
少し疲れたような印象は受けたが、髪を綺麗にまとめていて堂々と背筋を伸ばして立っている姿は、とてもフロリアンに似ていた。
「あぁ、お義母さん。彼女達はフロリアンの友人で、同じ調査兵の方達なんです。
フロリアンのためにってー。」
「帰ってください!」
彼が言い切る前に、フロリアンの母親は私達に冷たく言い放った。
その声を聞きつけた彼女の親族が続々と集まる。そして、彼らも又、調査兵団の兵士の顔なんか見たくないと罵り始める。
あの日のルルの両親と彼らが重なった。
あぁ、これからもずっと調査兵団に身を置き続ける限り、こんな瞳を何度も何度も向けられることになるのだろうか。
それでも、残された私達に出来ることなんて、あまりにも少なすぎるのだ。
だからせめてー。
私が頭を下げると、マレーネ達も一緒に頭を下げた。
「お母様の、皆様のお怒りも重々承知しております。
葬儀への出席は認めてもらえなくても構いません。
せめて、最後にフロリアンの為にできることを、私達にー。」
「分かるわけがないでしょう!?」
気づいたら、私は床に倒れていた。
フロリアンの母親に、突き飛ばされたらしい。
マレーネ達も他の親族に同じようなことをされたのか、床に倒れ、持ってきていたウェディングドレスやメイク道具が散乱していた。
「これは…、アンタ達…、私達を馬鹿にしに来たの!?
今日はあの娘の葬儀なのよ!?それなのに、こんなものをー。」
「違います!!」
声を張り上げたのは、フロリアンの彼だった。
みんなが一様に驚き、視線が彼に集まる。
「今日は…、僕とフロリアンの結婚式です…!
今日は、僕達の…っ、結婚式なんだ…っ。」
そう、本当だったら今日、彼女は世界一幸せな花嫁になるはずだった。
心から愛する人の隣で、彼女は誰よりも綺麗な笑顔を振りまいていたはずだったのにー。